※この作品はR-18です。

【R-18】オバエロ:至高の淫魔がスケベする話   作:口だけの淫魔

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#92 嵐の前の静かさに

日中、俺は貸与えられた自室で、こそこそと<伝言(メッセージ)>を飛ばしていた。

 

 

「ナーベラル、そちらの方はどうだ? 問題はないか?」

 

 

相手はナーベラル。

彼女は冒険者という立場であり、聖王国への長期に渡る支援はできない……と先日、魔導国に帰還させた。

 

というのは建前だ。

ナーベラルは魔導国に帰っておらず、今は亜人達が住むアベリオン丘陵に滞在して貰っている。

彼女には潜伏スキルを使用して貰い、亜人達の状況を監視して貰っている。

 

今現在、亜人達は魔皇バアル……の姿をしたラズロに支配されているが、それでも足並みを揃えず暴走する者も多い。

勝手に聖王国に侵入して民間人を食い荒らそうなんて奴もいる。

ナーベラルは、そういった亜人をラズロに密告する立場にある。

 

 

『はい。全体の消耗量は戦力の半分程度です。ご指示通り、生かさず殺さず、を維持しています』

 

 

亜人を殺し過ぎると、アベリオン丘陵の生態系が乱れる。

まぁ、もう既に乱れてはいるが、亜人を根絶まですると色々とトラブルが起きる。

 

まず、アベリオン丘陵に住むモンスターの存在。

人間の生息域に発生するモンスターより遥かに強靭であり、亜人種によって数を減らされていなければ……それがアベリオン丘陵に密接する法国や聖王国に被害を及ぼす。

法国はぶっちゃけどうでもいいが、聖王国に被害が出るのは困る。

 

そして、対亜人を生業とする者達の失職を招くのも問題だ。

職業軍人や、冒険者など、武力を維持して亜人と戦う者達の職を奪えば、どう暴走するかは分からない。

職業軍人である騎士などは多少の潰しは効くだろうが、冒険者のような奴らだと野盗になりかねない。

 

だからこそ、ゆっくりと亜人の数を調整していかなければならない。

短期的に見れば亜人なぞ滅ぼした方が良いんだが、長期的に見れば損の方が多い。

 

 

「そうか……悪いが、そのまま監視を続けてくれ」

 

『い、いえ! 何も悪い事など……喜んで、命に従わせて頂いております!』

 

 

気遣うようにかけた言葉へ、ナーベラルが過剰に反応してくる。

融通は効かないが、これも忠義心の現れだ。

邪険にするような事ではない。

 

ちょっと苦笑しつつ、俺は会話を続ける。

 

 

「実行日……あー、Xデーだったか? アレに関して、日程は早められるか?」

 

『……それは、ラズロ様に伺いますが。早い方が良いのですか?』

 

「まぁ、ナーベラルもラズロも、そんな場所で長居させられても嫌だろう?」

 

『いえ、それはその……申し訳ありませんが、はい』

 

 

アベリオン丘陵は亜人たちの棲家だ。

発展度合いで言えば人間に劣る。

衣食住、どれもが劣悪な環境であり、長期間の任務はストレスに繋がりかねない。

 

 

「一度、ナザリックに帰還して休養でも取るか?食事やら、スパやらで疲れを癒すといい」

 

『それは……それも嬉しいのですが』

 

 

ナーベラルが何か口元をまごつかせているようだ。

何か不満があるのだろう。

部下の不満を取り除くのは上司である俺の責任だ。

 

 

「何かしたい事でもあるか? 欲しいものでもいい。可能な限り用意しよう」

 

『っ、であればその、私は──

 

 

ナーベラルが我儘を言うのは珍しい。

いや、我儘というには細やかなものだ。

普段から俺のために、ナザリックのためにと頑張ってくれている。

それに報いる為にも俺は──

 

 

『ベリアル様と、少しでも良いので……一晩でも良いので、一緒に居られたら、と』

 

 

……めちゃくちゃ可愛い事言ってきたな?

