「なあ、佳樹」
「なんでしょうか、お兄様……あ、お昼はすでに用意しておきました。温めて皆さんとお食べください……佳樹は急にできた用事で出かけます。日が暮れるまでは帰りません♡」
「あぁ、ほんと……急に用事が出来たんだな。それはよかった、ところでさ、少しお伺いしたいことがあります」
「もう、お兄様……そんな、かしこまらないでください」
「佳樹は……もしかして、知っているのか?」
「何が、でしょうか。あ、もしかして……お兄様が裏で好んで読まれているレディース向けの小説でしょうか?」
「……いや、そんなことは、ないんじゃないかなぁ」
「そうですか、ではもう何もありませんね……では、佳樹は出かけます……えい!」
「!?」
突然のボディータックル、の様に俊敏な速さで向かってきて、そしてベッドに背中が落下。
いきなり甘えてきた佳樹は胸に頬ずり、ぎゅっと抱き着いて妙に長い。密着しながら、どこか抑えつけられているようにも感じられる行為だ。いや、ただ甘えているだけ、のはず。
「お兄様、佳樹は……お兄様のことが大好きです」
「あ、あぁ……知ってるよ。ありがとう」
「ですから、考えておいてください♡……佳樹はお兄様の意見に賛成です」
寝て起きて今に至るこの瞬間まで、特に意見表明をした覚えはない。
……ピンポーン
「!」
「あら、皆さんお早い到着ですね……では、佳樹はそろそろ退散するとします。後は皆さんでごゆっくりどうぞ……この部屋でもリビングでもお風呂でも、好きにお使いください。用意は万全です」
「……あぁ、常日頃綺麗に掃除してくれて、悪いな佳樹」
綺麗好きで来客に対して失礼のない、純度百パーセントの良い子な妹に安ど感を覚えた。
これから始まることに胃が痛む前に、今は妹の頭を撫でて精神を落ち着かせよう。
「お兄ちゃん、佳樹が良い子で助かったよ」
「はい、佳樹はとっても……良い子です」
〇
~温水家~
平日故に、両親は当然のように仕事に出かけている。だから、皆も自然と集まることが出きた。
「その、小鞠の所は良いのか」
「今日は、家に親いるから……迎えも、してくれる。問題ない」
「そうなんだ……えっと」
「……終わるまで、帰るつもりない」
強く言い切った。
終わるとは何が終わるまでなのか、それはもちろん今まさに二人がノリノリで準備している裁判ごっこの結論が出るまで、なのだろう。
「ん……じゃあ温水君、そこに正座ね」
「被告人だから?」
「ん、もちろん……ん、むぐ」
クリームパンをいそいそと口に流し込み、果実水で押し込むように嚥下して大きく息を整えた。
「八奈ちゃんわたし弁護士!……無罪!有罪!!意義あり!!!」
「女弁護士、なんかいいね……かっこいい!知的で私にぴったりだし、でも女検察官も捨てがたい……なんか知的だし、私にぴったりだし」
「じゃあ間を取って、裁判長!」
「良いね、じゃあ一緒に裁判長しよっか。知的だし、私たちにぴったり!」
インテリジェンスの欠片も無い、義務教育で社会の授業をちゃんと受けてこなかったのかと心配になる二人の会話は流しつつ、俺は小鞠に注視する。
ノリノリで悪ふざけに興じている二人だが、そもそもこの場を用意したのは小鞠だ。
まさか、あれが本意ではあるまい。
「……なあ、小鞠」
お前はいったいどうしたいんだ、そんな言葉が出る寸前小鞠が動く。
ベッドに腰かける八奈見さんと焼塩の間に割って入る様に、その小さな体をベッドにポフンと置いた。
「わ、私が……裁判長、だ……二人は、副裁判長」
「……へ」
重い改める必要があるのかもしれない。小鞠は意外とノリがいいのかも。
「で、裁判って何すればいいの」
「とりあえず、謝罪じゃない?……ぬっくん、謝ることがあるならちゃんと言いなさい、先生聞いてあげるから」
「……謝ることって、というかどっちかというと二人は被告人サイドじゃない?」
「「?」」
本気できょとんとしている。日頃貴方たちが何をしているのか思い返して欲しい。
「……被告人、静粛に」
「こ、小鞠」
わからない、奇行に走った癖に頑なな様子。
何が小鞠を突き動かしているか、まずそこを明らかにしたいのに。
「…………ッ」
「に、睨むなよ……い、言ってくれないと……わからないよ、俺でも」
「……ぅ、ひぐッ」
「な、涙はずるいだろ……え、えっと、とにかくごめんなさい!」
反射で頭を下げる。この際有罪でも懲役でもなんだっていい。
八奈見さんと焼塩のゴミを見る視線から逃れたい。
「……か、勝手に……ハブくなッ!」
「!」
「さ、三人で……せ、せせ、セックスしてるのは知ってるッ……けど、迷惑とか決めるなッ」
「……」
予想外に響く声、ふざけていた二人も思わず面食らって視線を左右に振る。
そして、何かを悟った様に、二人はこちら側に、被告人側へと移動した。
「……小鞠ちゃん、知ってたんだね……うん、うすうす気づいてたけど」
