輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
それに伴い、大人向けシーンはグロいシーンに取られてないのでご注意をお願いします。
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国南部 辺境某所○
「…そっちはどう?」
「あたしたちの所は見えないけど…?」
隠れ浜でユピタがアテナとヴィーナやアルテミスに逆睡姦(?)されて数日後、アマゾン国に暮らすハルピュイア達は上空を飛びまわって周囲を警戒しており、彼女達は望遠鏡を手にしていた。
ハルピュイア達が使っている望遠鏡はユピタの発明品の一つで、内部には視力強化や遠望拡大の魔導符が貼られており、さらに外側のソケットに魔力補充用のための魔導符を差し込めるようになって使いやすくなっていた。
「っ! 皆ぁあっちを見て!」
「「「「「!?」」」」」
その望遠鏡を使う一人が声を荒げると、ハルピュイアは皆が一斉に同じ方向を見やった。
すると、その先には何千ものケンタウロス達が石製や木製ながら武装した状態で、アマゾン国の国境に近づいてきている姿があった。
「皆! すぐに都へ報せに行くよ!」
「わかった!」
「私達はもっと連中の様子を見てくるから先に行って!」
ハルピュイア達はケンタウロスを更に偵察する部隊と、王都に向けて報せる部隊の二手に分かれてさっそく行動した。
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国 王都○
「…そうですか、ケンタウロス共はその方向から近づきつつあって…着くのはこれくらい後と…」
十数分後、ハルピュイア達からの報告にアマゾン国女王アウラは総指令室に広げられた地図と比べて険しい顔を浮かべた。
「それでは女王陛下にユピタ殿、いかがなさいます? 事前に出した使者は断られるか普通に襲われています故…」
「こうなれば戦うしかありませんが…、それで奴らが近づいてくる方向の村々への避難命令は?」
「は、既に事前の段取り通りにハルピュイア達を派遣して避難命令を伝えて、ここ王都に向けて避難を始めさせていますが…」
「報告です! 現地に残っている偵察部隊と水晶玉が繋がりました!」
「そうですか…メディア、直ちに映像を拡大しなさい」
「はい!」
すかさずアマゾン国魔術師筆頭で同国重臣の一人メディアが魔術の水晶玉を、総指令室の壁の一角に大きく張られて複雑な魔術式で縁どられた垂れ幕に向けた。
これもユピタの発案で生まれたもので、魔術式や魔導符を駆使して誰でも遠方の映像を見せて音声を届けられる魔術水晶玉を量産し、そこから届けられた映像を拡大してより大勢に見せるもので、この国では“魔望鏡布”と名付けられた。
「二番地区のシロゥプ村にも避難命令を!」
「百人隊を一つカヅナ村にー…!」
指令室の各壁に貼られたそれぞれの魔望鏡布から見られる各所の様子や、水晶玉を通して伝えられる前線の偵察部隊からの報告に基づき、戦闘民族アマゾネスの女戦士たちは素早く戦闘態勢を整えていく。
(…皆して凄いなぁ。道具とかの多くは僕が考えたものだけど…こういう戦闘に関するとさらに色々で且つより実戦向きな技術や使用方法に道具を生み出していくし―――)
「ユピタ殿! 御失礼ながらあなたにはその賢さと強さを見込んでこの配置でー…!」
「―――い! は、はい! 僕に出来ることならー!」
その総指令室の重鎮の一人として属しているユピタはアマゾネス達の戦での素早さと聡さと果断に目を見張って言葉が止まっていたが、そこで同じ重鎮の一人に呼ばれて直ちに動き出した。
○神代 黒海某沿岸 アマゾン国某所 ケンタウロス軍○
「…ふひひ♪ ここまでの抑えた村だけでも結構な獲物が色々あったなぁ♪」
「まだ奴隷、女が一人も捕まえられてないのはむかつくけどなぁ」
「まぁ、すぐに終わるさ。連中が逃げる時の捨て台詞で王都の方に色々逃げ込んで集まってるのはわかってるからなぁ」
アマゾン国の王都にケンタウロス軍接近の報せが届けられて数日後、アマゾン国の深い茂みに両側を挟まれたある街道を、馬の体にその首部分から人間の上半身が生えている亜人種ケンタウロスの軍勢は、下卑て悠々とした表情で進軍していた。
