輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国 王都 王宮○
「そっちの鉄は武器にするから鍜治場に持って行ってー!」
「そっちのスライム達は油を作るのに使うからこの札をもっと書いてー!」
ユピタとヘラが巨大スライムに迷宮の未確認区域へ拉致されるもどうにか救助され、治療されて意識を取り戻した日から数日後、アマゾン国は近寄りつつあるケンタウロスの大軍からの防衛戦のための準備で慌ただしくなっていた。
「…本当にこの国の女性って逞しいし働き者だよなー」
「いや、私達から見れば君が一番働いているけど」
そうして働く人々の中に、その小さな身で馬車よりも大きな錆びた鉄の塊を悠々と担いで動き回るユピタの姿もあった。
「だって今の自分が暮らしている国だから守らないと…まだ生まれてはいないけど自分の子供達とその子達がお腹にいる女の人がたくさんいるし―――」
「ユピタさーん。開けた道に仕掛けた城壁の出来を見てほしいんですけどー」
「―――い、わかった。これを鍜治場に持って行ったらすぐに行くよー」
ユピタは傍から見てもここ数日間ずっと重労働にあったが、隠してはいるものの神族のハイスペックボディのおかげか軽く汗を掻いているだけで、各現場の技術指導や監督役の一人まで行っていた。
「…何というか、働き者とかそういう次元を越してない? ユピタ君って…」
「…そうねぇ、何か“趣味が働くこと”という感じな気が…」
そうして無意識のうちに、前世の某弧状列島人気質由来の仕事中毒から働き続けているユピタの姿に人々は畏怖を覚えていた。
「…へえ、これが全て焼き煉瓦を用いて作った城壁か」
「ああ、とは言っても中身は土だし、技術もまだお前が教えてくれるものに比べればまだまだだ」
「いや、機動力と身体能力に数を上乗せして攻めてくるだろうケンタウロスを相手にするには効果的だよ。君の発想や工夫もすごいよ」
数分後、ユピタはアマゾン国の王都を守るその建築が進んでいる新たな城壁の上で、そこの現場監督をしているアテナと共にその出来具合を確認していた。
「…この弓を改良したものとか…(クロスボウをまさか独力で考えるなんて)…弓を十分に習う時間のない子でも十分な戦力になるし…。それでこの城壁も色々と工夫を凝らしてくれているし…」
「お前にそこまで認めてもらえるなんて光栄だろうなこの“
そこで二人が共に手に持っているものの一つが、ユピタの前世にてクロスボウで呼ばれていた、この地域では新兵器の一つである
「…本当ならこういう兵器を使わなくていいようになるのが一番なんだけどね。話し合いで終われたら…」
「だからと言ってあのケンタウロス共のあの要求はのめるわけがないだろう。今後の収穫物の半分は収める。美女を百人奴隷としてささげろなどー…」
「それで話し合いに出向いたこっちがそんな要求飲めないって言ったら襲い掛かって奴隷にしようとしてきたからね。何とか逃げてこれたけど…あ、戻ってきた」
その弩は城壁の内にある工房で今も量産が進められており、それらの出来具合に感嘆しつつも複雑そうな顔を浮かべ合った二人の身に、赤と青に分かれる色鮮やかな羽が何枚も降ってきた。
「お待たせー、今現在のケンタウロスの動きだけどねー…」
二人が頭上を見上げると、周囲の偵察に出向いていたケライノらハルピュイアの部隊が降りてくる姿があった。
「あ、ありがとうケライノ。けれどー…そっちも身重になったのにそんな敵軍の偵察だなんて危ないことをしなくてもー…」
「まだお腹は膨れてないから僕はまだ身は重くないよ。君があちこちに仕事掛けもってこんだけ頑張ってるのにそれのお世話になってる僕らが楽しているわけにはいかないでしょ。それでねー…」
ユピタはその身を案じつつも今は最も必要とする情報をケライノ達から聞いていく。