まぁ俺、ここ最近忙しいし、聖王国内から出られて居ないけど。

俺が黙っているのを、渋っているのだと勘違いしたのかナーベラルが慌てて口を開いた。

 

 

『い、いえ、申し訳ありませんっ。出過ぎた真似を──

 

「ん? あ、いや、良いんだ。俺も嬉しい」

 

『う、嬉しい、ですか?」

 

「好きな女にデートへ誘われたんだ。嬉しくない男は居ないだろ?」

 

『す、好き、ですか?』

 

「あー……まぁ、明日にでも一度、一緒にナザリックへ帰ろう。休養は必要だからな」

 

 

伝言(メッセージ)>の先でナーベラルが顔を綻ばせているのが分かった。

見えない筈なんだが、息遣いで分かってしまう。

 

 

『ありがとうございます、ベリアル様』

 

「いや、別に感謝されるような事じゃないさ。俺もナーベラルとは一緒に居たいし」

 

『もったいなきお言葉ですっ』

 

 

別に世辞とか気遣いの言葉でもなく、ナーベラルと一緒に居たいのは事実だ。

 

 

「では、ラズロにもよろしく言っておいてくれ。あまり根を詰めすぎないようにな」

 

 

そう口にして、俺は<伝言(メッセージ)>を切断した。

そして、侵入防止用の魔法道具(マジックアイテム)と、消音機能がある魔法道具(マジックアイテム)、盗聴透視防止の魔法道具(マジックアイテム)を停止した。

 

大量の魔法道具(マジックアイテム)だが……俺が心配性って訳じゃない。

ここ最近、どれだけ気をつけても性行為(セックス)が盗み見られているからな。

性行為(セックス)ならまだ良いんだが──いや、良くないけど──こういった場面を見られると殺すか洗脳するか、記憶を消すしかなくなる。

俺もそんな事はしたくないし。

 

 

「……はぁ」

 

 

精神的な疲れを感じて、ベッドに腰を下ろす。

ナザリックの、いや、魔導国の俺の屋敷にある家具よりも質が劣るが、悪くないベッドだ。

 

毎晩、ここでレメディオスかケラルト、もしくはその両方を抱いている。

 

二人は姉妹で顔も似ているが、性格は異なる。

猪突猛進で頭を使う事が苦手なレメディオスと、思慮深く聡明なケラルト。

こう言うとレメディオスがダメダメみたいだが、彼女は行動力があるし勘が鋭い。

得手、不得手があるだけで、どちらが優れているかとかそう言った話ではなく……まぁ、二人とも力か知恵に優れた正反対な才女という訳だ。

 

だが、似ている所もある。

彼女達は身内に対する愛情が深く、その分、敵に対する攻撃性が高い。

レメディオスは聖王女であるカルカを崇拝し、カルカの信念を侮辱する物や、聖王国に害を成す物を許さない。

ケラルトも同様で、親友である聖王女や姉を貶める相手には、苛烈で陰湿な策略で追い詰める傾向にある。

 

……ま、そんな所も可愛いんだが。

女の子というのは、これぐらい意志が強くて、大切な物の為に行動できる方が可愛い。

 

あ、あと好きな性行為(エッチ)も違うな。

レメディオスは少し乱暴に、後背位で奥まで突かれるのが好きだ。

ケラルトは優しく愛でるように、正常位で抱きしめ合うのが好きだ。

あーでも、二人ともキスしながらするのが好きだな。

そこは姉妹か。

 

 

……ダメだな、思考がエロに寄って来ている。

淫魔(インキュバス)の悪い癖だ。

俺は悪くない、男性器(ちんぽ)が悪い。

 

 

とにかく、魔皇バアルが聖王国に侵略行為をしてくるまで、復興を最優先としている。

レメディオスは聖騎士達への指導や、復興の力仕事を頑張っている。

 

