人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転― 作:読人不識
1985年3月
円堂コーチから二週間待ってくれと言われたボク達だったが、全家庭の保護者のスケジュールがあったのは一月後だった。
なので先方にその旨連絡しており、本日また見学にお邪魔することになっている。
が、
何故か細身でパーマがかかった長髪の、背が高い外国人の男性から
「オマエラはよ着替えて戻ってコイ」
と命じられ、職員の方に案内されドレッシングルームで用意された緑色を基調としたユニフォームに着替えスパイクを履いて戻っていく。
「ナマエ」
「「「「「……」」」」」
「ナマエ聞いてんだロ!」
なんかやたらカリカリした態度だが、どうやら名前を聞いて来ているらしい。
なのでボクらは
「
「
「
「
「
とそれぞれ名乗る。
ちょっとポルトガル語っぽい訛りでしゃべるその外人さんは
「ナラリフティングからやってミロ」
とボク達に指示する。
ボクらが戸惑いながら始めようとしたとき
「これっ! カリオカっ!! 勝手に始めるんじゃない!」
とクラブハウスから駆けて来ながら円堂さんが外人さんに向かって怒鳴る。
カリオカ?
この時期日本にいる売読の
JSLのトップ選手が何でサッカースクールの見学に来て試験みたいなことしてるの?
と思いつつその顔を見つめる。
ボクが知ってるのはある程度年を取った彼の顔だが、顔に皺がなく目付きがやたら鋭い事を除けば、帰化して日本代表最年長ゴール記録を持つ
若い頃のこの人とんでもない暴れん坊だったらしいんだよなぁ…
ボクが内心でそんなことを考えていると、カリオカを説き伏せたのか、円堂コーチがこちらを向いて頭を下げながら
「いきなりで失礼した。今日は我がクラブから何人か、君たちのプレイを見せてもらいたくてね。カリオカもその一人なんだ。ただ彼は気が短くてね、全員揃う前に始めようとしたんだが、申し訳ないのだが後ちょっと待ってくれないだろうか」
ボク達に向かって穏やかにそう告げる。
ボクらは顔を見合わせ
「ならアップしてて良いですか?」
代表してサキが円堂コーチにそう尋ねる。
円堂コーチは鷹揚に頷きながら、
「是非そうしてくれたまえ」
と言ってピッチとその周辺の使用許可をくれた。
ボクらは軽いジョギングから徐々にスピードを上げて、それぞれのスピードで走りながら体を温め、肩甲骨を動かすように体を動かし、そして歩きながらストレッチをする。
その後3人と2人に別れてパスを始めると、ほどなくして円堂コーチから声がかかった。
「よしっ! 今から言うメニューを君たちなりの全力で最もいいプレイを見せてくれたまえ」
いつの間にかピッチサイドにはカリオカと円堂コーチの他に、スーツを着た大人とジャージを着た大人が何人かが集まっていた。
スーツを着た大人は大人というより腰の曲がったお爺さんで、軽くウェーブがかった白髪に胡散臭そうな微笑みを浮かべているのが印象深い。
「では、まずリフティングから。5分間リフティングを続けてくれたまえ」
円堂コーチがそう声をかけてくる。
まぁリフティングを5分するくらいならせっかく着替えたんだし折角の芝のピッチだし…
そう思って各々勝手に始める。
ボクはまず利き足である左足でリフティングを始めると、両足の甲を使い利き足のインフロントやアウトサイド、反対の足のインフロントとアウトサイドでリフティングした後、ボールを浮かせている間に周りを見ながら肩に乗せたり頭でリフティングをする、五分経つ頃には背中にボールを載せて終わらせる。
お姉ちゃんもボクと同じようにボールを扱い、サキやシンはくるりと回りながらリフティングする芸当も加えていたようだ。
ただ、グレッグは面白くもなさそうに淡々と左右の足で交互にリフティングを続けていただけの様に見えた。
ボクらが全員一度もボールを落とさずに5分間リフティングし続けたことに周りの大人たちからちょっとしたざわめきが起きる。
「よしっ! 次だ。今度はあのミニコーンの間をジグザグにドリブルして最後のコーンを回って戻ってきて欲しい」
と、ピッチの反対側のサイドに縦二列にいくつか並べたミニコーンを指さしてリクエストする。
ボク達は順番に二人ずつドリブルでミニコーンの間をジグザグに往復する。
サキは相手をドリブルで抜くのが、やや不得意なのでぎこちなく。
シンは相手選手を想定して切れ味鮮やかなフェイントやボディフェイントを入れて軽やかに。
おねえちゃんはルーレットを織り交ぜて華麗に。
グレッグはボールを奪われないよう足でガードする動作を入れながら重々しく。
そしてボクは遠くに視線を置きながら、ジンガで足元からボールを離さないようにしながらミニコーンをを交わして往復する。
ボク達のプレイを見ている大人たちはざわめきからどよめきに代わる。
その後はシュートをやったり50m走をやったが、見ていた大人たちはどこかほっとしたようだった。
5人中4人はまだ小学生にもなっていないのにそんなスーパーシュートや超速スプリントなど出来る訳がない!
