※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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#45 レイナースの呪い

メイドを全員抱き潰した翌日、俺はラズロに叱られてしまった。

<性奴隷作成>スキルによる洗脳……というか好感度最大化だけなら、別に一度の性行為で良かったのだ。

実際、メイド達は元々、俺に対して僅かに好意を抱いていたようで一発でスキルによって洗脳できたし。

まぁ、<性奴隷作成>スキルを発動する前に堕ちてた奴が大半だったが。

 

チョロすぎないか?

ちょっと心配なんだが。

 

それはともかく、一度で性奴隷化に成功しているのに、何故俺は二度も三度も抱いたのか?

これは非常に高度な俺の頭脳により弾き出された知略だ。

 

それは、その……えっと……あの……。

気持ち良かったから……はい。

 

だってさ、俺のことを好き好き♡言ってくれるメイド達に囲まれたらさ、仕方ないだろ?

 

あ、いや、反省はしている。

反省してるから、ラズロ。

すまなかった。

いや、本当に。

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

そんな訳で、屋敷のメイド達、全員の性奴隷化が一夜にして完了した。

彼女達も復活し、ラズロがようやくワンオペから解放された中……約束していた客人がやって来た。

 

 

「今日はよろしくお願いしますわ、ベリアル様」

 

 

そう、顔の右半分を髪で隠した目隠れ女騎士、レイナースである。

その右半分の下は呪われていてぐちゃぐちゃなのだが。

 

まぁ、顔が呪われていようと可愛い女の子の客人だ。

俺はちょっとテンション上がっていた。

 

だってさぁ、生まれも良いからか所作は綺麗だし、叩き上げの騎士だからか意思も強い。

 

気の強さと、お淑やかさ、自身の逆境にも抗おうとする意思……本当に可愛い──

 

いや、いやいや。

レイナースはそういう目的で関係を持った相手ではない。

彼女には恩を売って、帝国の内情を教えて貰うスパイになって貰うつもりだ。

ナザリックに持ち帰ったり、側室にしたりだとか、そういう目的ではない。

 

うむ。

 

 

「……ベリアル様?私の顔が……どうかなさいましたか?」

 

 

おっと、ジロジロと見てしまっていた。

 

 

「いや、すまない。レイナースがあまりにも美しいから見惚れてしまっていたよ」

 

 

これは本音だ。

まぁ冗談っぽく言う事ではぐらかそうって訳なのだが……レイナースの顔が強張った。

 

 

「……皮肉ですか?」

 

 

顔に呪いを負ってる女に言う言葉じゃなかったか。

そりゃそうだ。

 

内心慌てて、だが外面は落ち着いたようで口を開く。

 

 

「皮肉なんかじゃないさ。本心からレイナースの事を綺麗だと思っているよ……すまない、気に障ったなら謝るよ」

 

「いえ……構いません。ええ、ですが、ベリアル様は私の事を馬鹿にするような人ではありませんもの。褒め言葉は素直に受け取っておきましょう」

 

 

レイナースは息を深く吐いて、顔を逸らした。

呆れられてしまったようだ。

 

ちら、とラズロの方を見ると、ため息を吐かれた。

客人の前なのに。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

レイナースには、ベリアルと何度か顔を合わせて分かった事がある。

顔に付与された呪いについて、帝国内の人間とは見方が違うのだ。

 

レイナースの顔を見て、普通の男は二通りの反応を示す。

『痛ましいものを見るような目で憐れむ』か、『醜いものを見て嫌悪する』か。

ベリアルは、その二つではなかった。

 

普通の女を見るような目……レイナースを、呪われた騎士ではなく、ただの女を見るような目で見ていた。

帝国四騎士という立場も、顔に呪いをうけた女という見た目も、全てを無視して……普通の女のように扱っている。

 

それがレイナースにとって嬉しい事かは分からない。

ただ、不快ではない事は確かだった。

 

 

「まず、そこのベッドに座ってくれないか?」

 

 

レイナースはベリアルに促されるまま、ベッドに座る。

 

