※この作品はR-18です。

人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転―   作:読人不識

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第十九話 東京都 U-12リーグ 1部 前期 (1)

 1987年4月下旬

 

 東京都U-12リーグ1部は、10チームが3ヶ月かけて総当たりで優勝と降格を争うリーグ戦だ。

 毎年春から夏に前期リーグ、秋から冬にかけて後期リーグを行っている。

 

 4月末から日曜日に二試合ずつ試合をし、GWに二試合と一試合の日があり、6月中旬までにリーグは終了する、結構な長丁場だ。

 U-12リーグに登録さえしていれば、試合に出場しなくとも。冬に開催される全日本選手権やU-12リーグの控えやスタメンと入れ替えが出来るので、売読の選抜チームの登録選手自体は多い。

 だがそこから選抜されて、控えやスタメンに選抜されるのが難しいのだ。

 

 今日は午前中に二試合、売読の練習場で試合が行われる。

 朝八時過ぎからの一試合目と、それが終わってすぐの二試合目、こんな感じなので選ばれた22人は、完全なターンオーバーで入れ替わり、試合を行う。

 1部とは言え、チームによっては中心選手だけは必ず出場するチームもあるのだろうが、売読は選手に経験を積ませるために、全員入れ替えて試合を行う。

 

 今日の試合はオープンゲートというクラブと、クオヴァディス江東と試合だ。

 今季昇格してきたクラブで、1部で旋風を巻き起こしているマエストロのサッカーとの対戦経験はない。

 1試合目は低学年チームから、セラ、シン、ホコリの三人と、六年生でチームを構成し、存分に走ってスペースを作り、フリーなスペースにボールを通し、そこを起点に攻撃をする攻撃サッカーと、守備時にはチーム全員がプレスをかけ、相手の主力選手にボールが渡るところを狙ってボール奪取するプレスサッカーを合わせたスタイルがハマり、7-0の大差で勝利した。

 

 二試合目はすぐに始まるので、アップをして備える。

 ボクの背番号は誕生日にちなんで21番だ。

 キャプテンは六年生でサキの相方のCBだ。

 今日は4-4-2でサキはセンターバック、グレッグはディフェンシブミッドフィルダー、ボクは右センターフォワードで出場する。

 今日のボクの相方のFWはモッチーである。

 

 こちらのキャプテンがコイントスでボールを選択する。

 ボクとモッチーはセンターサークルからキックオフして、パスを交換してから右オフェンシブミッドフィルダーにボールを預ける。

 

 その間にボクとモッチーは、相手の最終ライン目掛けて駆けてゆく。

 

 クオヴァディス江東は、名門チームであるクオヴァディスと同じグループが運営し、ホームとなる練習場が江東区にある為、その地元の子が多い。

 だがコーチ陣は、長らく1部にいるクオヴァディスから派遣されている為、1部にいる他のクラブの戦術にも全くの無知という訳でもない。

 それ故か、相手チームも一部の選手がこちらのボールホルダ―にプレスをかけるが、連動してプレスをかけていないので、こちらの味方に簡単にパスが渡る。

 

 そもそもが普段の練習からボク等は、ミニゲームなどでプレスをかけあっているので、組織的に洗練されたプレスを高い強度でかけ続けなければ、個人技で交わせるし、周りも味方を助ける為に他の選手も動くので、パスコースも出来る。

 なので相手のバイタルゾーンで、パスの受け手と出し手の意図がかみ合わなかった時に、ボールロストするくらいで、ほぼ一方的にボールを保持出来ている。

 

 圧倒的なポゼッションの下、走ってはスペースを作り、作られたスペースを使って攻め、相手の守備陣形を崩してゴールを奪う。

 この時代の日本のパスサッカーは、パスの出し手はパスを出した後あまり動かない選手が多かったが、売読では5つのレーンの動き方を導入したため、パスの出し手も受けても第三者も、次のパスを出す為に、相手の陣形を崩す為に、何より得点を決め失点を防ぐという目的の為に、プレーの次のプレーを考えながら走る必要がある。

 だが売読のサッカーは守備も攻撃も強度が高いため、非常に疲れる。

 子供が一試合通して出来るサッカーではないのだ。

 これを調整する為に、ボールを保持していても攻めないでスタミナを回復する時間を合間合間に取る。

 本来の歴史でワールドカップに優勝し、チャンピオンズリーグでも優勝し、栄誉をほしいままにしたスペインのバロンドールに値するはずが、何故か受賞できなかった選手が日本に来て、スペインのサッカーと日本のポゼッションサッカーとの大きな違いとして挙げていたのが、その部分である。

