※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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#46 恩義と恋情

翌日、ベリアル邸に再び訪れたレイナースには、一つ気付いた事があった。

この屋敷のメイド達はどこか、熱の籠った視線を主人であるベリアルに向けている。

恐らくは憧れ……恋慕のようなもの。

普通のメイドでは持ち得ない視線。

 

自身も使用人を使う立場であったため、レイナースは気付く事が出来たのだ。

 

 

「…………」

 

 

ベリアルがナザリックでどのような振る舞いをしているかは、レイナースも分からない。

 

だが、今までの関係上、ナザリックから唯一連れて来たメイドであるラズロが本妻なのだとレイナースは考えていた。

そして、まだ日数も経っていないがメイド達も、今後は側室として迎え入れるつもりではないか、とも。

 

 

「……嫉妬、ですか」

 

 

レイナースとしては、そのような女性関係の多さを軽蔑するつもりはなかった。

皇帝ジルクニフも後宮を持っており、複数の女性と人間関係を持っている。

 

立場の高い者は、後継ぎを多く作るために多数の女性と関係を持つ事が推奨されている。

一人の女性を愛する事は、時として国に要らぬ混乱を産む事となる。

 

元々貴族令嬢であり、帝王学についても学んだ事があるレイナースは、その事について特に思う事はない。

 

寧ろ、好機だとすら思えた。

一人だけ女を選ぶ際、顔を呪われた醜女を選ぶような男は居ないが……何人も娶るつもりならば、気紛れで選ばれることもあるかも知れない。

 

 

「……はぁ」

 

 

そこまで考えて、レイナースは小さく息を吐いた。

自分に都合が良過ぎる妄想のし過ぎだ、と。

 

そうして現実に意識を戻したレイナースは、メイドの案内によって連れて来られた部屋の扉を開けた。

 

 

「よく来たな、レイナース」

 

「はい、今日もよろしくお願いしますわ」

 

 

今ほど、この顔の呪いを疎ましく思った事はそう多くない。

しかし、この呪いが無ければ、この男と接点を持つ事も出来なかっただろう。

 

感謝はしないが……今はこの状況に身を委ねたかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ナザリックから俺が持ってきたのは、解毒治癒薬(ポーション)、デバフを肩代わりする魔法道具(マジックアイテム)、顔の形を変形させる変装用の魔法道具(マジックアイテム)……後は色々だ。

 

宝物殿の管理者であるパンドラズ・アクターからのオススメ達。

レイナースに使用したり、装備させたりしてみたが──

 

 

「……ダメか」

 

 

治らない。

呪いを肩代わりする事で痒みや痛みは薄れるそうだが、外せば元に戻る。

顔を変装させる魔法道具(マジックアイテム)も幻影のテクスチャを顔に貼るだけで、外せば元に戻る。

根本解決の為に持ってきた解呪やら、デバフ無効化用のアイテムも効き目がない。

 

なら、考えられる事は──

 

レイナースは呪われた騎士(カースドナイト)という職業(クラス)レベルを持っている。

これは呪いによって汚れた神官騎士のみが取得できるクラスだ。

このカースドナイトが呪いを定着させていて、呪われた状態を『正しい状態』として認識させている可能性がある。

故に、治療系統の魔法効果が発揮しても、呪われていない状態へ戻らないのだとしたら……。

 

レイナースから、カースドナイトの職業(クラス)レベルを喪失させる事が出来れば……治るかも知れない。

 

つまり、デスペナルティによるレベル減少を利用して、カースドナイトの資質を喪失させるのだ。

 

レイナースを死亡させ、蘇生する……デスペナルティを伴う蘇生アイテムならば、手元に複数あるし、在庫(ゴミ)処分ぐらいの気持ちで使える。

 

 

だが……この方法はリスクが多過ぎる。

 

 

この世界にも、デスペナルティは存在する。

モモンガさんがリザードマンを蘇生した際に、実際に能力が低下している事に気付いたからだ。

しかし、ユグドラシルのデスペナルティと仕組みまで完全に同一かは分からない。

そもそもカースドナイトの職業(クラス)レベルのみを狙って、減少させる事が出来るとは思えない。

 

