輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国 王都○
「…小麦とお米をそれぞれ詰めた俵を持ってきましたー」
「メープルシロップを入れた壺は海岸にある村ですねー」
ポダルゲがその人(?)生で初めて男に抱かれてその極みの嬌声が近場の空を飛んでいた同族ハルピュイア達に聞かれて十数日後、彼女が身を寄せているアマゾン国にはその同族たちの姿が多く見られるようになっていた。
「…空を飛べる民が住民に加わるとは、本当に貴方の聡明さには感謝しかありませんね…」
「僕はただ提案しただけで受け入れてくださって実行されたのはアウラ様です。その次には現場に立って彼女達と接して職などを共にして信頼を紡ぎ合ったアマゾネスの皆が…」
その光景を王宮の高台より眺めているのは、アマゾン国の現女王アウラと、その相談役もしている客将少年魔術師として働いているが正体は神族の逃亡少年ゼウスであるユピタであった。
「ポダルゲもその姉君のお一人と再会できて良かったですね」
「ええ、貴方の
「…う…陛下の御寛大なお心だけでなくその身も許された男子として…光栄の極みです…」
アウラが現在進行形で発展している自国の様子に、為政者として以外にも母としての喜びも穏やかな微笑みとして浮かべると、ユピタは気恥ずかしそうに視線を逸らして頬をポリポリと掻く。
現在、アマゾン国に住まう女性、女王アウラとその彼女の保護を受けているハルピュイア族の王女ポダルゲを含め、多数の女性達がユピタの子を妊娠中なのである。
(…前世では暇な時間を投じて転生内政系小説やそれを書くのに役立ちそうな書籍や本ばかりを読んでいた陰キャより大学生だった僕が…この世界ではチートな存在に生まれ変わってハーレム系主人公になるなんて…。何か原典ゼウスみたいな死亡フラグ量産マシーンは避けて通ろうと思っていたのに…あまり変わってなくない? でも…目の前でこんな時代の事情で苦しんでる人が大勢居る中でー、それを放っておくのは救える知識と実行できるスペックがあるのに気分がー…見捨てたら罰も当たりそうだし…母さんに今の最高神殿に存在を気付かれ始めたってことを知らされるまでは正体を隠しながらも普通にしていたし…。原典の一応既婚者で不倫しまくってた雷神が最高神だけど一応は一夫一妻制だった神話ギリシアと違い、それが書かれた頃よりも古いはずのこの時代は、婚姻制度はそれほど定まってなくて一夫多妻だし、何よりここでの僕はアマゾネスの皆さん共有の種馬兼男娼みたいな扱いだし…。そう言えばまだこの身は生まれてから前世で言うと中○生に上がるかどうかの年齢だから、前世での成人向け作品的にも大丈夫かなこの世界がもしも素人が書いているような成人向けSSだとしても…? ま、まー前の世界の日本史に出てくる前田利家さんなんか奥さんが11歳で嫁いできて、12歳で出産なんかしたから…この時代的には普通にセーフなのかな…中身の年齢とこの世界で生きた年月を合わせればもう中年だし…ん?)
その事実で雄としての本能に近い悦びを覚えつつも前世倫理が残る男としての危機感をメタ要素混じりでユピタが感じながらも屁理屈臭い言い訳も考えていたその時、彼の鼻を赤と青の二色に分かれる複数の美しい羽根が舞い降りるように擽ってきた。
「こんにちわー女王様にユピタ君、今日も元気-?」
「あ、ケライノこんにちわー。今日も元気に空を飛んでいるね」
空から降り注いできたその陽気な声に釣られてユピタが空を見上げると、そこには亜熱帯風の薄い小麦色に焼けたスポーティーな肢体をポダルゲ同様に羽毛での自前ビキニで覆いつつ、黒に近い深い青色のセミロングヘア―をして米神からそれぞれ伸びている二房の髪は赤髪という、特徴的なヘアーをしたハルピュイアの美女が下りて近づいてくるのが見えた。
そのハルピュイア美女の名はケライノ。
ポダルゲが末っ子として名を連ねているハルピュイア族の王女4姉妹の三女であり、妹がユピタに抱かれた時に漏らした極みの嬌声を聞きつけたハルピュイアの一団のリーダーである。
ケライノはあの晩でポダルゲを発見した時にアマゾネス達とも接触し、お互いにその事情を話し、ユピタの発案で飛行能力を生かした高速の宅配の仕事を受け持つ代わりにこの国へ住まわせてもらっている身の一人になった。
「女王様ー、新たに海岸の村に流れてきた男が多い難民達についての報告がー…」
「そうですか、それでは詳しい話は中で…あ、ユピタとケライノ殿はそのままお二人で会話を楽しまれても良いですよ。終わったらそれぞれの場所へ向かっても構いません」
そのケライノが降り立つとアウラは王宮の中へ戻っていき、それを見てケライノは高台にある手すりに腰かけてユピタと向き合う。
