※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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今回は短め


#33 やりたい事の理由

俺の目の前で魔法の光が煌めく。

光に包まれているのは森妖精(エルフ)の奴隷達だ。

 

 

「ベリアル様、これで彼女達の治療は完了しました……わん」

 

 

顔を中心に真っ直ぐと縫い傷の入った犬の顔……メイド服を着た人の形をした犬。

名前をペストーニャ・S・ワンコという。

ナザリックのメイド長であり、高度な治癒魔法を行使できる魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。

 

このナザリックでは珍しいカルマ値が善の配下であり、慈悲深いメイド……犬?だ。

ゲヘナ後に子供の助命嘆願をして謹慎中になってしまったぐらいには、優しい。

 

 

「耳や一部内臓の欠損など、治癒による回復可能な箇所は全て元通りになりましたわん」

 

 

森妖精(エルフ)達を一瞥すると……なるほど、欠損した筈の耳が治っている。

一部内臓も欠損していた……ってのは分からないが、森妖精(エルフ)の一人が自分の腹を撫でているので、その辺りの内臓が壊されていたのだろう。

 

 

「そうか、ありがとう。ペストーニャ」

 

「いえいえ、お役に立てて光栄です、わん」

 

 

俺が感謝を告げると、ペストーニャの尻尾が揺れた。

顔は澄ましている……というか、犬顔だしツギハギだから分からないけど。

 

森妖精(エルフ)達に目線を戻すと……三人とも号泣していた。

 

 

「あ……あぁ……耳……」

 

「……すごい」

 

「うぅ、う、うっ」

 

 

感極まって泣き喚いている。

鼻水と涙でぐちょぐちょだ。

 

……あんまりジロジロ見るのも可哀想か。

俺はペストーニャに目線を戻した。

 

 

「ペストーニャ。謹慎中のお前に頼むのは悪いが……彼女達のメンタルケアと“教育”をお願いしていいか?」

 

 

“教育”という言葉に森妖精(エルフ)達の泣き声が止んだ。

視線を戻すと、感動の号泣から反転し、一気に絶望的な顔をした。

 

 

「……あぅ」

 

「……うぅ」

 

 

え?

なんだ?

何かトラウマでもあるのか?

……いや、エルヤーとかの事だし“教育”とか言いながら暴力でも振るってたか?

 

失言だったか?

 

俺は自分の後頭部を掻きながら、森妖精(エルフ)達に一歩近づいた。

それだけで彼女達はまた、震え始めた。

 

……そりゃそうか。

嫌ってたとはいえ、前の主人を目の前でボコボコにしたもんな。

 

ため息を一つ吐いて、口を開いた。

 

 

「安心してくれていい。俺はお前達に危害を加えるつもりはない。痛い事もしない」

 

「は、はい」

 

 

三人がこくこくと頷いた。

俺の言葉を信頼してくれるかは分からないが、頷いてくれた。

まぁ納得してるフリしてないと暴力を振るわれるかもしれない!って思ってるんだろうな。

その辺の信頼関係は、今後の対応次第か。

 

そんな事を考えていると、ペストーニャが口を開いた。

 

 

「ベリアル様、教育とはどの程度の内容を想定していますか?……あ、わん」

 

「……そうだな。ナザリック内のルールであったり価値観について教えてやってくれ。……あ、思想教育とかはしなくていいぞ」

 

「分かりましたわん」

 

 

ペストーニャが恭しく頭を下げた。

彼女なら、任せても変な事はしないだろう。

ナザリックで一番、人間に友好的だし……たぶんね。

 

ふと、何かに気付いたようにペストーニャが俺を見た。

 

 

「……ベリアル様。つかぬことをお聞きしますが、他のナザリック侵入者の処分はどうなさるおつもりですか?わん」

 

「ん?それは全員、有効活用するつもりだが」

 

 

俺の言葉を聞いている森妖精(エルフ)達は、その『有効活用』の意味が分かっていないようで不思議そうにしている。

対してペストーニャは……やはり表情は分からないが、納得のいかない顔をしている……のか?