レイナースの現在のレベルも分からず、デスペナルティによるレベル減少量も分からない。

最悪の場合、デスペナルティによるレベル減少量が、レイナースの現在のレベルを上回ってしまう可能性がある……蘇生に失敗してしまえば、レイナースは完全に消失してしまう。

 

そんなリスクを俺は負いたくない。

彼女にそんなリスクを背負わせたくない。

 

故に、俺はこの事をレイナースに言わなかった。

彼女がリスクを顧みずに志願するかも知れなかったからだ。

 

故に、俺はこの事をモモンガさんに言わなかった。

デスペナルティによるクラスの喪失実験など、モモンガさんはやりたがると思ったからだ。

 

 

手詰まりだ。

 

 

「……ベリアル様?」

 

 

心配そうな声を聞いて、俺は視線を目の前のレイナースへと戻した。

 

 

「すまない、少し考え事をしていた」

 

 

俺は手を虚空に突っ込み、アイテムボックスの中にある魔法道具(マジックアイテム)へ意識を向ける。

どれもこれも解決には至らなかった物だ。

 

だが……ただ一つだけ、まだ使用していない物がある。

 

 

「…………」

 

 

流れ星の指輪(シューティングスター)

それは超位魔法<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>を三回まで、経験値消費なしで発動できる超希少な魔法道具(マジックアイテム)だ。

 

星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>は元々は何百もの選択肢の中から、願いを叶える魔法だった。

しかし、この世界への転移によって変容し、術者の願いを『どんなものでも』叶える魔法に変わっている。

これはモモンガさんが、この世界で一度だけ発動した際に得た情報だ。

 

 

流れ星の指輪(シューティングスター)を使えば、世界(ワールド)級でもない呪いなら解呪できるだろう。

 

 

しかし、流れ星の指輪(シューティングスター)は超希少アイテム。

それこそ、俺がユグドラシルで何万……いや何百万円と課金しても一つしか入手出来なかったアイテムだ。

 

この世界には、一度使用してしまった残数二回のモモンガさんの物と、俺が持っている物しかない。

 

 

これをレイナースの解呪に、使用して良いものか?

 

 

「……すまない、レイナース。俺では呪いを解く事が出来ないようだ」

 

 

使える訳がない。

 

三回も、どんな願いでも叶える事が出来る。

だが、三回だけだ。

 

ただの一人の為に、流れ星の指輪(シューティングスター)を使える訳がない。

彼女の事は助けてやりたいが、ナザリックの方を優先せざるを得ない。

 

俺は虚空から手を引き抜き、アイテムボックスを閉じた。

 

 

「いえ、ベリアル様……謝って頂かなくても結構ですわ。寧ろ、ここまで治療に協力して頂き感謝していますから」

 

 

レイナースの言葉に、俺は思わず目線を逸らした。

罪悪感の所為だ。

 

 

「代わりに、<呪咬の指輪(リング・オブ・カースバイト)>を渡しておこう。受け取ってくれ」

 

 

俺は机に置かれた、根本解決に至らなかって魔法道具(マジックアイテム)をレイナースに手渡した。

 

これは呪いに対しての耐性を付与する魔法道具(マジックアイテム)だ。

装備することで痛みや痒み、黄色い膿の発生を抑止出来る事は分かっている。

ただ、抑止するだけで、顔の右半分の崩壊は治す事は出来ない。

 

だが、無いよりはマシになる筈だ。

そう思ってレイナースに渡したのだが──

 

 

「う、受け取れませんっ、これは貴重なアイテムなのでしょう?」

 

 

貴重か、と問われると……そこそこ、でしかない。

ユグドラシル産のアイテムだから、この世界では恐らく入手できない。

そして、作成する素材も見つけられないだろう。

 

だが、これは俺や配下達が普段から装備しているアイテムに比べれば、質も性能も見劣りする。

 

まぁ、それを態々、レイナースに言う必要もないだろう。

 

 