ベッドに座ると、ベリアルは側にあった漆喰の箱から瓶を取り出した。

そこには紫色の液体が入っていた。

 

 

「それは何でしょうか?」

 

「ん?治癒薬(ポーション)だな、ちょっと上等の」

 

 

レイナースは困惑した。

治癒薬(ポーション)とは普通、青色だ。

しかし、ベリアルの持っているポーションは紫色だった。

 

困惑しつつも、ナザリックの財力を思い出し……自身の常識外に存在する凄まじい治癒薬(ポーション)なのではないかと、納得した。

 

 

「じゃあ、これを顔に塗るんだが……レイナース、顔に触れても良いか?」

 

「触れるのですか?」

 

 

レイナースは再び困惑した。

治癒薬(ポーション)を顔に塗る事に、ではない。

この呪いによって醜く変異してしまった顔に、何の躊躇いもなく触れようとしている事に困惑したのだ。

 

 

「ん?あぁ、すまないな……顔を触れられるのは嫌か?」

 

「……いえ、構いませんわ。お願い出来ますか?」

 

 

確かに、興味本位で触れられるのは嫌だ。

醜い顔を嘲るような真似をされるのは嫌だ。

だがしかし、目の前の男はそのような負の感情で触れようとしている訳ではない。

 

 

「では、えーっと……失礼」

 

 

ベリアルは治癒薬(ポーション)の瓶を開けて、手に乗せて……レイナースの顔に触れた。

 

 

「……っ」

 

 

こそばゆい感触だ。

本当に久しぶりに、自分以外の人間の手が触れた。

崩れた顔が、その手の熱い感触を感じる。

 

 

「すまない、痛かったら言ってくれ」

 

「い、いえ、大丈夫ですわ」

 

 

顔に手が触れている状況。

その状況ならば自然と、互いの顔が近くなる。

 

ベリアルの顔を見て、レイナースは思わず心臓を高鳴らせた。

この顔になってから、男に関しての興味を失っていた。

信じていた婚約者に捨てられ、どんな男にも嫌悪感を向けられていた。

だから、そんな物は全て捨てたつもりだった。

 

この顔の呪いが解けるまでは、そんな想いを持つまいと考えていた。

だというのに、レイナースは……心臓を高鳴らせてしまった。

 

 

「……どうだ?レイナース、変化は感じるか?」

 

「え、あ……いえ、その……」

 

 

声を掛けられ、現実に引き戻される。

レイナースは自身の顔の右半分、その状態を……感じ取る。

 

 

「普段感じている痛みや、痒みは少し引いていますわ。ですが……」

 

「あぁ、根本的な解決にはなっていないようだな」

 

 

顔の表面上、その呪いによって溶け爛れたような右半分は改善していないのだろう。

治癒薬(ポーション)によって呪いによる作用が治っても、呪い自体が解決していないのであれば意味がないという事だ。

 

レイナースは落胆した。

ナザリックの宝物でも、自身の呪いは解けないのかと──

 

 

「さて、次は……巻物(スクロール)だな」

 

「え?」

 

 

ベリアルは漆喰の箱から、何やら高品質な紙で作られた巻物を取り出した。

 

 

「ん?どうかしたか?レイナース」

 

「い、いえ……」

 

 

あの高級品らしき治癒薬(ポーション)以外にも、用意してくれていたのだ。

レイナースには返せる物がないというのに……この男は、呪いを解く為に手を惜しまずにいてくれている。

 

胸の奥が熱くなるような感覚があった。

 

 

「じゃあ使うぞ?<解呪(ディスペル・マジック)>」

 

 

巻物(スクロール)が男の手の中で燃えた。

その瞬間、光が放たれてレイナースの顔に移る。

巻物(スクロール)に込められていた魔法が発動したのだ。

 

だが、しかし──

 

 

「……思っていたよりも手強いな」

 

 

レイナースの顔の状態は何も変わらなかった。

依然、崩れた顔からは膿を滲み出ていた。

 

 

