【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話 作:口だけの淫魔
時間は少し遡る。
ベリアルが聖王国に到着する前、ケラルトから魔皇討伐の協力要請が送られてきた翌日。
ナザリック地下大墳墓、食堂。
そこに
「ナーちゃん、ようやく別任務が与えられたんすよね? おめでとうっす!」
三つ編みの赤髪メイド、ルプスレギナの言葉に、ナーベラルは頷いた。
「ええ、とても嬉しいわ。モモンさ──アインズ様の冒険者業も一段落ついて、暇だったから……偶に冒険者として活動しても、アインズ様ではなく、パンドラズ・アクター様だったし」
ナーベラルは少し微妙そうな顔をした。
パンドラズ・アクターは直接の上司ではないが、尊敬できる
自身よりレベルも高く、より高度な任務を任せられているからだ。
だが、それはそれ、これはこれ。
至高の御方と共に仕事を出来る方が、素晴らしい事なのは確かだ。
パンドラズ・アクターを軽んじている訳ではない。
だが、モモン(アインズ)とモモン(パンドラズ・アクター)ならば、前者の方が嬉しいだけだ。
それをルプスレギナは理解して、頷いた。
「いやー分かるっすよ。至高の御方とお仕事出来るのは名誉な事っすからね」
ルプスレギナは普段、カルネ村で仕事をしている。
主に村人達の管理……そして監視だ。
ナザリックに対して敵意を持つ者は居ないか、その監視。
実際は、カルネ村の住民はナザリック、というかアインズに心酔しているため敵意を持つ者など現れる訳がないのだが。
そんなカルネ村の仕事は嫌ではないが、偶にあるベリアルと一緒の仕事の方がルプスレギナは好きだった。
愛する主の役に立てる。
愛する主の側に居られる。
それだけで満たされ、幸せになれる。
ルプスレギナは恍惚とした笑みを浮かべ……引き締め、ナーベラルに視線を戻した。
「で、ナーちゃん。それで? お仕事の内容は?」
「ベリアル様の遠征に同行するの」
「……え」
机からマグカップが落ちた。
それはルプスレギナの手から落ちたものだ。
ナザリック製の食器は、その程度で傷一つ付かないのだが……それでも褒められた事ではない。
「ルプー?」
ナーベラルは少し目を細めて、何事かとルプスレギナへ視線を戻したら……目と眉を八の字に曲げていた。
「う、うう、う……」
「う……?」
泣いているのか、と思った瞬間──
「羨ましいっす! ずるいっす! ずるっす!」
ルプスレギナが喚き始めた。
幸い、食堂内に他の者は居ない。
騒いだ所で迷惑にはならないのだが……それでもナーベラルは眉を顰めた。
「ルプー、これは至高なる御方から与えられた仕事だから」
「分かってるっす! 代わってくれとは言わないっす……けど……」
ルプスレギナは自分の左手、薬指にはめられた指輪を撫でた。
これを装着していることが、ベリアルの側室の証だ。
側室であれば週に一回ほど、寵愛を頂けるのだ。
ルプスレギナも三日前、一晩中、汗だくになるまでエッチした。
獣みたいな格好でいっぱい交尾した。
たっぷりと情けも貰い、体の芯まで愛してもらった。
しかし、だ。
ベリアルから、少しの間、聖王国で仕事をする事を伝えられた。
それはつまり、聖王国に行っている間は寵愛を受けられないという事を指し示す。
ルプスレギナは我儘を言うつもりはなかった。
しかし、心の奥底では「行かないで欲しい」「行くのなら、一緒に連れて行って欲しい」と考えていた。
そんな中、ナーベラルに与えられた任務はベリアルとの同行。
妬まずにはいられない。
そんなルプスレギナの態度に対して、ナーベラルは首を傾げた。
「……ルプーはベリアル様の側室なのよね?」
それは既知の情報に対する確認であり、言外に「側室なのに、それ以上を求めるのか?」という意味が込められて居た。
しかし、ルプスレギナはそんな事も気にせずため息を吐いた。
「そうっすよー。はー、連れて行って欲しかったっす。羨ましいっす」
ルプスレギナは、聖王国に興味はない。
そこで誰が死のうと苦しもうとも、興味はない。
ただ、愛する主との異国漫遊……決して短くない期間の二人っきり。
独占、毎日エッチし放題。
そう考えると、羨ましい気持ちが勝ってしまうのだ。
「私はルプーの方が羨ましいと思うわ」
「んぇ?」
