※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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#87 首都ホバンス

ネイア・バラハは聖騎士見習いである。

聖騎士である母に憧れて、ここまで来た。

 

少女ではあるが、可愛らしい顔をしている訳ではない。

寧ろ、その逆だ。

切れ長で小さな瞳は、それだけで威圧感を覚えてしまう程だ。

そこは兵士長であり九色の父に似ていた。

 

心の中は母親に、外見や才覚は父に。

そして、それでも年頃の少女であるネイアは未熟ながらも聖騎士見習いとして……王都ホバンスで、亜人達を迎え撃たんと職務に就いていた。

 

王都決戦。

正式な聖騎士だけではなく、猫の手も借りたい状況であり、見習いであるネイアも実戦へと投入されていた。

 

未熟ながら──剣の才能がないと上官に罵られた事もあるほど──ネイアは、勇敢に王都に侵入しようとする亜人と戦った。

 

幸い、亜人達は王都に到着するまでの間に飢えていた。

飢えによる統率のない突発的な攻撃は恐ろしいものだが、普段よりは力量に劣る。

 

他の王都防衛隊の者達と協力して、城壁で迎撃していたのだが──

 

 

「い、いや! やめてぇっ! 来ないでぇ!」

 

 

ネイアの目の前で、長い金髪を振り乱しながら、信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)であるビビアナが取り乱していた。

目の前には悪魔……亜人ではなく、魔皇バアルが召喚した悪魔が来ていた。

 

上半身裸体の屈強な男の体。

下半身は強靭な獣の姿。

顔は悍ましい表情を浮かべる山羊。

背中には飛翔能力があることを理解させる蝙蝠のような翼。

 

そんな悪魔が、ビビアナを押し倒した。

 

 

「やだ! やだ! 助けて! 助けて!」

 

 

涙も鼻水も拭う余裕はない。

悲鳴を上げるが、誰も助けには来ない。

 

それも当然だ。

周りの兵は、あの悪魔に全て打ちのめされている。

気を失っているか、死んでいるか……中には意識があっても身動きが取れないほどの怪我をしている者もいる。

 

だからそう、この場で動けるのはネイア・バラハ、ただ一人だった。

しかし、動けるからと言って……いいや、動ける訳がなかった。

 

見習いである自分よりも強い正規採用されている聖騎士が、束になっても敵わなかった悪魔に何ができるというのか。

ネイアは身体を震わせ、涙を流し、怯えた顔で腰を落として……悪魔を見上げることしかできない。

 

 

──────ッ!

 

 

悪魔が唸り声を上げながら、ビビアナの神官服を手で掴み……引き裂いた。

 

 

「きゃぁああっ!?」

 

 

服の下に隠された肌が露出する。

服を剥がれて、かろうじて布切れだけを身に纏ったビビアナを見て悪魔は笑みを浮かべた。

 

そして……ネイアの腕並みに太い陰茎を怒張させていた。

 

 

「や、いや、いやぁ! やだ! 助けて! 誰か!」

 

 

ビビアナが悲鳴を上げた。

これから自分がどうなるのか理解したからだ。

 

その様子を見ても、ネイアは動けなかった。

助けを求める声を聞いても、動く事すらできなかった。

 

じんわりと熱い感触が下着に伝わる。

自分が失禁してしまった事にすら、ネイアは意識を向ける余裕がなかった。

 

そんなネイアを無視して、悪魔がビビアナの股を無理やり開いた。

 

 

「い、いや……! やめて……! お願い、やめ──

 

 

そして、怯えるビビアナへ無理矢理、陰茎を突き刺した。

 

 

ぐちゅッ♡♡

 

「あ゛ぎっ!?」

 

 

濡れてもない女性器に対して、あんなにも太い陰茎を無理矢理挿入したのだ。

痛くない筈もない。

 

ビビアナは顔を歪めていた。

 

そんな彼女を無視して、悪魔は自分勝手に腰を振り始める。

 

 

ばちゅッ♡ばちゅッ♡♡♡

 

「い゛っ!? やめ゛、ぇゔッ!?」

 

 

ビビアナは苦悶の表情を浮かべながら、涙を流している。

 

 

どちゅッ♡♡どちゅどちゅッ♡♡♡♡

 

「ひぎッ!? いや゛っ! やべ、あ゛ぁあッ!?」

 

 

思わず、ネイアは耳を塞いだ。

 

 

(ごめんなさい……! ビビアナさん! 私は無力で……! 助けられないから!)

