輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国辺境 某山岳地帯 某山村○
「…うううう、今も体が重いよおお…」
「クソ親父にデブおふくろ共ぉ…」
ユピタとヴィーナがまた秘匿されているはずながらも魔術も駆使した熱い夜を互いの真名で過ごし、それを五人の美少女の何人かが盗み見てしまった晩が明けて次の日、彼らが滞在している村の男の子達が愚痴っていた。
村の男の子達はアフロディーテの注意を無視してケンタウロスに捕まったりなど心配を掛けさせた罰として、本来ならこの時代でも大人がおもだってやる作業を朝早くから夜遅くまでやらされて、その疲労が今も残っていたので愚痴っているのだ。
「…はああ、せめてあのヴィーナお姉さんの綺麗な姿を見れたら頑張れるのに―――」
「それでは我々は王都に戻る。この五人の新たな娘も身元はまだわからないが外部から流れてきた血筋なのはわかったからな」
「ええ、今後もよろしくお願いします。こちらこそいつもの防衛だけでなく新たなサトウカエデという樹木とその蜜の扱い方を教わりましたので、そちらがお望みならばいつでも種を…あいて!?」
「あんた、今は余計だろ」
「男の人って元気だねー…」
「王都ってどんなところかなー?」
「ここよりかは色々あって楽しいわよー」
「―――ぃ…!?」
その男の子達が村の外れに位置する倉庫で早朝の作業を終えて村の中心に戻ると、そこには帰り道に付き始めたアマゾネス達とそれを見送ろうとする村の男とそのわき腹や頬を抓る村の女たちの姿もいたが、始めて見る人物が五人いた。
「いやー、ユピタ君の料理って美味しかったからねー。王都に戻ればもっといろいろできるっていうから楽しみだな私もー」
その中で一番ワクワクとした様子なのは、一番背丈が低い(それでもゼウスもといユピタより背が高い)が胸のあたりは衣服の上からでも豊かなのがわかり、明るい緋色のセミロングヘア―と同色の大きな瞳で明るく可愛い面貌をした少女。
「あーもー僕らの中では一番小さいからってそんなきゃぴきゃぴしないで姉さん。まー僕ももっと人がいるその王都は気になるけどー」
緋色の少女の隣にいるのは、濃い亜麻色をしたショートシャギーの短髪と黄色の瞳でボーイッシュに整った面貌をして、百六十センチ台半ばのこの時代では高い背丈で健康的な美をした体を持ち、言葉遣いもあって中性的な少年を思わせる少女。
「…でも、大丈夫かしら…? あの二人も一緒にその王都へ戻るっていうし…」
気楽そうな先の二人に比べて、不安が目立つのは百六十センチ台初めの肢体は袖の長い衣服とフードで傍から見れば目立たず、顔も黑の艶ある前髪で目立たないが、風で髪が揺れると黒曜石を加工したような大きく黒い瞳が気品のある美しさを時々見せる少女。
「何をそこまで恐れているかわからないが大丈夫だ姉上。俺も付いている」
その気弱そうな少女を励ましているその妹と思わしいのは、肌の艶からして彼女達と同じ十代半ばからその後半と思わしいが、身は北欧的な白い素肌に包まれつつも身は2メートル近い長躯で高密度の濃縮された筋骨で戦士としての機能美と女性らしい曲線美を併せ持ち、前髪の右側をオールバックにした短い銀髪は高山の新雪のような清冽さを感じさせ、プラチナを加工したような瞳を持つ切れ長の両眼で怜悧な美貌を構成した少女。
「悪い奴じゃない感じはするけど、油断は出来ないわね…」
楽観的な長身の少女に対して警戒を見せるのは、170センチ台の野山を駆け巡っていそうな引き締まりが目立ちつつも女性らしい曲線美も芽生え始めていて健康的に焼けた小麦色の肌に包まれたスポーティーな身をし、若葉のような明るい黄緑色の髪をポニーテールにしてエメラルドを思わせる緑色の瞳で勝ち気そうな面貌をした少女。
「おい、何なんだこの嬢ちゃんたちはー?」
「ヴィーナとは毛並みは異なるが引けをとらん美貌だな…」
「けれどいったいどこから…?」
その五人の美少女達の姿は周囲の村人やアマゾネスの意識を引きつつも戸惑いや疑問を生じさせていく。
「うおおおお!? 何だ!? あの超まぶい姉ちゃん達!?」
「お、お姉さん達ー! 何処から来たのー!?」
そして、村の男の子達は疲労やストレスなど一瞬で忘れて色めき立って、彼女達目がけて駆け出した。
「ねーそこのお姉さん! 俺さー面白いところ知ってるんだ! よかったらちょっとそこへ行ってみな…あべぇ!?」
だが、その彼らの先頭が少女達の肌に指先が触れようとした瞬間、バチンとその身は頬から叩かれた音を添えて勢いよく叩き飛ばされた。
「汗臭いからよらないでよクソガキ、それにあたし、あんた達みたいに女の子に気遣いのないガキは嫌いなの。べーっだ」
その男の子を叩き飛ばしたのは勝気そうな少女で、舌を出してあっかんべーを見せた。
「…え? な、何…!?」
「お、おいらたち…まだ初めて会ったばっかだよ…?」
「なのにどうしてこんなに冷た…あ、あれ? 何か何処かで聞いたような声を…」
「あー、色々と様変わりし過ぎていて気づけていない子も多いから紹介するよ」
そうして自分達に向けられた、若くもそれからは想像できない威圧感ある拒否に、男の子達が齢相応の戸惑いや怯えの色を見せていると、神族の少年ゼウスもといアマゾン国王宮客人魔術師ユピタが彼らを庇うように両者の間に立ち、五人の美少女の紹介を始めた。
