【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話 作:口だけの淫魔
食器の鳴る音が聞こえる。
俺の目の前で、ドラウディロンが食事をしている音だ。
モモンガさんとドラウディロンの面談も終わり、俺達は屋敷に帰って来た。
時間もそれなりに掛かり、空も少し暗くなっている。
視線をドラウディロンに向ける。
幼い少女の姿らしからぬ、上品な食べ方だ。
しかし、少女らしい素直な笑みを浮かべている。
彼女の実年齢から考えると不相応なあどけなさだが、それだけナザリック産の食事が美味しいのだろう。
一国の王女としての責務もあるだろうが、食事時ぐらい、素直に喜んでくれるのは嬉しい。
ふと、ドラウディロンは俺の視線に気付いたようで、目を向けて来た。
「む……ベリアル殿、どうかしたか?」
見惚れていた、とは言えない。
「いや、随分と美味そうに食べるなぁ、と」
「……仕方ないだろう。それだけ美味しいのが悪い」
照れ隠しか、ドラウディロンは少し眉を顰めた。
可愛い。
「いや、俺は嬉しいだけだ。気を休めてくれるのは、心を許してくれた……とまでは言わないが、警戒心を解いてくれた証拠だろう?」
「それはそうだが……まるで私が、ここに来た時は気を張っていたような言い方だな」
「……はは」
いや、実際、警戒はしてたし、気は張っていただろう。
借りて来た猫みたいな状態だったし。
俺は手元の料理を口に含む。
美味しい。
料理名は……何だったか。
魚を柑橘類で味付けして、揚げ焼きしたやつだ。
食事前にメイドがつらつらと料理名を話してくれたが、覚えていない。
分からないし覚えられないのだが、それをドラウディロンに知られると恥ずかしい。
だから、物知り顔で分かっているフリをして食べている。
まぁ、美味いものは美味い。
それでいい。
「しかし、ベリアル殿には今日も世話になったな……返しようのない量の借りを作ってしまった」
「貸し借りなんて気にしなくていい。俺はやりたいようにやっているだけだからな」
まぁ、これは本音だ。
俺はやりたいようにやってる。
この世界に転移してからずっと、そうだ。
好きなように歩き、好きなように暴れて、好きな女を囲ってるだけ。
自分勝手で、自己中心的に生きているだけだ。
しかし、ドラウディロンは俺の言葉に納得していない様子だ。
……彼女は俺のことを買い被っているみたいだ。
実際はロクデナシなんだ、俺は。
そんな自己嫌悪をしている俺へ、ドラウディロンは視線を向けた。
「それでも借りは借りだ……ベリアル殿、何か私にして欲しい事はないか?私に出来る事なら、その、何でもするぞ?」
……何でも?
なら、口で……っと、そういう空気じゃないな。
というか、ドラウディロンは王女なだけあって真面目な女性だからな。
セクハラしたら嫌われてしまいそうだ。
……ドラウディロンには嫌われてたくない。
何とか、内なる
「その気持ちだけで十分さ」
いや、本音で言えばエッチなお願いをしたいが。
「……そうか」
何故か少し落ち込んだ様子のドラウディロンを見て、俺は目線を逸らした。
一国の王女であるという自負心から、俺に借りを作りっぱなしにしたくないのだろう……多分。
そうじゃなければ……というのは俺の自惚れ過ぎだな。
惚れられるようなこと、してないし。
そんな事を考えながらワインを口に含む。
「なぁ、ベリアル殿」
「ん?」
「……自分で言って何だが、私ってそんなに女性としての魅力が無いか?」
咽せそうになった。
無自覚なのか?
このドラゴン王女合法ロリ美少女は?
「いや、そんな事はない。ドラウディロン殿は魅力的な女性だ」
「……それは、ベリアル殿にとっても、か?」
……もしかして、ドラウディロンって俺に気があるのか?