 

 

そして、塞いでも聞こえる水音と、肉を叩く音、ビビアナの悲鳴に顔を歪めた。

 

 

ばちんッ♡♡ばちんッ♡♡♡♡

 

「も゛、ぅやめ゛っ! いや゛ぁっ! こんな゛の嫌ぁああ゛!」

 

 

膝に、顔を埋める。

 

ビビアナが終われば自分の番だ。

逃げなければならないのに、足が震えて逃げ出せない。

ここで目立つ真似をすれば、悪魔に襲われるかもしれないと……行動する事すらできない。

 

 

(ごめんなさい、ごめんなさい……! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)

 

 

自分の中にある信じていた正義や信念が、ちっぽけなものに感じた。

 

誰かを助ける──

誰かを守る──

 

勇敢に、清く、正しく、高潔に。

そんな聖騎士として憧れていた姿が、遠のいていく。

 

自分は弱い。

弱者は正義を為す事などできない。

 

であれば、弱者である自分は正義とは程遠い存在なのだ。

 

力無き正義は、無意味だ。

何も為せず、何も出来ず、ただ悪魔に痛ぶられ、ゴミのように捨てられる。

 

それが無力である自分の最後だと、ネイアは──

 

 

スパン、と。

 

 

何かが切断される音が響いた。

それと同時に、全ての喧騒が取り払われたような気がした。

 

即座にネイアは顔を上げた。

 

 

 

ビビアナを犯していた悪魔の首が、切断されていた。

そして悪魔は黒い霧のように霧散して、溶けていく。

 

その瞬間をネイアは見た。

 

呆然とするビビアナの前に立っていたのは……男だ。

整った目鼻立ちの、ネイアの理想の王子像……とは程遠い、少し気の強そうな軽薄そうな男。

鎧も身に纏わず、黒いジャケットとズボンを履いて、聖なる──とは言い難い造形の、銀の装飾品を身に纏っている。

 

黒髪で、赤い目。

少し色白の肌の美丈夫。

 

そんな男の手には赤い結晶のような剣が握られていた。

この男が悪魔を倒したのか、とビビアナもネイアも理解した。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

優しげな声を掛けられたのは、ビビアナだった。

 

 

「へ、は……は、はい……」

 

 

正直に言えば大丈夫ではなかっただろう。

大き過ぎる陰茎に何度も無理矢理犯され、股はじんじんと痛んでいる。

身体も尊厳も汚されて、大丈夫な訳がない。

 

それでも、堪えてビビアナは頷いた。

……その様子を見て、男は片眉を上げて、虚空へと手を伸ばした。

 

すると、そこから白いベッドシーツのような布が出てきた。

 

 

「今はこれしかないが、これで身体を覆うといい」

 

 

それは気遣いだった。

服を剥がれて殆ど全裸になっているビビアナに対する男の気遣い。

 

 

「あ、ありがとう、ござい、ます……」

 

 

ビビアナは顔を赤らめながら、シーツを受け取り身に巻いた。

ネイアもその仕草に、顔を赤くした。

 

あんな危機を救ってくれた美丈夫が気を遣ってくれたのだ。

照れない女は居ないだろうと、ネイアは考えた。

 

 

「そっちも大丈夫──

 

 

男は視線をネイアへ向けて……顔を見て、固まってしまった。

何故か、ネイアは少し考えて……己の顔が怖いからだと思った。

 

 

「あの……」

 

「あぁ、いや、悪いな。知っている顔と似ていたからな……」

 

「も、もしかして父ですか?パベル・バラハという──

 

「あ、あぁ……うん、そうだ。そういう名前だったな」

 

 

父は、今回の亜人大進行によって亡くなっている。

そんな父を知る相手に、思わずネイアは胸の奥が熱くなった。

 

 

「む、娘のネイア・バラハと言います! 助けて頂き、感謝を!」

 

「それ程の事ではないさ。だから、感謝もしなくていい」

 

 

あぁ、なんと懐の大きな人だろうか。

ネイアは目を輝かせた。

 

自分を含めて、多数の聖騎士が纏まっても勝ちえなかった悪魔を一撃で倒すほどの力量がありながら……驕らず、気を遣う寛容さ。

 

これが正義の姿か。

 

思わず感嘆し、固まっているネイアの側にビビアナが寄り添ってくる。

 

 

「……あ、あの、私も、助けて頂きありがとうございます……」

 

「ん? あぁ」

 

