※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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グロテスクな描写があります。


#7 純愛エッチ クレマンティーヌ(4)

リ・エスティーゼ王国、日が落ちつつあるエ・ランテル。

茜色に照らされた、宿屋の一室。

 

そこでは一組の男女がまぐわっていた。

 

 

「あ゛っ♡♡ん゛っ……♡♡♡」

 

 

仰向けになったクレマンティーヌは、男に組み伏せられ貪られていた。

男の大きな男性器(ちんぽ)がピストンする度に、クレマンティーヌの胸が揺れる。

白い肌には赤みがかかり、上気し、高揚した顔で嬌声をあげる。

 

 

ぬっぢゅ♡ぬっぢゅ♡♡

 

「お゛っ……♡♡そこっ♡凄くい゛い……♡♡♡」

 

 

クレマンティーヌと男の結合部から、白い液体が垂れる。

既に、二度の膣内射精(なかだし)をされていた。

そして、射精しながらも繋がったまま性行為(セックス)を継続している。

 

休む暇のない三回戦。

クレマンティーヌは快楽に溺れていた。

 

性行為(セックス)に対して持っていた苦手意識や嫌悪感は、もう既にない。

短期間で何度も性行為(セックス)をした所為で、クレマンティーヌの膣は男のモノに合わせた形になってしまった。

 

最早、自慰では決して満足できなくなっている。

この男との性行為(セックス)以外では、絶頂できなくなっていた。

 

 

ぬっぢゅ♡ぬぢゅぅっ♡♡♡

 

「あっ……♡♡んっ♡♡」

 

 

既に何度も絶頂を迎えている。

男との三日ぶりの性行為(セックス)……溜まっていた性欲が発散されていくのを感じた。

 

 

「キ、キス……して……♡」

 

 

クレマンティーヌのおねだりに、男は口付けを落とした。

 

 

ちゅっ♡♡

 

「んっ……♡」

 

 

舌を絡め合いながら、クレマンティーヌは男の背に手を回し抱きしめた。

密着した状態、口も膣口も犯されている。

それが堪らなく好きだった。

 

闇の中に生きるクレマンティーヌにとって、誰かに愛されるという事は殆どない。

好意を持ってくる相手なんていない。

だがそれは、悲しい事ではなかった。

クレマンティーヌに他者からの愛は、憐れみのようで鬱陶しかった。

 

だが、この男だけは別だ。

最初は嫌だった。

次は打算だった。

三度目は自分から乞うた。

今は当たり前となった。

 

クレマンティーヌは考える。

今になって考えれば、この男との繋がりは悪いものじゃなかった。

 

自身の古傷を癒せる。

戦士である自身より強い。

そして何より、自分(クレマンティーヌ)を見下さない。

 

クレマンティーヌは男との逢瀬を好ましく思っている。

 

 

どちゅっ♡ばちゅんっ♡♡

 

「ん゛っ……♡んむ……ッ♡♡♡」

 

にちゅぬちゅ♡♡

 

 

クレマンティーヌは、男が他に女を抱いた事を知っている。

それでも文句はなかった。

 

 

(好き♡好゛きっ♡♡好き゛……ッ♡♡♡♡)

 

 

普段、何よりも一番で居たいクレマンティーヌであったが、男に『選ばれている』というだけで満足してしまっていた。

 

 

どちゅどちゅどちゅ♡♡♡

 

「ん゛っ♡♡んん゛♡ん゛ぅ♡♡♡」

 

 

男のピストンが激しくなる。

何度も性行為をした結果、クレマンティーヌは理解していた。

これは男が射精する合図なのだ。

 

 

どちゅん♡♡♡ばちゅんっ♡♡♡

 

「ん゛ぅッ♡♡♡んん゛ぅん゛っ♡♡♡♡」

 

 

男に抱きしめられ、激しく愛される。

クレマンティーヌにとって、それは満たされた時間だった。

 

腰を震わせ、膣内をきゅぅと締める。

 

 

どちゅんっ♡♡♡

 

「んん゛〜〜ッ♡♡」

 

びゅるるるるるるる♡♡♡♡

 

 

クレマンティーヌの中に精液が吐き出された。

それと同時に深い絶頂に誘われ、クレマンティーヌの脳は多幸感で支配される。

 

 

(イクっ♡イク゛イク゛イク゛♡イっ、ク゛ぅうッ♡♡♡♡♡)

 

