※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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エッチなシーンはありません


#37 ナザリックのメイド達

請負人(ワーカー)関連のゴタゴタも終わり、帝都内の俺の邸宅も撤収した。

当初の目的であった金銭も稼いだし、帝国内の情報も得られた。

 

結果は成功と言える。

 

……ま、まぁ俺がエルヤーに絡みに行った所為で、想定より少し早く帰る事になったけど。

誤差だよ、誤差!

デミウルゴスも「なるほど!そういう事ですか……!流石はベリアル様!」って感心してくれてたし!

なんで感心してたのか分からんけど……怖。

 

閑話休題(それはともかく)

 

その立役者となった者達に、褒美が与えられる事となった。

モモンガさん、部下は褒めて伸ばすタイプの人だからね。

 

 

という事で、ここはナザリック地下大墳墓の第十階層、その最奥にして心臓部──玉座の間だ。

 

その玉座にはモモンガさん……ギルド長アインズ・ウール・ゴウンが座っている。

隣にはアルベド、それと俺が立っている。

 

そこに向かい合って、ラズロと、三人の一般メイド……シクスス、フォアイル、リュミエールが(こうべ)を垂れていた。

 

そんな彼女達に対して、モモンガさんが口を開いた。

 

 

「頭を上げよ」

 

 

ラズロを含む四人のメイドが恭しく頭を上げた。

彼女達にとっては神に等しい至高の存在の言葉だ。

緊張もするだろう。

 

……ラズロはまだ組織的にも上役だからいいけど、一般メイドは一般社員みたいなものだからな。

社長と直接、会話させられると考えると中々、緊張するだろう。

 

 

「帝都における情報収集、そしてベリアルさんの補助。ご苦労だった。ラズロ、シクスス、フォアイル、リュミエールよ」

 

 

名前を呼ぶのは大事だ。

一般メイドのような下っ端の名前も覚えているぞ、というアピールは当人達にとって嬉しいからな。

 

ほら、一般メイドの三人が感極まっている。

凄い敬われてるなぁ、モモンガさん。

 

 

「我が前に来る事を許可する。来たまえ」

 

 

支配者演技(ロール)をしているモモンガさんの言葉に、四人のメイドが玉座の階段を登る。

そして、玉座より斜め前に陣取っているアルベドの手前で再び膝をついた。

 

 

「お前達の素晴らしい働きを讃え、私とベリアルさんから褒美を与える」

 

 

こういう時に、モモンガさんは俺の名前を連ねて出してくれる。

支配者は自分一人じゃなくて、ベリアルもだぞーってアピールだね。

 

 

「まずはラズロ。お前はベリアルさんの長期の補助に加えて、帝国の拠点の運営、王国内の商会運用、一般メイドの指揮など、多岐に渡る活躍を見せた」

 

「はっ。お褒め頂き、光栄の至りです」

 

 

いつもに比べて、非常に真面目な顔でラズロが頷いた。

 

 

「その成果に対し、お前の望む物を与えよう。願いを口にするといい」

 

「はっ!ナザリックにこの身全てを捧げ、尽くすのが私の──

 

「良い。優れた働きに対して、褒美で報いる事が主人の為すべき事だ。過度な無欲は主人を蔑ろにする行為だと知れ」

 

「失礼致しました、アインズ様」

 

 

ラズロは、褒美に対して一度、謙遜する動きを見せた。

これはラズロ自身、謙遜する事をモモンガさんが嫌がる事を分かっての上だ。

では何故、敢えて、そんな事を口にしたのか。

 

それは背後に居る三人の一般メイド達の為である。

ラズロがもし、素直にモモンガさんの褒美を受け取っていたら……メイド達は「褒美など受け取れません」と謙遜していただろう。

結果、モモンガさんから先程と同様の言葉が出てくるのは間違いない。

 

その際、ラズロならば柔軟に受け止められるが、一般メイド達ならば……敬愛し、信仰する神であるアインズ・ウール・ゴウンからの叱責に、耐えられる訳がない。

精神に相当のダメージが入るのは想像に難くない。

 

故に、彼女達が口にしようとして謙遜の言葉を先に発し、自らが反面教師として振る舞ったのだ。

 

やっぱり面倒見が良いし、周囲がよく見えて──

 

 

「では、ベリアル様を父上と呼ぶ権利を頂けないでしょうか」

 

 

……ん?