聖騎士団長が復興現場で力仕事ってどうなんだ、とは思うが……副団長のグスターボがレメディオスに書類仕事させたくないらしく(曰く、任せれば任せるほどに仕事が増える)、現場で仕事をさせているらしい。

それで良いのか、レメディオス。

 

ケラルトの方は逆に頭を使う仕事……というか政治に勤しんでいる。

聖王女カルカが不在の今、代行として多くの仕事を任されている。

非常事態だというのに、南部の貴族達はちょっかいを出しているらしく、その対処もケラルトが行っている。

本当に大変そうだ……原因は俺達、ナザリックだが。

 

手伝いたいが、部外者である俺が手伝えるようなものではない。

俺に出来るのは精々、フラストレーションが溜まったケラルトを優しく抱いて、慰めてやる事ぐらいだ。

 

 

そう言えば、ケラルトに頼まれて、寝たきりのカルカを診に行った。

まぁ睡眠デバフで眠らされているだけだ。

俺の目的としては起こさない方が良いので、治してやるつもりもないが。

 

しかし、睡眠デバフ……食事もとってないし、排泄行為もないんだよな。

これ身体を維持する栄養って何処から来てるんだ?

健康体のまま、すやすや眠っているカルカを見ながら俺も首を傾げる。

 

というか……今、カルカは夢を見ているんだよな。

前は悪夢を見ていたが、今は俺が夢を上書きした。

まぁ、淫魔(インキュバス)の夢操作だから、こう、エロい夢になってるっぽいんだが。

 

恐らく、カルカの望む、幸せでエロい夢を見ている筈だ。

確かカルカの幸せは……『聖王女という立場を見ずに、素の自分を愛してくれる男の嫁になりたい』だったか。

ならば今、彼女が見ている夢とは『理想の異性とのラブラブ生活 (エッチ付き)』だろう。

 

……これ、起こしたら起こしたで、俺を恨まないか?

夢のような──というか夢なんだが──幸せな生活から無理矢理叩き起こすのだ。

長期間の夢は現実と勘違いしてしまう。

彼女は今、夢の世界で理想の男とラブラブエッチしているのだ。

それを無理矢理起こせば……精神的ダメージも大きいだろう。

 

かと言って、起こさない訳にはいかない。

 

既にレメディオスとケラルトを籠絡した今、カルカが俺に対して多少の嫌悪を抱いていようと、デミウルゴスも『邪魔だから聖王女を抹殺します』とは言わんだろう。

 

……言わないよね?

 

まぁ、俺はカルカのこと、容姿は好きだし、身体は好みだし、性格も好きだし、声も好きだし、めちゃくちゃ好みだし。

死んでほしくない。

だかと言って、無理矢理抱いて催眠!という訳にもいかないしなぁ。

 

難しい問題だ。

とにかく、カルカが目覚めた後の振る舞いについては注意が必要だ。

 

 

「……ちょっと外出て、気分転換するか」

 

 

誰も居ないからと独り言を溢して、俺は部屋を出た。

ケラルト……の方は手伝う事もないし、行って邪魔しても悪い。

 

行くならレメディオスの方か?

復興の手伝いぐらいなら、手伝えるし。

 

やる事ないから何もしないというのも罪悪感わくし、暇だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は誰に咎められる訳でもないが、こっそりと聖王城を抜け出して首都ホバンスの城下町へと降りた。

 

 

街の復興は進んでいる。

そもそも、大きく破壊されたのは城壁近くであって、中央にある王城付近は殆ど無事だ。

この辺の国民達は、普段通り……とは言えないだろうが、それほど困窮はしていなさそうだ。

 

少し歩けば広場があって……ほら、民が集まって集会を開いている。

何やら拡声器らしき魔法道具(マジックアイテム)を手に持つ小柄な少女が、お立ち台で演説している。

 

 

「我々を救って下さった魔導国の英雄、ベリアル様こそが正義なのです!」

 

 

……あれ?

アレ、ネイアか?

