【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話 作:口だけの淫魔
燃え盛る街、目の前には巨体の悪魔。
悪魔の手にはこの国の女王様が握られている。
「あ、貴方は……?」
背後にはボロボロになった神官の女。
それを庇うように立つ俺。
……側から見れば英雄譚のような光景。
だが、実際はマッチポンプの八百長だ。
少し時間は遡る。
一週間程前、魔導国にローブル聖王国……その神官団の団長、ケラルト・カストディオから嘆願書のような物が来ていた。
色々、長々と書かれていたが……要約すると、魔皇バアルが攻めて来そうなので漆黒の英雄モモンに助けて欲しい!というお願いだ。
これはそう、俺が昔、聖王女カルカや神官団長ケラルトに悪夢を見せた甲斐があったという訳だ。
魔皇バアルの名に、聖王国だけでは不安だからと事前に助けを求めた。
うむ、これこそが俺……というか、ラズロの策略である。
しかし、デミウルゴスの計画は少し違った。
聖王国を存続させたまま、しかし支配権を魔導国が握る。
その為にデミウルゴスは聖王国と敵対関係にある亜人達を利用し、聖王国を攻撃。
聖王女カルカと神官団長のケラルトを殺害し、聖騎士であるレメディオスを孤立させる。
滅びの危機にある聖王国を魔導国が救い、民の好感度を稼ぐ。
更に上層部を
それが元々の計画だ。
俺はその計画に修正を加えた。
だってさ……こう、悪い事もしてない聖王女達を殺すのは……少し寝覚めが悪いというか。
あんな美人で綺麗で可愛い女を殺すだけ、というのは勿体無いというか。
どっちが建前で本音なのか俺にも分からんが、とにかく“もったいない”という一言をデミウルゴスに話した。
そうしたら、デミウルゴスが──
「なるほど、“もったいない”ですか……彼女達には利用価値はまだあると……流石は至高の御方の一人、ベリアル様でございます!支配した後の事を考え、人材をより有効活用しようとは!」
──とかメチャクチャ早口で言ってきた。
俺はお前の忠誠心が怖いよ。
という訳で、当初の計画は破棄。
俺とラズロで何とか煮詰めて、そこにデミウルゴスが色々と手を加え、新たな計画が立案されたのだった。
それこそ、聖王女達に危機感を覚えさせてから、魔皇バアルで襲撃……その後に聖王国を救い、魔導国に感謝させる作戦だ。
行き当たりばったり寄りではあるが、いつも通りのマッチポンプだ。
『貴様……魔導国のベリアルだな』
おっと、今は目の前の事に集中しよう。
俺の前に居るのは魔皇バアル……俺の淫魔形態に化けたラズロだ。
……というか、アレ、俺の姿の一つなんだが、最近全然変身してないんだよな。
寧ろ、ラズロの方が変身してる気がする。
別に、俺は人間形態の方が気楽で良いし、女の子からのウケも良いけどさ。
「う、ぅ……」
あ、魔皇バアルに握られているカルカが気絶した。
強く握りすぎだ。
「聖王女様を離して貰おうか、魔皇バアル」
俺はいつもの<
こういう時は出来るだけ“きざ”に振る舞うといい……って、演技指導担当のパンドラズ・アクターが言ってた。
少しでも恥ずかしく思ってしまうと、嘘くさくなってしまう。
そうなってしまうぐらいなら、多少は“きざ”な方が良いらしい。
まぁ、これってマッチポンプだしな。
格好つけた喋り方をすると俺も少し恥ずかしいんだよな。
『まだあの時の礼をしていなかったな……ここで返させて貰うぞ!<
おっと、戦闘パートか。
魔皇バアルが魔法を行使し、淫魔を三体も召喚してくる。
一番最初に出てきたのは……
ぶよぶよした職種の塊で、再生能力を持つタンクだ。
次に出てきたのは……
仮面を付けた人形で、デバフを投げてくるキモい奴だ。
最後の一体は……
顔面に目が八つあって口が裂けた女の悪魔だ。
あれをサキュバスって言い張るの無理があるだろ。
「そ、そんな……あんな、高難度の悪魔を三体も……!?」
背後でケラルトが絶望している。
まぁ確かに、まっすぐ闘いに行ったら高レベルのプレイヤーでも苦労する敵だ。
前衛の再生能力持ち
最後に後衛の
プレイヤー泣かせの害悪チーム。
面倒な組み合わせだ。
そんな事は現地人のケラルトには分かってないかも知れないが、それでも高位の悪魔というのは分かるらしい。
……正確には悪魔じゃなくて淫魔なんだけどね。
俺はちらっとケラルトを見る。
神官服はボロボロであられもない姿を晒している。
露出した胸元を手で隠し怯えた顔で淫魔どもを見ている。
エッチな格好だが……あんなに怯えているとエロいより可哀想が勝って、あんまり唆られないな。
ま、ちょっと好感度稼ぎのついでに、安心させておくか。
「安心してくれていい、俺は負けないからな」
……う、うーん、少し“きざ”過ぎるか?