「……この世界の呪いはユグドラシル産のモンスターの物とは違うのか?単純な魔法系統の呪いではなく、本当の意味での呪いか……?物理現象ならば治癒薬(ポーション)で対象となる筈……」

 

 

ベリアルが何やら難しそうな顔で考え込んでいる。

聞き覚えのない単語が幾つか聞こえたが、魔法系統の専門用語だろうとレイナースは思った。

宮廷魔術師であるフールーダ・パラダインならまだしも、ただの騎士である自分には分からないのだと諦めた。

 

 

「……ありがとうございました、ベリアル様」

 

 

そして、レイナースは礼を口にした。

 

 

「……ん?」

 

「踏ん切りが付きましたわ。貴方様でもこの呪いを解けないのであれば……私も、諦めが付きますから。これからの振る舞いを考える事が出来ますわ」

 

 

レイナースは諦めていた。

自身の想像も付かない超文明を持つナザリックですら呪いを解けないであれば、この呪いを解く事は不可能なのだと。

ならば、次に出来る事は……この呪いを持った上で、どう生きるかを考える事だ。

 

呪いが解けたらしたかった事を妄想するのはやめて……やめて……諦めて……現実を──

 

 

「待ってくれ、レイナース。そんな事を言うな」

 

「ですが……」

 

「まだ諦めないでくれ。俺はまだ諦めていないからな」

 

 

ベリアルは漆喰の箱ではなく、虚空に手を伸ばし何かを取り出した。

それは瓶、治癒薬(ポーション)だ。

しかし、青色でも、紫色でもなく、赤色だった。

 

瓶の形状から見ても、異様だった。

その瓶の形状だけで、財宝と呼べるような繊細で豪華な作りだった。

 

 

「お待ち下さい。そこまでなされても……私には何も返せる物だとありませんわ」

 

「これは俺の意地だ。俺が好きにやっている事だからな……恩を感じなくても良い」

 

 

嘘だ。

レイナースには理解できる。

ただの意地で、そんな掛け替えのないアイテムを使える訳がない。

だから、この言葉はきっとレイナースに気を病んで欲しくないと思っての一言なのだ。

 

 

「もう少し時間をくれ。続きをしよう」

 

 

男の言葉にレイナースは息を呑み……頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

レイナースの呪い、思ったよりも手強いんだが?

 

最初は、転移後世界産のアイテムで何とかしようと思っていた。

ユグドラシル産のアイテムを使うのは勿体無いし。

 

ダメなら諦めるつもりだったんだが──

 

俺、泣いてる女の子に弱いんだよな。

目から涙を流していなくても、レイナースが泣いている事は分かった。

だからこそ、俺も諦められなくなった。

 

モモンガさんにも『転移後世界産のアイテムで治すけど、無理だったら諦めるよ』と言っていたのに……ユグドラシル産の、この世界では作れない治癒薬(ポーション)まで出しちゃったし。

 

後で怒られるだろうな。

ラズロにも、モモンガさんにも。

 

でも、まぁ……これで治るなら良いだろ。

治癒薬(ポーション)はまだ何個もあるし。

新しく作れないとはいえ、数に余裕はあるから。

 

 

 

 

 

 

だから──

 

俺はユグドラシル産のポーションを使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

全然、無理だわ。

治らない。

未だにレイナースの顔はグズグズのグチャグチャだ。

 

 

「…………」

 

 

うわ、めっちゃ気まずい。

あんなにカッコつけたのに、全然治らない。

かといって、アイテムボックスにこれ以上のアイテムはない。

手詰まりだ。

 

 

「……ベリアル様」

 

 

レイナースが心配そうな顔で、俺を見ている。

う、うぐ……い、いや、まだだ。

 

 

「レイナース、明日もここに来てくれるか?」

 

「明日も、ですか?」

 

「そうだ。それまでにナザリックから魔法道具(マジックアイテム)やらを持ってくる。だから、来て欲しい」

 

「構いませんわ……ですが、その、よろしいので?」

 

 

よろしくはない。

絶対、怒られる。

 