「だとしても、俺はレイナースに持っていて欲しい。これは呪いを解けなかった俺からの詫びなんだ……受け取って欲しい」

 

「ですから、貴方が謝る事なんて……」

 

 

そう言いつつも、レイナースは悩むような仕草を見せた。

 

この指輪の効能から、喉から手が出る程、欲しくなっている筈だ。

故に、悩んでいる。

 

それだけ、彼女は今まで呪いに苦しめられて来たのだろう。

 

 

「受け取ってくれるか、レイナース」

 

 

だからこうして、後押しすれば──

 

 

「分かり、ましたわ……ありがとうございます」

 

 

レイナースは少し申し訳なさそうな顔をしたが、指輪を受け取ってくれた。

そして、自らの指にはめようとして……少し悩むような仕草を見せた。

どの指にはめれば良いのか、悩んでいるようだ。

 

……どこでも効果は発動するし、どこでも良いと思うんだが。

 

そのまま少し悩んで、レイナースは左手の小指にはめて……指輪を少しの間見つめていた。

そして、俺へと視線を戻した。

 

 

「私は……何を返せばよろしいのでしょう」

 

「ん?」

 

「これだけ手を掛けて頂き、指輪も頂いたのに……私には何も返せません」

 

 

レイナースは申し訳なさそうに目線を伏せた。

 

 

「いや、何も返さなくていい。これはレイナースへの先行投資だと思ってくれ……優秀な騎士に唾をつけておくようなものさ」

 

 

……俺は帝国四騎士であるレイナースへ恩を売る。

それが当初の目的だ。

 

アイテムも消費したし、装備品である魔法道具(マジックアイテム)を一つ贈った。

 

これで恩は十分。

レイナースは俺に対して、痛々しい程に恩を感じている。

だから、これでいい。

 

 

「でしたら……その……私の身体で返す、というのは如何でしょうか」

 

「……ん?」

 

 

一瞬、咽せそうになった。

 

 

「力も財も、食も権力も……何もかも、私の持つ物では貴方に喜んで貰えるとは思えませんわ。ですから……もう、身体でご奉仕させて頂くぐらいしか、私には──

 

「待ってくれ。いや、そんな事をしなくていい。そこまで思い詰めなくていい」

 

 

俺は慌てて、レイナースを止めた。

 

いや、確かに?

俺もレイナースを抱きたいとは思っている。

だって、可愛いし。

 

だが、それはダメだ。

先日、モモンガさんの言葉に『否!』と答えたばかりじゃないか。

 

そんな事で恩を返させない方がいい。

恩を返せないような状況にする事で、いざという時に使える。

 

だから、ここは否定を──

 

 

「……申し訳ありませんでした、ベリアル様──

 

 

おっ、分かってくれたみたいだな。

 

 

「私のような呪われた醜女では、お返しにはならないですね……思い上がりでしたわ」

 

 

いや、全然分かってない。

 

 

「いや……俺はレイナースのことを、醜いと思った事はない」

 

「……そう、ですか?」

 

「ああ、寧ろ綺麗だと思っているさ」

 

「……嘘ですわ」

 

 

レイナースは顔を歪めて首を振った。

その目には僅かに涙を浮かべていた。

 

 

「嘘じゃない」

 

「いいえ……呪われて顔も爛れた女なんて。隣に置きたいと思う男はいませんわ」

 

 

恐ろしく低い自己肯定感。

それはきっと、今まで、呪われてからレイナースが受けてきた悪意により、元々持っていた自己肯定感が壊されてしまったからだろう。

 

家族に捨てられ、婚約者にも捨てられ……それ以外にも、名前も知らない奴らの嘲りを受けた経験だってあるだろう。

 

……愛する人に裏切られる悲しみ。

それは俺にとって、共感できてしまう物だった。

 

 

「レイナース、容姿なんて関係ない。人の魅力は内面と行動だ。俺はレイナースの、その呪いにも負けない行動力や、立ち振る舞いを美しいと思っている」

 

「…………本当ですか?」

 