確かに、前回の侵攻の際、亜人から助けはしたが──

 

 

「聖王国の力だけでは魔皇バアルに抗う術はありません! その事は皆さんにも理解できている筈です! 我々が今も食べることに困らず、復興を進めて来れたのは魔導国の支援のお陰です! であれば、私たちは何をして報いるべきでしょうか!?」

 

 

何もしなくていいから。

何だかヤバい宗教みたいになってるな。

 

……ネイアの横に居る女にも見覚えあるぞ。

あの娘は……アレだ、信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)の、ビ……ビビアナか?

ネイアと一緒に助けた女だ。

ネイアの言葉に感涙して拍手してる。

 

 

「……あー」

 

 

よし、見なかった事にしよう。

 

俺はコソコソと隠密スキルを発動して、その場を後にした。

見つかったら絶対に面倒な事になってしまう。

 

 

まぁ、ネイアの演説によって聖王国の民が魔導国に対して、恩義を感じてくれるのはありがたい話ではある。

今後、魔導国と聖王国は協力関係となる筈だ。

その際に国民からの好感度が低ければ、協力も難しい。

 

だから、あの集会は不本意がだが止めなくてもいい。

いや本当に不本意なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で外壁近くで復興工事を手伝っているレメディオスの元まで来たが──

 

 

「む、ベリアルか? ……なんだその、疲れた顔は。外仕事をしている私よりも疲れた顔なぞしよって」

 

 

レメディオスにこんな事まで言われてしまう始末だ。

 

 

「いや、道中でな。少し精神的に疲れることがあって」

 

「お前がか? 珍しいな」

 

「なんだ俺が図太いとでも言うのか」

 

「図太いだろう、お前は」

 

 

レメディオスは明らかに一人で持つべきでない建材を床に置いた。

……聖騎士団長は復興作業の手伝いをした所で役に立つのか?と思っては居たが、存外、頑張っているようだ。

まぁ、レメディオスは一般人とはかけ離れた筋力があるからなぁ。

 

 

「俺も手伝おう。何かする事はあるか?」

 

「そうだな。それなら……倒壊した家屋の撤去を手伝って貰っていいか?」

 

 

あっちの世界なら重機で片付けられるが、この世界では相当時間がかかる。

人力では中々に難しいからな。

 

 

 

俺が倒壊した建造物相手に魔法を行使して、細かく切断して解体する。

崩して瓦礫となったそれを、レメディオスが片付けていく。

 

魔導国の権力者である俺と、聖王国の聖騎士団長であるレメディオス。

他の作業員は近付き難いようで、俺達は二人だけで片付けを行う。

 

そんな作業をしながら、レメディオスと会話する。

 

 

「外壁周りの復興はまだ時間が掛かりそうだな?」

 

「そうだ。住んでいた民は避難できたとはいえ、住む家もなく、家財もない。早く復興が進めば良いんだが」

 

「……そうか」

 

 

ちょっと罪悪感。

ナザリックが原因でぶっ壊された所だし。

 

 

「しかし、魔導国の支援のお陰で、復興も進んでいる。特に食糧の支援は大きいな……民も不安だろうが、腹も膨れれば少しは気も休まる」

 

「そう言ってくれると、俺も鼻が高いな」

 

 

せっせと作業をしながらも、レメディオスを一瞥する。

ちょっと汗に濡れて肌が艶やかになってる。

……なんかこう、土建屋の溌剌としたお姉さんって感じだな。

実際は聖騎士なんだが。

 

 

「……しかし、魔導国、か」

 

 

少し含みのある顔でレメディオスが言葉を漏らした。

 

 

「何か気になるのか? レメディオス」

 

「あぁ、いや……そう、だな」

 

 

言いづらそうな顔だ。

前はもっと考えなしに何か言っていた気がするが、少しは成長しているのだろう。

 

 

「魔導王について不安か?」

 

「う、あぁ、いや、悪くいうつもりはないんだが……その、まぁ、そうだな。不安だ」

 

 