「…それじゃー僕らは女王様の方にも情報を伝えに行くから。二人ともあんまり働きすぎて決戦の日に体を壊して参戦出来なくて負けましたーなんてことにならないようにしてねー」
「もちろん」
「そちらも無茶をしないでくれよー」
そして、ケライノ達がその場を飛び去ると、アテナがユピタの耳元に少し頬を染めた顔で唇を近づけて小さく囁く。
「…俺もこの後に別の担当箇所に行かないといけない。それでー…後でお前にとってちょうどいい時間で良いから…残りの作業も頑張れるように…、お前の力をまたお前の温もりと同時に分けてほしい…❤️」
そう言い切るとアテナは恥ずかしそうな顔で足早にユピタの近くを離れていった。
「…ここにも、アテナ…今回作った新兵器を上手く生かせる仕掛けを作ったな…」
数分後、ユピタは城壁内部に幾つかある小部屋の一つを訪れ、そこの土壁に何か所かある取っ手が着いた長いレンガの一本を抜いた。
ユピタがその箇所を覗き込むと、穴の向こうは城壁の向こう側の外の景色が広がっており、そこには戦の準備を進めているアマゾネス達の姿があった。
「…兵力差はこの城壁で大きく埋められるな…。しかし…本来なら日干し煉瓦になるこれらを…ここまでの堅さで…しかもこれだけ生産できる体制を整えるなんて…やっぱり、アマゾネスって生来から戦に強い人が多いなぁ…」
自分が抜いたそのレンガを撫でつつ、ユピタはその穴を通して見えてくる城壁の拡張及び強化作業、それに従事しているアマゾネス達の働きに感心していた。
この城壁がある区画は土質がユピタ達に教授された煉瓦を作るのに向いたものだったが、今回の戦で国を守るために必要な城壁を作るには
そこで、アテナとアマゾネス達は火を溜め込んで任意でそれを噴出させられる“火炎符”と水車や風車を動力源とする魔力変換機を用いて、木材の消費を極力抑えながら丈夫な焼きレンガの大量生産体制を確立したのである。
「…こっちの堀にはこの種類の罠を仕掛けた方が良いな。泥水で見えづらいのを利用して川底に古びたり割れたりして使えなくなった壺をー…」
そうした煉瓦工房で働く面子の中にはアテナの姿もあった。
(…戦っている時もすごく強くて賢いけど…こうして人に教える時の姿が特に様になっていて上手いなあ…。あ、なんか名前を知った時から何か聞いた覚えがあるなぁって感じがしたけど…確か、アテナは古代ギリシア神話で戦女神的な神格で高い地位にいた存在で…ってあれ? 何でそんな神話を学んでいるなら大抵の人は知ってそうなことを今まで思い出せていなかったのかなー…!?)
そのアテナの姿にユピタは憧憬を生じさせつつも今までどこか覚えていた既視感の正解を得て、同時に新たな疑問が生じるがそれは今この場ではあまり長続きしなかった。
「うわぁ!? 急に強い風がぁ!?」
「やばい! 風車の一つが倒れそうになってる!」
穴を通して見える外で猛烈な突風が吹き、土煙と女性達の悲鳴が空きあがってしまう。
「うわぁ!? これ…戦の時に向かい風にはならないでほしいが…」
そうなると女性達の衣服も多数巻き上がり、その中で鎧装束になっていて下は動きやすいミニスカートになっているアテナもしかめっ面になるが、そうなれば彼女のミニスカートは大きくめくれ上がり、まだ膨らんではいないが新たな命を宿した浅く綺麗に腹筋が割れた下腹部、それを成すのに用いた淫裂を覆い隠しているスポーツ下着風のショーツが丸見えになった。
(…ま、まあ…戦が近づいているし…アテナにも…こっちがちょうど良い時間にでも力を温もり付きで分けてくれって言われたし…)
それを城壁の覗き穴より目にしてしまったユピタは顔を薄朱色に染めて内心で言い訳しつつ、ボトムの足の付け根に出来たテントの先端で少し押された煉瓦の取っ手に手を伸ばした。
次回、アテナが自分によって生まれた仕掛けを本作主人公によって有効(?)利用されてしまいます。