「わ、私はビビアナ・ベグラウと申しますが……あ、貴方様のお名前をお伺いしても、よろしいですか?」

 

 

それは確かに気になっていた、とネイアは男の顔を見た。

 

 

「ん?俺の名前か……ベリアルだ」

 

 

ベリアル。

名前をネイアとビビアナは噛み締めた。

ネイアは信仰すべき神を見たかのような顔で。

ビビアナは白馬の王子様を見たかのような顔で。

 

対してベリアルは、二人の視線に少し居心地悪そうな顔をしつつ、再び虚空から瓶を幾つか取り出した。

 

 

「ここで動けるのはネイアぐらいだな。これを渡す……重傷者の治療に使ってくれ」

 

「これは……治癒薬(ポーション)、ですか?しかし、色が……変、ですが」

 

 

ネイアは首を傾げた。

貰った治癒薬(ポーション)らしきものの色は紫色だった。

だが、ネイアの知っている治癒薬(ポーション)は青色だ。

 

 

「俺の国……あぁ、魔道国で作られた治癒薬(ポーション)だ。青いやつより効果が強く、長持ちする」

 

「魔導国……?って、そ、そんな貴重なものを!?」

 

 

思わず慌てる。

最近噂に聞く魔導国産というのも驚きだが、普通の治癒薬(ポーション)ですら高級品なのに、それより効能が上のこの治癒薬(ポーション)は……いったいどれだけ高価になるのか。

 

こんな適当に渡していい物ではないことは、確かだ。

 

 

「いいんだ。誰かが死ぬよりはマシだろう?ほら、重傷者が間に合わなくなる。俺も他の場所へ行かなきゃならないし、やってくれるな?」

 

「は、はい! お任せ下さい!」

 

 

聖騎士見習いという誰からも期待されない自分に対して、任務を与えて期待してくれている。

ネイアは首を大きく何度も振る。

 

 

「じゃあ任せる。後はよろしく頼むぞ」

 

 

そう言いつつ、ベリアルは魔法によって飛翔して……そのまま、その場を立ち去った。

その場で呆けているビビアナと共に、ネイアも呆けたくなっていたが──

 

 

「わ、私が……私が治癒薬(ポーション)を配らないと……!」

 

 

ネイアは貰った治癒薬(ポーション)の瓶達を抱えて、その場を駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわ、びっくりした。

急に見覚えのある女の子と遭遇するから、変な言い訳をしてしまった。

ネイアの親父さんとか会った事ないし、俺。

まぁ、誤魔化せたのなら良かったのだけれど。

 

しかし……こう、容赦がないな。

 

亜人だけでは首都であるホバンスを危機的状況に陥らせられないからと、淫魔まで召喚して……。

これで首都の防衛に来た俺の名声も上がるって話ではあるが、マッチポンプも甚だしい。

 

取り敢えず、窮地に陥ってそうな人をじゃんじゃん助けて行くか。

 

さっきみたいな淫魔に襲われている女の子と……あー、亜人相手に苦戦してる聖騎士も居るな。

 

淫魔に襲われても女の方は死にはしないが、亜人に負けた聖騎士の男は死ぬか。

 

どっちを助けるべきか。

 

うん、前者だな。

俺は女の子優先だ。

 

サクっと淫魔をブッ殺して、と。

聖騎士の方に戻るとしようか……って、レメディオスが亜人を倒してるな。

 

思わず、レメディオスの側へ着地する。

 

 

「順調そうだな、レメディオス」

 

「ん……!? うわっ、急に話しかけてくるな! 驚かせるつもりか……!」

 

 

歯を剥き出しにして、顔を赤くしながらレメディオスが吠えた。

照れているようだ。

 

 

「まぁまぁ……それで、そちらに損害は出ているか?」

 

「まったく……! はぁ、私が連れている聖騎士は精鋭だ。余程のことがなければ負けはしない」

 

 

でも、プラートの時に役立たずだったじゃん。

……って声に出そうになったけど、黙る。

流石に不躾過ぎるからな。

 

 

「ベリアル、お前の方こそ……ナーベはどうした?」

 

「ん? 別行動だ。アイツも<飛行(フライ)>が使えるからな。悪魔狩りをしてくれている」

 

「あぁ、アレか。魔法か。便利なものだな、魔法も」

 

「良ければ習得の手助けをしようか?」

 

「いや、いい。私には才覚が……というか、私が断る事を前提に揶揄っているだろ、ベリアル」

 

「……いいや?」

 

 