「あ~、まあそうだよね……バレちゃってたよね。匂い、気付くよね」
それは焼塩だけだろうが、とにもかくにも小鞠は知っていると昨日告げたのだ。
あれで終わり、にはならない。知っているうえで、まだ納得には至っていない。迷惑をかけないで終わり、これからも三人で行為は続ける、そんなことで終わりにはならないのだ。
「……こそこそ、するな……いいから、三人とも……自由にしろッ……気を遣うのは、違うッ」
「え、いや……それは」
小鞠の憤りは、不満という感情が生じている。
不満になるのは何故か、それは不愉快な行為を見せられたり聞かされたりしたから、ではなかった。
そうではないと言うのなら、残るは一つ。
「……もしかして、小鞠ちゃん……仲間外れが嫌だから怒ってるの?」
「!」
焼塩がド直球に訪ねた。遅れて八奈見さんもはっと気づく。
「————……み、見るなッ」
三人で小鞠に視線を向ける。
よく見ると、今日の私服はとても似合っている。髪も整えて、ちゃんとガーリーで、愛らしい出で立ち。
まるで勝負服の様にも見えてしまうう。
「……そっか……小鞠ちゃん、そうなんだ」
「や、八奈見さん」
「温水君、やっぱりこの場はさ……温水君が被告人だよ。罪状を下します、八奈見裁判長の命令です」
膝立ちで移動し、八奈見さんが俺の前に停まった。
右斜め前、未着した距離。
腰を浮かせて、そして二人が見ている前で
……くちゅ……ちゅぷ♡
「!!」
「……ん……ン……ぁ、ん♡……ぁ、温水君……有罪、鈍感の罪で……罰金取っちゃうから♡」
キス、重ねて何度もキスを唇に当て続ける。
見ている前で、小鞠の反応が視界の左半分で映っている。
赤くした顔、手で顔を抑えながらも指の合間からしっかりと覗いている。
見られている。
八奈見さんにキスをされて、問答無用で黙らされている光景を見られてしまっている。
「……ねえ、小鞠ちゃん……いる前だけどいいの」
「————ッ」
「ふぅん、そっか……そうなんだ、じゃあ……しちゃおっか♡」
「……ッ!!」
何も言っていない、だけど焼塩はその場の空気を読んでしまった。
キスをする八奈見さんの前で、焼塩は着用しているニットセーターをその場で脱ぎ捨てる。
インナーの服も捨てて、下着だけになって、フロントホックも秒で外した。
視界が揺らぐ。小鞠の視線、目の前で露になった焼塩の乳房。
そして、見えるものはすぐ消えた。
「……とりあえず、いつもみたいにしよっか♡……温水君、かわいがってあげるね♡いつもみたいに♡」
「うん、いつもみたいに……ぬっくんの可愛い所、小鞠ちゃんにも見せてあげよっか♡……はい、抵抗しちゃダメ……力じゃ適わないの、知ってるでしょ♡」
……カチャ、カチャカチャッ
「!?」
見える景色は、もはや慣れ親しんでいる焼塩の胸の中。密着して視界を塞ぐ美乳で視界を暗闇にされて何も出来なくなる。
そうしている間に、八奈見さんは人の部屋着を脱がしにかかる。
「ほら、ズボン脱いで……もう慣れてるでしょ、女の子に見られるの♡」
「あ、いや……でも」
「小鞠ちゃんがいるから恥ずかしいんだ♡……なに、その反応余計にそそるんですけど♡……温水君はかわいいね♡♡」
「!」
部屋の暖かい暖房の風が肌をくすぐる。
二人の力で自分は自由を奪われて、そして着衣の権利を剥奪されていく。
「こ、小鞠……助けてッ」
「……」
何も言わない。だけど、息遣いは聞こえる。
まず間違いなく、ベッドから降りて今すぐ傍まで近づいている。
下着だけになっている下半身が、八奈見さんの手で最後の一枚も剥ぎ取られる瞬間を、今見られている。
「ぬっくん、暴れないでよ♡……ほら、吸ってッ♡」
「!」
「はぁい、おちんちん出そうね温水君♡……ん、おっきしてるんだし、我慢しちゃ、ダメッ!!」
「!?」
外気を浴びる。
疼く表皮に、今度は八奈見さんの手が置かれた。少し冷え付いた指先が、一本一本竿全体で感じられる。
「あっつ……硬ッ♡……温水君、私のおっぱいだけじゃなくてさ、手も好きなんだね♡……もう、ぬるぬるしたの出てる♡」
「さ、先走り……ぁ、すご……初めて、見た」
「あ、小鞠ちゃん……ふふ、見て良いよ……今、温水君の可愛い所、小鞠ちゃんにも見せてあげるね♡」
「……ぉ、ぉぉッ」
……くちゅ……ちゅ、ちゅこ、ちゅこッ
「!」
顔には焼塩の弾力ある乳房、そして八奈見さんの手が性器を握る。
密着されて、見せつけるように快楽を注ぐ。
もう、何度か経験していることだ。八奈見杏菜、焼塩檸檬、性欲の強い二人のしたいように自分は餌食になっている。だけど、その光景は三人の間だけのはずだった。
だが、今は目撃者がいる。
この関係が三人で終わらない時が、もうそこまで来ている。
今回はここまで、次回小鞠ちゃんを巻き込み負けヒロインのエッチが続きます。お楽しみに