「それは──
いや、待て、俺。
彼女は一国の王女で腹芸も出来る。
思わせぶりな発言と見せかけて、俺を誘導しようとしている可能性もある。
……ドラウディロンに限ってそんな事はしなさそうだが、可能性が0とは言い難い。
「…………」
俺は口を噤む。
どう返答するのが正解なのか分からん。
これって女心なのか?
それとも政治の分野なのか?
誰か教えてくれないか。
なんて、内心、頭を抱えていると──
「……なんてな。少し意地悪な質問をしてしまったな」
どうやら時間切れのようだ。
ドラウディロンが笑みを浮かべつつ、言葉を繋ぐ。
「これでも対外的な評価を気にするタイプなんだ、私は……怒らないでくれよ?」
「いや、怒りはしないが──
俺はそう言いつつ、ふと、ドラウディロンの顔に目を向けた。
どこか、悲しそうな顔をしている。
……俺は、彼女にそんな顔をして欲しい訳ではない。
腹を括るか。
「ドラウディロン殿は……」
「何だ?どうかし──
「一国の王女として相応しい振る舞いと、心の強さを持っているように見える」
俺の言葉に、ドラウディロンがフォークを動かす手を止めた。
「ベ、ベリアル殿?何を──
「自立した一人の女性であり、意志の強さを感じさせる。俺はそんな女性こそ、魅力的に見える」
「ちょっ」
「無論、容姿も美しいな。まだ幼くはあるが──
「待て、待て待て!もういい!分かったから!」
「何だ、もういいのか?」
ドラウディロンの言葉に、俺は口を閉じた。
……あ、止めて貰って正解だったな。
これ以上、喋っていると中々に下劣な事を言ってしまいそうだったし。
「な、なんなんだ。急に私を褒めて……」
「ドラウディロン殿が対外的な評価を欲しいと言っただろう?だから話しただけだが」
褒められたがっていたのは、表情から読み取れた。
なら、褒めるべきだ。
それでドラウディロンの気が済むのなら。
まぁ最悪、俺が恥ずかしい思いをするだけで済むだけだし。
「そ、それはそうだが……そんな洪水のように世辞を浴びせられても困るというか……恥ずかしいというか……」
「世辞じゃない。本音だぞ?」
「本音だとしても、だ……!まったく、ずるい男だな……」
え、ずるい?
誠意を持って話したつもりだったんだが……。
ダメだな、政治も女心も全然分からん。
恥をかいたと言わんばかりの顔で、ドラウディロンは野菜を口にした。
「…………」
ドラウディロンは先程の俺の発言が恥ずかしいのか、無言で食事をしている。
「…………」
対して、俺も先程の発言は失策だったかと反省して黙っている。
少し気まずい空気の中、しばらくの間は無言で食事をした。
「「…………」」
気まずい。
そうして、少しして……ドラウディロンは視線を俺へと戻した。
「……ベリアル殿……今晩、時間は空いているか?」
「ん?あぁ、空いているぞ?」
今夜は特に予定はない。
屋敷内のメイドとのエッチも一通り全員と終わったし、こそっとナザリックに戻って側室の誰かと“する”つもりだったが……ドラウディロン側に予定があるのなら、それが最優先だ。
「……なら、その、夜に会いに行ってもいいか?」
「あぁ、構わない。私室……いや、書斎の方がいいか?」
今日、話していた竜王国の宰相に送る手紙の話だろう。
鉄は熱いうちに打てと言うし、早めに送りたいに違いない。
だから、私室ではなく、書斎の方を提案したのだが──
「い、いや、私室でいい。私の予定と付き合わせているからな、うん」
どうやら気を使わせてしまったらしい。
「なら夜に鍵でも開けて、待っておくとしよう」
「そ、そうか!ありがとう、なるべく遅くならないように行くとしよう!」
顔を赤くしながら、ドラウディロンが頷いた。
顔を、赤く?