モモンガさんは絶対嫌がる。

現地のどうでも良い人間に、ナザリックの財宝を使わせたくないと思うだろう。

 

だが、俺が誠心誠意頼み込めば納得してくれる。

あ、いや、納得というより渋々頷いてくれるが正解か。

 

 

「構わないとも。色々と手間を掛けて申し訳ないな」

 

「いえっ、そんな事はありませんわ……!ベリアル様は良くして下さっていますから」

 

 

内心、めちゃくちゃガッカリしてるだろうに、こうして振る舞えるレイナースは偉い。

偉過ぎる。

 

ちら、と視線を外に向けると空は茜色を過ぎて暗くなり始めていた。

 

 

「レイナース。詫びと言っては何だが、夕食を食べていかないか?」

 

 

流石に罪悪感がヤバい。

カッコつけて全然、ダメだったから……こう、良いところを見せたい欲が出てくる。

可愛い女の子には『凄い人だな』って思って貰いたいじゃん。

見栄だよ、見栄。

 

 

「詫び……は、必要ありません。ですが、その……お言葉には甘えさせていただきますわ」

 

 

よかった。

俺は部屋の隅に居るラズロに目線を向けた。

ニッコリと笑顔を浮かべて頷いていた。

 

……怒っているようには見えない。

だが、もしかすると後で折檻されるかもしれない。

ブチギレられるかもしれない。

 

 

「ラズロ、食事の用意をお願いしても良いか?」

 

「かしこまりました、ベリアル様」

 

 

恭しく頭を下げて、外面モードのラズロが部屋を出ていく。

食事前だというのに、ちょっと腹が痛くなってきた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

レイナースは、屋敷での食事に感動していた。

確かに、ナザリックの前で口にした軽食や飲み物は美味だった。

それ以上のものが、ここで出されるとは思ってもいなかったのだ。

 

レイナースは元々、貴族家の令嬢である。

それなりに良い物を食べてきた自覚はある。

帝国四騎士という立場になってからも、会談などで良い食事をしてきた。

だが、ここまで美味い食事は初めてだった。

 

 

「……ベリアル様はいつも、このような物を食べていられるのですか?」

 

 

思わず、レイナースは向かいの席に座るベリアルへと声を掛けた。

 

 

「ん?いや、普段はもう少し質素だな。今日はちょっと特別だな」

 

 

その言葉に、レイナースは安堵した。

だが、それと同時に顔が熱くなっていくのを感じた。

 

 

(私との食事は特別、ですか……)

 

 

レイナースはフォークで野菜を取り、口にした。

 

 

「美味しい……ですね」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

甘酸っぱい味を感じながら、レイナースは飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空もすっかり暗くなり、レイナースは帰路に着く事となった。

屋敷の門の前で、ベリアルと向き合う。

 

 

「レイナース、今日は徒歩で来たんだな」

 

「ええ。私の屋敷もこの周辺にありますので」

 

「そうなのか?」

 

「はい。歩いて数分の距離ですわ」

 

 

レイナースはベリアルの言葉に頷いた。

そして、見送られて自身の屋敷に帰るつもりだったのだが──

 

 

「ならば、送っていこう。外も暗くなっているからな」

 

 

そんな言葉を掛けられて、レイナースは目を瞬いた。

まるで、年頃の普通の女を相手にするような言葉だったからだ。

 

 

「ベリアル様。私はこれでも帝国四騎士なのですよ?」

 

「……ん?そうだな?それがどうかしたのか?」

 

「……いえ、分かっておられるなら良いのですが」

 

 

確かに、レイナースはこの人外である男よりも遥かに弱いだろう。

だとしても、こうして侮られるのは少し不快に感じた。

 

 

「帝国四騎士だろうと、夜に一人で歩かせるなんて有り得ないだろう。レイナースは綺麗な女性なのだから、自覚を持った方がいい」

 

 

……思わず、レイナースは顔を赤くした。

この男は、本当に、全く……自身の方こそ、容姿に優れた美丈夫なのだと自覚するべきだ……と、レイナースは考えた。

 

