【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話 作:口だけの淫魔
ナスレネは目を疑った。
自身の発動した三つの魔法の槍が相殺されたからだ。
偶然なのか、狙って行なったのか。
そもそも、どのような手段だったのか。
警戒しつつ、ナスレネはベリアルへと顔を向けた。
「吾輩の魔法を打ち消すとは……お主、何者じゃ」
話しながら、手元に魔法の槍を三つ生み出す。
いつでも攻撃できるよう、準備をしていたのだ。
そんなナスレネに対して、ベリアルは目を瞬いた。
「何って……あー、そう言われると……何だろうな?」
「ふざけておるのか」
「自分を何者か断定できるほど、俺は自分探しが上手くないんだよ」
どうやって相殺したのか。
見当も付かない。
自身の放つ第四位階の魔法と相殺できるとは、どんな魔法なのか。
しかし、ナスレネは判断した。
ここで悩んでいても、仕方がないのだと。
「舐めた事を言う……だが、そんな口もきけなくしてやる!」
ナスレネの叫びと共に、三つの魔法の槍が飛び出した。
「<
その瞬間、ベリアルの頭上にも、三つの槍が生まれた。
まずは氷の槍が──
ベリアルが生み出した槍と衝突し、消滅した。
次は炎の槍が──
これもまた槍と衝突して、消滅した。
そして雷の槍は──
衝突して、消滅した。
「は、はぁ!? そんな馬鹿な!?」
ナスレネは驚愕した。
自身の切り札が全て相殺された。
そう、相殺だ。
自身が「先に」発動し先に放った魔法を、「後から」魔法で相殺したのだ。
同格に見えて、全く違う。
威力は同等だが、発動までの速度、そして正確性は遥かに上。
相手は格上だと、ナスレネは理解した。
(この人間の男は何者じゃ……!? 聖王国の最強と呼ばれる小娘よりも、明らかに強者……!)
ナスレネは少し距離を取りながら、男へ目を向けた。
(こんな奴が居るなど聞いとらんぞ! まるで……あの──
ナスレネの脳裏には魔皇バアルの姿が浮かんでいた。
その想像を打ち消すべく、ナスレネは首を振った。
(いやっ! そんな訳がない! あの方と同格の人間など、居る筈がない!)
ナスレネはさらに、氷、雷、炎の槍を生み出す。
自身の中にある虚像を打ち消さんと、力を込める。
そんなナスレネを見て、ベリアルは片眉を上げた。
「また同じ魔法か、変わり映えがないな」
侮るような言葉を無視して、ナスレネ魔法を構える。
今度は、同時に複数の魔法を放つ。
三度の攻撃を防ぐ事よりも、三方向からの攻撃を防ぐ事のほうが困難だからだ。
「ほざくな! どんな手品か知らんが、そのまま死ねっ!」
怒声と共に放たれたのは“氷炎雷“の槍だ。
三つの属性が反発し合いながら、一つへと重なる。
(どうだ! これが儂の本気じゃ! 今までの比ではない全力の一撃! くらうがいい!)
そして、螺旋状に集った魔法の槍が、ベリアルへと投げられた。
ナスレネが放つ魔法の先には、聖騎士達が居る。
聖騎士達も避けようとしているが、着弾と同時に威力は拡散し……間違いなく、聖騎士が死ぬ。
だからこそ、避けれないようにとナスレネは──
「<
再びベリアルが魔法で、赤い結晶のような槍を生み出した。
だがしかし、それはただ一本の槍だ。
「くくく! 今度は一本、生成が間に合わんかったか! 当然じゃ! そう何度も相殺できるほど、儂の魔法はやわでは──
刹那、ベリアルが槍を握り、振るった。
爆ぜる音がした。
炎が、雷が、氷が……砕けた。
「え?」
ただ一度、槍を振るっただけだ。
それだけ、ナスレネが生み出した三つの魔法が砕けた。
「な?……何が、いったい……?」
自分の生み出した力が、長年の研鑽が、自信が……砕けた。
その事実をゆっくりと、脳が理解して……ナスレネは目を見開いた。
「ば、ばかなっ、そんな……そんな事がある訳が……ない! 儂の魔法が、こうも容易く防がれるなど! ありえん!」
取り乱すナスレネに対して、ベリアルはため息を吐いた。
「ありえるから、こうなってるんだろ」
事もなげに、そんな事を言う。
そこでようやく、ナスレネは理解した。
(こ、この男は、間違いない! 魔皇バアル様と同等の存在! 理の外! 儂らが理解できぬ“超越者”か! ま、まずい……!儂では勝てぬ!)