ぷしっ♡♡♡

 

 

潮を噴き、クレマンティーヌは震える。

腰の力が抜けて、力なくベッドに身を沈めた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「ベリちゃんさー、何か悩み事あるのー?」

 

 

汗や体液を拭き取りながら、クレマンティーヌが俺に質問した。

 

 

「ん?そう見えるか?」

 

 

俺は鏡を見て、髪を整えていた。

そうして、クレマンティーヌへと視線を戻した。

 

 

「だってさー、今日エッチしてる時、ノリ悪かったしさー」

 

「……そうか?」

 

「うん。普段もっとオラオラ!って感じじゃーん」

 

 

オラオラって何だよ。

でも、まぁ……そうか、クレマンティーヌは鋭い。

 

先日のラナー関係で俺は敗北感を感じていたのだ。

俺に陵辱されても、愛し合う二人の姿に。

 

俺は後頭部を掻きながら、クレマンティーヌに向けて口を開いた。

 

 

「……愛とは何か、考えてたんだ」

 

「は?くっさ……えー?」

 

「そこまで言わなくて良いだろ」

 

 

しかし、まぁ確かに……柄でもないし。

急にこんな事を言われたら、そんな反応もするか。

 

 

「ごめん、ごめーんって。でもさ、何で急にロマンチストになったの?」

 

「……あー、いや、その、な」

 

 

クレマンティーヌの前で、他の女を強姦した話なんて、できる訳が──

 

 

「もしかしてさー、別の女とエッチしたことに関係してるー?」

 

「……何で知ってるんだ?」

 

「分かるよー?女っていうのはー、そういうのに鋭いの」

 

 

凄いな、クレマンティーヌ。

 

 

「……嫌じゃないのか?他の女に手を出したら」

 

「別にー?ベリちゃんがさ、最近は私に気ぃ使ってるの知ってるからねー。他の女を抱いたぐらいで、愚痴愚痴言うつもりはないし」

 

 

思い当たる節はある。

クレマンティーヌと性行為(セックス)をする際、彼女の限界が来たらすぐ辞めるようになった。

だが、それは玩具が壊れないように遊び方を優しくする程度の物だ。

思いやりなんかじゃない。

 

 

「……そうか。まぁ、俺とクレマンティーヌはただ性行為(セックス)するだけの仲だからな。恋人でもないし」

 

「そうそう……そうだよねー」

 

 

クレマンティーヌは頷いた。

しかし、ちょっと表情が歪んだのを俺は見過ごしていなかった。

そこには、確かに俺の発言に対する不服があった。

 

クレマンティーヌは俺に好意を抱いている。

 

しかし──

 

クレマンティーヌが俺を好きなのは、淫魔(インキュバス)の種族スキル<性奴隷作成>の所為に違いない。

アレは性行為(セックス)をした相手の好意を増幅させるスキル。

程度の差はあれど<支配(ドミネート)>と同じ、洗脳系スキルだ。

そうでなければ強姦してきた相手に、好意を持つ理由がわからない。

 

そう考えると、クレマンティーヌからの好意を虚しく感じる。

精神干渉系のスキルは死ななければ解けない……つまり、死ぬまでクレマンティーヌは俺に植え付けられた偽りの愛を持ち続ける。

 

だがそれは、ラナーやクライム等とは違う、虚実だ。

捻じ曲げられた意思に過ぎない。

 

いや、彼らの関係を羨ましいと思っている訳ではない。

それでも、自分を虚しく感じる時がある。

 

恐らく、淫魔(インキュバス)化による精神変容を受けていない、俺の部分が。

自分勝手でワガママ過ぎるが。

 

 

「……クレマンティーヌ」

 

「えー?なに、ベリっちゃん」

 

 

黒いタイツのようなものを履きながら、クレマンティーヌが笑った。

 

俺はクレマンティーヌのことを好きになっていた。

だがそれは恋心ではない。

恋人にしたいとか、妻にしたいとかではない。

そう、愛着が沸いていたんだ。

 

彼女を傷付けたくないと、思ってしまった。

連続殺人鬼(シリアルキラー)だとしても、だ。

 

愛着を持ってしまった。

特定の個人に、持つつもりもなかった相手に。

 

だから、俺は──

 

 

「この後、飯に行くか?行くなら奢ろう」

 

「へー、いいね。お酒飲める所にしてよー?」

 

「それは別に良いが……この間みたいに泥酔したら、捨てていくからな」

 