レメディオスは申し訳なさそうな顔で俺を見ている。

 

 

「何が不安なんだ?」

 

「……魔導王はアンデッドなのだろう? アンデッドは生者を怨むものだ。少なくとも、私はそう教えられてきた」

 

 

レメディオスの言う事はもっともだ。

アンデッドは本来、生者の敵であり、人類の敵だ。

……ま、モモンガさんも実際、生者に対してというか、命に対して軽視している節はある。

彼女の言葉は正しい。

 

正しいんだが──

 

 

「心配しなくていい。話してみると、案外普通の人だぞ?」

 

 

モモンガさん、アインズ・ウール・ゴウンに対して敵対心を持つ事、即ち……それがナザリックの臣下に対する地雷だ。

踏めば確実に死んでしまう。

ここで少しでも好感度を──

 

 

「そうか。ベリアルが言うのならば、信じてみよう」

 

 

……あれ?

拍子抜けだ。

もっと「いやだがアンデッドなぞ、信じられるか!」とキレると思っていたが。

 

 

「…………」

 

 

変な物でも食ったのか、と不審がっているとレメディオスが俺の視線に気付いた。

 

 

「なんだ?」

 

「いや、レメディオスは聖騎士だろう? アンデッド相手に、もっとこう……猜疑心のような物を持っていると思っただけだ」

 

「……そうだな。確かにそうだ。何も別に、私はアンデッドに対して心を許した訳ではない」

 

「なら、何故だ?」

 

 

レメディオスが少し目を細めつつ、俺を見た。

 

 

「……お前と一緒に居て、少しは変わっただけだ。自分の中にある常識に縛られず、人の意見に耳を傾ける柔軟さが……時には必要だろう? 違うか?」

 

「……レメディオス」

 

 

やっぱり変なものでも食ったのか。

……とは言わないし、思わない。

 

成長したのだ、彼女は。

意固地で単純だったレメディオスは、短絡的な行動をしないように思慮深くなろうと努力している。

 

それが俺は堪らなく嬉しい。

 

 

「……まぁ、一番の理由は、魔導王がお前の主人だからな。そう悪い奴ではないだろうと……待て、ベリアル。なんだその顔は」

 

 

やべ、微笑ましい物を見る顔をしているのがバレた。

 

 

「いや、他意はない。ただ少し、嬉しかっただけだ」

 

「何だそれは……何が嬉しいんだ」

 

「ん? それは、レメディオスが可愛くて嬉しいって感じだな」

 

 

俺がそう誤魔化すと、レメディオスは顔を真っ赤にして固まってしまった。

 

 

「お、お前! ここは公共の場だぞ! こんな所で可愛いとか言うな!」

 

「……公共の場以外でなら良いのか?」

 

「そ、それは……っ、とにかく! 私を揶揄うのはやめろ!」

 

「揶揄うつもりは無いんだがなぁ」

 

 

レメディオスが俺を睨んだ。

睨んでいるが、怖くはない。

寧ろ可愛い。

これ、照れ隠しだし。

 

 

「まったく……お前という奴は……っ」

 

 

怒ってるフリをしているが、嬉しそうだ。

睨んでくるレメディオスはそのままに、俺は建材を置く。

 

 

「とにかく、俺はレメディオスが魔導王陛下を信じてくれると言うのなら、嬉しい」

 

「そうか?」

 

「レメディオスも自分の主……聖王女陛下が敬われると嬉しいだろ?」

 

「確かに、それもそうだな」

 

 

頷くレメディオスを横目に、俺は瓦礫を移動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、俺の寝室。

今日はケラルトが来ていた。

薄着の服を着て、ベッドに腰掛け……マグカップを手にホットミルクを飲んでいる。

 

やる事はやるつもりだが、こういう穏やかな時間も悪くはない。

 

 

「はぁ……」

 

 

ミルクを飲んで一息をついているケラルトを見て、俺もそばに座った。

 

 

「随分とお疲れのようだな」

 