いや、そんなつもりはないんだが。

レメディオスは自分をバカだと思っているが、戦闘技能に関しては有能だ。

魔法が苦手だというのも、苦手意識が強くてアレルギー反応を起こしているだけで、適切な訓練をすれば使えるようになるかも知れないし。

 

 

「……まぁいい。無駄話での休憩も切り上げて、私は次の要所へ向かう。お前も、聖騎士では相手の難しい相手を倒してくれ」

 

「それは勿論。何とかするさ」

 

「お前がそう言ってくれるなら、私も安心できる……うむ。この戦いが終われば、また話そう。では、失礼する」

 

 

なんかレメディオスが死亡フラグみたいな事を言いながら、俺の前を後にした。

だがまぁ、レメディオスは死なないだろう。

 

ラズロが召喚した淫魔も、普通の聖騎士が苦戦する程度の敵だ。

聖騎士団長であるレメディオスが苦戦する程の強者ではない。

 

 

「まぁ、じゃあ俺もぼちぼち仕事に戻るとするか」

 

 

俺は飛行(フライ)で飛翔して、次の現場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして数時間が経過した。

結果、首都ホバンスの防衛に成功した。

 

俺達が到着する直前に、淫魔達の協力を受けた亜人達が門を突破していたが……俺達、援軍の助力によって、民間人の被害は最小限だ。

 

まぁ志願兵である民兵やら聖騎士にも死者は出ていたらしいが。

それなりに名前のある亜人を討伐できたし、良しとして欲しい。

 

首都ホバンスを攻めあぐねている亜人のみを討伐しても、俺の名声にならないという事で、ラズロ……というか、デミウルゴスの指示で悪魔を使って無理矢理、門を突破させたらしい。

だからこの犠牲は俺の所為となる。

今更だから、落ち込みはしないが。

少し胸糞が悪いのは確かだ。

 

だが結果的に俺の名声を高める事は出来た。

レメディオスの方もだ。

 

ホバンスに残っていた兵では亜人と悪魔を討つ事は出来なかったが、俺とレメディオスが参加すれば討伐する事ができた。

その事実は、在籍している騎士や民兵よりも俺達が遥かに強いのだと示しているようなものだ。

 

まぁ、そういう訳でホバンスから亜人や悪魔は居なくなり……カリンシャの方で防衛をしていた別働隊達もホバンスに帰還する事となった。

 

寝たきりではあるが、聖王女カルカ・ベサーレスの帰還というのは大きな意味を持つ。

事実上の最高責任者となる神官団長であるケラルト・カストディオの帰還も、だ。

 

まぁ、城塞都市カリンシャから首都ホバンスまで距離はあるので数日は掛かるのだが。

 

それまでの間、レメディオス……は政治が得意ではないので副団長に色々と任せて、俺と共に昼間は復興の手伝いをすべく力仕事をしていた。

 

夜は──

 

 

ちゅっ♡ちゅっ♡♡

 

「んっ♡ん……♡すき♡すきだ……♡あいしてる……♡♡」

 

 

ってな感じで、愛を確かめ合うように、ラブラブエッチに勤しんではいるが。

昼間にこそこそと隠れてナーベを抱き、夜中はレメディオスを抱く日々だ。

ま、俺は性欲が無限にあって、どれだけ女を抱いても疲労はないので構わないのだが。

 

レメディオスの喘ぎ声がうるさい所為で、聖騎士達から何となく察せられてるようで少し居心地が悪い。

彼等は自分の上司であるレメディオスが女になっているのを感じて……怒っている、訳でもなく、ふんわりと祝福しているような気がした。

というか、彼等は俺を尊敬の眼差しで見ていた。

 

曰く、あんな野蛮で気難しい女をモノにするとは度胸があるとか何とか、噂しているのを耳にした。

 

まったく、見る目のないボンクラどもめ。

レメディオスは可愛いぞ。

こーんなに可愛いのに、コイツらは本当に見る目がない。

 

毎晩、ベッドまで来て「きょ、今日も一緒に寝ていいか……?」なんて甘えた声で誘ってくるんだぞ。

これが可愛くなくて、何というのか。

 

普段の凛々しさとのギャップで、俺はベッドの上で大興奮──

 

あ、うん。

もう、この話はやめよう。

 

 

まぁ、そんなこんなが続いた中で、レメディオスの妹であるケラルトが、寝たきりの聖王女カルカを連れてホバンスへ帰還した。

 

カルカの私室まで、魂を抜かれ(実際は抜かれてないし、ただ睡眠の状態異常を付与されているだけだが)意識のないカルカを運び、そのまま部屋を出た。

 