「……あまり気負わなくて良いからな?」
なんて、言いつつも……今、気付いたんだけど……これ、もしかして、エッチなお誘いなのか?
俺は朴念仁ではないし、無自覚系ラブコメ主人公でもない。
流石に気付く。
ドラウディロンは俺にエッチなお誘いをしているに違いない。
でなければ、私室で良いなんて言わない筈だ。
いや、待て。
本当にそうか?
……確証は持てないし、自意識過剰かも知れない。
取り敢えず、夜中まで待とう。
もし違ったらぬか喜びで、恥ずかしいしな。
俺はそんな事を考えつつ、料理を口に運んだ。
◇◆◇
夜、ドラウディロンは割り当てられた寝室にて鏡の前に立っていた。
レース状の下着、薄い布地のネグリジェ……その上から、ケープを羽織った。
僅かに震える手で羽織ったケープを整える。
「……よ、よし」
今夜、ドラウディロンはベリアルへ夜這いに行く。
(本来の目的は達成しているというのに、な……)
ベリアルを籠絡し、国への支援を引き出すこと。
これは、籠絡せずとも解決している。
最早、目的である支援の引き出しは達成済み。
だというのに、ドラウディロンは手段である筈の「ベリアルを籠絡すること」へ躍起になっている。
(いや……無意味ではない。親しくなっていた方が、融通は効くだろうし)
脳内で、自分に“言い訳”をする。
(そうとも。これは国を思ってのこと。私の私利私欲ではない)
鏡を前にして、ドラウディロンは何度か頷いた。
(もしベリアル殿が望むのであれば、婚約してもいいな。そうすれば、竜王国の未来も安泰だろう……うむ、うむ)
絵に描いた未来を想像し、笑みを浮かべた。
(いや、ベリアル殿には側室が沢山居ると聞いた。新参者である私を、本妻に迎えることは難しいか……ベリアル殿はその辺り、義理深いからな)
そして、現実を思い出して顔を顰めた。
(まぁいい。とにかく、ベリアル殿に意識して貰うのが重要だ。既成事実さえ作れば、邪険には出来ないだろう。うむ、我ながら完璧な作戦だ)
ドラウディロンは机の上の手紙を手に取り、部屋を出た。
手紙は、宰相に届けて貰う手紙だ。
これを口実にベリアルの私室へ向かうのだから、忘れては困る。
ドラウディロンは期待半分、不安が半分の状態で廊下を歩く。
夜、メイド達も寝室で眠っている。
普段ならば<
それは恐らく、ドラウディロンが夜中にベリアルの私室へ向かう……という事を考え、ベリアルが配慮してくれたからだろう。
(こういう気が利く所も……)
ドラウディロンは少し頬を緩めて、そのままベリアルの私室までやって来た。
心臓を高鳴らせながら、ドラウディロンはドアをノックした。
直後、「入っていいぞ」という声を聞き、ドラウディロンは部屋の中に入った。
「夜分遅くにすまないな、ベリアル殿」
そう言いつつ、室内を見渡す。
日中によく来る事はあったが、夜間は初めてだった。
昼夜で間取りが変わる訳でもない、見知った部屋だというのに、少し新鮮味を感じてしまう。
そんな部屋の奥、庶務机にベリアルは座っていた。
「いや、構わないとも。幾らでも予定は合わせるつもり──
そう言いつつ、ベリアルは視線を上げて……ドラウディロンを見た瞬間、固まった。
「む?どうかしたか?」
「い、いや……何でも」
ベリアルは視線をふらふらを宙へ向ける。
だが、ドラウディロンは気付いていた。
ケープの下から僅かに見える肌や、素足を見てベリアルは照れているのだと。
(……脈がないという訳ではない、か)
ドラウディロンは安堵と共に、好きな男に視姦される興奮を感じていた。
「それで、ドラウディロン殿。要件とは、竜王国の手紙に関してで違いないか?」
「うむ。これが私が認めた手紙だ……中身も見てくれて構わないぞ」
