人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転― 作:読人不識
1987年 4月 テストマッチ当日
今日のテストマッチは選手たちの自主性を重んじて、自分達でメンバーを選び、自分達で判断してプレーし、自分達でどう攻め、どう守るか? を考えさせるため、コーチ陣からの助言はない。
実力で上回る相手チームの指揮を、マエストロが執ってたら、ボク等に勝ち目はなかっただろうからこれはありがたい配慮だ。
「もう一度約束事を確認するよ?」
この一週間徹底してきた約束事を、ボクはもう一度、チームのメンバーに念を押す様に確認する。
「ボールを取られたら、5秒間チーム全員で相手選手にプレスをかける」
皆が頷く。
「相手の利き足を封じる様にしてプレスをかける」
これにも頷く。
「相手が前へ繋ぐパスコースをまずふさぐ」
真剣な顔で納得するようにうなずく。
「前線の選手はパスの出どころを重点的にマークし、奪ったら速攻をかける。良いね?」
「「わかった!」」
チームメートたちが口々に了承の意を示す。
「じゃあキツイ試合になると思うけど最後までこれを徹底しよう!」
「おー!」
気勢を上げてボク達は円陣を解き、各々の役割が科された位置へ散っていく。
ボクが今回皆に提示したのは、現代サッカーでは幅広く使われている、ゲーゲンプレスの簡易版だ。
プロの選手にも高負荷を与えるゲーゲンプレスを小学生が十分に実行できるとは思えない、だからテストマッチでやるのだ。
試合開始のホイッスルが鳴る。
相手チームのキックオフで試合は開始された。
前線にいるシンとボクもう一人の6年生フォワードがボールホルダーに軽くプレスをかけボールを下げさせる、と同時に、チームは最終ラインを高く設定し、前線へのパスコースを塞ぐように相手選手をマークする。
パスコースを封じられた相手チームの
一瞬の隙を突かれてスライディングタックルでボクにボールを奪われる。
ボクは急いで立ち上がると、相手センターバックの一人とのコースを塞ぐ形から裏抜けしようと走り出すシンの走る先のコースへパスを出す。
空いたスペースへのスルーパスが見事に決まり、シンが優しくボールをゴールにパスするようにシュートすると、相手のゴールネットが揺れ、先制点が決まる。
ピッチを囲む人たちから驚きの声と歓声が上がる。
ゴールを決めたシンが、ボクに駆け寄って抱き着くように喜びを爆発させる。
「ナイスゴール!」
「ありがとう、自分でもびっくりしたよ」
「でも本番はこれからだから」
「わかったぁ!」
ボクとシンは皆の祝福を受けつつ自陣へと戻る。
ボクの分析通り相手チームの攻撃は、相手のDMから組み立てるケースが多い事を逆手に取った、ゲーゲンプレスとボール奪取が上手くはまって先制できた。
ここまでは狙い通りだ。
ここからどう対策を練るのか?
それともアドリブが効かないままこちらにハメられるのか?
それはやってみないと分からない。
一番怖いのは相手中盤からロングボールをセラに出されることなんだが、個人技で上回るという自信がそれを許容できるか?
それとも別の解決策を考えつくか? それは相手次第かな……
再び相手のキックオフで試合が再開し、今度はセラが下げたボールを相手
相手の利き足である右足を封じる様にプレスをかけ、ピッチの外に向かうように進路を切ると、相手
相手がそこに出したパスを、こちらの
相手
その場でターンし、ゴールまで距離があるところを、足首を固定するようにし、押し出すようにボールを蹴りシュートする。
空いていたシュートコースに
U-12では他に使い手がいないであろう無回転シュート、通称ブレ球は独特の機動を描いて変化するシュートなので、この年代の選手が捕れなくとも仕方がない。
呆然とする相手チームを他所にボク等はゴールセレブレーションをして喜ぶ。
スコア上は2点差で、優位に試合を進めているように見えても、ボクは内心で薄氷を踏む思いだ。
だからこそ相手の士気をくじく為、早めに切り札を使った。
これで相手が意気消沈してくれればいいんだけど……
そう思いながらセラを見やると、闘志を燃え上がらせて僕を見つめているのだった。
これはまだ油断できそうにないな、内心でそう呟くと、ボクは自分の守備位置に戻るのだった。
そこからまさにセラ無双とも言うべき試合内容だったが、残念ながら今のセラは、水を運ぶ役割でも、全体の指揮者でも、華麗なドリブラーでもなく、強力なフィニッシャーである。
独力で局面を打開できるのは、ゴール前でボールを持った時なので、そうならないよう、彼女から攻撃を始めなければならなくなるよう、攻撃の芽をつみ続けると、彼女の強みは発揮されずに済む。
つまり、ゴールから遠い位置でセラにボールを持たせ、パスコースを塞ぐと彼女は独力で局面を打開するしかなくなるので、数的優位を作り出して二人、三人でボールを獲る。
そこからのカウンターで、前半に更に二点追加すると、ボク等は守備の強度を落として体力を温存し、試合中にもかかわらず逸早く後半に備えるのだった。
前半終了のホイッスルがなる。
ボク等はクールダウンさせながらベンチに戻る。
前半は思い通り進んだ、だがこのままでは後半途中からスタミナが切れると思う。
ボクは、あまり使いたくなかったもう一枚のカードを後半途中から使う事を覚悟するのだった……
次は日曜更新予定です、よろしくお願いいたします。