その発言に、モモンガさんが俺を見た。

 

 

「すまないが、それは私の管轄ではない。ベリアルさん、構わないか?」

 

 

……そういえば、元々、俺のことを父上と呼ぶのは周りに他のナザリックNPCが居ない時限定だったな。

父上と呼んでいたら不敬だと何だと言われる可能性があるからと……なるほど、褒美としてその権利を貰うことで既成事実を作るという訳か。

 

俺は視線をラズロへと向けた。

 

 

「構わないとも。愛する娘の願いだ、今後は俺のことを『父上』と呼ぶがいい」

 

「はっ、有り難き幸せです。父上」

 

 

真剣な表情をしているが、若干、頬が緩んでる。

……これが回り回って、モモンガさんがパンドラズ・アクターから「ン父上!」と呼ばれるようになりそうだけど。

多分、モモンガさんは気付いてないんだろうな。

 

まぁ、パンドラズ・アクターには世話になってるし、もしそうなったら応援してやろう。

 

 

「ふむ。では、次にシクスス……フォアイル、そしてリュミエールよ。お前たちはベリアルさんのメイドとして人間社会に上手く溶け込んでいたな?現地の人間と友好的な関係を結び、様々な利益を生み出した事を私は評価している」

 

「はい!評価頂き、有り難き幸せです!」

 

 

メイド達が感極まって頭を下げた。

……実際、ナザリックのNPC達は人間種に対してエグい差別意識を持っている事が多い。

彼女達も元々は持っていたみたいだが……今はその差別的な姿勢を見せていない。

それは成長とも言える事で、モモンガさんからすれば評価に値する事なのだ。

 

曰く『成長なき組織に未来はない』。

モモンガさんが手にビジネス書籍を持ちながら熱く語っていた。

 

無論、俺も彼女達を評価してる。

安心してアルシェの妹達の子守りを任せられるし。

 

 

「では、まずシクススよ。お前の望みを口にせよ」

 

 

モモンガさんの視線が、一般メイドの一人、シクススへ移った。

 

 

「はっ。しかし、私とフォアイル、リュミエールの三人をもって連名の願いとしてもよろしいでしょうか?」

 

 

モモンガさんが目を向けるとシクススの横にいるフォアイル、リュミエールも頷いた。

 

俺は少し困惑している。

一人分では足りないと思うような、大きな望みがあるのか?

 

 

「ふむ……構わん。話してみよ」

 

「私達が欲しているのは、“あるもの”を褒賞として頂ける可能性があるか……という”質問する権利“でございます」

 

「…………」

 

 

ちら、とモモンガさんが俺を見た。

いや、こっち見ないでくれ。

俺も分かんないから。

 

モモンガさんは少し迷うような素振りをしてから、メイド達に視線を戻した。

 

 

「分かった。その”質問する権利“とやらをやろう。どんな言葉であっても罰せず、聞き流す事を約束しよう」

 

「有り難き幸せでございます」

 

 

あ、そういうことね。

不敬と捉えられるかも知れない質問だから、褒美を使うのか。

……いや、まぁ、こういう場じゃないなら褒美じゃなくても無料(ただ)で答えるけど。

それとも、ここでもなければ聞けないような腰が引ける質問って事か。

 

何だろう。

 

 

「では、今後、褒美としてベリアル様に抱いて頂く事は可能なのでしょうか?」

 

 

俺は、咽せた。

 

モモンガさんに目を向ける。

真顔で固まっている。

あー……現在進行形で精神の抑制が働きまくっているな、これ。

 

でも、そうやって無言で固まっているから、シクスス達が『や、やっぱりこんな事を聞くんじゃなかった』って涙目になってるぞ。

 

 

「……あー」

 

 

俺がカバーした方が良いのか?

いや、褒美を聞いているのはモモンガさんだ。

俺が横から口出しするのは、彼の、ナザリックの統治者としての沽券に関わるだろう。

 

少しして、モモンガさんがシクススに目線を戻した。

 

 

「その質問に関して、私は答える事が出来ない。ベリアルさんから返答を貰うとしよう」

 

 

あっ、逃げやがった!