わからん。

 

 

「……至高の御方に無礼な忠言を致しますが、『処分』については再考して頂けないでしょうか?」

 

「ダメだ。ナザリックに自らの意思で侵入した者を生かして返す訳にはいかない」

 

「それはこの地をナザリックとして認識していない者達も、でしょうか?……あ、わん」

 

「そうだ」

 

 

確かに、彼等は遺跡の調査をしにきただけだ。

しかし、霊廟でここが何者かの墓である事も分かっていた。

そして、その何者かが収めている領地を侵したのも事実だ。

 

俺としては……そう、どうでもいい。

助ける意味が見出せない。

助けない意味は見出せるが。

 

唯一、例外があるとしたら“フォーサイト”だけだ。

彼等は……アルシェの仲間だからな。

だが、それだけで特別扱いする事は出来ない。

殺すなら全員殺し、殺さないなら全員殺さないべきだ。

 

そして、モモンガさんは全員殺すと選択した。

なら、異論を唱えるつもりはない。

このナザリックの主は俺ではなく、彼だ。

 

 

「……申し訳ありませんでした、わん。この失言の処分は命をもって──

 

「いや、構わない。ペストーニャの言っている事も一理ある……いや、恐らく、お前の言っている事の方が正しい」

 

 

俺がこの淫魔(インキュバス)の身になってから、失われつつある人間性。

元々は人間だったが、同族意識も薄れつつある。

人間を殺しても不快感はなく、情も湧かなくなっていく。

 

だというのに、生まれた時からの異形種でありながら、慈悲深く振る舞えるペストーニャ。

俺は彼女を尊敬しているし、その思想を尊重したい。

 

 

「でしたら──

 

「それでもダメだ。助ける理由に比べて、助けない理由が多過ぎる」

 

 

森妖精(エルフ)達の手前、怖がらせるような事は言えない。

 

だが、助けない理由は沢山ある。

ナザリックの内部情報を得た者を生かして返すリスク。

人間の被検体が必要であること。

モモンガさんや配下達の心情。

 

他にも色々だ。

 

 

「…………」

 

 

俺が理由を言わなくとも、ペストーニャも理解はしているようで少し顔を俯かせた。

 

 

「話は終わりだ。ここで俺は失礼す──

 

「ベリアル様」

 

 

瞬間、背後から声を掛けられた。

俺が振り返ると、そこには──

 

 

「……ラズロか?何でここに居る」

 

 

帝都の屋敷に置いてきた筈のラズロが立っていた。

 

 

「少しお話があります。よろしいですか?」

 

 

俺の質問を無視して、ラズロがそう訊いた。

その顔はどこか、真剣さを感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りに聞かせられない話かと考えた俺は、ラズロを連れて自室へと転移した。

 

 

「さて、それで話とは何だ?ラズロ」

 

 

俺が大きな机の前の椅子に座ったのを確認して……ラズロは立ったまま、向かい合った。

 

普段ならば席に着く場面。

だというのに座らないラズロに、俺は少し困惑した。

 

そんな俺にラズロは目を向けた。

 

 

「父上は“フォーサイト”をどうなさるおつもりですか」

 

 

またこの質問か……何回、訊かれるんだ?

 

 

「処分する。いや、正しく言うなら、俺は手を出すつもりがない、か」

 

 

何度訊かれても、返答は同じだ。

助ける意味がない。

 

そう答えたが、ラズロは真剣な表情のまま俺を見ていた。

 

 

「どうしてですか?アルシェちゃんが悲しみますよ」

 

 

それは理屈ではない。

情の話だった。

 

 

「……だとしても、助けない理由なら幾つもあるだろ。指折り数えれば満足か?」

 

「それは対外的な理由ですよね。父上はどうなのですか?助けたいのですか?助けたくないのですか?」

 

 

ラズロの言葉に俺は顔を顰めた。

 

 

「何が言いたい」

 

「私にはただ……父上がただ、助けない為の理由ではなく『言い訳』を考えているようにしか見えません」

 

 

ラズロの言葉は……そう、図星だった。

本当ならば確かに、俺は……そう、アルシェを悲しませるような事はしたくない。

 

 

「でも、仕方ないだろ。ナザリックの情報を外に持ち帰られては困る。俺はこの場所を守る義務がある」

 

 

指を一つ立てる。

 

 

「それに、他の請負人(ワーカー)達も同じ理由で侵入しているのに、彼等だけを特別扱いにはできない。かといって全員は助けられない。ナザリックの利益を損なう行動だ」

 

