人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転― 作:読人不識
・クライフ FW
・存命中の方 MF
・ヴァン・デン・ベルク DF
という三人のヨハンがいたことにしています。
オランダはワールドカップに優勝していないままですが負け方が違います。
長文台詞が多めなので読み難いかもしれません。
その点どう思われるかご感想お聞かせいただけると幸いです。
1985年8月中旬
「
その男が持ってきた少年サッカーチームの試合風景を見て、かつてオレンジ軍団として世界中に名を馳せた
「マッコイ! この少年達は素晴らしいぞ!! 特にこのディフェンスリーダーの少年と左サイドバックの少年は傑出している! ボールを愛しすぎるきらいはあるが左ウィングの少年もいい、右のウィングはチームに対する愛を感じる。中盤の3枚は完璧だ! センターフォワードの彼女は本当に小学生なのかね?」
ヨハンが放つ矢継ぎ早の称賛に真鯉は面食らいながら、
「うちのジュニアに入ったばかりの子供たちだが、本人たちはこれを当たり前にこれをこなしている。問題は経験だ……良い経験を持った大人が導かねば、彼らは失敗したことすら気が付かないままになるだろう。私はそれが恐ろしい。そして彼等を正しく育てられる経験と見識の持ち主が我が国にはまだいない…それで君に彼等の練習風景を含めた資料を送ってたんだ」
そう、真鯉がミッキーの語る戦術論や概念をビデオで撮影していたのには、その映像をこの男に見せる為という目的があった。
「売読サッカークラブはヨーロッパ的な要素を加えながらも、ブラジル的な個人技を重要視してきた、だがその指導は必ずしも正しい物とは言えなかったと今になって実感するよ。特に昨今プロ化の話が散見される中、他に一歩先んずるなら、ヨーロッパ的な選手育成の方法の導入が必須だと感じた。君はバルセロナとのコーチ契約はもう切れているのだろう? うちの育成の総監督に就任して彼らを育て、将来的にはトップチームを率いてほしい。これが君の友人である私からの駆け引きなしの願いだ。」
戦後間もない頃に出会った旧知の友人に真鯉は頭を下げ
「どうか我々の持つ玉を磨き上げてほしい」
と、その実力に見合った待遇を受けられなかった不遇なヨハン…
ヨハン・クライフより早くリヌス・ミケルスから彼のサッカーを学び、オランダ躍進の礎を築いたと自負しながらも、その献身的なプレーは地味で堅実過ぎたためスターとして扱われず、引退後もその実力に見合った待遇を受けることはなかった彼に真鯉はチームの体質を一新する鍵を委ねるため、要請する。
「真鯉、私は友人として君に協力したい、だがそれ以上にこの宝石の原石のような子供たちを育成したいという衝動を抑えきれない。だが私は子供の頃一時期日本にいただけで今の日本の事情には疎い。それに条件も問題だ。売読は私をどこまで信頼してくれるのかね?」
プロとしての側面を持って話しを聞こうとする。
「売読の新しいオーナーの津雲氏はサッカーの振興に積極的でね、君に話を持っていくことに一番乗り気だったのも彼なんだよ」
真鯉が裏事情をばらす。
「……津雲…エイスケツクモかい?」
脳内のアーカイブを調べるように少し思案してからヨハンが問う。
真鯉はシニカルに笑いながら
「通称クモスケ、その彼が今の私のボスだ。ライバルであったナベケンは、国民を裏切った犯罪者として終身刑の憂き目に遭っているから数年前から辣腕をふるっていたんだが、この度とうとう売読グループのオーナーに就任したよ。そしてJFAと早速プロリーグ設立について話し合いを持っている。だから日本のサッカー事情を知らない君にいきなり監督をやれと言わず、ユースの総責任者の立場を与えるのも、日本を知ってから腕を振るって貰おうという彼と私の目論見が一致した結果さ。このビデオに写っている彼等の存在が決定的だったのは言うまでもないがね」
彼に肯定の意を伝える。
「他には? 他には彼等のビデオはないのかね?」
ヨハンは急かすように真鯉に問う。
「試合を収録したビデオは今の所それだけだが、練習風景を撮影したものはいくつかある。これは我が売読のサッカースクールの他の生徒も撮影されているのだが…全員が彼等の様にはできる訳では無いぞ?」
一応持ってきた参考資料としてのβビデオを真鯉はヨハンに渡す。
そこにはミッキー達がロンドやオシム式ロンドなどのグローバルトレーニングをしている光景や、試合形式のインテグラルトレーニングでゴールを奪うまでの形やディフェンスの際の注意事項を何度も話し合っている光景が鮮明に刻まれていた。
「ここまでくるとナショナルチームの選手レベルのインテリジェンスだな……」
ヨハンがそうボツりと呟く。
「若い選手をあまり持ち上げすぎるのは良くないので、マスコミへの露出は出来るだけ抑えたいが、売読はそのマスコミを親会社にしている。だから親会社にもサッカー報道に対する姿勢から教育を始める必要性を訴えてるんだ……イングランドやイタリアみたいになられては困るからね」
真鯉が皮肉気にそういう。
「日本はまだワールドカップに出場したことはなかったはずだね?」
ヨハンがあることを思いついたという風に真鯉に尋ねる。
「あぁ、ないね。残念ながら今のところは出場に届いたことはない」
苦虫を噛み潰したように真鯉が返す。
「私が売読で実績をあげたら、94年のワールドカップ代表監督に私を推してくれないか?」
真剣な表情で真鯉の顔を見つめながら、ヨハンがそう提案する。
「何を考えているかまず教えてくれ」
背中に冷たい汗が流れるのを感じながら真鯉が問い質す。
「なぁに、世界を驚かせたくてね。私自身は世界を驚かせる選手として扱われなかったが、私が育てた選手たちが16歳の少年たちが世界をあっと驚かせるところを見たくてね」
そう言って悪戯っぽく微笑むヨハン。
「確約はできんよ。まだ下駄をはいてもいない状態ではな…だが私もそれは見たいと思うし、彼等にはそう成長してほしいとも思っている。だから出来るだけの協力はすると約束しよう……」
少々呆然としながらやっとのことで真鯉はそう返す。
『こいつ現役時代は確実性を重んじ過ぎてつまらないと言われたプレイヤーなのに、とんでもないことを夢想している。いや、彼等を見れば夢を見たくもなるか…』
内心でそんなことを考えながら真鯉はヨハンの持つサッカーへの情熱とスケールの違いに圧倒される。
『わしも、金さえ払えばクレムリンだって買ってきてやると言ってほら吹き扱いされてはいるが、こいつは……バロンドールへの意地や未練か?』
三人目のヨハンは結局バロンドールを取ることはできなかった、良い選手であったことは事実だが、マスコミ受けが良くなかったのだ。
「ならあとは君と私の代理人で条件を話し合ってくれたまえ。本来なら手順は逆のはずだがね。しかしこの映像を見ずに話を聞いたら私は君と合う前に断っていただろう。その点に関しては君に感謝しているよ」
してやられたという表情を浮かべながらヨハンは真鯉に握手を求める。
真鯉は人の悪そうな笑顔を浮かべてそれに応じ
「お手柔らかに頼むよ」
と返すのだった。