「本当だとも。俺は意思の強い女が好きだからな……あぁ、そもそもレイナースの容姿は美しいと思っているが」

 

 

どれも俺の心の底からの発言だ。

何かに向かって努力できる者……強い意思を持つ女。

俺は、そんな女が好きだ。

 

あ、あとレイナースは容姿も可愛い。

確かに呪われた右半分の顔は、俺の美的感覚でもちょっと醜いとは思ってしまうが……残った半分以上は美女だし。

その長い金糸のような金髪も、鍛えられた身体も、元貴族家由来の気品のある顔立ちも、全部綺麗だ。

プラスマイナス、差し引きで大幅にプラスって感じ。

 

 

「……そう、ですか?そんなに褒められても……私は……」

 

 

信じたい。

だが、信じられない。

そんな顔だ。

 

俺の言葉を信じたいのだろう。

だが、体で返す事を拒否しているため、信じ難い。

 

相反している感情が渦巻いているようで、レイナースは難しい顔をしている。

 

 

「…………」

 

 

俺はどうするべきなのだろうか。

レイナースを言葉で励ます事は簡単だ。

だが、彼女はそれを心の底から受け取ってくれない。

行動で示さなければならない。

 

俺がレイナースの事を魅力的だと思っている事を──

 

 

「レイナース」

 

 

ならば、すべき事は一つだ。

俺はレイナースの手を取った。

 

 

「な、何を──

 

 

そして、その手の甲に口付けをした。

 

 

「ひゃっ」

 

 

……随分と可愛い声を出したな。

顔を上げれば、レイナースは頬を僅かに染めていた。

 

 

「魅力のない女にキスをする男はいない、レイナース。もし望むのなら、頬でも、唇でも。どちらでも構わないが」

 

 

そう口にすれば、レイナースはさらに顔を赤くさせた。

 

 

「い、いえ……分かりましたわ。十分に……」

 

 

体で奉仕するとか言っていた癖に、こんな事で顔を赤らめるのか。

もし、そういう奉仕になったら、キスが児戯に感じられる程の事をするのに。

 

俺は、顔を赤くしているレイナースに視線を向けた。

 

 

「分かってくれたなら、良かった」

 

 

まぁ、これでレイナースの自己肯定感も上がるだろうし、良しとしよう。

可愛い女の子には笑っていて欲しいからな、俺は。

 

 

「……物好きですね。こんな呪われた女に……」

 

 

ぼそぼそと小さく、レイナースが呟いた言葉が耳に入った。

まだ自己肯定感は低いままのようだが、それでも俺が彼女を魅力的に思っているという事は伝わったのだろう。

 

なら、まぁ、いいか。

 

 

「……レイナース、今日も夕飯を食べていくか?」

 

「……よろしいのですか?」

 

「いいとも。一緒に食事がしたいぐらいだ」

 

「……ふふ。でしたら、お言葉に甘えさせて頂きますわ」

 

 

レイナースは嬉しそうに頬を緩めた。

まぁ、ナザリック産の料理は美味しいからな。

魔法効果でバフかかるし。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

その日も結局、レイナースの帰路にベリアルは同行した。

並んで歩き、他愛のない話をするだけだが……それでも、レイナースにとって幸せな時間だった。

 

 

「…………」

 

 

レイナースはすぐ側に居る男の顔に、目を向けた。

先程の言葉……振る舞い。

 

昔読んだ恋愛小説に出てくる王子のようだ、なんてレイナースは思った。

ここまで自分に都合のいい男が居ていいのか、とも。

 

高鳴る心臓にレイナースは顔を赤くした。

恋心、というものを自覚する。

かつて自分を裏切った婚約者にすら抱かなかった、恋心。

 

出会って、まだ数日。

だが、それでもレイナースは恋愛感情を抱いていた。

 

 

「レイナース、今後も呪いに関して分かった事があれば共有しよう」

 

「え?あ……はい、ありがとうございます」

 

 

ふと掛けられた声にレイナースは頷いた。

まだ彼は諦めていないのだと知り、レイナースは申し訳なさを感じた。

 