ベリアルに手紙の入った封筒を渡す。
それをベリアルは外側を少しだけ確認して、中身も確認せずに机に置いた。
それだけ信頼してくれているのか、とドラウディロンは少し嬉しくなる。
「この手紙、今から届けた方がいいか?」
「いや、今じゃなくて良い。この時間だと、城の文官も寝静まってる頃合いだからな」
「そうか?なら明日の昼前に届けようか」
「構わない。礼を言おう、ベリアル殿」
ベリアルの言葉に、ドラウディロンは首を縦に振った。
正直、その辺りはいつでも構わないのだ。
本来、魔導国と竜王国の間で手紙のやり取りをすれば、どれだけ急ごうとも数日は掛かる。
それを転移によって届けてくれると言うのだから、時間が多少前後した所で不満はない。
「それで、ドラウディロン殿……用事は以上、か?」
ベリアルの言葉に、ドラウディロンは少し目線を逸らした。
「い、いや……よければ、なのだが、ベリアル殿と少しだけ話をしたい……」
「あぁ、それはいいな。俺もドラウディロン殿と話したい気分だったからな」
「……あ、ありがとう」
そう返事をしてくれたのは、優しさか。
ドラウディロンは心臓を早鐘のように鳴らし、顔を赤らめつつ……ベリアルの対面にある、応接用らしきソファに座った。
「飲み物でも出すか……ドラウディロン殿は何か飲みたいものでもあるか?」
「い、いや、何でも構わないぞ?」
「なら、ホットミルクでも用意しよう」
そう言うとベリアルは席を立ち、何やら
それをドラウディロンの座っているソファの前にある、応接机の上に置いた。
そして、マグカップへ牛乳を注ぎ……何やら、魔法を行使して温めた。
「熱かったら言ってくれ、冷ますから」
ベリアルはホットミルクを二つ用意した。
そして、向かいの席に座った。
「……ありがとう」
差し出されたマグカップを手に取り、それほど熱くないことを確認する。
そして、仄かに感じる甘い匂いに笑みを浮かべた。
(……ベリアル殿は権力者だというのに、こんな些事も嫌な顔をせずにしてくれる。本当に出来た男だな)
自国の偉い人間の場合、夜間だろうとメイドを叩き起こして作業させるだろう。
そう考えつつ、ホットミルクを口に含む。
素朴だが、甘い。
身体の芯から温まる、安心できる味わいだ。
そして、穏やかな心のままドラウディロンはベリアルへ視線を戻した。
「私は、ベリアル殿には感謝している」
「ん?」
ベリアルがマグカップを降ろせば、僅かに口元が白くなっていた。
「国を助けに来てくれたことも、魔導国へ招待してくれたことも……私にとっては返せない程の恩だ」
「……まぁ、俺にも思惑があっての事だから。それほど恩を感じなくてもいいぞ?」
そんな事を口にするベリアルを見て。ドラウディロンは笑みを浮かべた。
この男は謙遜ではなく、本心からそう思っているのだ。
ここ数日、屋敷で世話になってドラウディロンが確信した事がある。
ベリアルという男は有能ではあるが、万能ではないという事だ。
凄まじい力を持っているが、人並みの価値観で行動している。
全ての選択を間違えない訳でもなく、少し抜けている部分もある。
そんな欠点とも言えない欠点。
それにドラウディロンは幻滅する訳でもなく、親しみと愛おしさを感じていた。
「魔導国と同盟を結べたのも、ベリアル殿のお陰だ」
「……ん?いや、それは自力で成し遂げた事だろ?俺は何もしてないぞ」
笑みを浮かべて、ベリアルへ視線を向ける。
整った容姿が少し困惑しているように見えた。
「この国に来てからも、私が不便に感じないよう色々と便宜を図ってくれただろう?」
「客人をもてなすのは普通の事だ」
「それでも、私はベリアル殿のお陰で不自由なく……幸せに、不安なく過ごす事が出来た。だから私はあの時、勇気を振り絞る事が出来た。ベリアル殿のお陰だ」
