輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
この度、主人公とギリシャ神話原典で随一のアーチャー系キャラである彼女が特に活躍(?)します。
○神代 黒海某沿岸地帯上空 魔術式熱気球型飛行船○
「…あれは…竜巻!? 自然のものとはどこか違う…ぅ…!?」
周囲に多くの雷雲を纏いながら自分たちが乗る飛行船を引き寄せようとする巨大竜巻の姿に、神族の逃亡少年ゼウスという正体を隠している少年魔術師ユピタは顔を険しくさせるが、竜巻が近づいてくる方向の手摺を掴んだ瞬間に身を再び思い倦怠感と朦朧とした視界が襲い掛かった。
「あぁ! 症状は一時的に良くなっただけでまだ毒に蝕まれている状態なんだから無理しないの!」
「…う、うう…だけど…」
その理由を知る身の一人で、ユピタと同じく神族であることを隠している美の女神アフロディーテもとい女魔術師ヴィーナが、魔術の泡による分身を変えてユピタを保護しながらも周囲に毒を移さないようにする膜としてその身を包ませ、本体に意識が戻って目覚めると彼を介抱した。
「きゃあ!? あの竜巻の風が強すぎて吸い込まれちゃう!」
「船を引っ張ることも出来ないし! これじゃあ誰も逃げられないわよ!」
「ごめん! 僕たちも乗せてくれ!」
あまりの風の勢いで飛行船の牽引役をしてくれていたケライノらハルピュイア達も避難してきたが、依然として飛行船は竜巻に引き込まれつつあった。
「ちょっと! 船の後ろにケライノ達が乗り込んで羽を羽搏かせまくって引きずられる速度は少し遅れているけどもうそんな持たないわよ! どうしたら―――!?」
「危ない!」
悪化していっていることに変わらない状況にアルテミスが悲痛な声を上げた時、彼女の真横へ飛び出たユピタがその青白く美しい稲妻に包まれた片手を突き出した。
その次の瞬間、巨大な雷が生じて飛行船を飲み込もうとしたが、船にあたる前に手前でまるで水面の波紋のような歪曲が生じて、それにあたった雷は大きく曲がって他所の方角へ飛んでいき、適当な岩山の一角を打ち崩しはしたが飛行船は事なきを得た。
「―――あ…あんた…今のって…!?」
「ちょっとユピタ! あれだけ君の
それに驚くアルテミスだが、その身は険しくなった表情を浮かべてユピタに再び寄り添ったヴィーナに押しのけられてしまう。
「…わかってる…けれど! ここで躊躇っていたら…あの竜巻とそれが生み出す雷で…皆がやられるよ…!」
「ユピタ! 毒で苦しんでいるところ悪いが雷の方はお前に対処してもらいつつどうか船の指揮も執って俺たちを動かしてくれ! このままだと皆が遠からず全滅だ!」
「…い、いやー…僕なんかの種で身重になってるのに…コカトリスの毒を間抜けに受けた僕の治療のためここまでしてくれる皆に比べたらー僕の今の症状なんか―…ってもうこれだけ近づいてて余裕がもうないし! じゃー皆してこれから言うとおりにして! とにかくハルピュイアの皆は全力で羽を動かして少しでも竜巻に巻き込まれる前の時間を防いで! ヘスティアは回復と強化の魔術でハルピュイアを支援して! アフロディーテは降り注いでくる雨風を泡で防いで皆の体力を守って! 目がすごく良くて反射も早いアルテミスは舵を取って時々竜巻の風で来る岩や木を避けて! アテナは飛行船が崩壊しないように強化の魔術をかけて! それからー…!」
毒に蝕まれている身でユピタは皆の生存のために気力を全力で振り絞り、矢継ぎ早に指示を的確に出して飛行船が竜巻に飲み込まれるのを阻止しようとする。
すると、飛行船はそうされなかった場合よりも竜巻に吸い寄せられていくスピードは遅まるが、ユピタ達の体力もじわじわと削られていく。
「…ううぅ! どうにか時間は稼げてるけど…どうしたらー…ぅ!? 何か…胸が苦しくて…眩暈や吐き気も…!?」
そうして時間稼ぎをしていた中で、アルテミスが疲労とは別の症状を見せて片膝をついてしまう。
(…この症状は…もしかして高山病!? さっきまでは空を飛んでいる状況でもピンピンしていたのにどうして…まさか!?)