「だって、至高の御方から情けを頂いているのでしょう?」
ルプスレギナは少し視線を上に上げて、天井を見た。
少し気持ちを落ち着かせて、ナーベラルへ視線を戻した。
「……ナーちゃん、アインズ様派だと思ってたっすけど、ベリアル様派だったっすか?」
「どちら派、という話ではないわ。ベリアル様は生者だからご子息を作れる。それだけよ」
その言葉に、ルプスレギナは口元を窄めた。
「ナーちゃん、それ他の側室の前では言わない方が良いっすよ」
「え?」
「側室はみーんな、ベリアル様が大好きっすから。そういう利己的なもので、側室やってる訳じゃないっす」
「……べ、別にそういうつもりじゃ……ごめんなさい。私の言い方が悪かったわね」
ナーベラルは少し落ち込んだ表情を浮かべた。
ナーベラルは不器用で口下手だ。
根は真面目で、仲間想いの良い
ただ少しだけ思い込みが激しく融通が効かないだけだ。
ルプスレギナもそれを知っているからこそ、責めずに注意したのだ。
「んー、ナーちゃんはベリアル様とエッチなことしたいっすか?」
「ええ、もしナザリックの偉大なる御方のご子息を産めたなら、それはとても栄誉のある事だと──
「いや、そういう話じゃなくて……はぁ──
ルプスレギナは自身の後頭部を掻いて、自身の妹に対して顔を引き締めた。
「ナーベラル。貴女、性欲とかそういうのないの?」
プレアデスの次女として、妹の情操教育をしなければならない……という義務感をルプスレギナは感じていた。
「性欲……? 分かるわ、ルプー。偉大なる御方のご子息を産みたいというのは、性欲でしょう?」
「……お子様ね、ナーベラル」
「…………」
貶されたが、ナーベラルに不快感はなかった。
いつもの様子であれば少し苛ついていただろうが、今の姉として振る舞う真面目なルプスレギナ相手であれば仕方のない事だと受け入れられた。
「ナーベラル。性欲は情愛の先にあるものよ。その人と一緒に居たい……それだけじゃない。独り占めしたいと思えるほど、想い焦がれて恋をするの。そうして恋した相手を愛したくて、愛して欲しくなる。それが性欲だと、私は想っているわ」
「……難しい事を言うのね」
ルプスレギナの言葉の大半は理解できた。
しかし、完全に理解できた訳ではない。
「恋を知り、愛を知る事で……大人の女になれるのよ」
「…………」
ナーベラルが少し考え込んでいると、ルプスレギナはその真面目な表情を崩していつも通りのお気楽な笑みを浮かべた。
「ま、ナーちゃんにも、いつか分かるっすよ。ベリアル様と一緒にいれば」
「……分かるものなのかしら?」
「分かるっすよ〜。だって、ナーちゃんも女の子っすから」
にへら、と笑みを浮かべるルプスレギナを見て、ナーベラルは幸せそうだな……と思った。
そもそも、偉大なる御方の寵愛を受けている時点で、プレアデスの中で最も恵まれた“特別”な女だとナーベラルは思っている。
至高の御方の役に立つのがメイドであると考えるナーベラルに取って、最も栄誉のある事なのだから。
羨ましい。
自分も至高の御方の“特別”になりたい。
ナーベラルの嫉妬の混じった視線に気付いて、ルプスレギナは笑みを浮かべた。
少し意地悪な笑みに、ナーベラルは少しだけ苛立った。
そして、現在。
魔導国から持ってきた馬車の中。
ナーベラル・ガンマ、“漆黒”の“美姫”ナーベはベリアルと同行し、都市奪還に向けて聖王国軍と共に足を進めている訳だが──
「……
機嫌は最悪となっていた。
ストレスの対象はずばり、聖王国の聖騎士団長レメディオス・カストディオである。
彼女は外様であり、アンデッドの支配する魔導国から来たベリアルを信用していない。
そのため、節々で不敬な態度を取っているのだ。
それがどうしようもなく、ナーベには許せなかった。
「落ち着け、ナーベ。レメディオスも、愛する主君である聖王女……カルカが倒れて、気を張っているんだ」
「…………はっ、申し訳ありません」
偉大なる御方であるベリアルの言葉に、不服ながらもナーベは頷いたのだった。
今回の聖王国同行に向けて、ベリアルから指示された事を思い出す。
一つ、聖王国の人間と友好的に振る舞うこと。
一つ、聖王国の人間に危害を与えないこと。
それを守らなければならない。
だが、それでも……あのレメディオスという下等生物の物言いは、ナーベの許容範囲を大きく越えていた。