 

彼女を、見捨てる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

深夜、エ・ランテル……共同墓地。

ズーラーノーンの仲間であるカジットが、儀式を開始した。

『死の宝珠』を使用した魔法儀式『死の螺旋』を行ったのだ。

 

クレマンティーヌが法国から盗んだ『叡者の額冠』を拉致してきたンフィーレアに使用させる事で、第七位階魔法<不死の軍勢(アンデス・アーミー)>を発動させた。

 

結果、エ・ランテルの巨大な共同墓地にて大量のアンデッドを生み出す事に成功した。

 

これにより、エ・ランテルの街はアンデッドによって蹂躙され、大量の生者を生贄に捧げる……その予定だった。

 

 

(……まぁ、ベリちゃんなら大丈夫でしょ)

 

 

ほんの少しの心配はしたが、彼は自身より強いから何とかなる……と、クレマンティーヌは勝手に納得した。

 

 

そうして、夜は更ける。

 

 

共同墓地では大量のアンデッドで溢れかえっていた。

衛兵達や冒険者が戦うも、勝算は薄い。

 

 

(……つまんないなー)

 

 

クレマンティーヌはその様子を眺めていた。

昔のクレマンティーヌならば、十分楽しめていた。

だが、今……クレマンティーヌの嗜虐心は薄れていた。

人を殺す事は……今も少しは楽しめるが、昔ほどではなくなっている。

 

その自身の変化を実感しつつ、霊廟へと降りる。

 

ンフィーレアを攫う際、守ろうとしてきた冒険者を殺害した。

普段ならば充分に愉しむ筈だったが、そんな気分にはなれなかった。

殺害した冒険者のプレートだけ奪い、今はここにいる。

 

 

(エ・ランテルが無くなったら、ベリちゃん怒るかなー……?)

 

 

クレマンティーヌは、『ベリアル』と名乗る男について知っている情報が殆どない。

彼は話そうとせず、クレマンティーヌも訊けなかったからだ。

 

クレマンティーヌが『ベリアル』について、知っているのは──

女を平気で犯す強姦魔。

戦士の自分よりも強い魔獣使い。

性行為(セックス)が上手い。

キスするとちょっと喜ぶ。

好きな食べ物は肉や魚。

苦手な食べ物はピクルス。

格好付けたがりだが、実はちょっと抜けてる。

……ということだけだ。

 

どこで生まれて、どこに住んでいるのか、何をしているのか……それは知らない。

知りたくない訳ではなかった。

だが、クレマンティーヌは質問する事によって捨てられてしまうリスクを避けたのだ。

クレマンティーヌは男との関係を切られない為に、『都合のいい女』を徹底していたのだ。

 

だから、クレマンティーヌは男の事を殆ど知らない。

繋がりは薄い。

 

指に嵌めた<伝言(メッセージ)>の指輪だけが、彼に対する繋がりだった。

 

 

クレマンティーヌが、指輪を眺めていると……声が響いた。

カジットと誰かが会話している。

 

 

「……ふーん、冒険者か。八つ当たりさせて貰おうかなー」

 

 

クレマンティーヌは腰に装備したスティレットを確認し、戦闘準備を整える。

それと同時に、外から男の声が聞こえた。

 

 

「──刺突武器を持った奴がいる筈だ。伏せておくつもりか?それとも、私達が怖くて隠れているのか?」

 

 

その言葉に苛立ちながら、クレマンティーヌは霊廟からゆっくりと出た。

 

 

「怖い訳ないじゃーん。アンタらバカなのー?」

 

 

そう言いつつ、冒険者達の姿を見る。

 

 

(黒い全身甲冑の男……戦士か。それでもう一人は黒髪の女。愛人じゃなければ、魔法詠唱者(マジックキャスター)ってとこ……随分とー、こっちを睨んでるけど、恨みでも買ったかなー?)