「え? ええ、まぁ……色々と、困り事は多いですからね」

 

 

その大半の原因はナザリックだろう。

俺は何食わぬ顔で笑みを浮かべる。

 

 

「俺に手伝えれば良いんだが」

 

「いえ、気持ちだけ受け取っておきます。聖王国を治めるのは、聖王国の人間の仕事ですからね」

 

「それは確かにそうだな。ま、俺に手伝える事なら何でも言ってくれ」

 

 

俺がそう口にすると、ケラルトはマグカップを机に置いた。

 

 

「それならば……そう、ですね……ホバンスの城下町で、魔導国を崇拝するような集会が開かれて居たそうですが」

 

「…………」

 

 

思わず目線を逸らした。

だが、そんな俺の様子を見てケラルトは確信したようだ。

 

 

「あらぁ? ベリアル様も、知っていたようですねぇ……?」

 

 

うっふっふ……と、ねっとりとした陰湿な、揶揄うような笑みを浮かべている。

腹黒そう、というか、何か悪巧みしてそうな顔だ。

 

 

「いや、知らないな。何の事だか」

 

「へぇ、そうですか? まさか、魔導国側からの印象操作、という事ですか?」

 

「……あー、いや、そういう訳じゃないぞ?」

 

 

俺が首の後ろを掻きながら口を窄めると、ケラルトが笑みが悪そうなものから、微笑ましいものを見るような笑みに変わった。

 

 

「ふふ、でしょうね。そんな周りくどい事をする必要ありませんし、彼らの自発的な行動なのでしょうね」

 

「……分かっているのなら、揶揄うのはやめてくれないか?」

 

「うふふ、良いじゃないですか。揶揄っても」

 

 

ケラルトが笑みを浮かべてる。

……うーん、可愛い。

 

 

「それで? ケラルト・カストディオ神官団長殿は、あの集会にお困りか?」

 

「それは、まぁ……そうなのですが──

 

 

ケラルト少し顔を顰めつつ、申し訳なさそうに言葉を繋ぐ。

 

 

「聖王国は信仰国家です。聖王を信仰の中心に置く事で、神殿勢力、政治、聖騎士という名の軍部……それらをまとめ上げています。志願での民兵制度も、民間人が信徒であるが故に成り立っています」

 

「……なるほど。新興宗教染みた集会を嫌がる訳だ」

 

「普段ならば何かと理由を付けて異端認定して終わりなのですが、相手が相手です。あの集会を摘発するという事は、例えその意図がなくとも聖王国が魔導国を軽視している……と、思われても仕方ないですし」

 

「事情を知っている俺はそう思わないが……あそこの集会に集まっているような、民間人からの反感を買う、という事だな。厄介だ」

 

「はい、厄介ですね……ベリアル様は話が早くて助かります」

 

 

……特に凄いことしてないのに褒められた。

相槌打ってるだけだぞ。

デミウルゴスじゃないんだからさ……アレか?

恋は盲目で、俺の一挙一動に上方修正が入っているのか?

 

 

「ケラルトが話し上手なだけさ」

 

 

謙遜じゃなくて、これは“マジ”だ。

 

 

「……うっふっふ、そうしておきましょうか?」

 

 

俺の謙遜に対して、含みのある笑みを浮かべてくる。

最近は俺に気を許しているようで、こういう前までは見せなかった笑みを浮かべてくるようになった。

ギャップがあって可愛いので好きだが。

 

 

「何とか辞めさせるべきなのか?」

 

「いえ、あの集会が民の息抜きになっているのは事実です。聖王国が魔皇バアルにいいようにされていた事を国民は感じ取っています……外に救いを求める事で、安心を得ようとしている気持ちは分かりますから」

 

 

私もそうですし、とケラルトが言外に含みつつ、俺を見た。

 

 

「難しい話だな」

 

「はい。ですから、今はただ静観する事しか出来ません。あの集会はまだ燻った火種です。現在進行形で発生している問題を解決するまで、手を出したくないというのが見解ですね」