シュートなんてゴールに柔らかくパスして入ればそれでいいのだ。
その後は五人で交代しながら1vs1を何回か繰り返す。
攻撃の時はパッとしないグレッグだが、ディフェンス役に回ると一対一がべらぼうに強い。
サキもオフェンスよりはディフェンスが得意だが、彼の場合はオフェンスが苦手というよりディフェンスが上手い。
グレッグは相手を見て最後まで動かず後の先を取る形で対人守備が凄く強いが、サキは読みが鋭く時にわざとコースを作ってそこに行ったところをインターセプトする。
攻撃が上手なのはおねえちゃんとシンだ。
おねえちゃんはボクと同じくらい足元の技術がしっかりしているので、派手なプレイを難なくこなす。
プレイに華があるのだ。
シンは抜き身の刀の様に一瞬の切れ味で相手を抜いていく。
攻守ともにバランスが取れているのは恐らくボクだろう。
守備の時はグレッグと同じく相手を周囲含めてじっと視線を外さず、じりじり間合いを詰めてプレッシャーをかけ、それで相手がちょっとタッチをずらせてしまうと、その隙を逃さずボールを搔っ攫う。
攻撃時は相手をするディフェンダーに対して角度を付けて佇みダブルタッチで抜いてゆく。
その後はミニゲーム
とはいえ今日は子供の姿はないのでジャージを着ていた大人の一人がゴールキーパーをやって、ハーフコートでオフェンス二人とディフェンス三人でミニゲーム。
攻守を一人ずつ入れ替えていくのだが、攻撃が得意なおねえちゃんとシンが組むより、ボクとシン、ボクとおねえちゃんの組み合わせの方がゴールできる確率が高い。
何故ならボクがボールを持ってディフェンス二人を引き付けている間に空いたスペースにおねえちゃんやシンが飛び込みそこからゴールにつながる。
空いたスペースに綺麗なスルーパスを出すという発想が他の子供達にはまだないからこそのアドバンテージではあるのだが、シンやサキ辺りならあと2年もすれば出来るようになっているかもしれない。
グレッグは一対一のディフェンスは物凄く得意なのだが、他があまり秀でてはいない。
ただ潜在能力はまだかなり高そうなのでどう化けるかボクも楽しみではある。
サキは攻撃も上手いのだが組織で守る意識を持ち始めているのが特徴的だ。
頭が良い子だから、ゾーンプレスの利点を理解できているのかもしれない。
シンは攻撃に偏った子だ、今は一瞬の切れ味で抜いて満足しているが、そこからのプレイの展望やゴールの道筋を考えられるようになれば手が付けられなくなるかもしれない。
おねえちゃん…セラはボクと一緒にサッカーが出来ること自体楽しいらしい、ボクに良い所を見せようと華のあるプレイを連発する。
それでいて基本的な技術が高いから、実はやって良い時にしか派手なプレイをしないという確実性の高さが彼女の奥深さを物語っている。
ボクの場合は自分で言うのもなんだが割と何でもできる。ただ中盤の攻撃的なポジションが一番合っているのではないか? とは思う。
これがもっと先の時代であればサイドバックでボールを取りに来た相手を交わしてゲームを作るという道もあるのだろうが、今の時代にそこまでの戦術的思想を持った指揮官はいない、少なくとも日本にはいないだろう。
感じ入るようにボクらのプレイを眺めていた大人たちの内数人が何かを話し合い、その中から円堂コーチが進み出て、
「おめでとう! 君達全員が新設される売読ジュニア
とのたまう。
「アカデミー!? サッカースクールじゃないんですか?」
ボクは驚いて反駁するように尋ね返す。
スクールとアカデミーじゃ大違いだ!!
サッカースクールはサッカーを習う所だが、アカデミーはプロクラブである売読のプロ選手への登竜門でありサバイバルで行きつけばプロになれる。
どうやら円堂コーチはボクらを相当見込んでくれたようではあるが、それぞれの親御さんが納得するのだろうか?
1980年代にジュニア以下の年代のサッカーアカデミーってあったのでしょうか?
良く分かんないので新設って事で作っちゃいましたがw
昔はこうだったという概要はあっても詳細はあまりネットの資料で見かけないのですよね…