輪廻の輪の転生ゼウス~前世知識に基づいてギリシア神話で穏便生存(?)ルートを目指したら…~ 作:oosima
それと、最初はそんなに応援されはしないだろうと思っていたこの作品が、ここまで評価してもらえるとは驚きました。
本当にありがとうございます。
009 歴史的イメージと現実は差異が付き物だけど…
○神代 黒海某沿岸 アマゾン王国 地下牢○
「牢だねぇ…」
「牢よねぇ…」
激しい情事による疲労で深い眠りに付いていた間に、この時代にはまだないはずの女だけの民族アマゾネス達に捕まった後、ゼウスとアフロディーテは彼女達の王国にある洞窟を利用した地下牢に閉じ込められたところで目を覚まして現状に気付いた。
「…んん~~~~、寝ていた間にこの“外魔石”を仕込んだ縄で縛り上げられたみたいね…。このままじゃー力は上手く使えないわ…」
アフロディーテが自身の腰の裏で手首から両手を縛る縄に面倒くさそうな表情を浮かべるが、その縄には底知れない黒さで輝く小石が幾つも縫い込まれていた。
外魔石とは今のこの世界が始まった時から存在していたとされる、魔力、特に神族に由来するとされるそれらには大きな抵抗力を持つ鉱石で、この世界の神族でも由来は定かではないとされる希少な存在の一つだ。
使用されている割合や個々の場合にもよるが、特に神族など高位の存在に対して用いるとその効果は強まり、神としての力は大幅に弱まって並の人間以下になるという場合もあった。
一説では、この世界とは異なる外部の世界の神族に起源を持つとも言われる。
「…ちょっと暴走させて自爆で拘束から逃れるという手を使えばー…」
但し、万物には完璧と思わせて盲点は必ずあるものなので、アフロディーテが今この我が身を縛る縄に仕込まれた外魔石の純度の低さに気付いて強硬策を取ろうとした。
「駄目だよ、近くの外から子供の声が聞こえるから今ここでしたらその子達を巻き込む」
但し、前世からの記憶で公共や人権への意識がこの時代の住民にしては高いゼウスがすかさず止めにかかった。
「人間の子に対しても人が良いわよねぇゼウスって…」
「あーもー、本名で呼ぶのも禁止だからヴィーナ」
「…あ、ごめんねーユピタ」
そのゼウスにアフロディーテは可愛くはあるが少し面倒くさそうな子供を見る眼差しを向けるが、そこで彼に呼び名のことで注意されて今の自分達が正体を隠して逃走中の身であることを思い出す。
今現在、二人は仮名を名乗っており、ゼウスの方はこの時代にはまだ存在しないローマでの呼び方ユピテルを変えてユピタ、アフロディーテはゼウスが彼女の英名ヴィーナスからとって考えたヴィーナを名乗っていた。
「…おい、様子はどうだーーー…っと特に変わりはないな。よし、二人とも異常は無さそうだな。我々の女王がお呼びだから立ち上がってついてこい」
「…ん、わかりました。行こうかヴィーナ…」
「ええ、そうねユピタ」
こうしてゼウス改めユピタとアフロディーテ改めヴィーナの二人は、今の自分達を捕えたアマゾン国の者達の言葉に従うことにしていた。
○神代 黒海某沿岸 アマゾン王国 王宮○
「女王アウラ様、この前に海岸へ漂着していた少年と女性をお連れしました」
十数分後、外魔石仕込みの縄で縛り上げられたユピタとヴィーナの二名はこの世界におけるアマゾンの王宮へ連れ込まれた。
但し、王宮とはいってもこの時代の文化や経済状況を反映してか、アマゾン国の王宮はユピタの前世知識にあるモンゴルあたりの遊牧民が暮らすゲルを大型化したような感じで、服装などもその地域の中世期のモンゴルの王族を思わせる意匠があった。
(…前の世界でのアマゾン族も、黒海沿岸地方にいたスキタイとか女性の権利が高い民族を元に誇張したものという説があったな…。この様子だと…アマゾンという名前も当時のスキタイにあった部族の名の一つにあったのか…? 衣服も片袖のないドーリア人風のキトンではなく、モンゴルやスキタイ人風のレオタードが混ざり合ったようなものだし…。伝説にある体も弓を引くのに邪魔というって理由で右側の乳房を切っているようなそぶりはなかったし…。まあ、これは言葉にもじった民間語源の俗説という説もあったらしいし…。だが、それにしても男の姿がまだ一人も見ていないというのはおかしい…。確か神話原典では男の方は少数だけど奴隷としていたらしいけど…。それにー、何よりあの父が抑えているこの時代は…人類は最初の女性とされる彼女がいないからそもそもまだ女性が生まれていないはずだったし…まー、他の地域だけでなくギリシアあたりでも神話とは色々違う状況なのはこれまで見てきたけど―――)
「そこの男、何をよそ見している? アウラ女王陛下の御前だぞ」
「―――お、も、申し訳ございません…」