ケラルトは少し疲弊した顔で俺とレメディオスを見た。

 

 

「姉様も、ベリアル様も……ありがとうございます。ご苦労様でした」

 

 

それが意識のないカルカを運んだ事……ではなく、様々な都市奪還と、首都ホバンスの防衛に対する労いなのだと俺は理解していた。

 

 

「いや、別にかまわないとも」

 

「私もだ。聖騎士として為すべき事をしただけだからな。それに──

 

 

レメディオスが俺の方へ視線を向けた。

 

 

「大体のことは、ベリアルが何とかしていた。私よりも、コイツを褒めてくれ」

 

 

何だか謎の謙遜をしている。

少し不思議に思い、レメディオスの顔を見ると……ふんす、と鼻で息を吐いた。

 

あれか。

俺が多く報酬を貰えるよう、気を遣っているのか。

 

俺は片眉をあげて、笑みを浮かべた。

 

 

「……いやいや、俺は俺に出来る事をしたまでだ。レメディオスの方が頑張っていたさ」

 

「何だと? 嫌味か、ベリアル」

 

「嫌味じゃない。俺がレメディオスに嫌味を言うと思うか?」

 

「……いや、そうは思わないが」

 

 

俺に褒められて、顔を赤くしつつレメディオスが自分の前髪を弄った。

……うーん、可愛い。

 

なんて、じゃれあっている俺達を見て……ケラルトは信じられない物を見るような目で俺とレメディオスを交互に見た。

 

 

「あ、あの、随分と仲良くなったんですね? 姉様と、ベリアル様は」

 

 

そう口にしたケラルトを見て、レメディオスは少し複雑そうな表情を浮かべた。

 

 

「ま、まぁ……そう、でもあるか?」

 

 

そして少し不安そうな目で俺を見た。

 

 

「あぁ、随分と良くして貰ったからな。俺もレメディオスのことを好ましく思っているよ」

 

「そ、そうか! そうだな!」

 

 

途端にレメディオスは嬉しそうな顔をした。

あんなに毎晩、好き好き愛してるチュッチュとかしてるのに、今更、俺の好意を疑っていたのか?

そんなに女として自信がないのか、レメディオスは。

 

しかして、ケラルトはまた奇怪な物を見るような目で自身の姉であるレメディオスを見ていた。

 

 

「……へ、へぇ……そうですか。う、うっ、ふふ」

 

 

ケラルトがちょっと引いたような目で、変な笑い方をしている。

女性らしさの薄かった姉が、急に“女”を見せているのだ。

こうなっても仕方ないだろう。

 

これ以上、話していたら俺が彼女を側室にしたのがバレる──いや、バレても問題ないのだが後ろめたい──ので、話題を切り替える。

 

 

「ケラルト殿の方で何か困った事はないか? 手伝える事なら手伝おうと思うが」

 

「へ? あ……そうですね。でしたら、その……カルカ様について話したい事があるのですが」

 

「むっ、カルカ様に何かあったのか!?」

 

 

カルカの話に、レメディオスが食いついた。

 

現在、聖王女であるカルカは眠りについている。

魔皇バアルに魂を盗まれ、眠らされている……と、聖王国の人間は認識している。

魔皇バアルを倒して、魂を取り返さなければ目も覚ます事ができない……と。

 

まぁ、実際は魂なんか抜いてないし、ただ睡眠の異常状態を付与しているだけだ。

魔皇バアルから魂を奪還、なーんてしなくても、任意のタイミングで目を覚まさせる事が出来るんだが。

 

そんなカルカで何の話が──

 

 

「カルカ様がうなされているんです。ずっと汗をかいていますし……魂を抜かれて、悪夢を見せられているのではないかと、思いまして」

 

 

……ん?

 

 

「なんだと! 悪夢……そうだ、私も魔皇バアルに悪夢を見させられた事があるぞ!」

 

 

ん〜?

 

 

「姉様もですか? わ、私も……あるのですが。それはもう、本当に……苦しくて、嫌悪感に満ちた悪夢でしたから」

 

「私もだ」

 

 

あ、それって……もしかして。

 

俺、カルカの<悪夢(ナイトメア)>を解き忘れてたってコトか!?

やべ、ケラルトの解除した時に、忘れてたんじゃん!

俺の所為じゃん!