彼らはすでにアマゾン国へ侵入し、幾つかの村を襲ってほぼ無人だったそれらで略奪を行っており、その間にアマゾネスの部隊が何度か散発的に襲ってきたがいずれも被害軽微に返り討ちに出来たのを何度もしていたので、いくらか弛緩し始めていた。
「…うわぁ、こうしてみると本当にケンタウロスってあほ面ばっかよねぇ…」
そうして進軍し続けているケンタウロス軍本隊を、魔術で生やされた茂みで巧妙に隠された見張り櫓よりアルテミスが呆れた顔で見張っていた。
「それでケンタウロス達はこちらの予定通りの道を進んでいますか?」
「はい、ユピタ様のご提言通りにケンタウロス軍を進ませてくる予定の道の村から村人を避難させ、多くの村の周囲には魔術で茂みと林を生やして彼らには発見されないようにしています。ユピタ様の指示通りに奴らが襲えるようにしていた村に置いていた酒には、思考を一時弱める毒を混ぜておいたので、奴らが各方面で出している偵察部隊も魔術の茂みや林に遮られて諦めて本隊へ戻っていきましたゆえ…」
「そうですか、予定通りならいいですけど…村を襲われたり略奪されるのはもうこれ以上は止した方が良いですね。いくら作戦とはいっても機密の観点から一部しか知らないし、知らされていない多数派の人達からすればアマゾンに身を委ねても大丈夫かと不安に駆られて離れていく村が出てもおかしくはないしー…。今回は色々と作戦を準備する時間があったから、他国から提案があった援軍も丁寧とはいえ断ったし…」
「ふふーん♪ だったら君が言う“兵は拙速を尊ぶ”を私達が実行するしかないわねぇ♪」
そこで
「…ちょっとあんた、身重なのにその格好で行くわけ?」
「いや、身重なのはアルテミスなのも同じでしょ。そのためにお互い赤ちゃんを守るために鎧には徹底して工夫をしてあるんだし♪」
「…まあ、そうだし、上手く逃げられる用の工夫もユピ…このヤリチビが色々してくれてるから心配ないと思うけど…」
それにアルテミスが少し苦そうな顔を浮かべつつも同じく立ち上がり、二人は見張り櫓からその跳躍力で他の樹々へ飛び立った。
「…ぐへへ♪ 今度の村も中々にいい収穫があったなぁ♪」
「これだと例の王都ってところならどれだけ有るんだろうなぁ…ぎゃあ!?」
数分後、またケンタウロス軍が一つの捨てられたばかりの村を楽しく荒らしていた頃、その彼らの内の一人から悲鳴と血飛沫が飛び出て絶命した。
「な、何だぁ…って…あれ? シャボン玉が近づいてきて…あんぎゃーーーーー!?」
それで周囲のケンタウロス達が驚いて振り向くと、彼らの中心に空からプカプカと大きなシャボン玉が陽光に照らされて虹色の綺麗な輝きを放ちつつも降りてきて、それがパンっと弾けるとすさまじい衝撃波が飛び出て彼らを吹き飛ばした。
「く、くそぉ!? 何処のどいつがこんな真似を―――!?」
「あたし達よ! この駄馬共!」
「―――お…!?」
それに恐れと苛立ちを露にするケンタウロスの頭上から小馬鹿にした大声が降り注いできた。
ケンタウロス達が見上げた先には、村を見下ろせる丘の上に矢と弦がない弓を引いている様子のアルテミスが、身動きしやすい皮革製のその健康的な身にフィットした鎧で武装して白煙を背にしている姿があった。
「おい! あっちに一人だけだがすごく上玉な娘がいるぞ!」
「やられた仲間の仇も含めて絶対とっ捕まえてやっちまえ!」
「うっわー、わかりやすすぎる反応…(ユピタが男にも色々いるって言ってたけど…こういうのまではいらないってのにさー…よし、作戦通り逃げよう)…そんなの捕まるわけないでしょ!」
怒りと劣情に駆られた顔で丘を駆け上がってきたケンタウロス達を尻目にアルテミスは白煙の中へ姿を晦ました。
「ぎゃはは! 二本足で俺たちの足から逃げられるわけがねえだろ!」
「さあ! その瑞々しい可愛い尻を俺たちのご立派な棒で躾けてやるぜー…!?」
それをケンタウロス達は嘲りながら下半身が馬の体故の速力であっという間に丘を駆け上がるが、陸の向こう側へ達したところで彼らの先陣達は一瞬浮遊感に包まれ、その直後に下へ向かって勢いよく引っ張られるように落ちていった。
「…な、何だぁ…ぶギャアァ!?」