ベリアルはレイナースを醜女ではないと言った。

だが、レイナースは自身を醜女だと思っている。

 

愛する人がどう思っていようと、世間では醜悪な顔をした女だ。

隣で歩けば、男の評判が下がってしまう程に。

 

これは事実だ。

ベリアルがどう考えていようと、世間はそう思ってはくれない。

 

 

「…………」

 

 

ベリアルと肩を並べて歩く自分を、レイナースは想像した。

そして、その釣り合わなさ……己に向けられる視線を想像して、妄想を振り払った。

 

 

そうしている間に、レイナースとベリアルは邸宅にまで辿り着いた。

 

楽しい時間は終わったのだ。

今日が終われば、彼に会いに行く理由も無くなってしまう。

元々、希薄な関係だったのはレイナースも理解している。

 

それでも。

 

 

「では、レイナース。また、何かあれば──

 

「ま、待ってください」

 

 

思わず、手を掴み引き止めてしまった。

どうしてこんな事をしてしまったのか、そう後悔するよりも早く、レイナースの口が開いた。

 

 

「ベリアル様。明日、私の屋敷にまで来て頂けませんか?せめて、お礼を致しますわ」

 

 

ここで関係を終わらせたくない。

その一心だった。

 

緊張で、レイナースの顔が強張る。

目の前にいる男の顔が見られない程に。

 

そして。

 

 

「それは嬉しいな。なら、お邪魔させて頂こうかな」

 

「……ありがとうございますわ」

 

 

男の言葉に、レイナースは頭を下げた。

今はただ、嬉しかったからだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

翌日の夕方。

俺は、レイナースに「お礼をしたい」と言われて、俺は彼女の邸宅へと向かった。

 

ラズロに同行するか聞いたが、彼女は一緒に来なかった。

なんでも、忙しいらしい。

理由は分かる。

 

……レイナースに対して間違いを犯さないよう、性欲を発散する為にメイドを四人抱き潰したからだ。

結果、ラズロの仕事が増えてしまったらしい。

 

マジで反省してる。

 

うん。

だから、まぁ……一人で来た訳だ。

荷物もアイテムボックスに入っているから、完全に近所の散歩に来たかのような格好だ。

 

そうして、俺は屋敷のドアノッカーを叩いて、彼女の屋敷に入れて貰った訳だが──

 

 

「レイナース、普段とは違う格好なんだな?」

 

「えぇ、はい。自身の家でも鎧姿なんて、格好悪いでしょう?」

 

 

彼女は今、カジュアルなドレス姿だ。

いつもより身体のラインが出ていてセクシーだし、可愛い。

 

 

「それもそうだな……いや、似合ってる。普段とは違うが、それも魅力的だ」

 

 

思わず褒めてしまうぐらいには。

だって可愛いし、綺麗だ。

 

そのスラっとした、貴族令嬢にしては高めの身長も。

女性特有の丸みを帯びつつも鍛えられた身体のシルエットも、口元の黒子も。

 

全部が魅力的に写る。

 

 

「……そ、そうですか」

 

 

しかし、レイナースはちょっと引いてるみたいだ。

目も合わせてくれない。

 

褒め過ぎたか。

この辺の加減が難しいんだよな。

別に俺、モテモテのプレイボーイじゃないし。

顔だけで生きてる男だし。

性格面では全然良い所なしの、スケベ野郎だし。

 

顔には出さないが、内面でちょっと反省する。

人を褒めるのって難しい。

 

 

 

そうして、誘われた夕飯の場。

食卓に並べられたのは明らかに高級品の肉やら、何やら、凝った料理まで出てきた。

彼女の用意できる限り、最上級のおもてなしなのだろう。

 

 

「……どう、でしょう?ナザリックの料理に比べれば劣るとは思いますが……」

 

 

それでも、恐る恐るといった様子で伺ってくる。

 

まぁ、それは当然……ナザリックに比べれば質も落ちるが。

それでも、転移前世界の味気のないディストピア飯に比べれば何倍も、何十倍も美味しい。

あの世界の経験の所為で、俺は結構、なんでも美味しく食べられるようになったからな。

 

 

「いいや、美味いよ。そう卑屈にならなくていい」

 

 

だから、嘘偽りなく感想を述べた。

安堵の息を吐いたレイナースを「可愛いな〜」と見つつ、俺は鴨に焦がした砂糖とワインっぽい……なにこれ?