少し後退しながら、ナスレネは息を呑む。
そんなナスレネに対して、ベリアルは視線を向けた。
「それで……これで終わりか?」
「っ、ま、待て!」
ナスレネは手を突き出した。
杖を地面に捨てて、戦う意志がない事を示した。
「なんだ?」
「わ、儂は、この都市にまだ残っておる強者の存在を知っておる! その者達のことを教えてやってもよい!」
命乞いをするように。
どうせ仲間ではないのだからと、情報を対価に生き残ろうとする。
この都市に残っている亜人の実力者ははナスレネを除いて二人。
どちらも、ナスレネと並びえる強者だ。
故に、彼らがベリアルに勝てない事も理解している。
ナスレネと同格では勝てない。
だが、彼等は決して仲間ではない。
同じ目的で行動しているが、信念を共にした訳ではない。
そんな二人を差し出そうと──
「強者? あぁ……そうか。いや、いいんだ」
「……は? え? いい、とは……?」
「その情報はもう“いい”。必要ない」
「は、ぇ?」
理解できぬと狼狽えるナスレネを、ベリアルは冷え切った目で見ていた。
「魔爪も、白老も、もう死んでいる。俺が殺した」
「な、は、え? そ、そんな……バカな……!?」
ベリアルの言葉にナスレネは顔を青くした。
ナスレネは、自分の持っていた命乞いのための情報が無価値だと信じたくなかった。
しかし、ベリアルはそんなナスレネの様子を見て、自分の語った話を信じていないのか……と呆れた。
「嘘だと思うなら、ここから少し離れた所に置いてある死体でも見てきたら……あぁ、いや、それは無理か」
「ち、ちが……ま、待て! なにが、無理じゃと……?」
ナスレネの問いに、ベリアルが視線を合わした。
「これから死ぬ奴に、先の事を話すのも酷だからな」
死ぬ?
誰が、死ぬ?
「あ……っ」
言葉の意味を噛み締めて……ナスレネは顔を青くした。
目の前の男は、自分を見逃す気など一切無いのだと。
「あぁ、あ……」
明確に見える、死という未来が目の前まで迫って来ていて──
「あああああぁああああ!」
自分の心を奮い立たせて、震える唇のまま魔法を発動させる。
属性を付与された魔法の槍が、同時に三つ。
その様子を見て、ベリアルは手に魔法の剣を生み出した。
「あー、ありがたいな。怯えてる奴を殺すのも、気が引けるし」
そうして、ナスレネに対して剣を向けた。
同時に、ナスレネは全力で、全ての力を振り絞り、魔法を構えた。
吸い出される途方のない魔力に、気を失いそうになるも気迫で耐える。
そして──
「死ねぇえええ!!!」
怯える心を雄叫びで奮い立たせて、三つの槍を放ち──
「け°ぶッ」
瞬間、ナスレネの体は縦と横に切断され、四つに別れた。
◇◆◇
レメディオスは目の前の景色に驚いていた。
自分が……淫紋の所為でもあるとはいえ、敗北した相手にベリアルは危うげもなく、容易く勝利した。
まるで大人が、子供を相手にするかのような……それ程までに、力量差を感じていた。
「……ひっ」
周りの聖騎士達は驚きを通り越して、恐怖している。
彼等はレメディオスが選んだ、少数精鋭の選りすぐりだ。
だからこそ、ベリアルの強さが分かってしまう。
力量差の分からぬ民草のように、ただ英雄に手を振って応援するような真似ができない。
だからこそ、猛獣と同じ檻に入れられてしまったかのように怯えている。
そんな聖騎士達の態度に後めたさを感じていると、ベリアルが視線を向けてくる。
「……大丈夫か? レメディオス」
「え、あ……ああ」
ベリアルに呼び掛けられて、レメディオスはようやく我に返った。
そして、魔法が直撃した所為で随分とボロボロになっている事も理解した。
魔法の鎧は少し損傷しており、その下の聖騎士団の制服が焼け焦げていた。
少々、みっともない格好だ。
思わず、レメディオスはベリアルから視線を逸らした。
「……すまない、助かった。だが……不甲斐ない所を見せてしまったな」
「ん……? 不甲斐ない、か?」
レメディオスの自嘲に対して、ベリアルは目を瞬いた。
「実際、そうだろう。お前に“死ぬな”などと大口を叩いたにも関わらず、死にそうになっていたのは私だったからな」
「まぁ……それは確かにそうか。でも、別に不甲斐ないとは思えないな」
そう言いつつ、ベリアルは尻餅をついたままのレメディオスへと、手を差し伸べた。
「……ベリアル。だが、私は──
