※この作品はR-18です。

輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~   作:oosima

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今回も技術チートが炸裂しますが、同時にかなりやば目な敵も姿を現します。


083 恐怖にも程度の差はあるから…●

 ○神代 黒海某沿岸 アマゾン国 王都○

 

「…うわぁ! 4本足共がすごい勢いで来てるぅ!」

「は、速くぅ進んでよぉ!」

「前は何をしてるんだぁ!?」

 

 猛烈な勢いで近づいてくるケンタウロスの大軍に、アマゾン国王都大門でつっかえている人々は恐慌を起こしてしまう。

 

「…作戦の幾つかは秘密にして正解だったな…。逃げてくる人々の慌てぶりが演技や嘘じゃないから喰いついてきた…」

「準備はもちろん仕込んでいるけどねこっちは」

 

 その様子を大門の望楼よりアテナとユピタは見ており、その二人も含めた望楼に潜んでいる魔術師達は魔力を遠方まで伝える魔伝ロープが握られていた。

 

「うおおおおお! 一気に門を駆け抜けろー!」

「つっかえている連中は踏みつぶせー!」

「町に入ればこっちのもんだー!」

「「…今だ!!」」

 

 ケンタウロス達と難民達の距離があと十秒ほどで詰められるだろうとしたその時、大門の魔術師達はその魔伝ロープに魔力を通してそれは光だし、大門の周囲の地面も同じように光り出した。

 

「ああ!? 地面が光り出したぁ!?」

「知るかぁ! もう止まれねえから突っ込めぇぶぅ!?」

 

 難民たちの姿を消す光にケンタウロス達は戸惑いつつもその勢いのままに突っ込むが、盛大に何かへぶち当たって身の前面が潰れる苦痛を覚えた。

 

「ギャアァ!?」

「ブルげぇ!?」

「な、何びゃあ!?」

 

 光の中で何かにぶち当たって止まったケンタウロスの先陣達に、続々と後続達も追突してその背後にも同様の現象は起き、再び大勢が圧死していく。

 

「…な、何が起きたんだ…!?」

「…う…ぅぁアアぁぁ…」

「い、いでえよぉぉぉぉ…」

 

 次々と上がっていく仲間の悲鳴に恐れと不審を生じた者達が止まると、光が収まって目にしたものは大門を守るように取り囲んで幾重にも太い幹や枝が幾十にも折り重なって生えでている生垣と、それにあたる形で衝突死や圧死に苦悶の声を再び生じさせた仲間たちの塊であった。

 

「…ふう、隠れ浜でアルテミスに植物拘束逆睡姦レイプされた経験が上手くいった…」

「あのパイナップルみたいな実を付けるこの木にこんな使い道があったとは…しゃぐ…薄味のさっぱりしたパイナップルの味だな…」

「皆が大門を通れたわよぉ!」

「よし! 門を閉めろぉ!!」

 

 それは隠れ浜での夜でユピタ達が見つけたアダンを彼らが此度の戦いのために魔術も用いて仕込んだバリケードで(魔術による強化もあるので通常よりも折れにくくてギザギザしてる葉の鋭利さも増してる)、その性能にアテナは満足な様子でその実を食べ(実際のアダンの実は食べられはするらしいですけど手間がかかって美味しくないみたいです)、大門はドンって勢いよく閉められた。

 

「ああ! 門が閉められちまったぁ!」

「お、おい! 上を見ろぉ!」

「ケンタウロス共! これが最後の警告だ! 大人しく国に戻ればやり方は教えるから真面な職につけ! この都で戦に及べばお前たちは全てを失うぞ! こちらの準備は他にもまだまだある!」

「「「「「!!??」」」」」

 

 それにケンタウロス達が悲痛な声を上げると同時に、城壁の上にそれまで姿を隠していた、この時代では最新鋭の鋼鉄を多めに使用した武装で固めたアマゾネス達が一気に姿を現し、その中でリーダー的な立ち位置になったアテナが咆哮を浴びせる。

 その咆哮は長い言葉ではなかったが、これまでの被害をケンタウロス達に思い出させるには十分過ぎて、彼らを委縮させてあとずさりさせるには十分であった。

 

「…あ、あんだけ恐ろしいのがまだあるってのか!?」

「ど、どうする?」

「け、怪我はしているけどまだ生きている連中もいるから助けないと…」

「こ、これまでの村から奪った分だけでも儲けはあるしー…!?」

 