 

 

そうケラルトがぶっちゃけて、俺は目を瞬いた。

 

 

「……今思ったんだが、部外者である俺にそんな話して良いのか?」

 

「はい、部外者だからこそ……ですよ?」

 

 

また、ケラルトが含みのある笑みを浮かべた。

 

なるほどな。

聖王国側は対処を考える余裕はなく、対処できる立場にもない。

あわよくば魔導国側に対処を考えて、何かしらの行動をして欲しいという訳か。

 

そして、それを暗に口にする事で「騙す意図はない」と共有している訳だ。

良い性格してるな、本当に。

 

……皮肉じゃなくて、マジで良い性格だ。

目的のために努力できる奴は、俺、好きだし。

 

 

「ご期待には添えないな。魔導国側は現状に手を出すつもりはない。今後、魔導国は聖王国と同盟を結び、影響力を高めたい。寧ろ、あの集会は渡りに船だ」

 

「……そうですか、なら仕方ありませんね。聖王国側に大きく損害が出る訳でもありませんし、やはり見逃す方針にしましょう」

 

 

少し落胆しつつも、仕方ない……とケラルトが息を吐いた。

ダメでもともとだったんだろう。

 

しかし、そうだな──

 

 

「……まぁ、俺の個人的な感情だと、知らん奴にああも敬われるのは気恥ずかしいし、止めたいんだがな」

 

「ぶっちゃけますね?」

 

「公では部外者かも知れんが、私事では身内だからな」

 

 

俺がそんな事を口にすると、ケラルトは少し顔を赤らめていた。

 

 

「……身内、ですか」

 

「違うのか?」

 

「いえ、身内ですねっ、身内です……」

 

 

そこに居るのはもう、聖王国の神官団、その団長であるケラルト・カストディオではなく、一人の女だった。

 

そんな彼女の肩を抱き寄せる。

 

 

「まぁ、本当に困ったら何でも言ってくれ。俺に出来る事なら何でもしよう」

 

「な、なんでもですか?」

 

「あぁ、亡命する必要がでたら、魔導国で一生面倒を見たっていい」

 

「……縁起でもない事を言いますね」

 

「……すまん」

 

 

口では咎めつつも、ケラルトは満足でもない笑みを浮かべていた。

そして、少し真剣な表情を浮かべた。

 

 

「でも、どうしても助けが必要になった時……カルカ様も助けてくださいますか?」

 

 

ケラルトとしては、切羽詰まっているのだろう。

彼女の世界は自分を含めた三人で構成されている。

 

自分(ケラルト)と、(レメディオス)と、親友(カルカ)だ。

 

前者の二人は俺の側室として庇護下にあるが、カルカは別だ。

俺に助ける理由はない……と、ケラルトは思っているのかも知れない。

 

 

「俺はケラルトが泣くぐらいなら、何でもするぞ? 無論、助けが必要ならば助けるさ」

 

「……ありがとうございます」

 

 

ケラルトが安堵の息を漏らした。

まぁ、何となく頼み込めば俺が助けるというのは分かっていたのだろう。

安心した、という様子だ。

 

そして、俺と目線を合わせて……するり、と服を脱ぎ始めた。

 

 

「では、仕方ありませんね。ベリアル様の慈悲に、私も報いなければなりません」

 

「いや、そんな気に負わなくて良いんだが……」

 

「恩を返したいと思っているだけですから」

 

 

というかこれ、口実にしてエッチな事がしたいだけだろ。

呆れ……よりも性的興奮を感じながら、俺も服を脱いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は五回戦までした。

 

ちょっと……というか、かなりヤり過ぎた所為で、ケラルトはぐったりしていた。

でも、ちゃんと朝から仕事に向かっていた。

本当に偉い。

 

申し訳なかったので、栄養ドリンクだと偽って治癒薬(ポーション)を渡しておいたが。

 




次回は、ホバンスに隕石が落ちてきます。

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