「誰かを守った負傷だろう? 不甲斐ないなんて、俺は思わないな」
その言葉に、なんて……自分にとって都合がいい事を言うんだ、とレメディオスは思った。
その言葉に甘えて、縋りたくなってしまう。
だがそれは、弱さに繋がる。
聖騎士団長としての振る舞いではない。
(……敵わない、か)
それでも、差し伸べられた手を振り解けるほど、レメディオスは強くはなかった。
男の手を握り、引き起こされて……そして、ふと疑問が湧いた。
「なぁ……ベリアル」
「ん?」
「見ていたのか?」
「何を?」
「私がアイツらを庇って、魔法を食らった所を見ていたのだろう?」
レメディオスは部下達を指差した。
部下達は気まずそうな顔で固まっている。
そんな聖騎士達から目を逸らして、ベリアルはレメディオスへと視線を戻した。
「……いや? レメディオスなら、あの魔法を避けられるだろう? 食らったとしたら庇ったのかと思ったぐらいだ」
ベリアルの言葉が一見すると、筋が通っているように聞こえる。
だが、全てが真実とは思えなかった。
そして、何より、最も大きな疑問が残ったままだ。
「……そもそも、何故、私が危険な状況だと気付いたんだ?ナ……ナスネレ、だったか?アイツと私の場所をどうして──
「ベリアル様!」
レメディオスの質問は、頭上から聞こえた女の声で打ち消された。
そこに居たのは、<
思わず、レメディオスは顔を顰めた。
この女の事が苦手だったからだ。
対して、ナーベはレメディオスに気付くと、鼻で嘲笑った。
嫌いな女がボロボロだったからだ。
そんなナーベが、ベリアルの側へと着地した。
「急にどこかへ行かれたと思えば……この
「ビッ、なんだと!?」
急に飛び出した罵倒にレメディオスは顔を赤くして、ナーベを睨んだ。
そんなレメディオスをナーベは見下していた。
「何か? 私は事実を述べたまで。礼儀のなっていない
「ナーベ、そこまでだ」
「はい。申し訳ありません、ベリアル様」
ナーベは申し訳なさそうな顔をしている。
だが、それは暴言を吐いた相手であるレメディオスではなく、ベリアル相手にだ。
今までならば、ただ侮辱されただけだと苛立つだけで済んでいた。
だがしかし、今、レメディオスにとってナーベは……「自分が最も欲しいが諦めた物」を手にした女だ。
レメディオスは苛立ちと同時に、虚しさも感じていた。
「ナーベが悪かったな、レメディオス……ん? どうかしたか?」
そんな自分に対しても、この男は優しく心配してくれている。
それが嬉しくて、幸せで、耐え難い苦痛でもあった。
決して手に入らない金貨を前にする、貧乏人の気持ちだ。
そんな己の想像を振り払い、レメディオスはベリアルへ視線を戻した。
「……いや、いい。そんな事よりも、お前が先程言っていた……指揮官らしき亜人を倒したというのは本当か?」
話題を逸らしつつ、
ベリアルはそんなレメディオスを訝しみつつも、頷いた。
「まぁな。探索していたら、あっちから絡んで来て……こう、つい」
「……確実か? 亜人は生命力が強い。人間にとっての深手が軽傷、なんて事もありえるぞ」
「いや、死亡確認まではしていないな。だがまぁ、上半身と下半身が分かれても生きていられるとは思えないが」
ちら、ベリアルの視線の先をレメディオスは見た。
縦と左右、四つに分断されたナスレネの姿だ。
……確かに、これで生きている亜人は居ないだろう。
生死の確認とか、そういうのがどうでもよくなる死に方だ。
「ならいい。ここの亜人どもの統率も取れなくなるだろう……私は正門の方へ加勢へ行く。お前は、その、どうする?」
「俺か? いや、俺はレメディオスと合流するつもりだったが──
ベリアルはレメディオスの背後に居る聖騎士達を見ていた。
レメディオスも視線を向けて……彼等がベリアルに怯えているのを感じ取った。
「俺は街中の亜人を掃討する事にするさ。どこかで隠れてる人間もいるかも知れないしな」
「……すまない、ベリアル」
レメディオスは目線を伏せた。
部下達は自分達を助けてくれた男に怯えている。
それをなんたる恩知らずかと怒鳴りたい所ではあるが、レメディオスには聖騎士達の気持ちが分かってしまう。
自分の測り知れない強さとは、理解不能の恐怖に近い。
だから、理解できてしまう。
強く物事を言えない。
「いや、いいさ。誰が悪いってはなしでもないしな……いや、俺が悪かっ──