 恐怖と言い訳を口にしながら退き始めようとする雰囲気になりつつあったケンタウロスだが、そこで彼らの内の行為にあるものの何名かがギョッとした顔になって背後を見やる。

 

「…………」

「…!?」

 

 それは数百メートル離れた深い高所の茂みの中より覗き込んでくる、声こそ上げていないが大きく異様な威圧感と殺気を宿した眼光で、それは遠目にも見たアテナにも冷や汗を覚えさせた。

 

「ひ、怯むなぁ! 俺達が退いたら俺達も俺達の残している身内も皆が殺されるぞぉ!」

「そ、そうだぁ!」

「梯子を持ってこぉい!」

 

 だが、ケンタウロス達はそれ以上の恐怖を覚えて血走った眼を王都に向け、その力にものを言われてマルタを複数筏状に束ねて足を掛けやすいように削って窪みを作った梯子を持ち出してきた。

 

「…何ださっきの眼光は? それにこいつら…怯えだしているのに攻め寄せてくるなんて…?」

「お姉ちゃん! あいつらがもう攻めてくるよぉ!」

「っ! そうだな…皆ぁ! 訓練の内容を思い出せ! 都と皆を守るぞぉ!」

「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」

 

 それにアテナら一部の者達は不審と困惑を覚えるが、アルテミスの叱咤で現実へ戻ると皆を率いて咆哮を上げて武器を振り上げた。

 

「弓隊! 梯子をかけようとする連中を狙えぇ!」

「ぎゃあ! いでぇ!」

「くそぉ! 槍をぶん投げて黙らせろぉ!」

「うわぁ!? 痛い!」

 

 アマゾネス達はその鋼鉄の矢で城壁に上られようとするのを阻止しようとしてケンタウロスの多くは肌が多く見えるその身を射抜くが、一方の彼らも力任せに投石や投げ槍をして彼女達に怪我を負わせ、当たり所によってはその膂力の差もあって命を奪っていく。

 

「しゃああ! ぶっ殺してぶち犯してやるぅ!」

「のわぁ! 来たぁ!」

 

 またケンタウロス達の方が多い分は梯子も相応に多く、幾つかのものは上手く掛けられてそこからその巨体が勢いよく駆け上がってくると、体格の差もあってアマゾネス達はビビって仰け反ってしまう。

 

「! 怯むなぁ! 訓練の内容を思い出せ!」

「ぎゃあ!?」

 

 アテナは自分の所にもかけられた梯子から上ってくるケンタウロスを、“星の石”から作られたその巨大な戦斧(ハルバート)を女体からは想像出来ない膂力で振るい、複数を胴から両断して更に梯子自体も破壊して何名かも転落死させてみせながら周囲を指示して鼓舞する。

 

「っ! 皆ぁ! 真正面かち合った場合は盾を構えてまずはやり過ごしてぇ!」

「弓隊は梯子を掛けられたところからは少し下がって!」

「猪口才なものを出しやがって! 死ねぇ!」

「うわぁぁあ!?」

 

 一方、アテナから離れた所はケンタウロスが何名かが駆け上がってきて拠点を作ろうとし、鉄の盾など防具も準備していたおかげで多くは守れてはいるが、敵の大きな体格と膂力から盾兵の女達は多くは致命傷を避けつつも衝撃と苦痛で押されてしまう。

 

「っ! てい!」

「いでええ!?」

 

 だが、此度の戦いに備えて訓練を重ねていたアマゾネス達は集団先方を身に付けており、ケンタウロスの真横にいたものが敵の意識が自分からそれている間にその馬脚を切り、倒れたところにその急所へ剣や斧を叩きつけて仕留めていく。

 

「…よし、この様子ならまだ交代は必要ないか…」

『ユピタ様! 第一区画から矢の補給を百本頼むって!』

「っ! わかった! ん…!」

 

 それらを前線に近い望楼に設けられた前線司令部からユピタは視認と魔望鏡布の映像と魔術水晶の通信で確認しつつ、各所からの要請に応じて魔術で物資を届けるようになっていた。

 ユピタの周囲には複数の魔術式を描いた絨毯が幾枚にも敷かれており、その上に物資が置かれると彼はそこへ魔力を流し、光った後に物資は姿を消してしまった。

 