女を捨てたこの身でなければ、容易く惚れてしまっていただろうと、そう考えつつレイナースは頷いた。

 

 

「では、お言葉に甘えて……送って頂けますか?」

 

「あぁ、構わないとも」

 

 

メイドも付けず、帰路に着いたレイナースにベリアルもついて歩き始めた。

レイナースの屋敷まで、それほど遠い距離ではない。

ほんの数分の間だ。

 

だというのに、レイナースにとっては長く感じられる時間だった。

冷たい夜風が体を撫でるが、身体は妙に熱い。

 

 

「……レイナースは、呪いが解けたら何かしたい事はあるか?」

 

 

ふと、ベリアルが声を掛けてきた。

レイナースは少し悩んで、口を開いた。

 

 

「ええ、沢山ありますわ」

 

「そうか。何をしたいんだ?」

 

「そうですね……最初は──

 

 

レイナースは自身の前髪に触れた。

膿を生み出す呪われた右半分を隠す、長く伸びた前髪を。

 

 

「髪型を、変えてみたいですわ」

 

「……そうか。なら、俺も頑張らないとな」

 

 

嘲笑う事もなく、ベリアルは頷いた。

その様子にレイナースは好感を覚えて……思わず、口を開いた。

 

 

「ベリアル様」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「呪いが解けたら、二人で何処かに行きませんか?」

 

 

それは身の程を知らない発言だった。

これから一国の重鎮となる男に対して、四騎士という立場とはいえ、ただの騎士であるレイナースは釣り合わない。

その自覚はレイナースにもあった。

 

 

「ああ、それはいいな……レイナース、何処に行きたい?」

 

 

しかし、男は少し嬉しそうな顔をして頷いた。

その姿にレイナースは頬を熱くした。

 

 

「行き先はお任せしますわ」

 

 

何処へでも良かった。

この男と行ける場所であれば、何処へでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長いような短い時間、歩いた後、レイナースは自身の屋敷に辿り着いた。

ベリアルと別れ、身体の汚れを落とし、寝巻きに着替えて……自身のベッドに座った。

 

 

「……あぁ」

 

 

そうして、ふと思い付き、机の上にある本を手に取った。

それは日記だ。

 

そこにやりたい事、そしてやるべき事が書かれていた。

 

ページを捲る。

既に幾つかの項目に線が引かれている。

既に終えた事だ。

婚約者や実家、レイナースを見捨てた者に対しての復讐……そんなページを捲る。

 

そうして幾つかページを捲れば……線の引かれていないページを見つける。

そこに書いてある事は、この顔の呪いが解けたらしたい事が書かれている。

 

髪型を変えること。

海へ行くこと。

舞踏会に出ること。

顔を隠さずに食事をすること。

他にも、様々な夢が書かれていた。

 

 

「…………」

 

 

レイナースはペンを手に取り、そこに新たに書き足す。

 

愛する人と結ばれること──

 

 

(……バカバカしいですわ。そこまでロマンチストになったつもりはありませんもの)

 

 

レイナースは本を閉じた。

書いた内容を消す事もせず、自身の願いから目を逸らす。

 

叶う事もない妄想に心を置き過ぎれば、現実を蔑ろにしてしまうからだ。

 

そのまま本棚に戻し、レイナースはベッドに転がった。

ブランケットを手に取り、身体にかける。

そうして枕に顔を埋めて……自身の身体が疼く事に気付いた。

 

 

「…………」

 

 

そして、レイナースは自身の手を陰部に押し付けた。

 

 

「……っ、ぅ」

 

 

自身の望みや、願い。

鬱屈した現実、呪い。

それらから目を逸らすために、自慰を始めたのだ。

 

 

ぬち♡ぬち♡

 

「……っ♡」

 

 

いつも通りの自慰だ。

特に何を考える事もなく、獣のような性欲を満たすだけの自慰。

その筈だった。

 

 

くち♡くち♡

 

「……っ、はぁ♡」

 

 

しかし、脳裏に浮かぶのは男の顔だった。

自身の頬に触れた手の感触、そして優しげな笑み。

 