「はい、君が考えたここの農作物を利用した新品料理の“親子丼”♪」
「はぐはぐ…美味しい…これはヘスティアが作ったね。昼飯を持ってきてくれてありがとう」
「…いやー、ユピタ君に助けられたことに比べたらどうってことないよー。君がいなかったらポダルゲはヒドラにやられて、僕たちも多分流れている途中で他の魔物に襲われてて再会出来ずじまいになっただろうねー」
「僕は考えたりそれを試したものを見せたりしただけだよ。実際に君達を助けるのをほとんどしたのはアマゾネスの皆だから僕に頭を下げなくてもー」
「あれだけ仕事が出来るのにそんだけ謙虚で優しいなんて、これなら君に首ったけになってその子を胎に宿す子が大勢いるのも頷けるわねー」
「うぐ…それはあまり言わないでくれると…オピオンの方でも、国王不在の所を超巨大スライムから救った英雄としてだけでなく、そうした系の話で毎日弄られてるんだから…」
それからしばらく二人は会話を楽しみ、ユピタはケライノの下半身ネタ主体なからかいで頬を赤くして視線を度々逸らすが、一方で彼女の深い黒みを帯びた青色と深みのある赤色の二色で構成された羽毛に懐かしさを覚えてチラ見も繰り返していた。
(…何と言うか、ケライノの羽や羽毛って…僕の故郷で生きるルリカケスに似てるな。それと亜熱帯の島である僕の故郷の女の人に近い薄く焼けた肌色と合わさって…なんか懐かしいな―――)
「ん? どうしたのかなーそんなお姉さんをチラチラ見てきてー? これだけモテてるのにさっそくお姉さんにも興味が向いちゃったのかなー色男の子くん♪」
「―――あ…う…」
だが、そのチラ見の間にもケライノのニシシとした顔が鼻先の触れそうな距離で近づいて来たりするので、ユピタは見た目とこの世界での実年齢相応の羞恥心を高められて、その度に距離を少し開けるという行為を繰り返すようになっていた。
「…その言い方だとさー…僕が…子種をあげるって言ったら…ケライノさんは受けそうにも見えるんだけどー…?」
「うん、君が良ければいいわよ。ここで暮らすようになってから色々な男を見たけど、やっぱり君が一番そうだし、その血を引けば子供も出来の良い子が産まれそうだしね♪」
「…いくらなんでも(この時代でも)早くない?」
「本当に良い男と良い女が出会ったら行動は風よりも速いものよ。それにー…君の口はともかくこれはーもう正直にー、親子丼を食べ終えたら今度は
「大変だー! 農場にある鶏舎に魔物が襲って来たぞー!」
そうして距離を縮めた何度目かにて、ケライノの鳥の爪に似た鋭い爪先が衣服越しながらユピタの足の付け根に触れようとした時、伝令の慌ただしい声が割り込んできた。
「―――い…って何よもー! 良いところだってのに無粋な魔物ねー。どんなのかしらー…?」
良いところで邪魔されたとケライノは怒りながらも王都の外れにある農場を魔術で強化した目と耳で探り始めた。
「…ゴゲエエエエエエエエエエエエ!!」
「きゃー!逃げろー!」
「あの嘴につつかれたら鎧ごと割れちまうぞ!」
一方その頃、王都の外れにある農業試験場では暴れ狂う鳥型の魔物、それと戦う女戦士たち、逃げ惑う人々の姿があった。
「…って襲われてるのが鶏舎って、しかもその襲ってる魔物が…鶏を巨大化させて怖くしたような鳥型魔物の一種である“コカトリス”だなんて…そんな偶然やシンクロはいらないよー…!?」
同じくユピタも魔術で強化された電磁波による透視でその現場の状況を細かく確認し、微妙な共鳴とまだ重大な怪我人が出そうにない状況なのを知ったりもしたので、微妙な慣れで今一つ緊張を強められずにいたが、それは現場で人々を助けるために活動している彼女の姿で一変する。
「皆-落ち着いて高台の建物の隙間から逃げてくださいー! あの魔物は鳥型に相反して空は飛べませんから高い建物の隙間を潜れば越えられずに済みますー!」
試験農場で仕事をアマゾネス達と共にしていたところ、一緒に襲われるもその機動力の高さを生かしてコカトリスの気を引き付けながら他の者達の避難誘導をしているポダルゲの必死な姿で、ユピタの前世知識からくるメタ的な今一つ緊張感が強まらない微妙さは一気に引き締まった。
「…あ! ユピタ君! あそこにはポダルゲが…きゃあ!?」
遅れて妹の危険な状況に気付いたケライノの表情も強張ったその瞬間、彼女の真横に居たユピタは能面を浮かべると数秒の稲妻と火花を残してその場から姿を消した。
果たして、ユピタが久々に真面目モードになったその理由とはいったい…!?
まあ、今回の話の流れや今までの経緯からして、こんな作品でも読みしてくださる読者の皆様ならラッキークイズ過ぎるでしょうけど…(苦笑)。