「皆ぁ! 矢の補充が来たから受け取れぇ!」

「やっと来たぜ!」

 

 すると、前線司令部から離れたその区画にある城壁の裏側に敷かれた同じ魔術式が縫われている絨毯が光り、収まるとそこには先ほどユピタの元で消えた物資が現れ、現地のアマゾネス達はすかさずそれを手に取った。

 これもユピタが此度の戦いのために実用化した空間操作系魔術の一つで、遠く離れている間で物資のやり取りをできるようにする“送迎魔術”で、彼が普段は小さくして耳の中で厳重に管理している様々な物品や道具を入れた魔術背嚢を元にしたものであった。

 今は他の者達が使えるようにするには魔術式を描いた絨毯が必要であったり、必要な魔力が多めだったり、遅れるものにはまだ制限があったりするが、それでもこの時代では非常に革新的な技術で、特にこうした素早さが何よりも求められる戦場では極めて強い効果を発していた。

 

「よし! 連中の無防備な脇腹が見えてるわぁ!」

「こっちからも見えるわよ! 発射ぁ!」

「ギャアァ!」

 

 他にも工夫はあり、以前にユピタがアテナへ悪戯するのに悪用した城壁内部の隠し部屋にもアマゾネス達は配置されており、彼女達は壁を構成する石材の一部を抜いて隠し銃座にすると、そこから弓や弩でこちらに対処できない梯子を上っている最中か下で暴れているケンタウロス達を射殺していく。

 そのほかにも色々な兵器や工夫を用いて、アマゾネス達はケンタウロス側の被害を増やしていった。

 

「…くそぉ! これだけ梯子をかけているのにどうしてどこも城壁の裏側に回れていないのだぁ!」

「そ、それがあいつら…体は小さいっすけどめっちゃ戦いなれてて…それに鎧や盾がめっちゃ硬くてぇ…それで剣や槍に矢もすごく鋭いんですよぉぉ…」

 

 戦いが始まって数十分後、ケンタウロス軍は城壁の広範囲にわたってとりついて梯子を掛けて攻め続けていたが、何処も突破は出来ず死傷者や負傷者は増え続けており、その司令部には凶報ばかりが届いて指導者達を苛立たせて焦らせていた。

 

「ええい! こうなったら他の城壁にも取り付け! あれだけ激しい抵抗をしているなら他の守りは薄れているだろう!」

「そ、そんなぁ…あの緑髪の小娘がぁやけに正確な弓でこっちの隊長を次々に射殺してくるから無理ですよぉ。それに行ってもぉあの銀髪の女が槍と斧を合わせたような武器でぇ梯子までぶっ壊していくからぁ上ることもままなりませ…!?」

 

 それで無茶ぶりをする指導者達と伝令達の間で揉め出したりもしていたその時、彼らが取り憑いている城壁の前一帯が先ほどの城門のように光、けれども広範囲にわたってケンタウロス達の大半を覆っていく。

 

「う、うわぁぁ!?」

「な、何だぁ!?」

「ま、またさっきみたいに強い光がぁ!」

「けれど広さはけた違いだぞぉ!」

「こ、今度は何が起きているんだぁ!?」

 

 それにケンタウロス達が驚愕と恐慌を再び起こして数十秒後、光が収まると彼らが目にしたものは再び予想をしのぐ光景であった。

 

「う、動けねええ!?」

「さ、さっきの森で襲ってきたみたいなのがまた沢山…!?」

「け、けれどさっきのよりも太くて千切りにくくて…何よりも数が多すぎるぅぅ!?」

 

 城壁の前には、カボチャやゴーヤ、パッションフルーツと言った蔓性の植物が広範囲に広がっており、その太く長くて強靭な蔓で絡め捕らわれているケンタウロス達の姿があった。

 

「…あの野菜や果物がこんな戦争でもこんなふうに使えるなんて魔術って本当に凄いなぁ…色々複雑だけど…」

「その分、貯めていた種や魔力は大分消費して魔術師達も多くが疲れたが…」

「今だぁ! 水(・)門(・)を開けろぉ!」

 

 それに複雑そうな顔を向けるユピタを横目に、同じくその光景を確認したアマゾネスの魔術師達は疲労が深くなった者達が多く出ているものの衰えない士気で身を動かした。

 

