※この作品はR-18です。

人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転―   作:読人不識

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R18オリジナル週間ランキングで29位に入りました、応援ありがとうございます。


第十六話 テストマッチ 前半

 1987年 4月 テストマッチ当日

 

 今日のテストマッチは選手たちの自主性を重んじて、自分達でメンバーを選び、自分達で判断してプレーし、自分達でどう攻め、どう守るか? を考えさせるため、コーチ陣からの助言はない。

 実力で上回る相手チームの指揮を、マエストロが執ってたら、ボク等に勝ち目はなかっただろうからこれはありがたい配慮だ。

 

「もう一度約束事を確認するよ?」

 この一週間徹底してきた約束事を、ボクはもう一度、チームのメンバーに念を押す様に確認する。

「ボールを取られたら、5秒間チーム全員で相手選手にプレスをかける」

 皆が頷く。

「相手の利き足を封じる様にしてプレスをかける」

 これにも頷く。

「相手が前へ繋ぐパスコースをまずふさぐ」

 真剣な顔で納得するようにうなずく。

「前線の選手はパスの出どころを重点的にマークし、奪ったら速攻をかける。良いね?」

「「わかった!」」

 チームメートたちが口々に了承の意を示す。

 

「じゃあキツイ試合になると思うけど最後までこれを徹底しよう!」

「おー!」

 気勢を上げてボク達は円陣を解き、各々の役割が科された位置へ散っていく。

 

【挿絵表示】

 

 ボクが今回皆に提示したのは、現代サッカーでは幅広く使われている、ゲーゲンプレスの簡易版だ。

 

 プロの選手にも高負荷を与えるゲーゲンプレスを小学生が十分に実行できるとは思えない、だからテストマッチでやるのだ。

 

 試合開始のホイッスルが鳴る。

 

 相手チームのキックオフで試合は開始された。

 

 前線にいるシンとボクもう一人の6年生フォワードがボールホルダーに軽くプレスをかけボールを下げさせる、と同時に、チームは最終ラインを高く設定し、前線へのパスコースを塞ぐように相手選手をマークする。

 

 パスコースを封じられた相手チームのDM(守備的中盤)はパスの出し所を探って足元でボールをこねくり回し…

 一瞬の隙を突かれてスライディングタックルでボクにボールを奪われる。

 ボクは急いで立ち上がると、相手センターバックの一人とのコースを塞ぐ形から裏抜けしようと走り出すシンの走る先のコースへパスを出す。

 

 空いたスペースへのスルーパスが見事に決まり、シンが優しくボールをゴールにパスするようにシュートすると、相手のゴールネットが揺れ、先制点が決まる。

 

 ピッチを囲む人たちから驚きの声と歓声が上がる。

 

 ゴールを決めたシンが、ボクに駆け寄って抱き着くように喜びを爆発させる。

「ナイスゴール!」

「ありがとう、自分でもびっくりしたよ」

「でも本番はこれからだから」

「わかったぁ!」

 ボクとシンは皆の祝福を受けつつ自陣へと戻る。

 

 ボクの分析通り相手チームの攻撃は、相手のDMから組み立てるケースが多い事を逆手に取った、ゲーゲンプレスとボール奪取が上手くはまって先制できた。

 

 ここまでは狙い通りだ。

 ここからどう対策を練るのか?

 それともアドリブが効かないままこちらにハメられるのか?

 それはやってみないと分からない。

 一番怖いのは相手中盤からロングボールをセラに出されることなんだが、個人技で上回るという自信がそれを許容できるか?

 それとも別の解決策を考えつくか? それは相手次第かな……

 

 再び相手のキックオフで試合が再開し、今度はセラが下げたボールを相手LCM(左センターM)がドリブルで運ぼうとするが、それを味方RCF(右センタフォワード)がプレスをかける。

 

 相手の利き足である右足を封じる様にプレスをかけ、ピッチの外に向かうように進路を切ると、相手LSM(左サイド中盤)が前に出てパスを受けようとする。

 相手がそこに出したパスを、こちらのRSB(右サイドバック)がボールを攫いDM(守備的中盤)のグレッグにボールを渡す。

 相手DM(守備的中盤)が、LCM(左センター中盤)のカバーに動いてできたスペースに、グレッグがロングボールを入れ、そのボールをボクが綺麗に足元で止める。

 その場でターンし、ゴールまで距離があるところを、足首を固定するようにし、押し出すようにボールを蹴りシュートする。

 空いていたシュートコースに無回転シュート(ブレ球)が飛んで行き、ゴールキーパーの前でブレながら落ちるとゴールネットを揺らした。

 

 U-12では他に使い手がいないであろう無回転シュート、通称ブレ球は独特の機動を描いて変化するシュートなので、この年代の選手が捕れなくとも仕方がない。

 呆然とする相手チームを他所にボク等はゴールセレブレーションをして喜ぶ。

 

 スコア上は2点差で、優位に試合を進めているように見えても、ボクは内心で薄氷を踏む思いだ。

 だからこそ相手の士気をくじく為、早めに切り札を使った。

 これで相手が意気消沈してくれればいいんだけど……

 

 そう思いながらセラを見やると、闘志を燃え上がらせて僕を見つめているのだった。

 

 これはまだ油断できそうにないな、内心でそう呟くと、ボクは自分の守備位置に戻るのだった。

 

 そこからまさにセラ無双とも言うべき試合内容だったが、残念ながら今のセラは、水を運ぶ役割でも、全体の指揮者でも、華麗なドリブラーでもなく、強力なフィニッシャーである。

 独力で局面を打開できるのは、ゴール前でボールを持った時なので、そうならないよう、彼女から攻撃を始めなければならなくなるよう、攻撃の芽をつみ続けると、彼女の強みは発揮されずに済む。

 

 つまり、ゴールから遠い位置でセラにボールを持たせ、パスコースを塞ぐと彼女は独力で局面を打開するしかなくなるので、数的優位を作り出して二人、三人でボールを獲る。

 

 そこからのカウンターで、前半に更に二点追加すると、ボク等は守備の強度を落として体力を温存し、試合中にもかかわらず逸早く後半に備えるのだった。

 

 前半終了のホイッスルがなる。

 

 ボク等はクールダウンさせながらベンチに戻る。

 

 前半は思い通り進んだ、だがこのままでは後半途中からスタミナが切れると思う。

 ボクは、あまり使いたくなかったもう一枚のカードを後半途中から使う事を覚悟するのだった……




次は日曜更新予定です、よろしくお願いいたします。
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