「違う!」
レメディオスはベリアルへ視線を戻した。
少し申し訳なさそうな顔をしているベリアルへと。
「そんな事はない! お前は何も間違っていない! 悪いのは……っ」
助けて貰ったのに、その助けてくれた相手が悪いなんて事がある筈がない。
力あるものが誰かを助けたのに、感謝されなくていい訳がない。
「くそ……っ」
それはレメディオスの理念に反する事だ。
己の信念をもって、強者とは正しくあるべきで、正しい強者とは敬われるべきだと思っていた。
そんな、思わず声を出してしまったレメディオスに対して……ベリアルは少し笑みを浮かべた。
「ありがとう、レメディオス。そう言ってくれるだけで俺は嬉しい」
「っ、なんで感謝するんだ。まったく……お前は……くそ、もう私は行くからな!」
レメディオスは照れ臭くなって、ベリアルに背を向けて大股で歩き出した。
「……っ、お前達もいつまで呆けている!はやくついて来い!」
部下である聖騎士達を怒鳴りつつ、レメディオスはその場を後にした。
「……っくそ、私は」
身体が淫紋の効果で熱くなっているのを実感する。
武器を握っても動けず、カルカの願いを叶えられず死にかけた。
正義を為せず、悪に屈する所だった。
鬱陶しい、淫紋の呪い。
それを解くには──
『あぁ、この呪いはな……女性の場合、異性の精液を膣内に受ける事で解消される』
ベリアルから教えられた方法。
その手段は、レメディオスにとって到底、許容できない事だった。
(私は騎士だ! カルカ様の騎士……だから、女としての幸せなど……!)
それでも、この身体の熱で。
淫紋の所為で、騎士としての本懐も遂げられないのならば。
……頭に浮かぶ、騎士としての解決策と、女としての願い。
その二つと同時に満たせる、思惑。
きっとそれを、ベリアルは叶えてくれる。
彼は優しいから。
しかし、そんな優しさに付け入るような事をしていいのか。
(私は……何故、こんなにも……弱い……!)
レメディオスは奥歯を強く噛んだ。
火照る身体とは裏腹に、心は冷たく痛みを感じていた。
◇◆◇
「……あっぶな」
レメディオスに「何故、助けに来れたのか」と問われた時、かなり冷や汗をかいていた。
いや、まずかった。
バレたら絶縁まったなしだからな。
レメディオスの影には
彼等は不可視状態で潜み、レメディオスがピンチになったら俺に連絡するよう伝えている。
まぁ、ちょっとした過保護だ。
だからそう、ナスレネに絡まれたのも偶然だし、助けが間に合ったのも偶然だ。
別にピンチを演出して、助けて好感度を稼ごうなんて考えていた訳ではない。
なのだが、態々、影にストーカーみたいなモンスターを潜ませてるなんて知られたら、間違いなく気持ち悪がられるしな。
いやー、よかった。
なんとか誤魔化せて。
「ナーベ、さっきは助かった」
そう、ナーベが気を利かせてくれたのだ。
レメディオスの言及を止めるべく、憎まれ口を叩いて注意を逸らしてくれた。
「……? あ、はい?」
……いや、違うっぽい。
自覚もないし、偶々みたいだ。
これ単純に悪口言いたかったから言っただけか。
まぁ、結果オーライだ。
褒めちゃったし、今更、レメディオスに悪口を言ったのを叱る事もできない。
「しかし、あぁも怯えられるとはな」
俺は腕を組みながら、自分の顎に手を乗せた。
ナスレネとの戦闘を見て、聖騎士達は怯えていた。
そもそも、一回も助けに入って来てくれなかったし。
いやまぁ、助けに入られても足手纏いだから良いんだが。
「至高の御方の戦いを見て怯えるとは、やはり
困った。
ナーベがどれだけ罵倒しても、ちょっと擁護できない。
俺は女に寛容だが、男には厳しいぞ。
性欲に忠実だからな。
「その点、レメディオスは……な? ナーベから見てどう思った?」
彼女は怯えていなかった。
それどころか、ちゃんと謝罪と感謝の言葉まで出してくれた。
俺も、レメディオスに怯えられたらちょっとショック受けてただろうし。
うん、うん。
仲良くしていた甲斐があったな。
「はい。ベリアル様の、御身の前で……あの女、発情していて不快でしたね」
「え?」
「色目も使ってましたし、本当に下品な
え、いや、そんな事、言ってないけど。
さも俺が「そう思ってます」みたいな感じで同意してくるのはやめてくれ。
というか発情してたのか?