よく分かんない料理を口にする。

 

うーん、鴨肉の深み?

複雑な味わい?

よく分かんないけど美味しいや。

 

 

「食後にお酒なんて、どうでしょうか?」

 

「あぁ、それはいいな。貰おうかな」

 

 

レイナースに勧められるまま、ワインを貰う。

まぁ、装備している指輪に付与された毒耐性の所為で酔えないが。

外せば酔えるが、毒耐性は結構重要だから外せない。

 

食中毒とかも回避できるし。

 

商会やってた頃、こそこそキッチンの生卵盗んで、生肉とユッケ丼して食べたが、身体壊さなかったぐらいだ。

 

 

「中々、いい酒だな」

 

「……やはり、分かりますか?ベリアル様」

 

 

いや、分かんない。

レイナースが持ってきたワインの瓶から、高そうだなーっと思ってただけだ。

酒の良し悪し、全然分かんない。

 

でも、こういう場面で褒めないと分かってなさそうだと思われそうだし。

 

そう思いつつ、レイナースに視線を向けると、ほんのりと顔を赤らめていた。

……色っぽいな。

ドレスの露出が高めだから、こう、鎖骨とか見えて唆る物が──

 

 

 

危ない。

 

危なかった。

 

メイド相手に性欲発散していなければ、間違いを犯す所だった。

本当に危ない。

 

 

「ベリアル様」

 

「ん?」

 

 

ちびちびとワインを飲みつつチーズを齧っていると、レイナースが少し緊張した様子で俺を見ていた。

 

 

「夜も遅いですし、よろしければ……今日は泊まっていかれませんか?」

 

 

いや、俺ん()近いし帰るよ。

……とは簡単に言えるが、こう誘ってくるなら何かレイナースに考えがあるのだろう。

 

うーん、なんだ?

分からん。

 

俺のスケベ脳は、これをエッチのお誘いだと判断している。

だが、レイナースと俺は出会って間もない間柄であり、彼女にとって俺は呪いを解く事も出来なかった期待はずれ男だろう。

 

いや、呪いを解いてくれたお礼にセックスなら全然分かる。

だが、魔法道具(マジックアイテム)を一つあげただけでセックスに発展するか?

セックスはそんなに甘くないと、俺は思う。

セックス。

 

あ、ダメだ。

思考がかなりエロ寄りに引っ張られてる。

 

くっ、抑えろ……っ、俺の陰茎……!

 

 

「……ダメ、でしょうか?」

 

 

黙っていると、レイナースが眉尻を下げて俺を見てきた。

 

凄い破壊力だ。

 

普段は澄ました顔をしている女騎士が、こう、積極的にアピールしてくるのを見ると、こう、なんつーの、こう、ヤバい。

 

だが、俺は鋼の精神を持つ男だ。

理知的で理性的な偉大なる御方だって、デミウルゴスも言っていた。

 

当初の目的を忘れてはいない。

レイナースを恩で縛り、帝国の内通者になって貰う計画がある。

故に、ここで性奉仕やらで恩を返させてはならない。

 

モモンガさんにも、『性欲には負けない!』って言ったじゃないか。

 

だから、そう、断るべきだ。

よし、断るぞ。

 

 

「あぁ、泊まらせて貰おうかな」

 

 

ごめん、モモンガさん。

性欲には勝てなかったよ。

 

 

 

い、いや、でも?

これがレイナースからのセックスアピールじゃない可能性もある訳だし?

 

 

 

俺はまだ負けていない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、貸し出された寝室に、シースルーなネグリジェを着たレイナースが来た。

 

どうやら、俺の負けらしい。

 




遅くなってゴメン
エッチシーンは次回
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