 

ひえー、やっちまった。

 

 

「ベリアル様はどう思われますか? 何か解決策など……ありませんか?」

 

 

あ、やべ、話しかけられた。

何とか取り繕いながら、頷く。

 

 

「そうだな……悪夢を抑止する事なら俺にも出来るが」

 

「本当ですか!? でしたら是非、カルカ様をお救い下さい!」

 

「あ、あぁ、うん」

 

「私からも頼めるか、ベリアル。カルカ様はローブル聖王国の光だ……頼む」

 

「分かった。分かったから」

 

 

俺は勢いに流されて、そのままカルカの居る寝室に引きずり込まれた。

 

聖王女の寝室。

眠れる美女一人と、側に立つ美人姉妹。

なんか良い匂い……と共に匂う、独特な臭い。

 

カルカの方へ目を向けると、汗まみれで……しかも、下腹部あたりが特に濡れていた。

 

……これ、<悪夢(ナイトメア)>によってエロい夢を見させられているからか。

俺が淫魔(インキュバス)だって事もあって、エロい夢しか見させられないし……今見てるのは、嫌なエロい夢か。

多分、魔皇バアルに強姦される夢とか、亜人に輪姦(まわ)される夢だろうな。

 

そんな夢を長期間、ずっと寝ている間続けて見させられているのだとしたら……それは、彼女の精神衛生上、最悪だろう。

 

しかし──

 

 

「ベリアル様、お願い致します……」

 

「ベリアル、頼むぞ」

 

 

これ、解除できないじゃん。

<悪夢(ナイトメア)>の解除は起きている人間にしか出来ない。

夢から解放するということは、目を覚ますという事だ。

ここで<悪夢(ナイトメア)>を解除すると、カルカは目を覚まし、魂うんぬんの話がお釈迦になる。

 

だから、<悪夢(ナイトメア)>の解除はできない。

 

 

「分かった。取り敢えず、やってみるとしよう」

 

 

取り敢えず、寝ているカルカの頭に手を置く。

うお、髪がサラサラで触り心地が良い……って、それどころじゃないな。

どうするべきだ、これ。

 

出来ませんでした、と言うべきか。

しかし、カルカをこのまま悪夢に閉じ込めておくのも拙い。

精神が破綻してしまう可能性があるし、何より可哀想だ。

 

だから、そう……あ、そうだ。

 

 

「では対処するか」

 

 

俺は手に力を込めて、黙って魔法を発動する。

 

 

<悪夢(ナイトメア)>

 

 

俺はカルカに魔法を重ね掛けした。

彼女の悪夢をさらなる夢で上書きしたのだ。

 

だが、今回の夢は前の<悪夢(ナイトメア)>とは違う。

淫魔(インキュバス)は夢の操作が得意な種族だ。

<悪夢(ナイトメア)>と言っても、悪夢以外のものを見せる事が出来る。

器用だからな。

 

最初にかけた頃は、危機感やらを植え付けるための不快な<悪夢(ナイトメア)>だった。

今回のは……彼女が心地よく眠れるような幸せな夢にした。

 

内容は細かく指定できないが、彼女の夢が叶うような内容だ。

……まぁ、それでもエロい夢にはなるが。

淫魔(インキュバス)だから仕方ない。

 

とにかく、発動した魔法は正常にカルカに影響を及ぼして……苦悶の顔は、安らかな笑みへと変わった。

 

 

「……ふぅ、どうやら上手く行ったみたいだな」

 

 

俺の言葉にレメディオスの顔が明るくなった。

 

 

「ほう! やはり、流石だな。ベリアル」

 

 

さすベリはやめてくれ。

デミウルゴスでもういっぱいいっぱいなんだ。

 

そんなレメディオスから目を逸らして、俺はケラルトを見て……少し、ギョッとした。

 

ケラルトが泣いていたからだ。

 

 

「ケラルト殿? どうかしたのか?」

 

「い、いえ……こんな、こんなカルカ様の笑みを見たのは……久しぶりだと、思いまして……」

 

 

俺はチラッとカルカを見る。

幸せそうな笑みだ。

……どこか、熱のある笑みではあるが。

 

ケラルトは昏睡中のカルカの世話をしていた。

ずっと苦しそうに眠っている彼女を、誰よりも側で見ていた筈だ。

……申し訳ない事をした、な。

 

そんなカルカから視線を逸らすと、レメディオスと目があった。

 

 

「ちなみに、どうやったんだ?」

 

「ん? 夢を操作する魔法を使って、幸せな夢に上書きしたんだ」

 

「……ふむ?どんな内容だ」

 