 

 

「控えろ、ナーベ」

 

「しかし、モモンさ──ん」

 

 

名前が分かり、クレマンティーヌは片眉を上げた。

聞いた事のない名前だったからだ。

 

 

「自己紹介どうもー?私はクレマンティーヌ、よろしくね」

 

 

挨拶をしつつ、カジットの横を通り過ぎる。

黒い鎧……モモンは微動だにしない。

 

高位の戦士同士の戦いでは、一瞬の隙で間合いを詰められる危険性がある。

故に、この状況で脅威(クレマンティーヌ)に対して構えないモモンに、落胆した。

 

 

(なんだ、素人ー?ちょっとばかし身体がデカいから、調子乗って冒険者になっちゃったのかなー?御愁傷様)

 

 

クレマンティーヌはマントの下にあるスティレットを静かに抜いた。

そんな様子を気にせず、モモンはナーベへと視線を向けた。

 

 

「ナーベはそこの魔法詠唱者(マジックキャスター)の相手をしろ。私はその女の相手をしよう」

 

「畏まりました。モモンさ──ん」

 

 

女の呼び方も気になるが、それよりもクレマンティーヌは気になることがあった。

その女を相手する──という言葉。

それはつまり、一対一の戦いで自身に勝利できるという思い上がりだ。

 

 

「行くぞ、クレマンティーヌ」

 

 

直後、モモンが前進してきた。

結構な速度で、だ。

 

 

(速い……けど、ベリちゃん程じゃない。このクレマンティーヌ様の方が速いぐらい。まぁでも、そりゃ自惚れちゃうかー)

 

 

モモンの前進に合わせて、クレマンティーヌは後退した。

一対一がお望みであれば、受けて立つ……という意思表示だ。

 

そのまま、霊廟前に居るカジットとナーベを放って、墓地を移動する。

墓石を避けながら加速するクレマンティーヌに対して、墓石を踏み砕きながら移動するモモン。

 

 

(確かに身体能力は凄いみたいだけどー、身体の使い方がダメダメ。アホかよ。戦士舐めてんのか?)

 

 

苛立ちを感じていると、突然、モモンが立ち止まった。

 

 

「この辺だな」

 

「へぇー、ここで死ぬのがお望み?空いてる墓地みたいだしさー、死んだらそのまま埋めてあげるよー」

 

 

クレマンティーヌは挑発を交えながら、マントを脱いだ。

 

確かに、ある程度は強い。

だが、動きがまるでダメだ。

 

こんな奴に、自分が負ける訳ない。

そう思い──

 

 

「……良い指輪だな」

 

「んー?」

 

 

モモンがクレマンティーヌの持つ指輪に対して、指を指した。

 

 

魔法道具(マジックアイテム)か?」

 

「ハッ、言う訳ねぇだろ。バカが」

 

 

直後、クレマンティーヌは地面を蹴った。

 

 

(さっさと目の前の冒険者を殺して、この儀式も終わらせて、そんで──)

 

 

クレマンティーヌは油断していた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、その油断は……その命を以て、償う事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ……!?」

 

 

強烈な破壊音が響いた。

宙へと投げ飛ばされたクレマンティーヌは体勢を整えながら、武技<不落要塞>を発動した。

 

墓石を砕きながら、クレマンティーヌは転がった。

掘り起こされた墓に落下し、墓穴へと滑り込む。

相手から見えないように隠れつつ、呼吸を整える。

 

 

(クソッ、何だあのバケモノ!?ふざけるな!)

 

 

クレマンティーヌの攻撃で傷一つ負わず、攻撃は全て致命傷となる。

武技により衝撃は受け流しているが、それでも受け切れていない部分がある。

 

素人のような技量に対して、英雄を上回る身体能力……そんな不気味な冒険者に、クレマンティーヌは顔を顰めた。

以前までのクレマンティーヌならば、それでも戦おうとしただろう。

まだ、直接攻撃を通して……奥の手を使えば勝てると。

 

そう、裏切ったとはいえ、クレマンティーヌはスレイン法国最強の特殊部隊である漆黒聖典に所属していた。

武勇すらない一端の冒険者相手に、負ける筈がないと……そう考える。

 

筈だった。

 

しかし、クレマンティーヌは埒外の強者の存在を知っていた。

自身を屈服させた男は、聞いた事もない名前だった。

 

故に、クレマンティーヌは判断した。

 

墓穴の中で、自身の指輪を……<伝言(メッセージ)>を起動した。

 

 

「ベリちゃん、ちょっといい?」

 

『……クレマンティーヌか。何の用だ』

 

 

バケモノにはバケモノをぶつけるべきだと、そう判断した。

どちらが強いかは分からないが──

 

……そう、どちらが強いかは分からない。

分からないのだ。

 

 

「…………」

 

『どうした、クレマンティーヌ』

 

 

もし、モモンがベリアルより強ければどうなるか。

二人とも死ぬだろう。

 