 

ぬぢぬぢぬぢ♡♡♡

 

「っ、ぁ♡……ぅ♡♡」

 

 

いつもより感度がいい。

レイナースは呪いが解けて、男に抱かれている自分を想像した。

抱きしめ合って、キスをして、優しく抱いて貰う妄想を。

 

 

ぬっぢ♡ぬっぢ♡♡

 

「……ぁ♡ん……っ♡♡」

 

 

自分でも驚くほど甘い声が出た。

呪いが解けた右頬に触れて、愛おしく撫でられて……抱き締められて。

 

 

ぬぢっ♡ぬぢっ♡♡

 

「あっ……♡ん……っ♡」

 

 

何度も身体の奥を確かめられて、全部、全部──

 

 

ぬぢッ♡♡♡♡

 

「イ、ぅ……ッ♡♡♡♡」

 

 

レイナースは絶頂し、痙攣した。

下着が濡れたのを感じつつ、息を深く吐いた。

 

 

「はぁ……♡はぁ……っ♡」

 

 

身体の熱を覚ますように、息を吐く。

心と身体に余韻を感じつつ、顔を枕から退けた。

 

 

「…………」

 

 

枕の左半分は涙で濡れて……右半分は、黄色い膿で汚れていた。

それはまるで、レイナースの中身を表しているかのように見えた。

 

 

「……はぁ」

 

 

レイナースは深く息を吐いて、枕を手に取り……床に投げ捨てた。

まるで自分の醜さを見せつけられているかのように見えたからだ。

 

 

「……ベリアル様」

 

 

そして、ブランケットを抱きしめた。

高望みのような妄想をしたまま……そのまま、レイナースは眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓、円卓。

俺の前にはモモンガさんが座っていた。

 

 

「という訳で、帝国のレイナースという騎士に魔法道具(マジックアイテム)を使って、呪いの解呪を試みたい」

 

 

俺の言葉にモモンガさんは顎に手を当てて、首を傾げた。

 

 

「ナザリックにメリットはないように見えますけど。その必要あります?」

 

「あるとも。四騎士は騎士と言えども帝国の重鎮、ナザリック側に取り込めば帝国の情報も筒抜けになる」

 

「だから、その必要を感じられないんですけど。帝国なんて、どうでもいいと思ってますよ、俺は」

 

 

俺の後ろにラズロはいるが、殆ど二人っきりだからと気安い態度でモモンガさんは話している。

しかし、その言葉の節々には棘があった。

 

 

「どうでもよくなんかないだろう。同盟国になるんだから」

 

「形だけですよ。同格の力もないのに、本当の意味で同盟国になれる訳ないじゃないですか」

 

 

俺は頭を回転させる。

モモンガさんに帝国の有用性を考えさせなければならない。

 

 

「……モモンガさんはさ、国の経営をした事ある?」

 

「え?ないですけど」

 

「そうだろう、俺もない。だからこそ、参考にできる国は用意していた方がいい」

 

「……それで帝国を?何でですか?」

 

 

俺は机の上に手を置いた。

 

 

「バハルス帝国の国主は、皇帝ジルクニフだ。アレは個人で優秀な皇帝であって、周りの人間は大した事がない。帝国は王国と違って、社長のワンマン経営みたいなものだ」

 

「ふむ?」

 

「ナザリックもモモンガさんや俺をトップにした、ワンマン経営みたいな物だろ?少なくとも、イエスマンばかりの似たような構造になっている。だから、参考にできると思うのだが」

 

「……なるほど、一理ありますね」

 

 

俺は安堵の息を吐いた。

これで何も考えず、帝国を滅ぼすべきだ……って話にはならないだろう。

 

 

「ですが、べり❤︎あるさん。そのレイナースとかいう騎士の呪いを解く為に、ユグドラシル産のアイテム……ん゛んっ、ナザリックの宝物を使うのは反対です」

 

「……釣り合っていないように見えるか?」

 