一般メイド達の心配そうな視線が俺に集中する。

 

メチャクチャ気まずい。

 

 

「ん゛ん……その質問の返答は、ナザリックの運営に関わる。モモンガさんと相談し、後日、返答しよう……それでも良いか?」

 

 

俺も逃げた。

こんな場所で咄嗟に返せるような質問じゃないよ。

 

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 

シクスス達が一斉に頭を下げた。

 

問題の先送りに成功したが、胃が少し痛くなってきた。

こういう時だけは、モモンガさんの精神抑制が羨ましく感じる。

 

 

「今後もお前達には、ナザリックの為に働いて貰う。そして奉公には褒賞を返させて貰う。それがナザリック地下大墳墓の規則であり、お前達の忠誠に対する私達からの感謝である」

 

「「「はっ!」」」

 

 

そして、モモンガさんは内心ぐっちゃぐちゃになりながらも良い感じで〆て、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

玉座の間からメイド達が離れていくのを見て……モモンガさんは玉座に深く座り込んだ。

 

俺は話しかけられないし、アルベドもソワソワしているだけで話しかけられない。

 

少しすると、玉座の間にラズロが転移してきた。

先程までは一般メイド達と共に褒美を受け取る側に居たが、今は俺のお付きのメイド……という事だろう。

 

 

そうして、玉座の間には──

玉座に深く座って黙り込んでいるモモンガさん。

それを見て落ち着きがなくなっているアルベド。

どうしたら良いか分からなくて黙ってる俺。

この状況に困惑しているラズロ。

 

この四人となった。

めちゃくちゃ気まずい。

 

 

「……モモンガさん?」

 

 

取り敢えず、口を開いたのは俺だ。

この気まずい空気を打破しなければならない。

 

 

「ベリアルさん。先程の……一般メイド達の質問については、どう答えるつもりですか?というかどうしますか?」

 

 

アインズ様モードから、モモンガさんモードに戻っている。

アルベドが後ろで妙にニコニコしているが、気にしない方が良いだろう。

 

アルベドは『モモンガを愛している』。

ナザリック地下大墳墓の主であるアインズ・ウール・ゴウンではなく、『モモンガを愛している』のだ。

こうして、素のモモンガさんの方が好きなのだ。

 

 

「あー……そうだな。まず、俺は褒美で女を抱くとかそういうのは良くないと思うが」

 

「俺もそう思います」

 

 

うんうん、とモモンガさんが頷いた。

 

女を強姦したり、洗脳したり、寝取ったり、囲っていたりするが、俺は純愛派なのだ。

いや、本当に。

 

だから、愛する部下を褒賞で抱くとかは有りあえない。

 

 

「そもそも、ギルドメンバーの子だよな。手を出すのは、どうなんだ?」

 

「あー、俺も分かります」

 

 

なんて話していたら──

 

 

「恐れ入りますが、アインズ様。発言の許可を頂いてもよろしいでしょうか」

 

 

アルベドが笑顔で話に入って……え、あれ、笑顔か?

凄まじい圧を感じる。

 

 

「う、うむ。許可するぞ……アルベド」

 

 

モモンガさんも感じ取っているようで、少し引いてる。

 

 

「ありがとうございます。ナザリックの配下一同、至高の御方に創造された身でありますが、独立した個人という認識です」

 

「……ふむ?」

 

「その身、その心で慕情を抱き、恋慕う事は創造主の御心とは異なる各々の意思として、尊重して頂ければと考えております」

 

「……ほう」

 

 

ほう、じゃないよ。

モモンガさん、アルベドが何言ってるか、あんまり分かってないでしょ。

俺も何が言いたいのか、よく分かってないけど。

 

 

「つまり、私達を抱く事を、御身は何ら罪悪感など抱く必要はないのです。各々の意思であり願いでありますから……遠慮も不要でございます」

 

 

……あ、分かった。

俺がギルドメンバーの子供だからなーってメイドを抱かない事に決めたら、アルベドもモモンガさんに抱かれなくなると。

そりゃメチャクチャ否定するわ。

 

 

「そして、ベリアル様」

 

 

あ、俺に視線移った。

怖い。

 

 

「メイド達は御身を慕っています。しかし、それだけではなく……御身は外部の人間種を抱いていますが、ナザリックの配下を抱いていません。その事から、ベリアル様はナザリックから離れてしまうのではないか……と危惧している者も居ます」

 

「い、いや……俺はナザリックから離れるつもりはないぞ?」

 

「私もそう認識しております。ですが、そのように考えてしまう者も居るのです。自身を創造した御方がお隠れになり、それが元で不安となっている者も多いのです」

 

「……なるほど」

 

 

気持ちは分かるな。

確かに言われてみれば、そうか。

慕ってくれているにも関わらず拒否して、外部の女を抱いていれば……拒絶されたと考えるだろう。

これは俺が悪いな。

 

 

そして、アルベドが頭を下げた。

 

 