◇◆◇
馬車に乗る前、軍略会議の場。
光るキノコが生える洞窟の中、大きな天幕の中でレメディオスとベリアル、他にも様々な役職の者が集まって居た。
「ベリアル殿が修めている職業は何だ? 教えてくれないと戦いに組み込めん」
レメディオスがまず、そんな事を訊いた。
敵性国家予備軍である魔導国でも有数の実力者……そんな男の力を探りたかったのだ。
「俺は……まぁ幅広く何でも出来るが。何をして欲しい?」
誤魔化された、とレメディオスは考えた。
「そうではない。一番得意な事を教えろと言っているんだ」
「そうだな……魔獣の扱いには自信があるぞ」
「……それはつまり、
「そうだ。本職は魔獣使い(ビーストテイマー)だ」
「……それで、その魔獣は何処だ? 連れて来ていないではないか」
レメディオスは少し侮るような顔をしていた。
その時点で少し、ナーベは苛立って居た。
そんなナーベに気付かず、ベリアルは首を振った。
「今回は聖王国の救援だからな。魔獣を連れて居ては、印象も悪いだろう」
「では、ベリアル殿は本来の力を発揮できないという事か?」
「まぁ、そうなるかな? だが安心してくれて良い、剣を振るうのも得意だ。魔法もな」
「……ふざけているのか?」
レメディオスは苛立った様子で、ベリアルを睨んでいた。
剣の才覚しか持たないレメディオスからすれば、「本職は魔獣使いだけど、剣も魔法も得意だ」と言われても何とも無責任に聞こえるのだ。
なんでも出来る、という自己紹介を聞いて、本当に何でも出来ると普通は思わない。
しかし、実際には莫大なレベル差により、ベリアルは何でも高レベルに熟せるのだが。
「いいや、ふざけてはいない。だが気分を害したのなら謝ろう。俺は色々と出来る器用貧乏だ。剣も魔法も本職に劣る」
「……そんなことで魔皇バアルが倒せるのか? お前に?」
レメディオスは腕を組み、鼻を鳴らした。
自身が聖剣をどれだけ振るっても有効打を与えられず、敗北した相手。
そんな相手に、自称何でも出来る男が勝てるものか。
大体、レメディオスはこのベリアルという男が気に食わなかった。
他の聖騎士やら神官、妹すらも口を揃えて、ベリアルでなければ魔皇バアルは倒せないと言っている。
だが、その自信が何処から来るのか、レメディオスには納得出来なかった。
(そもそも、この男は魔皇バアルと打ち合ってすら居ないではないか。召喚された悪魔を迎撃した程度で何を図に乗っているのだ)
魔皇バアルが召喚したという悪魔。
それがどれ程の難度を持つ相手かは、レメディオスも分からないが……それでも、魔皇バアルよりは遥かに弱い筈だ。
そんな悪魔相手に勝てた程度で──
「勿論、倒せるさ」
どうしてこうも自信があるのか。
レメディオスには理解できなかった。
「ふん。その言葉を信じるには些か、証拠が足りないように見えるが」
「ちょっと……レメディオス団長」
副団長のイサンドロから“言い過ぎだ”と暗に込めた呼びかけが飛んだ。
しかし、レメディオスは無視してベリアルを睨んだ。
「ベリアル殿を頼りに作戦を進めて、万が一にも負ければ我々も共倒れだ。兵を預かる私には疑う権利と義務がある」
そう口にするレメディオスに、ベリアルは納得したように頷いた。
「それは確かにそうだな。力量の分からない相手に命綱を任せるのは難しい」
侮辱されたというのに気にした様子もなく頷く。
そんな仕草にレメディオスは少し苛立ち、こんな頼りない奴に任せるのか、と周りの聖王国関係者を一瞥したが……同意は得られなかった。
レメディオスは周りの熱量との差を不服に感じつつ、視線をベリアルへと戻した。
「あぁ、そうだ。ベリアル殿、手っ取り早く実力を示す方法があるぞ」
「……ん? それは本当か?」
「本当だ……私と剣で打ち合うんだ」
周りの聖王国関係者が息を呑んだ。
レメディオスは政治に疎く、指揮能力もそこそこ、賢いとも言い難い。
だが、そんな彼女が聖騎士団の団長をしている理由は何か。
答えは単純だ。
強いのだ。
レメディオスは聖騎士の中で、どうしようもなくずば抜けて強いのだ。
だから、聖騎士団長という地位に就いていても、文句を口にする者は居ない。
そんなレメディオスが、他国の高官を模擬戦に誘う。
レメディオスより、ベリアルの方が強いという確信が皆の共通認識だ。
