人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転― 作:読人不識
ハーフタイムの10分間、ボク達は体力の回復に努めながら、試合後半の展望について話し合う。
「後半開始早々は、前半と同じような強度で守備をして欲しい、けど速攻に繋げる必要はないよ」
「「え?」」
話を聞いて皆が驚く。
「このままのサッカーを出来れば、クリーンシートで勝つことも出来るだろうけど、ボク等の体力的にそれは無理だと思う」
「スタミナが持たないって事?」
ボクの説明を遮って
「そうだね、後半途中からボク等は走りたくても走れなくなると思う。それだけ前半、全力で守備と攻撃に走ったって事なんだけど、それと同じことを後半もやろうとしても必ず足が止まる」
「じゃあ戦術を変えるの? ここまで上手くいってるのに?」
「ハーフタイム中に、向こうも頭を冷やして戦術を変えてくる可能性もあるし、前半のままでは通じないと思う」
「じゃあどうするの?」
ホコリが更に問うてくる。
「守備のコンセプトは前半と同じく、ボールを失ってから5秒プレスをかけるってのは変わらないし、パスコースを切るのも変わらない。けどそこから全力で前へ攻めるのではなく、相手のマークがついていない味方へボールを回して時間を潰そう、優先すべきは体力温存。無理に攻めないで相手を走らせて、こちらは安全にボールを回して試合終了を待つ」
「え~!? それってなんかずるくない?」
ホコリが文句を言うが、
「じゃあ全力で攻め続けて負ける方が良いの?」
「う~、そうは言わないけど……」
ホコリは堂々と相手を打ち負かしたいようだが、セーフティーに勝利を奪えるならその方が安全だ。
そしてボクは、この試合最後のキーマンになるであろう、シンの相方として守備に走ってくれた6年生の
「モッチーは試合終了10分前から例の作戦を遂行してください。何を言われてもそれは考えたボクに対する罵声なので、モッチーは気にせずチームの勝利の為に躰を張ってください。大変だと思いますが、よろしくお願いします」
「わかったよ、でも俺のプレーが通じるかな?」
モッチーが自信なさげに訊き返す。
「君のポストプレーは6年生で一番安定してるから、お願いするんですよ? モッチーに出来なかったらボク等の誰にもできない事なので、通じなかったとしたら作戦立てたボクのミスです、だから自信もってお願いします」
そう言ってボクはモッチーに頭を下げる。
それを見たチームメイトは驚きの声を上げ、モッチーは慌てて僕に頭を上げさせる。
これで自分が如何に重要な役割を背負っているか、自覚できただろうと思い頭を上げ、ボク等は円陣を組んで、
「後半も作戦通りいくぞ! ヴェルデ~ファイ「「オー!」」」
と気勢を上げて、アップを行う。
そしてピッチを入れ替え、試合開始を待つ。
後半の相手チームは中盤の底を厚くして、お互いをカバーする意図を込めたフォーメーションのようだが、前半無理攻めして、削られたスタミナでどこまでそれが出来るのか? やってみないと分からない。
だがこちらも、中盤の枚数をそろえて、コンパクトな位置関係を取りやすいようフォーメーションを変える。
そして後半開始のホイッスルが鳴り、シンがボールを軽くモッチーに出し、モッチーはそれをグレッグに渡す。
グレッグはそのボールを最終ラインに渡し、最終ラインでボールが悠々と回されているのをみて、相手陣内で、ボク等が攻めてくるのを待っていたセラたちは、慌ててプレスをかけに走る。
これで5分近く時間を稼げた。
残り15分!
最終ラインで回していたボールに、プレスをかけようとされると
そして相手の中盤の底までが焦れてプレスに参加し、最終ラインが上がった所で空いたスペースにボールを出す。
シンが素早くそれに追いつくと、相手の最終ラインから少し離れ、サイドに開き気味なモッチーにパスを渡す。
モッチーはそれを綺麗に足元に収めると、相手ディフェンダーに背を向けてサイドラインの方を向きじりじりとエンドラインに向かって移動する。
ここからしばらくはモッチーの見せ場だ、ボク等は足を止めて息を整える。
相手
そもそも背が高く懐が深いモッチーがポストプレーをするとボールの保持だけは上手くてなかなか獲れないのだ。
しかしモッチーにも弱点はあって、ボールを出すタイミングが悪く、かといってターンしてシュートに持っていける訳では無い。
ボールを保持することにかけては6年生でもトップだが、スペースが狭かったり、プレスがきついとその次のプレーに繋がりにくいのが弱点なのだ。
だが今この時においてその弱点は関係ない、ボク等は4点取っていて、相手は0点、相手はゴールを決めなければ勝てないが、ボク等はゴールされなければいい。
つまりモッチーがボールを保持し続けるだけで、ボク等の勝利へ近づいているのだ。
そして相手センターバックのうち一人が加勢に行くが、使命感に燃えるモッチーは引っ張られても中々倒れずボールを保持する。
相手
すかさず主審が足を蹴った選手と引っ張って倒した選手にイエローカードを出す。
これで後半15分経過!
あと五分+ロスタイム。
「モッチー!!いけるかい!?」
ボクは彼の状態を気にして大声で問いかける。
しばらく痛がっていたモッチーだが、ゆっくり起き上がるとサムズアップして、大丈夫だと教えてくれる。
「後ちょっとだから無理しない範囲で頑張って!」
「無理はするよー!」
モッチーは笑いながらそう返す。
そう言ってる間も時計は進む、シンがゆっくりボールをセットし、マークが厳しいモッチーではなく、サポートに上がってきたグレッグにボールを出す、グレッグは最終ラインに素早くボールを出し、プレスをかけるべく相手チームが全員前掛になった所を、サキが相手の最終ラインの裏に出来た広大なスペース目掛けてロングボールを入れる。
強烈なバックスピンで戻ってきたボールをモッチーが拾って、そのままシュートを放つ。
相手のキーパーは山を張っていたのと逆を突かれ、ゴールネットをボールが揺らす。
5点目が入ったことで、相手チームは完全に意気消沈し、試合中に休めたことで息を吹き返したボク等にあっという間にボールを獲られると、また
プレスには強度も脅威もなかったので、ボク等は危なげなくボールを回し続ける。
そして試合終了のホイッスルが鳴る。
ボク等のチームが歓喜に沸くのとは対照的に、相手チームはお通夜ムードだ。
観戦していた各コーチからの講評の後、マエストロが苦々しげな顔をして
「ミッキー、あのプレス戦術は君が考えたのかい?」
と訊ねてきた。
「スタメンチームを封じる為に、何かいい方法はないかと思って、考えたんですが、まだ完成とは言えないですね……」
「中々素晴らしい発想だったよ、トップチームでも取り入れたいくらいだ。だが後半はいただけない……君ならもっと美しいサッカーができたんじゃないのかい?」
「相手が強かったから、反撃の糸口を完全に摘んでおかないと、何点取っても逆転されたかもしれませんので。それに今日は普段評価されてない選手の活躍する所も見せたかったので」
「そうか、ならその考えを尊重しよう」
「ボクも後半の展開はアンチフットボールだと思いますが、まともに力で勝負しても勝ち目は薄かったと思いますし、致し方ないと割り切りました」
「アンチフットボール……面白い表現だね。ヨハン・クライフが批判する時に使いそうだ」
と言ってマエストロは堪えるように笑うのだった。
次の更新は11/14木曜日のPM12時過ぎの予定です。
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