そして、ベリアルを呼ばなければ……死んでも、自分一人だ。

 

 

「……あのさー」

 

『あぁ』

 

 

クレマンティーヌは、<伝言(メッセージ)>を発動している指輪を握った。

 

 

「明日さ、良かったら……ちょっとお話しない?」

 

『……お話?』

 

「そう、ちょっとね……これからの事で、色々」

 

『……お前、もっと今、別に話すべき事があるんじゃないか?』

 

 

男の声にクレマンティーヌは息を深く吐いた。

何でもお見通しのようだ。

自身が危機に陥っている事を……そして、助けが必要なことを。

 

それでも──

 

 

「ないよ」

 

『あるだろう、もっと……何かが』

 

「ううん、ないよ。だから……じゃあ……またね、ベリちゃん」

 

『……おい、待て。クレ──

 

 

そして、指輪を抜いて墓地に捨てた。

男に<伝言(メッセージ)>を繋げられる魔法道具(マジックアイテム)……そんなものを、あのモモンに奪われたら、迷惑がかかってしまう。

 

そして何より、その指輪を誰かに取られたくなかった。

取られるぐらいならば、ここで捨てた方がマシだった。

 

 

「さーて……と」

 

 

無論、クレマンティーヌに死ぬつもりはない。

生きて帰って来れたのなら、指輪を拾いに戻るつもりだ。

 

墓穴から飛び出して、スティレットを構える。

少し離れた距離にいた全身甲冑の冒険者、モモンが視線を向けた。

 

 

「そんな所に居たのか」

 

「居たよー、気付かなかった?」

 

 

いつもの調子で、クレマンティーヌはスティレットを構えた。

地面を蹴り、複数の武技を発動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして──

 

 

 

 

 

 

 

クレマンティーヌの身体が、モモンによって抱き寄せられた。

 

 

「……何で、死なない……?」

 

 

モモンのヘルムの隙間に、スティレットが二本突き刺さっていた。

両目を貫き、スティレットに込めていた魔法を開放した。

 

なのに──

 

 

「答え合わせといこうか?」

 

 

漆黒の鎧が霧のように霧散した。

そして、その中に入っていたのは──

 

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)……?」

 

「……正確には違うが、近いとは言っておこう」

 

 

肉の付いていない骸骨。

生者を疎むアンデッドだ。

 

そして……死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は魔力に長けた存在。

魔法詠唱者(マジックキャスター)の筈だ……それが、ただ、身体能力のみで、自身と渡り合って……。

 

クレマンティーヌは恐怖した。

それと同時に安堵もした。

 

こんなバケモノに勝てる訳がない。

ベリアルを呼ばなくて良かったと……そう思った。

 

 

「さて、もう抵抗はしないのか?」

 

「……チッ、無駄だって事は知ってんだよ」

 

 

クレマンティーヌは諦めていた。

ここでどんなに足掻いても逃れる事は出来ないと理解していた。

 

絶望はしていない。

死への達観と、『彼』を巻き込まずに済んだ安堵だけがそこにあった。

 

そして、モモンの目が赤く輝いた。

 

 

「……そうか。では、始めるとしよう」

 

 

アンデッド……モモンが腕に力を込める。

強烈な圧迫感に、クレマンティーヌは顔を青ざめた。

 

 

「お、お前……」

 

「ゆっくりと、処刑してやろう」

 

「……趣味、わ、っるー……」

 

 

クレマンティーヌは自身の末路を理解した。

このまま万力のような力で抱きしめられ……死ぬのだと。

ゆっくりと、身体が圧迫されていく。

 

 

「ぐっ、あ゛……っ」

 

 

腕の骨が折れた。

痛みによって堪えようとしていた声が響く。

 

 

「ぎ、ぃっ……っ」

 

 

肋にヒビが入っている。

『死』が急速にクレマンティーヌへと近付いている。

 

 

「っ、が、ぁ……!」

 

 

血の気が引く。

抜け出そうとしても、身体は微動だにしない。

 

 

「さて」

 

 

直後、モモンの腕の力が弱まった。

 

 

「あ……?」

 

「お前にチャンスをやろう。幾つかの質問に正しく答えられるのであれば、処刑を取り止めてやろう」

 

「っ……尋問って、訳か」

 

「いいや、拷問だ」

 

 

クレマンティーヌは痛みから汗をかく。

しかし、強がった笑みを浮かべた。

 

