輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国辺境 某山岳地帯 某山村付近粘土露頭地帯○
「…よし、こっちにも色々使える粘土が露頭しているところがあったな。これなら魔術を使えば十分にあの子達のあの臭いや身なりをどうにか出来そうだ…」
何処からともなく現れた五人の少女が山村の小さな男の子達の自覚ない言葉でメンタル的ダメージを受けてから数分後、神族の少年ゼウスもといこの地も含めたアマゾン国の支配者層アマゾネス族の王宮客人となっていたユピタは、村の近くにある断層で露頭していたその土を手に取っていた。
「よし、まずはこれらを必要なだけとって…なるべく魔術は用いずに…あとで皆にも出来るようにしないとね…」
ユピタは魔術の背嚢から大きなツルハシを取り出し、神族由来の怪力でそれを軽々と振るってその土を次々と掘り出していく。
「…よし、次はこれに水分を加えて…今は早くする必要があるから…あとで器の作り方の説明をするとして…“
そうして掘り出した土の塊の上に、ユピタが手をかざすとそこから小さな雨雲が生じてそのすぐ上に広がり、ジャーっとシャワーのように雨を降らせて柔らかくし、それを手でこねて幾つかの大きな形あるものに変えていく。
「んー? ユピター今度は何をしてるのー?」
その作業中に、ユピタと同じく神族アフロディーテとしての出自を隠す女魔術師ヴィーナが、好奇心に釣られた表情でひょっこり姿を現した。
「あー、あの五人の女の子のあの身なりをどうにかするための準備だよ。どうしてここに?」
「んー、あの五人の子達のあまりの臭いの強さに村人もアマゾネスの皆も離れだして辛気臭くなったからこっちへ来ちゃった」
「あー…あの臭いは確かにねぇ…じゃあ、ちょっと手伝ってもらってもいい?」
ユピタは魔術の背嚢から今度は何らかの植物の種を取り出してヴィーナに渡した。
「ちょっとこれを魔術で成長させて増やしてその実をたくさん生み出してほしいんだ」
「これを? あーなるほどね。わかったわ。簡単よ」
ヴィーナはその種を受け取るとその辺の地面に埋め、そこへ自身の手から生じさせた泡を掛けた。
すると、泡の中は暖かい光に満たされ、種はポコポコっと芽吹いて、まるで映像の早送りのように猛烈な勢いで成長して大きくなっていく。
(…さすが性愛を司る女神だけあって、人間弱体化状態でも豊穣の力をここまで用いるなんて、じゃー僕もこれの仕上げに…)
それに感心をユピタは覚えつつも、今度はその手から小さくも光り輝いてパチパチっと小さな火花に似た稲妻を迸らせる光球を生じさせる。
「…今回は色々と早くしなくちゃいけないんで…“
ユピタがそう呼んだ光の球の群れは、彼が水を与えて捏ねて形を与えた土の塊を取り囲み、パチパチっとした音を強めていった。
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国辺境 某山岳地帯 某山村○
「…うう、あんな小さな子達に…」
「あーもーお姉ちゃんそんなに落ち込まないで…」
「うーん、けれどこの臭いどうにか出来ないかしら…?」
「こいつはどうにかしないときついなぁ…」
「僕たちの周りから人は遠ざかっていっちゃったし、子供達なんか何処か遠くへ遊びに行っちゃったし…」
ユピタとヴィーナが何らかの作業を共にしてから数分後、山村の外れで五人の少女達は程度の差はあるが暗い表情で肩を寄せ合っていた。
「すみませーん。ちょっと色々準備に時間がかかったので離れていましたけどあの子達はいますかー?」
「あの五人の女の子の酷い臭いをどうにかできるかもしれないんだけどー? 何処にいるのー?」
「ああ!? 誰が臭いよ…ってあ、あんた達は確か村の外から来たっていう魔術師の…何それ?」
そこでユピタは自身の魔術で生じさせて操る小さな雲にいくつもの道具を乗せた状態でヴィーナと共に村へ戻ってきて、五人の少女の一人が噛みつくが見慣れぬ道具類に戸惑いを覚えた。
「…あー、これはですねー。その女の子としては色々とキツイそちらの今の状態をどうにかするための道具類です。んしょっと」
そう言ってユピタが小さな雲を着地させて下ろした道具類の中で一際目立つのは、先ほど断層で彼が採取した粘土などを用いて魔術も含めた加工で、おそらくこの世界で初めて作成した“五右衛門風呂”であった。
その五右衛門風呂の底は二重になってかまどのようになっており、空いた穴からユピタは村人の許可を得て切り取ってきた薪を入れ、魔術で火をつけて、風呂の中に小さな雲から雨を降らせて満たして温めていく。
「うわ、何か白い煙みたいなのが出てきた」
「あーこれは湯気って言うんです。ほれ、次はこれ」