「…まず初めに紹介するこちらの一番小さくて緋色が明るく目立つ子がヘスティア、小さいけど一番お姉さんみたい」
「ユピタさんありがとうございます! それと村の皆さん! 初めて紹介された時は色々と迷惑かけてすみませんでした!」
最初にユピタによって紹介された小柄なその少女ヘスティアは周囲に明るい調子で接していた。
「それで次女らしいのがこちらにいる男の子っぽい子のデメテル」
「色々世話になったよユピタ君、これからもまた長く世話になるけど向こうで働いて返すよ。それとそっちの男の子達も悪いのはこっちだったし気にしてないからね」
次のボーイッシュな少女デメテルはユピタに礼を言いつつも村の小さな男の子達にも優しく振舞った。
「五人の中で真ん中らしいのがこっちの一番大人しいヘラ」
「…ど、どうも…よろしくお願いします…」
五人の中で他の子の影に隠れているように引っ込んだまま、ヘラという少女はぺこりと頭を下げた。
「一番背が高いけど四女らしいのがこちらのアテナ」
「俺も気にしてはいない。だが、皆に嫌な手を出そうとしたら相応の手を取らせてもらうから注意してくれ」
五人の中で一番目立つアテナは女性らしさを忘れないが立派な体躯に見合う堂々とした態度で周囲に接していた。
「それで末っ子らしいのがこのアルテミスという子らしい」
「何よその自信のない言い方、昨日の晩は…あんなに元気だったくせして…。それと今度はあんた達が汗臭いから近寄らないで」
最後に周囲に対してつんつんした態度を取り、ユピタには時々羞恥と軽蔑を滲ませた視線を向けているのがアルテミス。
「あー、何で五人姉妹なのがわかるかって言うと—、昨日にこの子達を保護した時にそれぞれの手に名前と生まれた順を書いた紙が握らされていたから。まー嘘じゃなければの話だけどねー(…神族らしいけどものすごく高度な封印術を課せられていてギリギリ人間の範疇に収まっているし、何だか何処かで聞いたような気がする名をしてるし、何故か姉妹じゃなくて一部伯母と姪の関係なんじゃないかって感じの疑問が浮かんでくるけど何でだ…)…!?」
その五人姉妹を紹介しつつもユピタは何故か彼女達に不審や違和感を覚えるが、そこでアルテミスがズイっと少々きつめになった顔でにじり寄ってきた。
「ちょっとあんた、こっちに失礼なことを考えなかった?」
「い、いや…何でそう思うの…!?」
それにユピタは何故か気が強い姉に睨まれたような心地になって思わず仰け反った。
「ね、ねー姉ちゃん…そんな他所の奴と近寄れるのに何でおれとは近寄ってくれないんだー…え? 五人…!?」
その様子に叩き飛ばされた男の子がまだ脈ありと感じてアルテミスに近寄ろうとするが、そこで何かを思い出しそうな気になるも同時に嫌な予感を覚える。
「…えーーっと、昨日では色々と臭いが消しきれなくて布を被せていたからわからない人が多いけど、この人たちあの色々とやばい状態で見つかったあの五人組なんだよね」
「「「「「!!!!!?????」」」」」
そして、ユピタが改めて行った五人姉妹の紹介に、周囲の村人やアマゾネス達は大きく驚き、特に村の男の子達はそれまで彼女達にかけてきた子供らしい残酷(?)な行為の数々を走馬灯のように思い出しつつショックを受けた。
「よし、それじゃー今回はここまでだ。もう王都に帰るぞー」
「…えー? ちょっともう少しだけいてもいいじゃないっすかー?」
「その新しく流れてきた嬢ちゃんたちも一人くらいは村にいつかせてもー…いでえ!?」
「そんな無礼なことをするんじゃないよ馬鹿(よその女なんぞにデレデレしやがって)!!」
数分後、五人美少女姉妹を加えたアマゾネス一行は王都への帰途に就き、村の大人たちはその見送りで未練やらそれへの不満をあらわにする。
「「「「「………………」」」」」
一方の小さな男の子達は真っ白と化して、アマゾネス達の背が見えなくなってからもしばらくは沈黙し続けた後、親御たちの一喝で現実及び仕事へ引き戻された。
「…とまあ、あのゼウスって子はあなたの思惑通り思い出せてないみたいね。けれどこれでいいの?」
そんな村の小さな男の子達には目もくれず、帰り道を進むアマゾネスに混じるユピタとヴィーナの様子を、二人がメープルシロップも用いた交わりの後の眠りに付いた時にその傍らへ姿を現した女性が深い森の中から見守っていた。
「…今はこれでいいわ。この時代…あの子の傍ほど女…特にあの子達には安全な場所はないもの。けれども、あの奇妙な記憶が残ったままだとゼウスはあの子達を遠ざけようとするかもしれないし…」
「けれども昨晩にあんな痴態を見た後でも付いていく道を選ぶなんて…やっぱり、記憶を取り除かれても…神性や
その女性の傍らには、ユピタの正体であるゼウスの母親である女神レアの姿があり、彼女はユピタと五人姉妹を拭いきれない不安を帯びた表情で見守っていた。
今回、出てきた新キャラ達は原典の系図と比べて異なっていますが、ネタバレになりますので今はまだ話せず、これからの話でその経緯や理由は明かされていく予定です。
次回より、今回で名前が出たキャラ達も交えての王都の様子が描かれる予定です。