目の前には、アンデッドの顔が見える。

 

 

「先ほど、お前は指輪をしていた筈だ。付けていないようだが、どうした?」

 

「…………」

 

「答えないのであれば、罰が必要だな」

 

 

締め付けが再開する。

 

 

「ぐ、ぅっ……!」

 

 

冒険者のプレートで組んだ鎧が弾けて、プレートが落ちた。

胸部に金属が刺さり、血が流れる。

 

 

「では質問を変えよう。お前は先程、<伝言(メッセージ)>を使っていたな?相手は誰だ」

 

 

何故、このアンデッドが知っているかは分からなかった。

それでも、関係ない。

クレマンティーヌは首を横に振った。

 

 

「使って、ね゛ぇーよ」

 

「……そうか」

 

 

ギチギチッ──と音が響く。

 

 

「っ!?ぁ゛、が……!?」

 

 

クレマンティーヌの腕が紫色に変色した。

既に感覚はなくなっていたが、痛覚のみ感じ取った。

 

 

「言え。お前は誰と会話していた。相手の名を言え」

 

 

クレマンティーヌは鼻血を流した。

内臓が傷付き、圧迫されて血が吹き出したのだ。

 

 

「っ、ぁ……誰が、言う、かって……」

 

「そうか。ではもう少し力を強めよう」

 

 

視界が点滅する。

間違いなく、死ぬ。

このまま、あと少しで、死ぬ。

 

クレマンティーヌは口を開いた。

 

 

「ぐ……あ゛、ぎ……ぁ」

 

 

血が呼吸に混じり、声は響かない。

しかし、そんなクレマンティーヌを見てアンデッドが顔を近づけた。

 

 

「ほう、何か言いたいようだな」

 

「っ……ば……れ」

 

 

クレマンティーヌの視界は既に半分ほど見えなくなっていた。

息をする度に激痛が走った。

 

 

「聞こえないな。もう一度、言ってみろ」

 

 

そんな状態でクレマンティーヌは、アンデッドへと視線を合わせた。

恐ろしい形相をしたアンデッドを前に、クレマンティーヌはいつもと同じ、挑発的な笑みを浮かべた。

 

 

「くた、ばれ……バー、カ」

 

「……そうか、もういい」

 

 

ミシミシ!──と音が響く。

クレマンティーヌの胸部の骨が折れた。

内臓に肋が突き刺さる。

 

 

「ぎゃ、あ……っ!」

 

「もう喋らなくていいぞ。クレマンティーヌ」

 

「あ゛、ぎ、ぃ……っ」

 

 

肺が圧迫され、声が漏れる。

内臓が押し潰されて、身体が痙攣する。

 

唐突に片目が見えなくなった。

何か、壊れてはいけない場所が壊れたのだろう。

 

 

「ぐ、ぶぁ……」

 

 

クレマンティーヌの口から、血が混じった吐瀉が漏れる。

最早、何も考えられなくなっていた。

痙攣するだけの人形になっていた。

 

それでもアンデッド……モモンガは力を緩めず、逆に力を込める。

 

 

クレマンティーヌの脳内に、一瞬だけ……男の顔が──

 

 

ゴキリ、と音がした。

体の中心にある太い骨が、折れた。

それと同時に、クレマンティーヌの生命は完全に消失した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「……ふん」

 

 

最早、痙攣すらしなくなったクレマンティーヌを、モモンガは投げ捨てた。

共同墓地の地面へと力なく転がり、ぐちゃり──と鈍い音を鳴らした。

 

釣り上げられた深海魚のように、片目は飛び出し……内臓が口から漏れていた。

凄惨な様子をモモンガは見下し……何も感情を見せずに、魔法道具(マジックアイテム)を取り出した。

 

そして、そこから水を自身の体に流し……付着した返り血と吐瀉物を洗い流した。

 

 

モモンガは思案する。

 

 

(……しかし、この女がしていた指輪。あれは課金ガシャの外れアイテム『内緒で通話くん』だった筈だ。どこで手に入れたんだ?)