ユピタは見て感じ取れた範囲内ではあるが、自身の記憶にある神話原典におけるアマゾン国と現実で前にいる彼女達の違いについて思考を回していたが、そこでアマゾネスの一人に注意されて俯かせていた顔を上げた。
「………」
それがこの時代の女神としては神と人のボーダーを気にしない方のヴィーナには気にくわなかったのか、少しムッとした表情を浮かべた。
「…それでは改めて男ユピタよ、私はアウラ、このアマゾン王国の今の女王をしているものです」
そうした二人の前で、一段高い高級そうな毛皮でつくられた玉座より今のアマゾンの女王アウラが静かな威厳を纏った姿で声をかけた。
アウラは黒基調の厚い毛皮でつくられたモンゴルあたりの民族衣装デールに似た衣装を纏い、女性にしては背が高い身は二十代半ばと見られる白い肌に包まれ、薄い金色の髪を結いあげて、同色の瞳で王らしい怜悧な細い両眼をしつつも瞳には温情を感じさせる薄い青色をしていた。
「…お目にかかり光栄です女王陛下、僕の名は改めてユピタ。こちらの隣にいる女性の名はヴィーナと言いまして僕の親戚の女性に当たります」
「それでは改めてお聞きします。あなた方は何のためにこの国へ来ましたか?」
「それですが、実は…」
その感じからユピタは、発覚すると致命的なことと判断したことは隠しつつも下手な虚言は用いずにこちらの持つ知識や技を、この世界で研いで来た知力や話術を駆使して混ぜながらアマゾネスたちの前で自己紹介していく。
そうしてユピタは、自分とヴィーナは行商と魔術で生計を立てていたが、地元で得体の知れない占いのせいで居づらくなり、住みやすい土地を目指して二人で船出したが途中で嵐に遭ってこの地に流れ着いた漂流者であることを信じさせることに成功した(概ねだが嘘は言ってない)。
「…なるほど、遥か南方…海の中と取り囲まれたクレーテーの地から遥々ここまで逃れてきましたか…」
「はい、この地へ流れ着いてきたのは偶然ですが…今こうしてお助けしてくださったことにはありがとうございます。もしもこのまま居住をお許しになられるのでしたら、そうした知や技はこの国に提供するおつもりですから…。どうかヴィータには人として真っ当な暮らしを…」
「そうしたことについてはこれから我々が判断します。今、我々があなた達に対して最も気にしていることは、
そこを突破口にユピタはアマゾネス側からの好意を得ようと言葉を進めるが、そこでアウラは手で制してきた。
「……ん…ごく…」
(…え、何かこの感じ大分弱い感じがするけど…?)
すると、周囲の武器を手に警備をするアマゾン国の女兵士達の何名かが頬に薄い朱色を浮かべて、中に唾を飲み込む声が聞こえたりもしてユピタに微妙な既視感を覚えさせた。
「二人とも、まずはその身に付けているものを全て脱ぎ落しなさい」
「…え? それはまたどういう意味でー…?」
そこで能面のままのアウラから、現代人感覚が強く残っているユピタに対してさらりととんでもない言葉が発せられ、彼に微妙な顔をさせるのであった。
「そりゃー裸になりなさいってことでしょ」
「いや! ヴィーナもう少し言葉を選んでっ…ってあんた何を躊躇いなく脱ぎだしているわけ!?」
「別に減るものじゃないもの」
その状況でもユピタは少ない別の可能性に欠けるが、隣でジト目を浮かべつつもテキパキと衣服を脱ぎ始めたヴィータに現実へ遠慮なく引き戻された。
「ほら、どうですかー皆さん?」
そうしてヴィーナは女神としての力と気配を閉ざして人間を装いつつも、それでも処女だった頃の瑞々しさを十分に保ちつつ大人らしい艶と曲線美を身に付けて十分以上に調和させたスタイルと美貌を、気さくな調子で惜しみなく晒し出した。
「…これは…」
「わ、私よりも見た目は上なのに…なんかぴちぴちとして…」
「それでいて…外にいるただ守られるだけの女とは違う気が…」
そのヴィータの姿は周囲の女性達に羨望と嫉妬、それすらも飲み込む同性なのを超越した情欲すらも思い起こさせた。
「ユピタ、お前も呆けている暇があるなら早々にその身を全て我々に見せなさい」
「…うぐ…わかりました…」
それにユピタは満たされることのない飢餓感に似た雄としての眼福に浸りそうになるも、アウラに現実へ戻されて大人しくその言に従った。
「…脱ぎました…」
数十秒後、この時代のものにしては本人の知恵や工夫もあって複雑な構造をしていたが、ユピタの衣服は彼自身の手によって脱ぎ落され、彼は見た目の齢相応に羞恥で赤らめた顔を俯かせ、足の付け根を手で覆い隠しつつも生まれたままの姿になった。
「…え、えーーっと…これが1●歳の身体…?」
「船で寝ていたところを発見していた時も良い体してるって思ったけど…」
「背丈自体は…齢にしても低いけど…」
「素肌は綺麗な白色だけど…筋肉は綺麗についてて…」
「う…な、何か…腹の内が熱く…?」