あんなボロボロだったのに?
……あ、いや、そうか。
淫紋か。
じゃあ、俺が悪いわ。
しかし──
「あー……あまり、レメディオスの悪口は言わないでくれないか?」
好きな女の子が、好きな女の子の陰口を叩いてるのは辛い。
「え、あ……は、はい! 申し訳ありません」
俺の言葉にナーベが“この世の終わり”って顔をした。
今にも鬱で死んでしまいそうな顔だ。
「あぁ、いや、その、な? 俺はレメディオスが嫌いじゃないからな……そう、ナーベが悪口を言っていると悲しいというか……」
「……あの女のことが好きなのですか?」
ナーベがもっと悲痛な顔をした。
……ま、まずい。
ここから先は言葉を選ばなければ。
「あぁ、好きだ。だが、ナーベの事も好きだ。だから、好きな相手が好きな相手の悪口を言っていると悲しいんだ。分かるか?」
「えっと……はい?」
これは分かってないっぽいな。
「例えばだ。俺がモモンガさんの悪口を言っていたら? そしてモモンガさんが俺の悪口を言っていたらどう思う?」
「…………………」
あ、ナーベがショートした。
真顔のまま固まって黙ってしまった。
「少なくとも良い気分ではないだろう? つまりは、そういう事だ」
「……え、あ、は、はい。以後、こんな事がないように致します」
ナーベは申し訳なさそうな顔で頷いた。
……うーん、これはアフターケアが必要か。
俺はナーベの頭に手を置く。
「まぁ、そう落ち込むな。ナーベが俺の事を大切に思って行動してくれているのはよく分かっている」
「ベリアル様……」
「だから、そう責めるつもりはない。俺はナーベを愛しているからな」
「ベリアル様……♡」
めちゃくちゃ甘い声を出してきた。
……これもう、さっきまで叱られてた自覚も消えてるだろ。
ナーベ、ちょっとポンコツな所あるからな。
その正直な所っていうか、裏表の無さは嫌いじゃないけど。
「じゃあ、無駄話も程々にして……俺達も仕事に戻ろうか」
「はい。と言っても……既に<
そう、既にナーベに聴覚を強化する魔法で周囲を探索させている。
亜人を掃討し、人間がこちら側に残っていない事も把握済みだ。
「居ないのは分かっていても探すんだ。こういうのは、やってる事が重要なんだよ」
そう必死に聖王国の人の為に頑張ってるよ、というアピールだ。
見つからなくても探している格好を見せるだけで良い。
もう魔法で調べたから……と、休憩していては聖騎士も納得してくれないだろう。
「……そうなのですね? 流石はベリアル様です」
これ絶対、ナーベ分かってないだろ。
まぁ、いいか。
俺はナーベを連れて、踵を返した。
「しかし……都市を取り戻せたとしても復興するのに時間が掛かりそうだな」
「ベリアル様は慈悲深いのですね」
「……いや、まぁ俺の所為だしな」
視線を街の景色へと向ける。
真っ二つになったり、炸裂したり、叩き潰されたり……大量の亜人の死体が壁や地面に叩きつけられている。
スプラッター映画もびっくりの残虐景色だ。
そんな景色から目を逸らして、俺とナーベは大都市プラートを散歩する事にした。
生命反応、ここから1km弱には全くないんだけどね。
次回はレメディオス、本番
ネイアの話
-
欲しい
-
どっちでもいい
-
いらない
-
※結果だけ確認する