それに戸惑うケンタウロスの先鋒が湯気を潜った先に見たものは、勢いよく迫りくる岩場で、それに高速で叩きつけられた彼らは骨肉が潰れてへし曲げられる苦痛に陥った。
「ぎゃあああ!?」
「い、岩が何で…えぐう!?」
「や、止めろぉ! 俺はまだ生きて…えぐうぅ!?」
「つ、つぶれちま…アアアァア!?」
湯気の中で次々とケンタウロス達が岩場に叩き潰される音、その上に同胞が降り注いで止めを刺される悲鳴が辺りに鳴り響いていく。
「…う、ううぅぅ…まだ見えはしないけど…聞くだけでも嫌な音や悲鳴が次々と来るわねぇ…。私はヴィーナが敷いた泡に着地したから無事に済んだけど…」
その白煙を囲うように丘の向こう側には木柵や空堀が築かれており、それに守られた内側には熱を生じさせる魔導符を張られた竈が設置されてそれを満たしたお湯から湯気を大量に噴き出て、それらを守る兵士に混じっているアルテミスが嫌そうな顔を浮かべていた。
「あ、皆ー風向きが少し変わりそうだー」
「魔術風車を回して湯気が丘へまだ向かうようにしてー」
「ちゃんと向こう側には悲鳴とかが届かないように消音の結界をかけてなるべくばれないようにしろよー」
ケンタウロス達を襲った白煙の正体はアマゾン軍が人工的に発生させた湯気であった。
「…う、ううぅ…た、助け…」
その湯気と悲鳴が木霊するようになってから数分後、湯気の中からその身から骨が何本か突き出て内臓も出て瀕死となっているケンタウロスの一人が這い出て空堀に手をかけてきた。
「死にかけだけど生き残りがこっちの見えるところまで来たわね…。とりあえず中の様子は?」
「アルテミスさん…とりあえずこっちの水晶機器を通して見たら…もうかれこれ三百くらいは息を止めたかと…ただー、透視用望遠鏡を通して見たら…
「じゃあ、まだここでいくらかあいつらの数を削れるわね。それじゃこいつみたいにもう死にかけの連中は助かりそうにないから楽にね…」
それに同情的な顔を浮かべつつもアルテミスは周囲のアマゾン兵達と状況を確認しつつ、まだこの地での戦いが続けられると判断するとその手に持つ緑色を基調として金属や木材などを複数組わせて作られた複合弓なのがわかるその弦がない弓を矢が無い状態で構える。
「…恨むのなら恨んでいいわ。けれど…この戦を仕掛けたのはあんた達であること、そして…もう助からない傷をあんたが負っていることを忘れないでね…っ!」
「…あ…」
アルテミスが鋭い表情でその弓で弦を離したような動作をすると、瀕死のケンタウロスは彼女の周囲の本来見えないはずの大気の波紋のような震えをスローモーションのように目にし、自身の額にプシュっと穴があけられてそこから血を吹かしながら絶命した。
「…な、何だ…これは…!?」
数分後、湯気が消えた丘に立ったケンタウロスの後続達が眼にしたものは、彼らの想像にはなった凄絶として悲惨な光景であった。
「…ぅ…ううぅううぅ…いてえよぉぉ」
「た、助けてぇぇ…」
後続のケンタウロス達が丘の上に立って目にしたものは、それまで湯気に隠されていた峻嶮な断崖で、その下にはそれまで崖とは気づけずに丘を乗り越えて下の岩場に落ちてしまって死亡か後から落ちてきた者達に圧死させられてきた多くの亡骸と、それに紛れる形で生き残ったがほとんどは助かりそうにない重傷を負っている同胞の積み重なって出来た骨肉の山が、崖下の高さの半分まで達している陰惨な光景であった。
「た、隊長! 何が起きてるんですか!?」
「わ、わからん! どうしてこんなことに―――!?」
「そこのケンタウロス共! よくお聞きなさい!!」
「―――!?」
その光景が丘の上に集ってきたケンタウロス達に困惑と恐怖を浸透させていく中、崖の舌より気勢の鋭い咆哮のような声が立ち昇ってきた。
「あんた達の頭でもわかるように結論から言っておくわ!! こんな戦を続けてもあんた達じゃ全滅するだけだからこれ以上は止めて故郷に帰ってもう侵略なんてやめなさい!!」
「「「「「!!!!????」」」」」
驚くケンタウロスが見やったその声の主は、ケンタウロス達の死体の山を囲うように崖下で敷かれたアマゾン軍陣地から堂々と立って彼らを見上げる、アルテミスであった。
次回も合戦パートが中心で惨いシーンが多い予定です。