だが、万が一にも怪我をさせれば……。
その事実に気づいた副官のイサンドロは、慌ててレメディオスの前に立った。
「い、いけません! レメディオス団長!」
「っ、何だ? 何がだ? コイツが魔皇バアルより強いのならば、私など歯牙にも掛けん筈だろうが! 私は何も間違った事は言ってない!」
そう、理屈としては間違って居ない。
間違っては居ないのだが、どうしようもなく大局が見えていない。
イサンドロは理解している。
魔皇バアルに勝てる可能性があるのは、このベリアルという男だけだという事を。
そして、このベリアルの機嫌を損ねるという事は聖王国の崩壊を意味するのだと。
「……俺は構わないが?」
「ベリアル殿も!」
イサンドロが悲鳴を上げた。
周りの聖王国関係者は、イサンドロに同情していた。
そもそも聖騎士団の副団長という役職は、心労が絶えない役職である。
団長であるレメディオス・カストディオがハチャメチャな所為である。
二人居る副団長は言う。
「レメディオス団長は悪い人ではない。悪い人ではないのだが……」と。
つまり、それが答えである。
善性を持っているのは確かだ。
国や民に献身的なのも確かだ。
清く正しい志を持っているのも確かだ。
しかし、それと同様に少し……こう、物事を考えるのが不得手なのも確かだ。
「御二方、我々は都市奪還作戦中なのですよ!? 無駄な消耗は避けて頂きたい!」
イサンドロの言葉に、レメディオスは渋い顔をする。
「だがしかし──
「ベリアル様の実力は私も見ましたから! 私が保証させて頂きます! 他の方々も文句はありませんね!?」
イサンドロの言葉に、周りの聖騎士や神官も頷いた。
何故なら、彼等は城塞都市カリンシャにてベリアルの戦闘を見て居たからである。
この場でベリアルの戦闘を見ていないのは、気絶していたレメディオスぐらいである。
「イサンドロ!それでも、私は──
「レメディオス団長……!」
「うぐっ……分かった、分かったから」
レメディオスは不服そうにしながらも頷いた。
彼女は自分の脳で物事を考えるのは不得手であるが、自分より賢い信頼をおいている者の意見を受け入れる柔軟性は持っていた。
時には自分の信念を押し曲げても、カルカやケラルト、副団長の意見は受け入れられるのだ。
「ベリアル殿も構いませんね?」
「ん? あぁ、まぁ俺はレメディオス殿から誘われただけだからな。構わないぞ」
ベリアルの言葉にイサンドロは安堵の息を吐いた。
「チッ……」
だが、その言葉にレメディオスは顔を顰めて舌打ちをした。
まるで自分は気にしていないという対応に、小馬鹿にされたような気がしたからだ。
そうして会議の場は終わった。
各々、自身の持ち場に戻り、亜人に占拠された都市への移動を再開したのだった。
◇◆◇
変わり映えのない景色を馬車で駆ける。
目の前にはナーベラル、というかナーベ。
先程の軍略会議の場にも同行してくれていたが、レメディオスがあまりにもあんまりな事を言っていたので……今もナーベは顔を顰めている。
……まぁ、レメディオスの言うことも最もだったから、俺は怒ってないのだが。
彼女は、俺が実際に戦っている様子を見ていないのだから力量を疑うのは当然だ。
俺の力量を見誤り、部下の聖騎士達を死なせたくないという気持ちも分かる。
寧ろ、ラズロの召喚した上位淫魔とちょっと戦った様子を見たぐらいで、全幅の信頼を寄せている他の奴らの方が変だ。
だから、俺はレメディオスに悪感情を抱いてはいない。
ああいう確固たる意志を持って意見できる女、好きだし。
文句を言いながら睨まれても、信念を守ろうと健気で可愛いなぁ……としか思わない。
しかし、俺は許してもナーベは許さない。
愚か者が至高の御方を侮辱している、と苛立っている。
かなりストレスを感じているようだ。
だが、それでもレメディオスの前では我慢している。
罵倒暴言を飲み込み、表面上は友好的に振る舞って……いや、まぁ、ちゃんと黙っているだけ偉い。
そんなナーベに対して、俺は感心していた。
昔ならすぐに罵倒していただろうが、モモンガさんとの冒険で処世術でも学んだのだろうか。
俺はナーベが内心、人間を見下そうと、苛立っていようと咎めるつもりはない。
人の内面は自由だ。
態度や言葉、行動しないのであれば、何を考えていても自由だ。