「それは俺も知らないな。彼女の根本にある望みが生み出す”幸せ“の景色だからな」

 

「……そうか?」

 

 

あ、ダメだ。

レメディオスは分かってなさそうだ。

まぁ、人には得意と不得意があるからな。

 

 

「……ベリアル様、ありがとう、ございます」

 

 

対してケラルトは理解しているようだが、頭を下げていた。

 

 

「いや、そう気にしないでくれ。大した事はしていない」

 

「いえ、ご謙遜なさらず……私も、貴方と会うまでに悪夢を見させられていました。あの時……解いて下さったのですよね?」

 

「え、あー、それは、まぁ、うん」

 

 

俺が解いたってよりは、解き忘れてたから慌てて解いたが正解なのだが。

思わず歯切れの悪い返事をしてしまったが、それが逆にケラルトにとって変な受け取り方をしてしまったようで……熱のある視線を向けてくる。

 

 

「悪夢を解く事を対価に、私や国に対価を求める事も出来た筈です。なのに、何故ですか?」

 

「それは、まぁ……友人の受け売りだが、『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』だからな」

 

 

本当は罪悪感を紛らわせたい一心での行動なんだが、たっち・みーさん、すまん。

そんな俺の言葉にケラルトは顔を赤くして、俺の手を握った。

 

 

「素晴らしいお考えですね! そのご友人も……さぞ、素晴らしい方なのでしょう」

 

 

……まぁ、友達が褒められて嫌な気はしない。

というか嬉しい。

俺は思わず口角が上がる。

 

 

「そうだろう? 昔、俺が困っていた時に助けてくれた人でね」

 

 

なんて話したら、レメディオスが少し驚いたような顔をした。

 

 

「なんだ、お前が困るような事があったのか?」

 

「……レメディオス、俺をどんな目で見ているんだ? 俺も困るような事は沢山あるぞ」

 

「うっ……す、すまない」

 

「いや別に責めている訳じゃない。気にするな」

 

 

なんて話していると、ケラルトが少しじっとりとした目でレメディオスを見ていた。

 

というかまだケラルト、俺の手を握りっぱなしなんだが……綺麗な指だな。

レメディオスの鍛えられた硬い指も嫌いじゃないが、文官というか魔法詠唱者(マジックキャスター)特有の鍛えられていない細くて滑らかな指も嫌いじゃない。

 

思わず、撫でてしまいたい程で──

 

 

「あ、あの、ベリアル様? 私の手が、どうかしましたか?」

 

 

……無意識に撫でてたっぽいな。

俺の悪癖だ。

 

何とか誤魔化すべく、俺は“努めて”爽やかな笑みを浮かべた。

 

 

「いや、綺麗な手だと思ってな……悪かったな」

 

 

そう口にすればケラルトは顔を真っ赤にした。

 

 

「い、いえ! そんな、その……綺麗、ですか?」

 

「あぁ、綺麗だとも」

 

「お、男の人にそんな事は言われたのは初めてで……」

 

「それは周りの男に見る目がないな」

 

 

手、というか顔も可愛いしな。

姉妹なだけあってレメディオスと似た整った顔立ちだが、レメディオスは凛々しさがあるのに対して、ケラルトは賢そうな感じがする。

どっちが上とかそういう話じゃなくて、どっちも美人で可愛いという話だ。

 

ケラルトの顔を見てそう口にしたが、当人は更に顔を赤くして目を逸らした。

 

 

「そ、そうですか? そうですか……ふ、ふふふ」

 

 

ちょっと変な笑いが漏れてる。

もっと理知的だと思っていたが、意外と乙女な部分もあるのか──

 

 

「おい、ベリアル。いい加減にしろ、カルカ様の前だぞ」

 

 

レメディオスに肘で脇腹を突かれた。

 

 

「あぁ、悪いな」

 

 

そういえばそうだった。

悪魔に魂を抜かれて昏倒している主君の前でやる事ではないか。

 

 

「そ、そうですね……」

 

 

レメディオスの言葉にケラルトも顔をハッとさせて、バツの悪そうな顔をしつつ俺の手を離した。

何か少し名残惜しそうな感じを出しているが。

 

レメディオスは、そんなケラルトに視線を向けた。

 

 

「まだこれから予定があるだろう。カルカ様の前であれこれと話すのも悪いし、お暇させて貰うぞ……いいな? ケラルトも」

 

「え、えぇ、まぁ、はい」

 

 