「アインズ様、ベリアル様。数々の不敬な発言、申し訳ございませんでした。不快であれば、この首を切って献上する事も考えております」

 

 

アルベドの言葉にモモンガさんが片手をあげた。

 

 

「良い、許す。寧ろ、お前達の心に思い至らなかった私を許して欲しい」

 

「いえ、滅相もございません!」

 

 

アルベドが頭を下げて、モモンガさんが許す。

この景色(シーン)、こっち来てからアホほど見た気がするな。

 

そうして、モモンガさんが俺に視線を戻した。

 

 

「では、先程の話を踏まえて……まず、ベリアルさんは、先程の褒賞で抱いて貰う権を与える事に関してどう思いますか?」

 

「いや、それはダメだな。褒美で抱く……となると、褒美がなくとも抱いてる女との差が大きくなる。褒美がなくとも抱くべきだと思うが」

 

「……それベリアルさんが好き勝手に抱きたいから言ってる訳じゃないですよね?」

 

「俺がそんな事をするように見えるか?」

 

 

俺がそう言うと、モモンガさんが頷いた。

見えるらしい。

 

……ちら、とラズロを見る。

ラズロも頷いた。

 

……藁にもすがる思いでアルベドを見た。

遠慮がちだったが、アルベドも頷いた。

 

どうやら、俺は女であれば見境なく抱きまくるスケベ野郎だと思われているらしい。

 

 

「まぁ、ベリアルさんの言う事も分かるので良いでしょう。褒賞で抱く抱かないってのはナシにします」

 

「……そうしてくれ」

 

 

ちょっと落ち込んだ。

節操がない自覚はあるが、ナザリックの配下達を性愛関係なく愛している自覚もあるんだが。

 

 

「少し話を変えますが、ベリアルさんは先の三人について抱きたいって思いますか?」

 

「思う」

 

 

口が勝手に即答した。

 

モモンガさんが『ほらやっぱり〜』って顔してる。

 

 

だってさぁ──

 

 

シクススは正統派の美少女メイドだ。

煌びやかな髪を持ち、お淑やかさの中に溌剌とした物がある。

そして、胸が大きい。

 

フォアイルは活発な印象がある短髪の美少女メイドだ。

スカートも短めであり、タイツを纏った美脚が眩しい。

そして、胸が大きい。

 

リュミエールは眼鏡をかけた清楚な美少女メイドだ。

髪色は金髪ではあるが、とても艶やかで金糸のように美しい。

そして、胸が大きい。

 

三人とも容姿、内面、共に可愛らしい美少女メイドなのだ。

しかも、胸が大きい。

 

 

──俺は悪くない。

この身体が、性欲が、チンポが悪い。

 

 

「……まぁ、ベリアルさんがそういう人……というか淫魔(インキュバス)なのは知ってましたけどね。そろそろ、俺、ナザリック内でも嫉妬マスク被って良いですか?」

 

「やめてくれ……」

 

 

モモンガさんが骸骨顔なのに、ジトっとした目を向けてくる。

俺は気まずくなって、耳の後ろを掻いた。

 

 

 

 

「では、方針を決めましょう」

 

 

 

 

その後、ナザリック内部からの後宮と、ナザリック外部からの後宮の二つを作る事が決まった。

 

同じ後宮内にナザリックの配下と、外部の人間……クレマンティーヌとかアルシェとかを入れると、同一部署内でマウント合戦が発生する事が考慮されたのだ。

異形種のNPCは人間種を見下している事が多いしな……なら、いっそ、後宮を分けてしまおうという発想だ。

 

ちなみにラズロの案を、モモンガさんがまとめた形だ。

 

 

 

「こんな所ですかね。ベリアルさんに異論はありますか?」

 

「いや、ない……」

 

「でしょうね。女の子がいっぱい抱けるようになってラッキーって思ってますもんね」

 

「いや、そんな事は……思って……ないが?」

 

「嘘でも即座に否定して下さいよ」

 

 

モモンガさんが呆れた顔をした。

 

くそ、アンデッドだから性欲湧かなくなって、俺に嫉妬してるんだな。

……いや、それはメチャクチャ可哀想だわ。

ごめん。

 

どうにか、モモンガさんにも性行為(セックス)させてやりたい。

チンポを生やす魔法か、魔法道具(マジックアイテム)をこの世界で見つけなければ……!