ユピタは湯を温めていく間に陣幕を張り、その隙間から五右衛門風呂と同じ時に即興でつくったバケツ型土器を彼女達に渡した。
「これであの中に溜まってるお湯を組んで頭からかぶるんです。あ、もちろん衣服を脱いでからにしてくださいね。その間、僕は陣幕の向こうにいるので。お手伝いはヴィーナがしますから」
「はいはい、皆脱いでねーーー………っと、脱ぎ終えたから皆ーそんな怖がらずに避けたりしないでねー。ほれ!」
「うわ! 熱い!?」
「け、けれど気持ちいい…」
「へー、水を温めるだけでこんなに違うんだねー」
「あらあら♪ 皆して結構良い顔に体…♪」
おそらく、この地域では初の湯船を用いた湯浴びに、五人の少女はヴィーナに弄られつつもその身をお湯で濡らした。
「…あー、その調子だと皆の体はお湯で濡れたんですねー。じゃー次はこれ」
そうして立ち上る湯気や陣幕越しに見える少女達の体のラインやその声で、ユピタは次の段階に進むべきとして陣幕の隙間から土器に入れた状態で新たな道具類を彼女達に差し出した。
「ん? 何だろうこれ?」
「何か木の実の皮と穴だらけのムニュムニュした不思議な感触をしたものが…」
「その内のムニュムニュしたものをお湯に浸して、それで木の皮を挟んで揉み解してみていってください」
それに少女達は戸惑いや興味を浮かべるが、ユピタの指示に従ってその新たな道具類を使用し始めた。
「うわ! 何か急に泡みたいなのが沢山出てきた!」
「け、けど何か良い匂いがして気持ちいい…!」
そして、少女たちがその口走った現象に驚くとユピタの説明がまた陣幕越しに鼓膜を震わせる。
「あー、その泡は体に付いた汚れや臭い、目に見えない病気などの元を洗い落とすのに有効的なものなんです。それを含ませたムニュムニュしたものでお互いの身体を洗い合ってください。そうすれば汚れの残りや未だについてる臭いが大幅に洗い落とせるはずです(…あんまりにも頑固な時はこっそり魔術で効果を強化しておこう)。名前とかの詳しい説明は後でしますからー」
「…ほ、本当に大丈夫なのー…ごーしごしごしごし…ん? んーーーーー…あ! 本当に臭いが少なくなってるっぽい!」
「本当か!? 俺にもさせてくれ!」
「あーもー、背中とか手が届かない所はお互いに洗いっこしましょー」
(…うーむ、まだクレーテー島にいた頃…前世日本人の性で風呂文化が余りにも酷いことに耐え切れず、あちこちの遠出で…果皮が天然の石鹸に使えるムクロジや、スポンジに使える海綿を見つけて集めておいて助かった…)
「さー、体を洗い終わったら次はあの大きなお風呂の中に身を投じて癒すの~。上に浮いてる木の板は外すんじゃなくて踏むようにして中に入るの。板を抜いた状態で底に足が付くと火傷しちゃうから。熱すぎたら近場のあの池の水で薄めてねー」
「…い、行きまーす…っと…おおお? き、気持ちいいぃ~~~…」
「あー! ちょっとずるいー! あたしもー」
「お、落ち着いて…まだほかにもあるみたいだから…」
内心で集めてきた道具類について懐かしいを思い出を回想しながらもユピタは陣幕越しに説明を続け、現場の方でヴィーナが細かい手伝いをしていき、五人の少女たちの初めての入浴は賑やかさを交えつつも穏便に済んでいった。
「…グぅ、ムニャムニャ…」
「ほぇぇ…」
「んがー…」
「…くう…」
「…スぅウゥ…」
数十分後、お風呂で身を清めてからユピタがまた魔術背嚢から出した木綿性のバスタオルで湯をふき取った五人の少女達は、彼やヴィーナと共に天幕を張りその中にシートを敷いて、彼の道具類の一つである綿入りの枕の上で気持ちよさそうな寝顔を浮かべ、ヴィーナから分けられた衣服に身を包んで横たわっていた。
「…んー、こうしてみると娘が五人くらいで出来たような感じねー」
その様子をヴィーナは可愛いものを見る表情で見守っていた。
「この地にいる女性の中で一番子供っぽい女神様が何を言ってるんですか?」
「もー、君だって齢はまだ子供でしょーーー…ってその恰好は?」
ヴィーナの背後をユピタがジト目で通りかかるが、今の彼は先ほどの少女達に用いらせていた風呂場用セットをバケツ型土器に入れて持ち、格好も衣服を脱いで簡単な腰布だけを羽織ったものだった。
「…ここ最近は水浴びくらいしかできなかったからねー。久しぶりに風呂に入って身をさっぱりさせたくなったんだ。じゃーねー」
「…ふーん…」
そう言って背を向けて五右衛門風呂に向かったユピタの背と、その近くに張られた陣幕を境に張られている天幕で眠っている五人の少女たちの姿を見比べて、ヴィーナは丸々太った小鳥を見つけた雌猫のような笑みを浮かべた。
次回、ヴィーナがこの世界のこの時代で恐らく初の“大人向けお風呂場”なことをする予定です。