ケラルトの言葉にレメディオスは頷き、俺へと目を向けた。

 

 

「よし。行くぞ、ベリアル」

 

「あ、あぁ……ではまた、ケラルト殿も」

 

「あ、はいっ、また……」

 

 

そうして、ケラルトをカルカの寝室に残して、レメディオスは俺の手を引いて部屋の外に出た。

そのまま手を引っ張ってくるので、思わず声を掛ける。

 

 

「なんだ、レメディオス。どうかしたのか──

 

「お前、節操がないとは思っていたが……人の妹にも手を出すつもりか?」

 

 

レメディオスが立ち止まり、俺の顔を見た。

ちょっと妬んでるような顔だ。

 

 

「いや、そういうつもりではないんだが」

 

 

嘘だ。

そういうつもりだ。

ケラルトめちゃくちゃ可愛いし、抱きたいし、側室にしたい。

 

 

「そういうつもりはないだと……? お前、ケラルトに何の不満があるんだ。ケラルトは知性、才能、美貌を兼ね備えた私の妹だぞ! 何が不満なんだ!」

 

「……レメディオス、お前は俺をどうしたいんだ?」

 

 

人の妹に手を出すな、言ったり、手を出さないとは何事だ、とキレたり。

情緒が不安定過ぎるだろ。

 

 

「お前がケラルトと良い雰囲気になるのは癪だが、ケラルトが軽んじられるのも嫌だ!」

 

「……そ、そうか?」

 

 

女としての嫉妬と、姉としての妹への愛。

その両方か。

難儀なものだな。

 

 

「ふん」

 

 

多分、レメディオスも自分の支離滅裂さには気付いているのだろう。

ムスッとした顔をしているが、怒っている訳ではなさそうだ。

 

……まぁ、これは俺に機嫌をとって欲しいという仕草だな。

流石に慣れてきたし、分かる。

 

面倒くさい女だが、この面倒くささが可愛いんだよな。

 

 

「レメディオス」

 

「な、なんだ……っ」

 

 

こういう時は、何か物やら行動で慰めるに限る。

今のレメディオスが欲しがっているのは──

 

 

「今晩、お前のしたいようにしていいぞ」

 

「なっ、何を言ってるんだ!バカ!」

 

 

違ったみたい。

脇腹に思いっきりパンチされた。

 

レベル差の所為で痛くはないが、よろけるフリはしておく。

そんな俺を他所に、レメディオスは腕を組んで鼻を鳴らした。

 

 

「ま、まったく……そんな事で私の機嫌が直るとでも思ってるとは……まったく」

 

 

いや、デレデレしてるじゃん。

どうやら正解だったようで、機嫌も直った。

 

 

「……では、俺は復興本部に顔でも出してくるかな。ナーベも居るし」

 

 

ナーベを一人で放置し過ぎると、現地民と喧嘩を始めるからな。

俺はそのままレメディオスから離れて──

 

 

「ま、待て」

 

「……ん?」

 

 

服の裾を引っ張られて、俺は振り返った。

レメディオスが何か言いたげな顔をして……口を窄めて、視線を逸らした。

 

 

「こ、今夜の事だが……」

 

 

そして、顔を真っ赤にして視線を戻した。

 

 

「……手、手を繋ぎながら、キスする奴が、その、したい……っ、ん♡」

 

 

思わず、俺はレメディオスを引き寄せてキスをした。

舌を絡めて口の中を犯すぐらい、激しいキスを。

 

 

「んっ♡ん、ん゛っ♡ん゛、〜ッ♡ん、はっ……お、お前! 急に何をするんだ……っ♡誰かに見られたらどうするつもりだ……っ♡」

 

「その時は見せつけてやれば良いだろう」

 

「〜〜〜っ!!」

 

 

俺の言葉にレメディオスは顔を真っ赤にして、俺の膝を蹴った。

 

 

「痛いぞ」

 

「っ、バカが! まったく、お前はそう、すぐに下劣な事を考えて、くそっ! 私はもう行く! お前も勝手にしろ!」

 

 

苛立った様子でレメディオスは大足で俺に背を向けた。

 

 

「今晩、俺の部屋に集合だからな」

 

「うるさい!……っ、鍵は開けておけ!」

 

 

ここで『もう行かない』とは言わないところが可愛いんだよな。

俺は背を向けてドシドシと歩くレメディオスを見て、そう思った。

 

ちなみに、俺の陰茎はバキバキに勃起していた。

 

 

 




次回はカルカの夢の話です

ネイアの話

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