 

俺は深く、そう決心した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

後日、とある一室にシクスス、フォアイル、リュミエールは集められていた。

呼び出したのはベリアル、ということになっている。

まだ呼び出した本人の姿はなく、三人の一般メイドは戦々恐々していた。

 

先日の褒美を使った質問について、叱られるのではないかという恐怖に満ちていた。

 

 

「ど、どうしよー、シクスス」

 

 

髪を短く切り揃えた活発そうなメイドであるフォアイルが、シクススに視線を向けた。

 

 

「全員で相談して決めたお願いだから……そんな、不安そうな顔しないでよ」

 

 

シクススが首を振る。

 

 

「アインズ様は『どんな言葉でも罰しない』と仰られていました。叱られる事はない……と思いますが」

 

 

眼鏡を掛けた清楚な面持ちのリュミエールが、視線を逸らした。

 

そうして三人、互いに不安を感じていると……室内にラズロが転移してきた。

即座に三人は膝をついた。

 

一般メイドと、至高の御方の専属メイド。

どちらが上という立場はないが、彼女達の心情としてはラズロが上なのだ。

 

 

ラズロは三人のメイドを見て、笑みを浮かべた。

 

 

「そこまで緊張しなくて大丈夫ですよ。悪い話ではありませんので」

 

 

そう口にしたラズロに、メイド達は安堵の息を吐いた。

 

そうして少しして、部屋にベリアルが転移した。

シクスス、フォアイル、リュミエールは顔を合わせて、再び膝をついた。

 

そんなメイド達を見て、ベリアルは目を瞬いた。

 

 

「俺相手に、そんな硬くならなくて良い。取り敢えず、そこの椅子にでも座ってくれ」

 

「はい」

 

「はいっ!」

 

「畏まりました」

 

 

三者三様の返事をして、メイド達は横長の椅子に座った。

そして、その向かいの席にベリアルが座った。

 

 

「今日、お前達を呼んだのは他でもない、先日の質問についての返答が決まったからだ」

 

「……はいっ」

 

 

メイド達は顔を強張らせた。

 

 

「結論から言えば、褒美としてお前達を抱く事は却下となった」

 

 

そして、意気消沈した。

顔に出してはならないという認識はあったが、それでも堪え切れず眉尻を下げた。

 

 

「代わりに、ナザリック内に後宮をもう一つ設ける事となった」

 

 

その言葉に、シクススは目を瞬いた。

フォアイルは困惑した。

リュミエールは顔を上げた。

 

 

「既存の後宮はナザリック外部の側室を迎える『外部後宮』として扱い、新規の後宮はナザリック内部の側室を迎えるための『内部後宮』とする」

 

 

三人は視線を通わせた。

自分達が抱かれる事はなくなったが、これでナザリックのメイド達が側室になれる事を保証したのだ。

願いは叶わなかったが、ナザリックのために貢献できたという達成感を感じて──

 

 

「そこでシクスス、フォアイル、リュミエール。お前達は俺の側室になってみる気はないか?」

 

 

メイド達が全員、勢いよく顔を上げ、ベリアルに目を向けた。

 

 

「勿論、断ってくれてもいい。断ったからといって冷遇する事はないと──

 

「「「いえ!有り難く、務めさせて頂きます!」」」

 

「あ、うん」

 

 

あまりの勢いに、ベリアルは真顔で頷いた。

ちょっと引いているように見える。

 

 

「では、シクスス、フォアイル、リュミエールの三名を俺の側室として任命する」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます!」

 

「有り難き幸せです!」

 

 

満面の笑みを浮かべるメイド達に、ベリアルは頷いた。

そして、虚空から指輪を三つ取り出した。

 

 

「これは俺の側室である事を示す魔法道具(マジックアイテム)だ。まぁ……<伝言(メッセージ)>を俺とだけ送受信できる、大した事ないアイテムだが」

 

 

シクススは目を瞬いた。

既に側室となっているクレマンティーヌが付けている指輪と同じ形状をしていたからだ。

 

 

「これはお前達に──

 

「う、受け取れません!」

 

 

シクススの反応に、フォアイルとリュミエールがギョッとした顔をした。

対してベリアルは不思議そうな顔をしていた。

 

 

「ん?何故だ?」

 

「それは……正妻であるクレマンティーヌ様が大切にされている物と同様の形状に見えます。同じ物をメイドが身に付けては、悲しませてしまうかも知れません」

 

「……なるほど、女心という奴か」

 

 

ベリアルは少し悩ましげな顔をした。

そして、シクススに視線を戻した。

 

 

「シクススの言い分は恐らく正しい。クレマンティーヌが悲しむかもしれない……という懸念についても分かった。これとは形状の違う指輪を出そう」

 