「…ええい! さっさとあの草を切って攻めるのを再開しろぉ! 幸いにも女共はこれで調子乗ってか攻撃を止めているから今の内にぃ…!?」

 

 数十秒後、どうにか捕縛から逃れた少数派が仲間達を救助しようとするが、そこで彼らの背後からドドドドという音が生じ、それは近づくにつれて地響きも伴ってきた。

 

「…な、何だこれはぁ…!?」

 

 ケンタウロス側の本陣メンバーが背後を見やったその時、彼が目にしたその勢いのある水の壁はあっという間に彼らを飲み込んだ。

 

「ぎゃあああ!?」

「な、何で水がぁ!?」

「た、助けぇぇ…ぶがががが!?」

 

 その水の壁の正体は上流に位置する森から雪崩れ込んできた洪水で、蔓の罠に絡め捕られていたケンタウロス達は逃げられずに濁流へ飲み込まれていく。

 

「うわぁ…あ、あんだけいたケンタウロス達が次々と飲み込まれて…」

「か、代わりに僕らはーすごくしんどいくなったけどー…まー、前線の子達よりかは楽だけどー…」

「デ、デメテル姉さん大丈夫!?」

「魔力符も大分使ったしな…」

「皆ー! メディア様達が奴らに止めを刺すために呼んだ大水が門から染み込んでこないように土を被せ続けろー!」

「でもまさか…あの施設にこんな使い道があったなんて…」

 

 水がそこまで届かない高台に築かれた城壁の上にいるアマゾネス達はその光景に息を飲み、何名かがその濁流を送り込んでくる上流の森の奥にあるその施設を見やる。

 

「…す、すごいな…水力式魔力変換機のために築いたこれが…このような使い方をされるとは…」

「あの殿方…ユピタ様って本当に凄いですね…」

 

 その視線の先にあるゴーヤやパッションなどの弦を生やして隠された谷合に築かれた砦のように見える施設から、そこの守備担当のアマゾネス達は濁流地獄となってケンタウロス達を襲う城外を見て畏怖を覚えるが、その戦場と彼女達は壁の大きく開かれた門から今も流れ出ている激流で繋がれていた。

 彼女達が守っている砦のような施設の正体は、主に水の確保や水量調整に魔力変換のために築き上げられた“ダム”であった。

 此度の戦いで、そのダムはケンタウロス軍に止めの一撃を指すための兵器として転用され、その目論見は当たって城壁外に生やさせられた罠の蔓の効果もあって大成功となっていた。

 

「…あ、あれだけいた仲間が…み、皆…水の中に…」

「ど、どんな魔術を使ったんだぁ!?」

「! 今だ! 勝鬨を上げろー!」

「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」

「も、もう駄目だぁ!」

「逃げろぉぉぉ!」

 

 その光景による止めは低下一直線であったケンタウロス軍本陣の士気にも刺され、それを感じ取ったアテナ達が上げた勝鬨に押されるように続々と逃げ出した。

 

「…!? お、おい待て! ここで逃げても俺達はーーーー…アアぁ! 行くなぁぁあーーーーーーー…!?」

 

 驚きに囚われて数少ないその場にとどまっていた者達は他の逃亡に気付くのが遅れ、先に逃げ出した者達を追うが、彼らが目にしたものは追い打ちをかけるものであった。

 

「…この役立たず共が…くちゃくちゃ…もういい…俺が出向いてまた数を増やしてやる!!」

「…だ、だじゅげ…」

 

 遅れて追った者達が見たものは、先に逃げ出した者達が巨大な馬の頭に生きたまま貪り食われ、嗚咽と助けを求める声、それが無意味と悟らせる臓物と骨肉に血がしたたり落ちている場面という残酷なゴールであった。




次回、こんなの時代的にありえねーみたいな感じが見受けられる部分もあるかもしれませんが、そこらへんはファンタジー要素もあるからと見過ごしてくださると嬉しいです。
ちなみに、今回の防衛戦で大門の守備に貢献した貢献したアダンの写メはこちら(https://x.com/kaioosima/status/2063255120687882652)、蔓の罠の元ネタの写メはこれ(https://x.com/kaioosima/status/2063264405631168995)になります。他にも色々な写メや資料があって他の作品にも用いられてもいるので、興味があれが時間が出来た時でも共に見たり読んだりして、楽しんでもらえると嬉しいです。
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