輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国南部 海岸地帯 某所○
神族の逃亡少年ゼウスを正体とするアマゾン国の客将少年魔術師ユピタが、アマゾン国の王宮侍女の一人キョルナに逆睡姦されてから数週間後、彼はアマゾン国における漁業発展や製塩の中心となっている海辺の村の近くで新たに発見されたある場所を訪れていた。
「…これがー、あのヒュドラに暴れられた箇所の瓦礫を片付けていたら見つかったという、新たな“迷宮”か…」
その新たに発見された迷宮の地上側入り口の前で、ユピタとアマゾン国に住まう戦士の上位に位置するアマゾネス達が集っていた。
「…ああ、この前にあなたと
「迷宮は他の生物とは違う、複数の生物が合わさったような姿をしたり、そもそも私達が知らないような姿をしていたり、様々な生態をしたり、人語を話せたりすることもあるものが存在する“魔物”の臭いがプンプンする」
「ある意味ではそういった魔物も含めてだけど、こうした迷宮は様々なお宝が眠る宝島みたいな場所でもあるからね。その分以上に危険もあるけど…」
「未知の魔物もいる場合…というか新しい迷宮はそういうのがいる場合がほとんどだから気を付けて」
その新たな迷宮の出入り口の前に佇むユピタとアマゾネス達は、今現在の時点で出来るこの時代の人間世界で最先端の装備によって身を固められていた。
「…しかしこの新たな鋼と皮革で出来た新たな鎧は凄いな。この数週間で分かった塩気が齎す錆びを止めるために、傘下に置いてる村の植物から作った色付けの“染料”で固めるなんて…」
「ああ、それでいて通常なら身は重くなるはずだが、メディア様とユピタ様が考え出された“紙”と“墨”で作られた“
ユピタ達が身に付けているそれぞれの鎧は体型に合わせた特別製だが、その鎧の内側には、この世界では彼の知識で生じた魔術道具の一種である魔道符が張られていたり、もしくは鎧そのものに刻み込まれたりしていた。
この世界の人間達の間では魔術は、人の身体能力だけでは出来ない現象も起こせる技術だが、それは一時的な現象の域を出るものではなかった。
そのため、魔術が必要な場面では多くはない魔術師を呼んできてその場で行使してもらうことが常態化していたのである。
それでは、魔術師に大きな負担が掛かり、科学技術が未熟であるこの時代では技術発展に大きく枷が付いてしまうと考えたユピタが考えたのが、この魔道符である。
この魔道符は特定の魔術を、魔術師達がこの世界ではユピタによって前世知識をもとに再現された紙と墨に他の染料等を用いて札の中へ閉じ込めたものであり、これを用いれば魔術を使えない一般人も軽い練習をすれば念じるだけでそれに秘められた魔術の効果を引き出せるという優れものであった。
「…それでも、本来ならこれだけの人数を強化する魔道符を作るなんて、魔術師にまた負担をかけるなんて本末転倒なことになるんだけど…」
「うん、それはーまで来てない彼女が前にこの場で発してくれた言葉のおかげで解決したね」
その一方で、魔道符量産で出てきた新たな課題を思い出しつつ、その問題解決の切っ掛けとなったある道具を見やる。
「うわー、今日も潮風ですごくグルグル回っているねー“風車”がー」
近くを通りかかった近くの漁村の少女も見やったそこには、砂浜の一角にある丘陵に設置された幾つもの風車だが、それ自体にユピタが考え出した魔道符大量生産のためのアイディアが詰められていた。
「しかし、ユピタが持ち込んでくれたこの“文字”と言うのは凄いな。今までは魔術師とか記憶力が強い者達の口伝えでやるしかなかった知識や技の継承が、まさかああして目に見える形で出来るようになるなんて…」
その風車とそれを見やるアマゾネス戦士が自身の鎧より剝がし取った魔道符には、この世界のこの地域ではユピタが始まりとなった“文字”が墨で書かれたり、または直に刻み込まれたりしていた。
そして、その文字はこの時代で用いられていただろう古代ギリシャ文字やその原型ではなく、ユピタが前世でよく使い慣れていた日本語方式による漢字も用いたカナ文字や、前世に当たる現代方式でのアルファベットによる表現が用いられていた。
「ああ、この文字を導入したことで魔術師達もだいぶ楽になった」
「まさかなー、この文字を用いた魔道符によって、この海辺で噴きまくっている“風”の力を、札に宿る魔術を支える魔力に変えるカラクリを考えつくなんて…」
周囲の女性達も改めてそのすごさを思い出しているその風車は、彼女達が口にしている内容が示している通り、ユピタとメディアらこの国の魔術師達が協力して作り上げた“風力式魔力変換機”であった。
このように自然のエネルギーを魔力に変える方式なら、魔術師及び自然環境に与える悪影響を少なくできるので、ユピタの前世で環境問題に悩む人が見たら羨ましがるだろう発明であった。
ユピタの前世で例えて言うなら、それまで直に焙ったり温めたりするなど用途が限定されていた火が、それを用いる内燃機関の誕生で用途が更に広まって生活レベルが上がったようなものである。
「いやー、材料になる道具類に始めは確かに僕が再現させてもらったものだけどー…、僕は見本づくりを通して作り方を教えただけでほとんどの部品は皆がしてくれたり、他にもああして風力とか他の自然の力を魔力に利用するなんてのを考えつけたのはー、まだ到着できていないあの子が“この年中吹いている風を船の帆を押す力以外にも使えれば…”とこの場で前に愚痴っていたのが切っ掛けだったし…あ、やっと来た」