必死に押し殺しているが羞恥心がヤバい。
さて、ケラルトの反応は──
「…………え?」
呆けているな。
あー、くそ、言わなきゃ良かった。
『行け!淫魔達よ!』
落ち込むのもそこそこに、淫魔達へと向き直る。
召喚主である魔皇バアルの指示で、淫魔が俺へ殺到する。
さて、前衛に再生能力持ち、そのすぐ後ろにデバフ持ち、後衛に遠距離攻撃持ち。
こういう面倒臭い奴らを相手にする時は、簡単な解決方法がある。
「<
俺の左手に、赤い結晶で出来た槍が生まれる。
それは赤い稲妻をバチバチと響かせており、右手にもつ剣とは少し異なる。
それを右手の剣で叩き落とし、そのまま身を捻る。
そして──
左手の槍を投擲した。
『ぴぎゃっ!?』
槍は
「一体目」
中々に嫌な断末魔の叫びが聞こえたが……やっぱりアレ、サキュバスって名乗ってるの嫌過ぎるな。
あ、自分では名乗ってないか。
名付けられただけか。
なら尚更、あの姿を見てサキュバスって名付けたのは意味不明だろ。
なんて考えていたら、
一定時間、身体を拘束するスキルだ。
魔法に近い力だが……まぁ俺の耐性を貫通する事はない。
淫魔は精神系を操作する魔法に絶対的な耐性を持っているからな。
でもまぁ、黙って命中するのも情けないし、ちゃんと避けよう。
俺は
そのまま俺は地面を蹴り、
ああいう
そのまま
「二体目……<
まだ完全に死亡してはいないが、これで動けない。
俺は振り返りながら、更に魔法で武器を作る。
今度はバルディッシュ……柄の長い斧だ。
それを振り回して、
何故、バルディッシュなのかというと……返り血が付着するとキモいからだ。
そうしてある程度の蓄積ダメージを与えた段階で、
「三体目」
そのまま柄を離して後退すれば、
まぁ、触手の殆どを切っておいたから抜く腕もないのだが。
そうして、準備は整った。
「まずは、<
俺が魔法を使用すると、手元に槍、剣、バルディッシュが現れた。
先程使用した武器と同様のもの……それらが宙に浮いている。
そのまま俺は、更に魔法を行使する。
「そして、<
それは物質を破壊した際、それに近似した物質も破壊し、爆発させる魔法だ。
ちょっとしたネタ魔法で、消耗品の投げナイフを投げて、もう一本を破壊する事で爆発させるのが主な用途だ。
まぁ、俺は自分で作った魔法武器でやるけど。
宙に浮かぶ武器の中から、バルディッシュを手に持ち、槍と剣を破壊する。
そうすれば……
そしてそのまま、俺は両手でバルディッシュの柄を持ち……叩き折る。
瞬間、
「これで終わり」
そう、タンクやらバッファーやら、
その中で最も危険度が高い、もしくは耐久力が低い奴を優先的に攻撃して無力化する。
それが対集団戦の基本だ。
これが互いに集団ならば、相手の前衛を集中砲火して押し切った方が楽なんだが。
「す、すごい……」
後ろから、ケラルトの感嘆が聞こえた。
……やっぱり恥ずかしいな。
彼女達は努力や研鑽によって力を得ているが、俺は娯楽の延長で手に入れた力だ。
ズルをしているようなもので、褒められてもこう、むず痒いんだよな。
「さて、前座はこれで終わりか? 魔皇バアル」
新たに剣を創造しながら、魔皇バアル……ラズロと向き合う。
……ってラズロ、目を輝かせるな。
他の奴らから見れば顔が山羊だし不気味に笑っているように見えるだろうが、俺からはニヤニヤしてるようにしか見えんぞ。
そんなに俺が戦ってるところ見れて嬉しかったのか?