 

 

自身と同じユグドラシルのプレイヤー。

ナザリックに対して害のある存在である可能性が高い。

 

そう考えて、死体となったクレマンティーヌを見下した。

 

 

(生き返らせて、拷問しようかな。<支配(ドミネート)>の正確性も分からないし、出てきた情報を重ねて調べるのがいいよな。うん、そうしよう)

 

 

内臓が溢れて、身体もあらぬ方向に曲がったクレマンティーヌの腕に触れた。

 

 

(ニューロニストか、恐怖公か。女だし……恐怖公の眷属に、生きたまま内臓を食わせるのがいいかな。まぁ、取り敢えず、この死体をナザリックに──

 

「やぁ、夜遅くまでご苦労様。モモンガさん」

 

「うわぁっ!?」

 

 

急に名前を呼ばれて、死の支配者(オーバーロード)の肩が跳ねた。

そして、慌てて振り返ると……やはり、見知った顔があった。

 

 

「もう、『べり❤︎ある』さん!驚かせないで下さいよ!」

 

「いや、申し訳ないな。でも、考え事してるモモンガさんが気付かなかっただけで、驚かせようなんて少しも考えていないさ」

 

「まったく……いつから居たんですか?」

 

「彼女が抱き締められる前には居たよ」

 

 

モモンガにとって、『べり❤︎ある』は掛け替えのない友人だった。

去っていくギルドメンバーの中で唯一、ナザリックに残ってくれた仲間だからだ。

 

そんな『べり❤︎ある』が、無言で死体を見下ろした。

 

 

「……思ったより、俺って人間だったんだな」

 

 

その表情は無表情だった。

普段の飄々とした顔ではなく、無表情。

違和感を覚えつつ、モモンガは口を開いた。

 

 

「あ、『べり❤︎ある』さん。その女、プレイヤーしか持ってないようなアイテムを持ってたんですよ!もしかしたら、他のプレイヤーの情報を持ってるかも知れないです」

 

「……そのアイテムは、何処に?」

 

「それが……何処かに隠してしまったみたいで」

 

「……そうか。余程、取られたくなかったんだな」

 

「みたいですねぇ」

 

 

モモンガの言葉に『べり❤︎ある』は深く息を吐いて、視線を戻した。

そして、口を開く。

 

 

「そのアイテムを渡したのは俺だ」

 

「……え?『べり❤︎ある』さんが?」

 

 

モモンガの思考が停止した。

 

この女……クレマンティーヌの持っていたアイテムは、『べり❤︎ある』の所有アイテム。

『べり❤︎ある』の所有アイテムを預けられた女……が、目の前で死んでいる。

モモンガ自身で殺したのだ。

 

瞬間、アンデッドに流れる筈のない、冷や汗がモモンガの身体に流れた……気がした。

慌てて、モモンガは口を開いた。

 

 

「え!?そ、それ本当ですか!?」

 

「本当だとも」

 

 

同意された瞬間、モモンガの身体は震えた。

 

 

(や、やってしまった〜〜〜っ!)

 

 

仲間がお気に入りにしている人間を殺してしまったのだと、モモンガは理解した。

女を殺した事に気を病みはしないが、『べり❤︎ある』に嫌われてしまうかもしれない……という恐怖がモモンガの心に満ちて──

 

 

急激に冷静になった。

 

 

一定量の感情に抑制がかかったのだ。

 

それでも恐怖と『やってしまった』という後悔はあり、モモンガは──

 

 

「す、すみませんでしたぁっ!」

 

 

『べり❤︎ある』に頭を下げた。

その様子を『べり❤︎ある』はしばし眺めてから、モモンガの肩を軽く叩いた。

 

 

「いや、頭を下げないでくれ。元々、こうするつもりだったんだ」

 

「……え?殺すつもりだったんですか?」

 

「あぁ、だから……モモンガさんは気にする必要はない」

 

「え……そ、そうですか」

 

 

モモンガから目を逸らし、『べり❤︎ある』は腰を下ろした。

そして、死体となった女の顔を見た。

 

 

「この女が死んだのは自業自得……いや、俺のワガママの所為だな」

 

 

そして、頬に触れた。

血がべっとりと付いていた。

 

『べり❤︎ある』は手に付着した血の感触を確かめて、立ち上がり……モモンガへと視線を向けた。

 

 

「……モモンガさん、ちょっとワガママ言っていいかな?」

 

「あ、はい。どうぞ、どうぞ」

 

 

モモンガが促すと、『べり❤︎ある』は腰に手を当てた。

 

 

「……俺が金貨を払うからさ。<真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)>を使ってくれないかな」

 

 

血の付いた手が、月の明かりに照らされて……歪に光を反射していた。

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  • 純愛エッチ
  • 寝取り
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