それ故に上がる賞賛や感謝の声にユピタが謙遜しつつもその切っ掛けになったある人物に触れると、その足音が近づいてきた。
「すまない皆、俺が他の皆と比べて体が大きいから鎧の調整に時間がかかって…」
ユピタ達の前にその謝罪と共に現れたのは、同じく戦闘や冒険に備えた衣装に着替えて準備を終えたアテナであった。
「気にしなくていいよ。こうした迷宮の探索は危険が付き物だからどんなにしてもし過ぎることは無いよ。それにしても…あの風車を考えつく切っ掛けをくれただけあって考える姿も綺麗だけど、そうして戦いに臨む姿ってすごく似合って綺麗だね…。それでいて迷宮でも上手く足捌きが出来るような構造になっているよ…」
そのアテナはユピタが口にしている通り、彼にとっては地上に正体を隠して降り立った
2メートル近い長躯も美点に変える引き締まりと凹凸を合わせたスポーティー且つグラマラスな女体は、その体系にフィットするようにパーツ単位で作られた銀色基調の鎧に包まれたことで銀髪と共に鋭利な光を放ち、四肢はユピタがこの地で採れる染料や樹脂素材を用いて発明したタイツ素材が薄く張り付いて身動きでき安くなっており、下半身はミニスカート状で且つスリットが付いて足の可動範囲を大いに高めつつ、ストッキング状タイツや皮革で出来た丈夫そう且つしゃれた運動靴風ロングブーツと合わさって健康的且つ魅力的な絶対領域を構成している。
それでいて、アテナの長い手は円形状の大きな魔道符仕込み鋼鉄製の盾と、同じ仕込みが施された方天画戟を思わせる刃が付いた大槍を軽々と掴んでおり、それがまるで何十年も付きあってきた得物と戦士のような一体感を感じさせていた。
「そ、そうか…初めは下を皆と同じボトムにしようとしていたけど、皆で一緒に作っている最中にここを担当していたヴィーナが、こっちの方が動きやすいからって押し通して…」
ユピタに今の自分の格好を指摘されて、アテナは胸の高まりを少々覚えて少し足がモジモジとしだしたが、その途中で彼女の双眸はハッと見開いた。
「ジュラアアアアアアアアアァアア!!」
そこで海辺の迷宮よりまるでウミウシのような巨大な魔物が気勢を上げつつ姿を現し、ユピタ達に襲い掛かってきたのだ。
「あ! 危な―――!?」
その怪しい液体っぽい唾液を滴らせた異形の口がアマゾネス戦士の一人に被さろうとした時、ユピタの視界を大きな影が豪速で通り過ぎた。
「ふん!」
「―――あ…」
その危険性を見抜いたアテナが瞬時に巨大ウミウシ型魔物の頭上に飛び出て、その大槍で魔物を脳天から叩き割って悲鳴を上げる間もなく仕留めて見せたのだ。
「…ふう、ケンタウロスと違って言葉を解さない魔物だったから素早く動けて仕留められたか…」
「すごい! あんだけ咄嗟に且つ早く動くなんて…!」
「しかもこれって結構凄い強い気配してたのに…!」
「…え、あ…そ、そうかー? 武術とかは彼が教えてくれたものだからなー私だけじゃー…?」
倒した勢いで絶命したウミウシ型巨大魔物に乗っかって汗をぬぐうアテナだが、それに対して周囲のアマゾネス達が上げ始めた賞賛の声に照れ始めるものの、その自分に武技を教えてくれた本人にして今この場で最も褒めの言葉を放ってほしいユピタ本人は思わぬ行動を取っていた。
「? どうした? そんな急に赤くなった顔を逸らして前かがみになって身の前面が他の者達には見えない場所に移動するなんて…? 何か俺のさっきの動きに問題が…?」
「い、いや…むしろ…す、すごい才能と成長だと思うけどアテナ―…ただー…そのー…」
アテナに背を向けてモジモジとした感じを強めて何かを抑え込んでいるように見えるユピタに代わって、彼女の姉の一人が少し赤くなった苦笑を浮かべて進み出る。
「…その動きやすいけどー…見えやすくなってるその布地の中がもろで見えちゃってるよー」
その姉であるヘスティアの言葉通り、アテナの深いスリットが両側に入ったミニスカートが、先ほどのウミウシ型巨大魔物退治の弾みで捲れて金具に引っかかって止まった状態となり、その中身を晒してしまっていたのである。
「あら、ユピタ命名のその“ミニスカート”には抵抗を示した割にはその中身は大胆」
「……あ」
そして、意外そうな顔のヴィーナの目に映るスカートの中は、白基調の前がハイレグで後ろが縄によるTバックという褌で、彼女の言葉で気付いたアテナは急速に顔が真っ赤になって慌てて魔物から地面に戻った。
「い、色々試したらこれが動きやすかったから選んだだけだ! それとお前もい、色々と見合った関係なのだから今更キョドキョドするな。さーさっさと迷宮の中へ行くぞ!(ま、前に海辺でユピタと二人っきりになってあいつが自分の一物を自分で慰めようとしていたのを見つけた時はこうはならなかったのに…お、俺の身に何が…?)」
そして、アテナはどもりつつもユピタに対して向き直って叱咤すると、ズカズカと落ち着きのない急ぎ足で迷宮の中へ突き進んでいった。
「…じゃ、じゃー、二番目は僕が行ってアテナの身に何かあってもすぐ駆け寄れる距離で進むよー。どうか皆はその間に割り込まないでねー…(また愚息が節操無しになってるし…)」
「じゃー、皆も続くよー」
「「「「「はーい」」」」」
その後を前かがみな状態でユピタがチョコチョコと付いて行き、他のアマゾネス戦士達も気の抜けた様子になって続き始めたことで、海辺で発見された新たな迷宮の探索一日目が始まった。
次回、アテナと本作主人公の仲が急速に進む予定です(…多分)。