それにユピタは新たなピンチが迫っていることに気付くが、そこで周囲に起きているある変化も感じ取る。
「アルテミス! 君さすごく目が良いっていつも自慢しててなんか風の色や形もわかるみたいなことを言ってたよね! ちょっとあの竜巻とその周囲の風でなんかいつもと違うみたいな点はわからない!?」
「…ふえええ!? た、確かに何か普通の風と違うみたいなのはあるけど…!?」
「何でもいいからどんなのか教えて! 早くぅ!」
「…そ、そうねぇ…何か私たちがいるところも含めた周りの空気はどんどん薄くなっていって…! 逆に竜巻の中の方はぁぎゅうぎゅうに詰まっていってるように見えて…竜巻自体は見た目こそ出てきた時みたいにグネグネ巻き込もうとしてるように見えるけど…よく見たらパンパンとしてはち切れそうな袋みたいに…!?」
それについて問われたアルテミスが高山病のような症状で朦朧としつつも、その超視力で竜巻とその周辺の細やかな変化を見抜いて説明するが、すると至近よりバチバチとした音を添えた強烈な閃光が生じた。
「…よし、これなら…良いか…アルテミス! これを一緒に持って狙いを定めてあの竜巻の弱そうな所と僕らが目指している方角が重なった瞬間に射て! それで他の皆は一旦それぞれの仕事を中断して魔力を僕の毒が他に回らないようにする分と船がギリギリまで持つ分以外はこっちの支援と強化に回して全部!」
「「「「「!!!??」」」」」
皆がその光に釣られて視線を向けると、稲妻が形を得て出来たような青白く輝く機械的な機能美をしている巨大な弓矢と、それを脂汗と苦悶の色を隠せない様子なのに構えているユピタの姿があった。
「あ、あんた明らかに顔色が怪しいわよ!? それなのにどうしてそんな魔力の弓矢を出して…それでどうするつもりなのよ!」
「…アルテミス…皆…手短に言うけどあの竜巻は周囲の空気が薄くなるまでに…あたりの大気を吸い続けてる! 君の苦しそうな表情もそれが原因だ! だけど…そのおかげであの竜巻は見た目こそ変化はないけど…中は空気が集まりすぎて…水が詰まりすぎてパンパンの状態になってる! 少しでも穴が開けば一気にそこから崩壊していく状態なんだ…!」
「…そ、それで…その弓矢とどう関係があるんだ…?」
「…アテナ…この弓矢で…あの竜巻の一点を穿ちぬいて…そこから解放されて一気に放出される大気で生じる風に乗って…この場から脱出するんだ! そして…その勢いで…ヴィーナが目指していた地点を目指す…!!」
「「「「「んなああ!?」」」」」
その弓矢をかざしてユピタが述べたこの場の打開策に、周囲から悲鳴が上がる。
「そ、そんな人間の魔術なんかであんな巨大竜巻を負かすような真似なんて出来るわけがいないでしょ―――!?」
無茶ぶりすぎるその打開策で特に重いポジションにつくのを求められたアルテミスは今にも泣きそうな顔で拒否しようとするも、そこでユピタの両手をビシッと掴まれて彼の強い意志を宿して輝く瞳を至近まで近づけられる。
「大丈夫。皆で死ぬ気でやればあれも含めて大抵のことはうまくいく。いや、皆の力でうまくいかせよう。お腹にいる子供達を助けるためにも…連れてきちゃった僕らの都合で死なせるわけにはいかない」
「―――お…ぉ…おおお…ああーーー! もう! やってやるわよ! このヤリチンチビのヤリチビ!!」
その真っすぐすぎるユピタの瞳と力強い励ましと叱咤の言葉に、アルテミスは萎えかけていた士気が普段の彼の淫行に対する反発なども手伝って蘇ると彼と共に大弓を構える。
「よし! 船への魔力はここを脱出できるまでのギリギリまでにして二人を強化するぞ!」
「船の姿勢も安定させて! 狙いを定められないわ!」
「風が二人を邪魔しないように魔術の結界で防いで!」
即座に周囲もこの場から脱出すべく動き出す。
「…うう! 弱そうな所はあるのに風が強すぎて狙いが良いところで…! それにこっちが行かなくちゃいけないところへ行ける線にうまく重ならないし…けれど早くしないとどんどん竜巻に引き寄せられて…!」