「費用対効果が低いでしょ。というか、ベリアルさん。また女の子を物にしたくて、性欲で物事を考えていませんか?」

 

 

表情のない骸骨顔だというのに、モモンガさんから責めるような視線を感じた。

だが、言い掛かりだ。

俺がレイナースを助けたいのは性欲ではない。

 

 

「そんな訳ないだろう。単純に重い呪いを受けている彼女を助ければ、どんな事でも聞くようになると思っているだけだ」

 

「本当ですか?じゃあ、そのレイナースとかいう騎士に裸で迫られても、べり❤︎あるさんは我慢出来るんですか?」

 

 

俺は想像する。

ベッドの上で裸になり俺にしな垂れ掛かるレイナースの姿を。

 

 

「もち、ろん、我慢、できる、が?」

 

「出来なさそうですね」

 

「い、いや?」

 

 

悲しいかな。

据え膳食わぬは男の恥……どころか、調理前の食材にも手を出す男なのだ、俺は。

 

 

「なら、やっぱりこの話は──

 

「アインズ様、ご意見よろしいでしょうか?」

 

 

瞬間、ラズロが口を挟んだ。

 

 

「……ふむ、何か言いたい事があるのか?ラズロよ」

 

 

一瞬で偉大なる御方モードになったモモンガさんを横目で見つつ、俺はラズロへと視線を向けた。

 

 

「レイナースの掛かっている呪いについて、治癒薬(ポーション)や高位の巻物(スクロール)でも解呪不能である事が現段階でも分かっていますよね?」

 

「ふむ、そうだな」

 

「もし、その呪いがナザリックの面々に掛けられてしまった場合は……同様に解呪する事が困難だという事になります」

 

「……そうだな」

 

「その事から、この機会を好機として、解呪するための実験を行うというのはどうでしょう」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

 

モモンガさんが頷いた。

 

確かに、モンスターの死の間際に掛けられた呪いを、治癒薬(ポーション)巻物(スクロール)で解けないのは拙い。

もし、ナザリックの誰かが呪われた際に、同じく解けないという事になるからだ。

 

モモンガさんは俺とラズロを一瞥し……頷いた。

 

 

「良いだろう。では、そのレイナースという騎士を使って解呪の実験を行う事とする……はぁ、べり❤︎あるさんも、それで構わないですか?」

 

「すまないな、恩に着る」

 

「良いですよ。そもそも、今、宝物庫に置いてあるアイテムの三分の一ぐらい、べり❤︎あるさんが集めてくれた物ですし」

 

 

……あー、そういえばそうだったな。

ナザリックが転移する事を知っていた俺は、廃課金してたからな。

ハズレも多いが、相当な数のアイテムを保管していた筈だ。

 

 

その後、他にもどう解呪するかモモンガさんと話し、俺は円卓から離れた。

部屋の外に出ると同時に、後ろからラズロが追いかけて来た。

 

 

「……正直、ラズロは反対すると思っていた」

 

「えー?そうですか?」

 

 

今は妙齢のメイドモードではなく、小さな女の子メイドモードになっている。

 

 

「モモンガさんに、ああは言ったが……正直、ナザリックに有益な事は殆どない。費用対効果は悪いだろうからな」

 

「あー……まぁ、そうですね。あんまり賢いとは思えません。ですが──

 

 

ラズロは俺の前に一歩踏み出して、振り返った。

 

 

「父上は、そうしたかったのでしょう?」

 

「……ああ」

 

「なら、私はそれを後押ししますよ。父上がやりたい事を、出来るようにするのが私の仕事ですから」

 

 

そう言いつつ、ラズロはニッコリと笑みを浮かべた。

俺は思わず、自分の頬を掻いた。

 

 

「……ラズロは?やりたい事はないのか?」

 

 

俺がそう聞くと、ラズロはまた笑みを浮かべた。

 

 

「それはもう、叶っていますよ?」

 

 

そう言いつつ、鼻歌を歌いながら俺の真横に来た。

妙齢のメイドの時は全く違う、子供のように無邪気な笑みを浮かべて。

 




次回もレイナース
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