 

指を一つ立てる。

 

 

「モモンガさんの心情だってそうだ。この場所を荒らした者に苛立っている……程度の差はあれど俺もそうだし、他の奴らだってそうだ。その溜飲を下げるためにも、侵入者は皆殺しにするべきだ」

 

 

指を一つ立てて──

 

 

「父上」

 

 

その三本の指を、ラズロが包み込んだ。

 

 

「私は、もっと単純で良いと思っています。父上はこのナザリックの至高なる御方である前に……父上ですから」

 

 

そして、優しく……まるで母親のように微笑んだ。

 

 

「父上は父上のしたいようにして下さい。理屈など考えず、己の欲のままに振る舞って欲しいのです。ナザリックの理屈や、倫理観、他人への配慮なんて気にせずに……やりたい事をやって下さい」

 

 

俺が立てた三本の指を優しく折りたたんだ。

 

 

「私にとって、それだけが望みです。父上が自分の意思を曲げてまで、ナザリックに尽くす必要はありません」

 

 

ともすれば、不敬な発言だ。

ナザリックへの反逆行為だと言ってもいい。

他の誰にも聞かせられない彼女の本音だ。

 

あまりにも理屈的ではない、感情的な言葉。

倫理観のカケラもない、願いのような感情。

 

だが、だからこそ……それが彼女の本音なのだと理解した。

 

 

「……ラズロ」

 

「ベリアル様。先程の不敬な発言、責任は如何様にも取ります。ですが、私の言葉を踏まえた上でご一考下さい」

 

 

ラズロは『父上』ではなく『ベリアル』と名前を呼んだ。

それは、それだけの意味を持った発言なのだろう。

 

例え、俺に嫌われてもいい……仕方ないと。

それでも忠言したのだ、彼女は。

 

俺は……それに応える必要がある。

創造主として、父親として。

 

 

「……すまなかった。ラズロ」

 

 

俺は謝罪の言葉を口にした。

理性的に振る舞おうと、他人を憚ろうとするあまり、俺は自分の本質を見失っていたようだ。

 

 

「ベリアル様……」

 

「いつものように父上と呼んでくれ。俺はお前が何を言おうと、何をしようと処分するつもりはない」

 

 

そして、席を立った。

 

 

「“フォーサイト”の助命をモモンガさんに嘆願してくるよ。アルシェの悲しむ顔は見たくないからな」

 

 

彼等に対する情だけでは助けようと思わなかっただろう。

だが、先日の……アルシェの顔を思い出した。

俺に対する深い愛情を感じさせる、あの顔を。

 

それに報いるべきだ。

 

他の理屈なんて知ったこっちゃない。

 

やるべき事ではない?

倫理的におかしい?

 

今更だ。

この世界に転移した時から俺は、自分勝手に振る舞っている。

 

ならば、最後まで押し通すべきだ。

 

 

「父上……」

 

 

ラズロの顔が安堵に変わった。

俺は彼女をつれて、第十階層の玉座へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉座の間にはモモンガさんが座っていた。

その背後にはアルベドも立っている。

 

モモンガさんは俺と……その後ろにいるラズロを見ても、驚かなかった。

……なるほど、何故、帝都に居る筈のラズロが帰還していたのか気になっていたが、モモンガさんの差金か。

 

そんなモモンガさんが口を開いた。

 

 

「ベリアルさん、エルヤーのチームはもう良いのか?」

 

「あぁ。独自の裁量で申し訳ないが、奴隷達はペストーニャに預けてきた。エルヤーに関しては……最終的にデミウルゴスに預けるつもりだ」

 

「なるほど。私に異論はない」

 

 

事務的な話をして……そして、俺はモニターに目を向けた。

そこにはもう誰も映って居なかった。

 

 

「アインズさん、他の請負人(ワーカー)チームはどうなったんだ?」

 

 

フォーサイトに現状を確認しようと、俺は疑問を口にした。

 

 

「ん?あぁ、既に全滅したよ。演習も終了している」

 

 

その言葉に、俺は片眉をあげた。

俺の想定より遥かに早かった。

 

 

「“フォーサイト”はどうなったんだ?」

 

「侵入直後、低階層で転移罠を踏んだ。そして、モンスターハウスで全滅した」

 