 

 日本のサッカーは縦へ縦へ急ぎ過ぎる、という苦言だったが、その展開の速いサッカーで相手のペースを崩せれば、サッカー大国とも渡り合える。

 

 ただし選手にはどんな状況でも最後まで走り切れる走力が求められる。

 

 売読のトップチームでも竹田より北川が評価され、カリオカがスタイル変更せずにはいられなかったのは、この走る部分に関して対応する為である。

 まぁ、売読のトップチームではカリオカがチーム全体のコントロールをしているので、攻める時と攻めない時の切り替えがはっきりしているのだが……

 

 ついでに言えばボクの影響で、センターバックの攻撃参加が頻繁になり、ゴールキーパーにもパス技術が求められ、売読の育成年代は選手もコーチも大変なパラダイムシフトを迎えているのである。

 

 そんな未来のサッカーを目的意識をしっかり持って、しっかりプレーすれば表面的な模倣をしただけのチームに負けるはずがなく、二試合目も8-0で快勝した。

 

 次節は天皇誕生日に二試合行う。

 バッカーノと立川武蔵野という強豪だ。

 

 マエストロはボクが示したゲーゲンプレスの可能性を追求したいらしく、全育成年代で意識付けと約束事を徹底させ、ポゼッションサッカーとカウンターサッカーという二つの戦術を柱にしようとしている。

 

 この考え方は未来においてまさしく正解であり、このどちらかしか戦術を持たないチームは、世界のトップと渡り合うことは不可能だとボクは思っている。

 

 なのでマエストロは94年のワールドカップを勝つために中心選手となる売読の代表候補に徹底してこの二つの戦術を意識付けようとしている。

 だがあまり上手くはいっていない。

 まだ個人のスキルや経験に重きを置く時代であり、組織で守って組織で攻めるという発想が大人にはないからだ。

 その点では若い選手に教え込んだ方がいい。

 だが、個人のスキルや経験を、組織の上で使いこなせればより生きるのは間違いないので、マエストロは自分の戦術思想で薫陶を受けた世代で、近々トップチームと試合をさせたいようだ。

 

 売読の育成年代がこの二年派手な結果を出しているので、力試しに日本最強チームである売読クラブのトップチームと当てたいとにこやかに話していたが、あれは『俺の育てた選手たちでお前たちの鼻っ柱をへし折ってやる』と思っているに違いない。

 それが分かるくらいにはボクとマエストロは交流を続けてきた。

 

 売読が強くなれば、日本代表も強くなる。何故なら売読の控えで日本代表のスタメンを破っているから。

 

 この時代において、日本最強なのは代表チームではなく売読クラブなのだ。

 

 だからこそマエストロは、売読のトップチームの意識改革に心を砕いている。

 

 だが個人技で国内を無双している売読トップチームは、簡単には認めてくれない。

 だから自分達の下の選手で打ち負かすという発想なのだろう。

 

 そして組織戦術による守備と攻撃、その切り替えの時の動きをボクが試合で可能性を示した。

 だからマエストロがU-12の選手たちを使って戦術的な試行錯誤を繰り返しているのである。

 

 恐らく組織戦術的に売読で一番優れているのはU-12であろう、ここにはボクがいる為マエストロにさえない発見がある。

 それを見つけて理論化し、他の年代でも試す。

 それを繰り返すことで彼は育成年代の黄金期を築いた。

 だが、それが本当に売読のトップチームに通じるか? は、やってみないと分からない。

 

 そしておそらくワールドカップアジア予選でも……

 プロ化は既に目途が立った、後は戦術をどこまで煮詰められるか? という点が問題だが、個人技が高い売読の選手が組織的な守備や、組織的な攻撃、トランジションに受ける立ち回りや約束事を覚えれば、ワールドカップ本大会で活躍できることは間違いない。

 

 だがその重要性を現実に認めさせられるか? 難しいがマエストロの手腕に期待するしかない。




次の更新は11月21日木曜日12時過ぎです、よろしくお願いします。
ちょっと私用で身辺が慌ただしく、これから先更新が滞るかもしれません。
申し訳ございませんがご理解のほどよろしくお願いいたします。
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