ドラウディロンの言葉に、ベリアルは目線を逸らした。
「……ドラウディロン殿がそう思うなら、それでもいいが」
完全には納得していないようだが、理解はしてくれているようだ。
ドラウディロンは、ベリアルから見た自身の評価が高い事を知っている。
一国の王女として尊重し、尊敬してくれている。
それは嬉しい事だ。
だが、それでも……王女であっても。
ドラウディロンは自身を、一人の女であることを自覚している。
一人で出来る事もあれば、出来ない事もあると。
「それだけの恩があっても、私がベリアル殿に返せるものは、そう多くない」
何かを成し遂げた時、それが全て自分の功績なのだとは思わない。
誰かの助けがなければ一国の運営など出来はしない。
重要な決断も……自分だけでは、きっと。
今回のようには。
「財宝も必要ないのだろう?確かに、この国に比べれば、竜王国の財などたかが知れているからな」
だからこそ、彼が必要だ。
だからこそ、彼が欲しい。
「そう、だからもし、私が貸しを返せるのだとしたら……私そのものでしか返せない」
だからこそ──
「だから、ベリアル殿……私のことを……」
一人の、女として──
「抱いて、みないか?」
彼が、欲しい。
ケープをはだけさせれば、夜風が肌にあたる。
それでも身体が火照っている。
先程飲んだホットミルクの所為か、それとも。
頬が熱い。
きっと赤くなっている。
「……ドラウディロン殿」
ベリアルの声色は落ち着いている。
だからこそ、不安になる。
自分を受け入れてはくれないのかと、不安になる。
思わず、口を開く。
「ど、どうだ?本当に、好きにして貰っても構わないぞ?」
どうか、受け入れて欲しいと、そう懇願して──
「ドラウディロン殿。無理をしてまで、借りを返す必要はない」
「あ……」
「俺に身体を許す必要もない……そんな事をしなくても、俺はドラウディロン殿の味方だ」
ベリアルの言葉に、俯いた。
やはり、自分を恋愛対象には見ていなかった。
こんな少女の身体を愛してくれる訳がなかった。
「そ、そうか……すまなかった、変な事を……言って……」
震える自らの身体を、抱きしめる。
拒絶された悲しみは……ドラウディロンの内心を覆い──
「その上で──
ベリアルに、手を握られた。
少し硬い、女とは全く違う男の手に握られて……視線を上げた。
「俺と身体を重ねる意味がないと知った上で、もし……それでも、許されるのなら。俺はドラウディロン殿のことを愛したい」
「……へ?」
普段の優しげな笑みとは違う、真剣な表情で見つめられて……顔が熱くなる。
身体の芯が、ぎゅぅっと締め付けられるような感触に切なくなる。
「そ、それは、どういう……」
「俺はドラウディロン殿のことが好きだ」
「……え?」
それは愛の告白だった。
最近、この屋敷の書斎で読んだ恋物語の見せ場のような告白だ。
「あ……っ」
それを身に受けているのだと実感し……顔が熱くなる。
「もし、ドラウディロン殿が俺の事を──
「わ、私も……っ、好きだ……!」
竜王の血を引く、王女として生まれて……今までずっと恋なぞ知らずに生きてきた。
そんな我が身に初めて宿った恋心。
全てが初めてだった。
手を繋ぐだけで心臓が高鳴るのも。
話していると頬が熱くなるのも。
後ろ姿を見て切なくなるのも。
「私はっ、ベリアル殿の事が……す、好き、だ……」
こうして、好意を言葉にすることも。
握り締められた手を、強く握り返す。
そうすれば、引き寄せられて……密着した。
「ドラウディロン殿」
「あ……」
名前を呼ばれて、思わず、目を閉じた。