その姿は神族としての力と気配を内に隠したものだが、それでも人間の世界における他の少年たちと比べて美麗な精悍さに満ちており、周囲の女性達は少なからず目を見開かせるものがいた。
「…男として最も大事なものが隠れていますよ」
「…それは…?」
「言わねばわかりませんか?」
「い、いいえ…お見せします」
アウラは表向き変化のない様子で、その中でまだ隠されている部分を晒すようにユピタに促し、彼は頬の朱色をさらに強めつつもその手を足の付け根から離した。
「…え!? な、何よ…あれ!?」
「あそこだけ全然子供じゃない…」
「今はだらりとしてるけど…立ったら…」
「…ゴク…」
今は神族としての力や気配は抑えているのでその分のスペックダウンは否めなかったが、それでもユピタの曝け出された男性器は人間の成人男性の平均を全てにおいて凌ぐものであり、女性達の頬に浮かぶ朱色や唾を飲み込む音はさらに増していく。
「…わが国の魔術師筆頭のメディアよ、それではその子の雄としての強さを確かめなさい」
その中でアウラは表向き能面のままである人物を呼び出した。
すると、薄い半透明のチャイナドレス風のキトンを纏って白い素肌に包まれた、細身だが美麗な曲線美を描いた肢体を見せ、アルビノを思わせる白く流れるような長髪と赤い瞳で美しいが虚ろな表情をした魔術師と思われる女性がローブを脱ぎながら現れた。
(…メディア? たしかあの冒険で出てきた魔女と同じ名前だけど…。時代が違うだろうから同じ名に同じ職をした別人か、かの魔女の国も黒海沿岸にあったというから…その先祖か…!?)
その美女の名と役職にユピタは良からぬ既視感を覚えるが、そのメディアは彼の前に立つと己の指の一本に噛み傷をつけた。
「…我が血よ、この者を調べよ」
すると、メディアのその言葉に反応するかのように彼女の指の傷口からその小ささに見合わない血が噴き出て、それは細長い大蛇のようになるとユピタの身に纏わりついてまるで幾何学的な刺青のように薄く全身へ張り付き発光し始める。
(…この感覚は、まるで…いや、文字通り身の内側まで調べられて霊魂まで…)
(…なるほど、嘘はついていないがまだ隠しているようであったが、ここまで大いなる存在がこの地へ来るとは…)
(…!? この声は…メディア…あなたは直接こっちの心と…)
(我々人とは種が違うがまだそれは明かさない方がいいようだな。他の男どものような悪意や邪念は…ないわけではないが驚くほど低い。それと心の在り方はともかく記憶の方は見た目通りではないようだ…)
(…そこまでですが…)
(そう固くならなくていい。私も術の方はそなたの同族から良き意味で習わせてもらった身だからな。言葉遣いも人前でないところやこうした念話では普通にしていい)
(そ、そう…ありがとう…ッ!?)
その血が我が身の奥底に様々な意味で深く沁み込んできて読みとるような感覚に、ユピタは戸惑いと安堵に近い感覚を覚えつつも、その術を掛けてきたメディアに口ではなく心で言葉を掛けられてきて、驚きと共に彼女が少なくとも今は信を置ける人物だと見抜いたところで、その身における新たな変化に気付く。
「…うわ! 萎えていた状態の倍近く…!」
「す、すごい…心臓みたいな音がこっちまで聞こえてきて…!」
「ミ、ミミズが皮膚の下でたくさん蠢いているみたい…」
メディアの血による調査系魔術のためか、ユピタによって意識的に血流を低く抑えられていた男根が、彼の制御下を離れて人を装っている範囲内での最大の勃起へ至り、周囲の女性達の視線のほぼ全てを集め出した。
「…それではユピタ、ここから先はあなたが言葉を持って知恵を放つ男としてだけでなく、強き種を持ち撒ける雄でもあるかどうか…私の身体で我々に見せてもらおう」
戸惑うユピタの前で、メディアはその身に纏うキトン風の半分透けた衣装を脱ぎ落し、彼の身を仰向けに押し倒して我が身を見上げさせるようにした。
その時、メディアの下腹部には子宮と卵を模った淫紋のような刻印が生じ、桃色に強く光り始めていた。
「……ッ…」
ヴィーナはその二人に、乳飲み子の頃より共にいて親しんできた男子の前へ急に現れて馴れ馴れしく接してくる少女を目にした女の子のように、幼さの強い少し拗ねた顔を浮かべた。
(…この二人、この地へ魔術を伝えたレア様やメティス様に似た感じを何度かさせたが…今のあの娘が一瞬だけだが空気ににじませたあの気配はやはり…)
(……うぐ…隣りから内臓を直に握って締め付けてくるような不機嫌なオーラが…)
それでほんの少しだけだが露わになった人外の気配をアウラは見逃さず、ユピタは胃が痛くなったサラリーマンのような表情になった。
次回、ユピタもといゼウスの原典に近い華々しい女性関係(?)が本格的に始動する予定です。