……あー、竜王国のビーストマンを駆除しに行った時も、付いてきたがってたもんな。
でも、今はやめてくれ。
俺がちょっと呆れた目を向けると、ラズロ……魔皇バアルは顔を引き締めた。
『素晴らしい力だったが……甘いぞ、ベリアル。貴様は俺に攻撃できん』
魔皇バアルはそう言いながら、手で握ったままのカルカを前に突き出した。
少し力を込めたようで、カルカは苦悶の表情を浮かべた。
「っか……っは……」
「カルカ様……!」
振り返ると、ケラルトが慌てた表情で名前を呼んでいた。
ちょっと目が潤んでる。
……やっぱり可哀想だな。
ケラルトもカルカも。
あの辺で血塗れで転がってるレメディオスも。
誰も悪い事をしていないのに、こんな酷い目に遭わせて……ちょっと自己嫌悪だ。
この襲撃で聖騎士や神官、冒険者も少なくない数が殺されているし。
それは俺が立案した作戦だが……元々、デミウルゴスが想定していた作戦なら何倍も死んでいるだろう。
それが免罪符になるとは思えないが、何もしないよりはマシだったと思いたい。
どれだけ現地の誰かが可哀想に思えても、本質的に俺はナザリックの仲間だからな。
ナザリックのためならば、他の人間がどれだけ死のうと“仕方ない”と思えてしまう。
そして“仕方ない”と思えなければ、ナザリックにはいられない。
だから、俺に出来る事は……ナザリックの利益を追求しつつも、こうして少しは人が死なないように作戦を修正するだけだ。
……あー、憂鬱になってきた。
「ベ、ベリアル様! カルカ様を……っ! 聖王女陛下をお助け下さい!」
後ろからケラルトが懇願してくる。
何で俺の名前……って、魔皇バアルがさっき呼んでたか。
というか“様”付けなのか?
どちらの方が身分が高いとか、分からんが。
「分かっている……だが、無闇に攻撃すれば、聖王女を巻き込んでしまう」
「あ……っ」
俺の言葉にハッとした顔でケラルトが驚愕した。
普段のケラルトなら一瞬で分かるだろうが、そんな事すら思い付かない程に切羽詰まっているんだろうな。
『フフ、フハハハハハ! お優しい事だ! その慈悲深さに甘えて、俺も撤退する事にしよう!』
ちょくちょくラズロの本心が漏れて、褒めるような言葉が出てる。
バレるからやめてくれ。
「その前に聖王女を置いていけ。返してくれるなら、追撃しないと約束しよう」
俺の言葉にケラルトは何か言いたそうにしたが、押し黙った。
ケラルトは賢い。
俺が交渉しているのだと気付いたようだ。
だがしかし、魔皇バアルは醜悪な笑みを浮かべた。
『ククク、良いだろう。その前に──
魔皇バアルがカルカの胸元を撫でると、光の球体が体内から現れた。
まるで抜き取るかのように魔皇バアルは手に握る。
『そら、絞りカスだ! 受け取るがいい!』
その瞬間、魔皇バアルはカルカを投げ捨てた。
「カ、カルカ様ぁっ!?」
ケラルトやら、周りの神官が驚くのを他所に、俺は投げ捨てられたカルカをキャッチした。
……台本通りとはいえ、危ないな。
まぁ、万が一落っことしていたら、コソッと回復魔法かければ良いんだが……そういう話じゃないか。
というか凄い華奢だな、カルカ。
細いし柔らかいし、良い匂いする。
……っと、今はシリアスな場面だ。
「魔皇バアル、聖王女に何をした?」
俺が睨みつけると、魔皇バアルは愉快そうに嘲笑い、手元の光の玉を弄んだ。
『ククク、その女の魂は俺が頂いた! これが抜き取られている限り、聖王女が目覚める事はない!』
「カルカ様が……っ、そ、そんな……!?」
その言葉にケラルトが絶句した。
周りの神官や騎士も騒めいている。
その直後、魔皇バアルが羽を広げて宙を飛んだ。
くるくると錐揉み回転して、魔王みたいな感じで……結構ノリノリだな、ラズロ。
アレって、俺の姿を模して、威厳のある
「カルカ様……待っ、ゔっ!?」
ケラルトが何とかしようと立ち上がるが、身体が痛むようでしゃがみ込んだ。
対して俺は何もせず、宙を見上げた。
いや、まぁ、その気になれば<
もしくはさっきみたいに魔法で作った槍を投げても良いし。
でもしない。
ちょっと悔しそうな顔をして、睨んでおく。
「卑怯な。聖王女の魂を人質にするつもりか」
『フハハハハハ!何とでも言うがいい! この場は撤退させて貰うが……聖王国よ! 貴様らの命はそう長くはない!』
魔皇バアルが大きな声で喋り出す。
近くにいるケラルトも、聖騎士も神官も、冒険者も……ただただ、魔皇バアルを見上げて、怯える事しか出来ない。
『我が配下の亜人どもに、この国は滅ぼされる! それまで束の間の平和を享受し、怯えて過ごすがいい!<
そうして魔皇バアルは聖王女カルカ・ベサーレスの魂を持ちながら、魔法を展開した。
カリンシャに悪魔のような笑い声が響く……そうして、その声が消える頃には魔皇バアルはその場から消失していた。
「そ、そんなっ……カルカ様が……! カルカ様!」
ケラルトの嘆きを聞きながら、俺は抱きしめていたカルカに視線を落とす。
ただ安らかに眠っているようだった。
まぁ、実際、眠ってるだけだしな。
魂を抜き取る、なんて魔法を俺は会得していない。
魔皇バアルに模したラズロが使用したのは全く別の魔法だ。
その名も、<
一度発動されると高位の解呪魔法によって解除されるか、魔法抵抗力が発動された時の消費MPを上回るまで永遠に眠り続ける魔法だ。
ちなみに、睡眠中は空腹状態にならないのも確認済みだ。
冬眠みたいな状態だな。
結構、上位に存在する超面倒くさい状態異常付与魔法なんだが、魂を抜き取っているとかそういう訳ではない。
魔皇バアルは魂を抜き取ったフリで<
何故、こんな事をしたのか?