「ありがとうございます……出過ぎた発言をして、申し訳ありませんでした」

 

「いや、いい。お前達はメイドである前に側室だからな。不敬だなんて思わないし……なんなら、我儘を言ってもいいんだぞ?」

 

 

そう言いながら、ベリアルは別の、装飾が一切付いていない銀色の指輪を三つ取り出し、シクスス、フォアイル、リュミエールに渡した。

 

 

「……ありがとうございます」

 

「おぉ……」

 

「…………」

 

 

三者三様の反応をしつつ、自身の指にはめた。

シクススは笑みを浮かべ、フォアイルはまじまじと確認し、リュミエールは感極まって震えていた。

 

 

「側室の細かい規則については、ラズロが説明するが……何か俺に直接聞きたい事はあるか?」

 

 

そうベリアルが問いかけると、三人はハッとしたような顔をして……フォアイルが恐る恐るといった様子で手を挙げた。

 

 

「し、質問よろしいでしょうか?」

 

「構わないぞ、フォアイル。気負わなくていい」

 

 

ベリアルの言葉に、フォアイルはこくこくと頷いた。

その元気な様子にベリアルは頬を緩めて──

 

 

「最初の、よ、夜伽はいつごろ行えばよろしいのでしょうか!?」

 

 

きゅっ、と口を窄めた。

 

 

「……あ、あー、そうだな。お前達はいつ頃がいい?」

 

 

その言葉に、三人は顔を合わせた。

 

 

「早ければ早いほど、嬉しいです……」

 

「今晩でも構いませんっ」

 

「ベリアル様の望むままに」

 

 

その言葉にベリアルは少しぎこちない笑みを浮かべた。

積極性のある様子は嬉しかったが、それはそれとして今日明日とは思っていなかったのだ。

 

 

「すまないが、先約があってな……三日後で構わないか?」

 

「はい!有り難き幸せです!」

 

 

メイド達は色めきたっていた。

ナザリックの至高の御方に抱いていただけるなんて、と考えていた。

よく妄想していた、ベリアルに抱かれるメイドの私……が実現しそうなのだ。

興奮するなと言っても無駄だろう。

 

そんな夢見心地なメイド達に、ベリアルが口を開いた。

 

 

 

「それで、最初は誰からがいい?順は任せるが」

 

 

 

その言葉にメイドは三人で顔を合わせた。

至高の御方に抱いて頂ける権利……早ければ早いほど嬉しい。

順番も他の同僚に比べて早い方がいい。

しかし、当事者であるベリアルの前で争う事は出来ない。

何より、三人は仲の良い仲間であった。

 

譲りたくはないが、争いたくもない。

 

困ってしまったシクススとフォアイルを他所に、リュミエールが眼鏡を指で上げた。

 

 

「ベリアル様……でしたら、三人同時、というのは如何でしょうか?」

 

 

シクススとフォアイルは目を見開いた。

彼女は天才だ、と。

 

 

「4Pか?構わない……いや、寧ろ、そっちの方がいいか。良い案だ、リュミエール」

 

「お褒め頂き、有り難き幸せでございます」

 

 

シクススは褒められたリュミエールに嫉妬する事なく、感心していた。

自身も何か関心されるような事ができれば、と思った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

ベリアルが退室した後、シクスス、フォアイル、リュミエールは食堂へ移動し、会議を始めた。

第一回、ナザリック内部後宮会議である。

 

食堂は時間外となっており、人影はない。

メイド達が使える空き部屋もなく、ここしか集まる場所がなかったのだ。

 

まず、シクススが口を開いた。

 

 

「夜伽をするのは良いんだけど……その前に何か用意しておく事ってあるのかな?私、分からないけど……」

 

 

そこにフォアイルが自信満々な笑みを浮かべた。

 

 

「知ってるよー。私ってさ、そういう経験、豊富だからねー」

 

 

フォアイルの言葉にリュミエールが呆れたような顔をした。

 

 

「分かりやすい嘘を吐くのはやめなさい、フォアイル」

 

 

リュミエールの嗜めるような言葉に、フォアイルは気まずそうな顔をした。

 

 

「リュミエールも分かってない癖に」

 

「当然です。主人のために純潔を守るのもメイドの仕事ですから」

 

「まぁまぁ、二人とも。そんな事より、どうすればいいか考えないと」

 

 

三人は腕を組んで唸った。

 

まず、リュミエールが案を出した。

 

 