 

俺は、自分の顎に手を置いた。

明らかに原作と乖離している。

 

彼等は複数のアンデッドと対面するが、持ち前のチームワークで生き延びて、モモンガさんに──

 

いや、そうか。

アルシェが居ないからか。

 

アンデッドの軍団を対処仕切れず逃走し、そこで罠を踏んで全滅したのか。

 

俺が考え込んでいると、モモンガさんが首を傾げた。

 

 

「ベリアルさん、“フォーサイト”が何か?思うような所があるのか?」

 

「あぁ、いや……彼等を生かそうと思ったんだ。理屈じゃなくて私情だが」

 

 

そう答えると、目に見えてモモンガさんが固まった。

あれは、「あ、やっべ」って時の固まり方だ。

 

俺の心の中で不安が渦巻く。

 

 

「……既に“フォーサイト”の男達は死亡している。死体はアンデッドの生成に使おうと安置しているが」

 

 

俺は内心で、大きくため息を吐いた。

遅かった……が、まだ手遅れではない。

 

 

「……それ、譲ってくれるか?」

 

「蘇生するつもりか?」

 

「ペストーニャに依頼するつもりだ。必要なものは俺の私財から割り当てる」

 

「……そこまでして助ける価値があるのか?」

 

 

モモンガさんの言葉は、きっとモモンガさんの疑問ではない。

彼の背後に居るアルベドを納得させなければならない……という意味だろう。

 

故に俺は返答した。

 

 

「ない」

 

「……ない、だと?」

 

「ないな」

 

 

助ける意味はない。

ただの請負人(ワーカー)チームである彼等を助ける意味も、理屈もない。

 

だが──

 

 

「俺が助けたいから助ける。それじゃダメか?」

 

 

そう訊くと、モモンガさんは少し驚いた様子を見せた。

モモンガさんの背後に居るアルベドも、だ。

 

そして、モモンガさんは椅子に深く座った。

 

 

「ははは……いやいや、構わないとも」

 

 

それは、どこか嬉しそうな声色だった。

アルベドも……いや、彼女自身はどうでも良さそうだが、モモンガさんが嬉しそうなので嬉しいのか、笑顔になっている。

満面の笑みだ。

 

 

「では、ベリアルさん。“フォーサイト”の死亡者二名はペストーニャの元へ送ろう。蘇生に関してはベリアルさんの立ち合いの元、行使し……その後の対応も任せよう」

 

「すまないな、感謝するよ」

 

 

モモンガさんに感謝しつつ……しつつ……ん?

死亡者は二名?

……あぁ、男達は死んだ、って言ってたな。

という事は──

 

 

「イミーナ、いや……半森妖精(ハーフエルフ)の女は死んでいないのか?」

 

 

それは不幸中の幸いだ。

生き返らせるのも無料(ただ)じゃないしな。

 

なんて、そう、思っていたのだが──

 

 

「…………」

 

 

モモンガさんが非常に言いにくそうな顔で固まっている。

……不幸中の幸い、ではないかも知れない。

全然、不幸かも知れない。

 

少しの沈黙の後、モモンガさんが口を開いた。

 

 

「彼女に関しては、デミウルゴスの異種交配実験場に送られた。管理はデミウルゴスが行なっている……後はその、デミウルゴスに、訊いて欲しい」

 

 

俺は顔に手を当てた。

後ろでラズロも顔に手を当てていた。

 

まずい。

非常にまずい。

 

俺はモモンガさんに顔を戻した。

 

 

「すまない。急ぎの用が出来たので離席する。構わないか?」

 

「あぁ、構わない……その、すまないな?」

 

 

モモンガさんが支配者の演技(ロール)も忘れて謝罪を口にした。

 

 

「いや、これは俺の我儘だから……って、そんな事を言っている暇はないか。では、失礼する」

 

 

俺はラズロを連れて、デミウルゴスの元へと転移した。

どうにか、大変な事になっていませんように!と祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の視線の先には、イミーナが転がっていた。

 

 

「……ぁ……ぁ、あ……」

 

 

全裸で首枷だけを付け、白濁液塗れになり……石畳の上に身を投げ出して、虚な目をしている。

 

……どう見ても、手遅れだった。

 

 

俺は頭を抱えた。

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