何かを期待している、というのがベリアルに伝わったようで──
「んっ……!?」
唇が、重なった。
思わず背中に腕を回した。
抱きしめれば……抱きしめ返された。
「ん……っ」
幸せだった。
愛されている、という気がした。
渇いていた心の奥底が、満たされていく。
「……ん」
そうして、少しの間、唇を重ねて……離れた。
名残惜しさを感じつつも、ドラウディロンは目を開いた。
愛しい男の顔が近くにあり、気恥ずかしくなって視線を逸らす。
「まさか、ドラウディロン殿が俺の事を好きになってくれていたとは」
そんな事を言う男の顔を見て、そして……ドラウディロンは目を細めた。
「ド、ドラウディロンだ……っ」
「ん?」
「敬称は不要だ……嫌なら、せ、せめて二人っきりの時ぐらい呼び捨てにしてくれ」
一国の王女に対して、呼び捨てなど不敬で不適切だ。
だが、ベリアルには竜王国の王女としてではなく、ただの“ドラウディロン”という女として扱って欲しかった。
「なら……ドラウディロン?」
「な、なんだ」
愛する男に名を呼び捨てにされて、少し身体が疼く。
まるで自分のものだと言うような扱いに、心臓が高鳴る。
「俺の事も呼び捨てにして貰っていいか?」
「……で、ではベリアル、と。その、いいのか?」
「いいとも」
互いに呼び捨てにする。
それはつまり、この場では身分など存在せず……その身一つの男と女として、関係を持つということ。
「……ふふ、ふふ」
小さく笑みを浮かべる。
口から溢れてしまうほど、幸せだった。
好いた男と両想いになれる。
それがどれだけ幸せなことか、ドラウディロンは噛み締めていた。
「それじゃ、ドラウディロン」
「ん?なんだ?」
「寝室まで行こうか」
「……ん?」
ドラウディロンは首を傾げた。
どうして寝室に行くのか。
良い子は寝る時間とでも言いたいのか。
一瞬、そんな事を考えたが……ドラウディロンは、気付いた。
ベリアルの視線が少し、いやらしいものになっている事に。
それは、つまり──
「……あっ、……ぅ、わ、分かった……」
寝室で
嫌ではない。
むしろ、それを望んでこの部屋に来た。
だというのに、土壇場になって尻込みをしていた。
「ドラウディロン、嫌なら別日でも良いんだが……」
「い、嫌ではない!そ、その……」
本当に、嫌ではない。
寧ろ、期待している。
それでも尻込みしてしまうのは、きっと──
「は、初めてだから……その、緊張してるだけだ……」
上手くできるか、不安なだけだ。
身体を重ねて、まぐわって、気持ち良く出来るか不安なのだ。
ベリアルは複数の側室がいるのだと、ドラウディロンは知っている。
故に、その側室と比べられて、拙いのだと思われたら……愛も冷めてしまうかも知れない。
そう考えれば考えるほど、不安になって──
「大丈夫、心配しなくていい」
「ベ、ベリアル……」
ベリアルが耳元に口を近づけて、囁く。
「優しく……ドラウディロンが気持ち良くなれるよう、俺も努力するから」
それはドラウディロンの懸念と少しズレた返答だった。
しかし、それでも……身体が熱くなってしまう。
先程までの不安を、期待が遥かに上回ってしまった。
「あ、あぁ……」
思い出す光景は、先日覗き見してしまった
気持ち良さそうによがり、喘ぐ、
そして、ベリアルの大きく魅力的な
下腹部がぎゅぅ──と、締め付けられるような、そんな感覚。
「よ、よろしく……頼む……」
絞り出した同意の言葉は、今にも消えそうな……かぼそい、声だった。
次回、エッチ
竜王国編の後は、聖王国編の予定です。
(閑話を挟むかもしれないです)
聖王国編で欲しい話
-
カルカ・ベサーレス
-
ケラルト・カストディオ
-
レメディオス・カストディオ
-
ネイア・バラハ