「ナザリックの書庫に、メイドの夜伽について詳しく書かれた書物が存在すると聞いた事があります」

 

「そうなの?」

 

「はい。インクリメントから教えていただいたのですが、偉大なるペロロンチーノ様が寄贈した『愛する純朴メイドと発情えっち〜らぶらぶテンプテーション〜』という本があります」

 

「ペロロンチーノ様の!?」

 

 

フォアイルが驚いたような声をあげた。

 

 

「そこには主人とメイドが愛し合う様子が描かれているそうです」

 

「へーっ、その本を読めば完璧だね!」

 

 

ここにベリアルかアインズが居れば、頭を抱えていたであろう会話を三人は繰り広げていた。

 

関心するフォアイルとは対照的に、シクススは少し悩ましげな顔をした。

 

 

「どうしましたか?シクスス」

 

「私、参考にするのは良いと思うけど、鵜呑みにするのはダメだと思う」

 

「えー?なんで?ペロロンチーノ様の本なのに?」

 

「ペロロンチーノ様の本だから、だよ」

 

 

シクススの言葉に、リュミエールは目を細めた。

 

 

「それは不敬なのでは?」

 

「そういう意味じゃなくて……ベリアル様とペロロンチーノ様は種族が違うよね?性的嗜好が同じじゃないかもって、思わない?」

 

「……それは確かにそうですね」

 

 

リュミエールが納得して頷いた。

そして、視線をシクススへ戻した。

 

 

「では、シクスス。どうすべきだと思いますか?」

 

「……私は経験者に聞くのが良いと思う」

 

 

シクススの言葉に、フォアイルとリュミエールが目を見開いた。

 

 

「つまり、クレマンティーヌ様か、アルシェ様に訊くという事ですか?」

 

「うん、そうだよ。フォアイルはどう思う?」

 

「え?私も賛成かなー……万が一にも失敗した方が怖いし」

 

「確かに……」

 

 

三人は想像した。

愛する主人との夜伽の場で失態を犯してしまい、幻滅され……二度と、同衾に誘われなくなる状況を。

急激に胃が痛くなるのを感じた。

 

フォアイルとリュミエールが頷いたのを確認して、シクススは片手を上げた。

 

 

「では、書庫でペロロンチーノ様の本を回収し、その後、クレマンティーヌ様……は外出中なので、アルシェ様に相談を──

 

「なーにしてるっすかー?」

 

 

突然、掛けられた声に三人のメイドは飛び上がって驚いた。

 

 

「ル、ルプスレギナさん!?」

 

「にっしっし、良いリアクション頂きっす!」

 

 

そこに居たのはナザリックの戦闘メイド、プレアデスの一人、ルプスレギナだった。

三人は机を囲うように座っていたにも関わらず、彼女の存在に気づく事が出来なかった。

これはルプスレギナがその隠密能力を”無駄に“活かした結果である。

 

 

「村で実験した甲斐があったっす。三人とも良い反応してたっす!」

 

 

ルプスレギナの立場は一般メイドより上ではあるが、彼女のその性格上、気楽に友達のように振る舞っていた。

 

 

「村、ですか……ルプスレギナさんも、確かナザリックの外でお仕事をしてらっしゃるんですよね?」

 

「そうっす。人間の村でのお仕事なんすけど……ちょっと退屈っすけどね。なんかこう、急にデカいドラゴンとか来て、パーッと蹂躙されたら面白いのに」

 

 

ルプスレギナの言葉に、シクススはギョッとした。

 

 

「え、えっと……その村って、アインズ様から監視するように言われているのですよね?」

 

「そうっすよ。アインズ様は価値があるって仰るけど、いまいちピンとこないっすね」

 

 

三人のメイドは顔を合わせた。

帝都でアルシェが来た後、上司であるラズロに三時間説教された事を思い出したのだ。

 

 

「ル、ルプスレギナさん」

 

「ん?なんすか?」

 

「恐らくなのですが……アインズ様は、ルプスレギナさんに人間達を守って欲しいのだと思いますよ?」

 

「……どういう意味っすか?」

 

 

ルプスレギナの顔が一転し、真剣な表情になった。

 

 

「私達はベリアル様とナザリックの外部で仕事をしていたのですが……人間種に対して攻撃的な態度を取る事は禁止されていました」

 

「ふむふむ」

 

「本心はどうであれ、至高の御方がその仕事を割り振った意味を理解し、行動すべきだと」

 

 