我慢している。
その一点だけで褒められる。
考えた事をすぐに口にしてしまうレメディオスより、ナーベの方が偉い。
「……うん、我慢できて偉いぞ。ナーベ」
「え? あ……み、身に余る光栄です」
ナーベは少し困惑していたが、嬉しそうに頷いた。
クール系美女が赤面しているギャップ……可愛い。
俺の教育方針は、褒めて伸ばす、だ。
アレをするな、コレをするな、などと叱るのではなく、上手く出来た時に褒めるのが大事だ。
無論、叱る必要がある時は叱るが。
間違った事をした時は、叱ってやるのも優しさだからな。
そう考えると、レメディオスは可哀想な女だ。
妹であるケラルトは、姉であるレメディオスに諦めに似た感情を抱いているように見えた。
何を言っても無駄だと思っているに違いない。
そして、レメディオスが何かやらかしても、最悪の場合、自分が何とかすれば良いと思っている。
身内に甘いのだ、ケラルトは。
上司である聖王女カルカに関しては、ケラルトより甘いだろう。
そんな二人がレメディオスの言動を嗜めて、叱る事が出来るだろうか?
難しいだろう。
甘やかされて増長した結果が、きっと今のレメディオスだ。
根は善良で優しく、正義を信じる聖騎士なのだが……どうして、あんな傍若無人になってしまったのか。
それは周りの環境にも原因はあると思う。
「はぁ……」
俺は馬車の外、並走する聖騎士達に目を向ける。
彼等は軽装の鎧を身につけて、馬に乗っている。
俺は、レメディオスを懐柔しなければならない。
このまま俺に不躾な対応を取り続け、魔導国に敵意を向けられたままだと“処分”しなければならなくなる。
それは俺の意思とは関係なく、ナザリックの利益のためにしなければならない事だ。
元々、デミウルゴスはレメディオスを処分するつもりだった。
それも……仲間や家族、親友すらも失わせて、精神を破壊し尽くし、ドブ溜めに捨てるつもりだった。
それは可哀想だ。
確かにレメディオスは性格が良いとは言えない。
だが、そんな悲惨な結末を迎えるほど悪い事をしたのか……と問われれば、決してそうではないと答えられる。
だから、生かしてやりたい。
その為には、俺へ惚れさせるしかない。
しかし、あの性格では困難だ。
「……難しいな」
俺は馬車の中で、椅子に深く座り込んだ。
「……ベリアル様にも困難な事があるのですか?」
そんな俺に対して、ナーベが不思議そうな顔で問いかけてきた。
……ナザリックのしもべ達は、俺やモモンガさんが何でも出来る超人……いや、超淫魔だと思っている節がある。
そんな事はないのだが。
「難しい事ばかりだ。世の中、思うようにいかない事ばかりだからな」
「偉大なる御方でも、ですか?」
「あぁ、完璧なんかじゃない。間違える事だってある。それは、モモンガさんだってそうだ」
俺の言葉に、ナーベは信じられない事を聞いた、という顔をしている。
そんなナーベが愛おしくなって、思わず頭を撫でる。
「だから、そう緊張しなくていいさ」
「あ、ぅ」
親戚の子供を撫でるように触れたが……ナーベは頬を真っ赤にしていた。
……しまったな。
普段、側室にやっているような態度を取ってしまった。
「……悪かった。急に頭を撫でられても困るよな」
「い、いえ……」
歯切れの悪いナーベの返事を聞き、俺は自己嫌悪する。
頭を撫でられてポッと惚れるなんてのは幻想だ。
好きでもない男に撫でられても困るだけだろう。
俺は一つ、ため息を吐いて……馬車の移動する先へ目線を向けた。
「……そろそろ到着か」
視線の先には、要塞のような城壁を持つ都市が見えていた。
小規模な聖王国の都市……だが、そこは今、亜人によって支配された小都市だった。
誰好き?
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カルカ・ベサーレス
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ケラルト・カストディオ
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レメディオス・カストディオ
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