当初、この場で俺が魔皇バアルを討つ……という計画を考えていたのだが、デミウルゴスが──
「それでは聖王国の愚民どもは納得致しません。より長く手間をかけて、聖王国を救うストーリーを描きましょう。ベリアル様にはお手数をおかけして申し訳ないのですが」
とか何とか。
つまり、この場で決着を付けず引き延ばす事でさらに信頼を引き出す事ができるという事だ。
さらに、魔皇バアルに亜人どもをけしかけさせる事で、間引く事もできる。
一石二鳥という訳だ。
そうして立案されたのが、魔皇バアルに聖女カルカを誘拐させてから俺が救出する『ドキドキ!お姫様を助けに行く王子様作戦!』だ。
ちなみに作戦名を考えたのはラズロだ。
しかし、しかしだ。
この作戦には問題がある。
カルカを誘拐した後、魔皇バアルの膝下に身柄を置けばどうなる?
亜人どもに酷い事されないか?
もしくはデミウルゴスに酷い事されないか?
というか酷い事をされてないと変だろ?
と、問題は山積みで「じゃあ誘拐しよ! これでOK!」とは言い難い。
そこで考えたのが“魂だけを誘拐する”という方便だ。
そうすれば、聖王女カルカを助けるために俺が頑張るという道筋も作れるし、カルカも酷い目に遭わずに済む。
いやぁ、自分を褒めてやりたいぐらい良い発想だった。
という訳で、魂を抜き取られた風の雰囲気でぐったりしたカルカだが、実際は寝ているだけだ。
その気になれば、俺が今すぐ解呪魔法で起こす事もできる。
「あ、あぁ……そんな、どうして……」
蹲って泣いているケラルトの元に、カルカを抱き抱えたまま接近する。
ケラルトは眠っているカルカを見て、涙を溢していた。
「すまない。俺の力不足で逃げられてしまった」
そう俺が告げると、ケラルトは涙を拭い首を横に振った。
「い、いえ……貴方の助力がなければ我々は……間違いなく、死んでいました。ありがとうございます……」
内心、親友が目の前で魂を抜かれて(抜かれてないけど)動揺している筈なのに、こうも気丈に振る舞えるのか。
強いな。
俺は抱き抱えていたカルカを神官団達に受け渡し、ケラルトの元へ戻る。
回復関係の魔法を神官達がかけている。
まぁ、低位の魔法では<
視線を逸らし、ケラルトに向かって羽織っていたコートを投げ渡した。
「これを」
「え、あの……これは? ……あっ、ありがとうございます」
自分の鎧が砕かれ、服も破れ、危うい格好をしているのに気付いたのだろう。
俺が渡したコートをケラルトは羽織った。
……彼シャツみたいでちょっと興奮する。
そのまま救護団に囲まれて回復魔法やら解呪の魔法をかけられているカルカを見ていると、ケラルトが姿勢を正した。
「ベリアル……様、改めて礼を。魔導国から救援に来て頂き、ありがとうございます」
彼女は額を切って血も出てるし、怪我が痛いだろうに。
「……いや、困っている人がいたら助けるのは当たり前、だからな」
俺の言葉に、ケラルトは目を瞬き驚くような顔をした。
何だその顔……あ、魔導国に対して偏見があるのか。
まぁ、王様がアンデッドの国だからな……神官からすれば恐ろしいのだろう。
実際、こうやってマッチポンプで被害を出している訳だし。
その偏見は正しい。
「……はぁ」
俺は少し気まずくなって、視線を逸らした。
空も暗くなっている中、街にはまだ炎が燻っていた。
(瓦礫の中に頭を突っ込んで気を失っているレメディオス)
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