当初、ナザリック外部から来た人間に対して三人は警戒をしていた。

愛する至高の御方を誑かす下等生物と認識していたのだ。

しかし、ラズロから説教を受け、形だけでも、と友好的な行動を取り始めた。

結果、その外部から来た人間も、自身と同様に至高なる御方を信仰し、下僕となれる才があるのだと気付いた。

 

そうなれば話は簡単だ。

人間は至高なる御方を悦ばせる事ができる生き物だと考えれば、親しくする事に抵抗がなくなった。

未だ、人間という種族に対して差別意識は残っているが、種族ではなく個人として判断できるように改善されたのだ。

 

そして、それをナザリックの主達は望んでいたのだと知った。

褒美を貰う際、成果の中に『人間社会に溶け込み』『友好的に振る舞った』事を含んでいたからだ。

 

 

その事をルプスレギナに伝えると、目を見開いた。

 

 

「……なるほど、タメになる話っす。カルネ村に対する考え方をちょっと改めてみるっすよ」

 

 

ルプスレギナがそう頷き、三人のメイドは安堵した。

彼女達にとってルプスレギナは目上ではあるが、尊敬できる親しい先輩のような存在だからだ。

もし、彼女がアインズに怒られたら……と考えれば、胸が痛むのだ。

 

 

「……で、ちょっと話は戻るっすけど、さっきは何話してたっすか?随分と楽しそうな話っすね?」

 

 

ルプスレギナの言葉に、メイド達は顔を合わせた。

後宮や側室について、ルプスレギナは知らないようである。

そんな彼女に勝手に話してもいいのか、と。

 

シクススは少し考えて、口止めされている訳でもないので……ルプスレギナに話す事にした。

 

 

「はい、ベリアル様がナザリック内部の後宮を作られたんです。ナザリックの配下も側室になれるんですよ」

 

「……マジっすか?」

 

「マジです」

 

 

ルプスレギナの顔が一瞬真顔になり、そして……満面の笑みを浮かべた。

 

 

「それって、三人が貰う予定だった褒美のお陰っすか?」

 

「え、あ……はい。正確には違いますけど、そうです」

 

 

シクススが頷くと、ルプスレギナは顔を紅潮させ、シクススの手を握った。

 

 

「ナイス英断、ナイス行動っす!三人の名前は英雄として未来永劫、ナザリックメイドの胸に刻まれる事となるっす!」

 

「あ、あはは……」

 

 

ついでにフォアイルと、リュミエールの手も握って振り回した。

 

そこで、ルプスレギナは何かに気付き手を止めた。

 

 

「む?三人ともお揃いの指輪をつけてるっすね?ペアルックっすか?」

 

「えっと、これは……」

 

「ベリアル様の側室になると貰えるんです」

 

 

フォアイルの言葉に、ルプスレギナが硬直した。

シクススが顔を見ると……目がぐるぐると回っていた。

 

 

「それマジっすか?」

 

「マジです」

 

 

ルプスレギナはメイド服の中から、自身のハンカチを取り出し噛みついた。

 

 

「羨ま゛しいっす〜!どうやったら側室になれるっすか!?独占なんてズルしないっすよね?教えて欲しいっす!教えて教えて!教えなさい。あ、教えてっす」

 

 

一瞬、ルプスレギナから尋常じゃない威圧を感じたが、シクススは苦笑するだけに留めた。

自身が逆の立場ならば、同じように動揺していただろうと思えたからだ。

 

 

「私達は成果に対する褒美の延長線として頂きましたが……」

 

「むむむっ、なるほどっす!つまり、お仕事を頑張って、ご褒美として側室にして貰えば良いっすね!?」

 

 

三人はベリアルの言葉を思い出した。

褒美として抱くのはナシだと言っていた。

つまり、ルプスレギナが成果を上げたとして側室になれる保証はないのだ。

 

 

「え、いや、それは──

 

「うおーっ!燃えてきたっす!こうしてはいられないっす!カルネ村に戻って、トラブルがないか見つけてくるっす!トラブルがなかったら起こしても……いや、それはバレたら怒られるからやらない方がいいっすね!」

 

 

凄い勢いで捲し立て、目に炎を燃やしたルプスレギナが席から立ち上がった。

 

 

「あ、あの──

 

「とにかく、三人とも情報感謝っす!ここは失礼するっす!あでぃおっす!」

 

「あのー……もう行っちゃった」

 

 

シクススが情報を訂正する間もなく、ルプスレギナは食堂を後にした。

 

食堂には嵐が通った後の、静けさのようなものしか残らなかった。

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