「これ以上は船が持つかどうかも怪しいぞ!」
「ど、どうすればいいのよー…!?」
それから皆が必死にあれこれして竜巻から脱出するべく動くもなかなか実らず、焦燥が募って死の気配が濃厚になり始めたその時、アルテミスは自身の下半身に何か違和感を覚える。
ちなみに、今現在のユピタは弓の名手であるアルテミスを支えるため、ヴィーナの泡の膜で自分を苦しめる毒が彼女にうつらないようにしながらも、大弓を構える彼女を支えるためにその背後から密着している状態にあった。
さらに言うと、竜巻に気付く前の毒の症状が強まっていたのを和らげるために、ヴィーナに性技を用いた魔術で治療を施されていたので、生まれたままの姿である。
そして、この生きるか死ぬかという状況と肌に感じる極上の雌の感覚もあって、雄の本能はその機能を最大限に高めてしまっていた。
「……!!!???」
ユピタの男根はフル勃起状態となっており、それを足の間にあるクロッチ超しながら淫裂に当てられたアルテミスはその違和感で視線を下ろし、そして理由を悟ると瞬時に顔を真っ赤にしてしまう。
「…あ…ご、ごめ…!?」
「ちょっとぉ!? あんたねぇこの状況で何をしてるのよー…!?」
そして、ユピタが遅れて気づいて熱に加えて羞恥で頬の朱色を強めたその時、アルテミスは声を荒げて彼に怒鳴りつけようとするが、それで彼との密着度を思わず高めてしまい、そのことでショーツのクロッチ越しながら淫列は男根により密着し、そこから稲妻のような刺激が脊髄を通って脳に達し、彼女にこれまでとは別の感覚を覚えさせていく。
(…あれ? 何だろう…? 周囲の動きがやけにゆったりと見えてきて…それでいて…風や大気に…これまで見えてきた形や濃さ薄さに加えて…何か色の違いや…心臓の鼓動のような音まで感じ取れるようになってきて…? あ…今…もう…あたしたちが目指してるところとからさしてくる光の線と…あの竜巻の弱そうな光の点が近づいてきて…これなら…いける!!)
その以上に冴えていく自身の認識の中で周囲がスローモーションのように遅くなっていく世界の中で、アルテミスの指から稲妻のような大矢が解放されて超豪速で撃ちだされると、それは竜巻の一角を撃ち抜き、そこからバアンと大気全体が破裂したような破裂音と暴風が生じ、飛行船を飲み込んだ。
「きゃあああああああああ!?」
「…ちょお!? この勢いやばいわよおおお!」
「急いで船へ魔力を戻せ! バラバラになるぞーーー!」
「ハルピュイアの皆は羽搏いて少しでもこの勢いを弱めてええええ」
「ヴィ! ヴィーナアアアアアア! 急いで防御用の泡を張ってぇ! 僕ももう雷の結界でええ衝撃を弱めるからああああ!」
「む! 無茶をまた言ってええええええ!?」
その暴風のジェットコースターの余りの勢いは、それによって巨大竜巻から救われたアルテミスの普段の泣き顔に引き戻してユピタ達から悲鳴を上げさせるには十分すぎた。
「…まさか、あのような手段であの大竜巻から脱出するなんて…」
一方、その様子を彼らの目的地である高山の麓にある大木の樹上より、女神のレアは唖然とした様子で見ていた。
「…こちらが
そして、そのレアの隣に、ユピタとヴィーナが今の偽名をまだ名乗る以前の船旅をしていた頃、その一幕を見守っていたメティスが感心している表情を浮かべている姿があった。
「…勢いは割と危ないけど私達としても行かせたかったあの子達の目的地に向けて飛んで行っているし、とりあえず向こうの方に話は済ませてあるから…私たちは山々を統べられる
「ええ、そうねレアさん。けれど…これであなたのことをこう呼ぶ子たちがまた増えそうね。お婆さ―――」
「…………」
「―――あいててててて!?」
そして、二人は頬をつねられたりそれへの悲鳴を上げたりしたものの、安心した表情を小さくなっていくユピタ達の乗る飛行船へ向けたのち、空気へ溶けるようにしてその場から姿を消した。
次回、ユピタを苦しめるコカトリス猛毒の本格的な治療にようやく入ります。