人生をやり直せることになったので、未来の知識でチートします!! ―産まれ直して人生逆転― 作:読人不識
ミッキーが前世で知っていた咲希誇という存在と、今世の咲希誇は全く同じ存在という訳では無いというお話です。
1985年 3月
私は学校にあるおばあ様の執務室である理事長室の扉をノックする。
間を置かず中から
「はい、どなた?」
という冴え渡るようなアルトで誰何の声が返ってくる。
私は拳を強く握り決意を固めると
「希誇です、理事長先生であるおばあ様にお願いがあってまいりました」
硬い声音でそう伝えると、おばあ様は
「よく来てくれたわね。さ、入りなさい」
と入室の許可をくれた。
私が通うこの聖武蔵女学園初等部だけでなく、学園全体の理事長であるおばあ様はとてもお忙しい。
それこそ家族と共に過ごす時間も少なくなるほどに……
理由は売読サッカークラブとの提携を含めた共学化にあるらしい。
『広く、優秀な子供たちに、優れた学びの場を与える』
という、おばあさまの教育理念に反対する理事や役員の人がいるという、そういった人たちとの話し合いにおばあさまは公務以外の時間も取られているらしい。
私がおばあさまと過ごす時間を邪魔する人達なんて、いなくなっちゃえばいいのに…
意地悪な心が頭をもたげるも、私は大好きなおばあ様と久しぶりにお会いできる喜びを嚙み締め大きな扉を開いて一礼してから入室する。
眼鏡をかけて、重厚な執務机の向こうで書類を整理していたであろうおばあ様はこちらを見て
「よく来てくれたわね希誇。以前会えたのは『天才サッカー姉弟に勝負を挑んでくる!』と言って売読サッカークラブに行った日かしら? それで件の天才サッカー姉弟とはお会いできたの?」
揶揄う様な声音で微笑みながら私に声をかけてくれる。
綺麗……
同性の私が見ても惹き込まれるような若々しい美貌。
おばあ様は早くにお母様を出産してらっしゃり、私にとってはおばあ様とはいえまだ四十歳になってるかどうかだったはずだ。
それに加えておばあさまは美しいだけでなく、外見も中身もお若くていらっしゃる。
二十代半ばのお母様と並んでも姉妹にしか見えないほど若々しいのだ…
私は数瞬見惚れるてから、意を新たにし
「売読で件のサッカー少年…美樹生君と出会えました……」
頬を染めながら彼の事を思い出し口にする。
彼の事を思うだけでおまたから何かがじゅんと溢れてしまい、胸がドキドキし、おなかの下の方が疼く。
一時も離れたくないと思うほど、狂おしく彼を求める心を抑えられない。
このままではあの生意気な姉に美樹生君を取られてしまう。
私は相手をしてもらえないかもしれない、そう考えるだけで胸が張り裂けそうなほど苦しく、悲しい気持ちになり涙があふれてくる。
急に泣き出した私を見ておばあ様が
「どうしたの、希誇? その美樹生君に何かされたの?」
慌てて執務机を離れて私に近寄り、宥めるように抱きしめながら、優しくそう問いかける。
私は慌てて
「違うんですおばあ様、美樹生君は凄く優しくて、かっこ良くて、サッカーも私なんかじゃ敵わないほど上手くて、大人の人が夢中になって話を聞くほど凄く頭も良くて、私なんかじゃ振り向いてもらえないほど素敵な男の子なんです…」
しゃくり上げながら、そう彼の魅力を伝えようと、彼を思う心をおばあ様に話す。
本当は私が思っている100倍は凄いのにちっとも伝わらない、自分の言葉の力のなさに絶望しかける。
でもきちんと訳を話しておばあさまに美樹生君の素晴らしさを分かってもらい、彼をこの学校に通えるようにしてもらわなければ…
そう、私はそれをおばあ様にお願いするためにここに来たのだ。
「美樹生君…ミッキーは売読どころか将来世界のサッカーを舞台に活躍できる、凄い男の子なんです。多分ミッキーには何人もの女の子が夢中になる、そういう素敵な男の子なんです。でも今のままじゃ私は彼の近くにいられない……だからおばあ様お願いいたします! 彼を、ミッキーをこの学校へ通えるようにしてくださいっ!! そしたら私は彼との時間を作って、きちんと彼のお嫁さんの一人にしてもらえるよう頑張りますからっ!!」
勢い込んでおばあ様にそう伝える。
そう、本来なら私は兄とともに地元のサッカークラブへ入団する予定だったのだ。
だが数年前から近所に流れる小金丸公園の天才サッカー姉弟の話を聞き、興味を持って見に行き、そしてその華麗なパスサッカーに魅了された。
同時に激しい嫉妬が私の体を駆け巡り、あの子たちには負けたくないと思った。
あの子たちが売読に入団するらしいという話を聞いて、私は地元のサッカー少年団にはいる兄とは分かれ売読のサッカースクールに入ることにした。
何故か途中でアカデミーという区分に入ることになったがそれはどうでもいい。
大事なことは彼等とそしてミッキーと一緒にサッカーをプレイできることなのだ。
おばあ様はしばらく驚いたような表情で私を見つめめていたが
数瞬の後考え込むように表情を改めると、
「孫娘の恋路を頭の固い
おばあ様は悪戯っぽく微笑むと、
「その子ももしかして私と同じタイプなのかもしれないからね、私達がより良く生きる為に協力し合えるのなら、手を取り合いたいものだわ……」
良く分からないことを呟く。
私はオウム返しの様に
「私達…って?」
とつぶやくと、おばあ様はしまったという表情をして
「なんでもないのよ。私達の世界をより良くできる仲間としてミッキー君をお迎えしたいなって事。それに希誇がそこまで惚れ込んじゃうほど素敵な男の子だったら、おばあちゃんもメロメロにされちゃうかもしれないわね」
と揶揄う様な笑顔でそういう、けど私は目が笑っていないことを一瞬で見抜く。
「おばあ様もおじいさまが亡くなってずいぶん経つから、ミッキーのお嫁さんになるなら構わないけど、私の分もミッキーを残してくれないとおばあ様のこと嫌いになっちゃうよ?」
そう注意しておく。
ミッキーは素敵だから多くの女の子が群がるのは仕方ない、でも私の相手もきちんとしてくれるなら、それなら相手が何人いても構わない。
だけど独り占めだけは許さない。
おばあ様に私の内心の決意が伝わったのか、彼女は
「まぁ怖い」
と楽しげに笑うと、
「そんな素敵な男の子はみんなで分け合わないとね」
と私を抱きしめていた腕を放し人差し指でおでこをつんとはじいてそう言い放つ。
そして理事長室の窓辺に向かうと
「本当に住みやすい世の中になったわ…これから先も、ずっとそうだといいんだけど……」
万感の思いを込めたような口調でそう囁くのを私は聞き逃さなかった。
おばあ様はミッキーと知り合いだったのだろうか?
一瞬そういう思いが頭の中をよぎるが、それなら私が会う前にそれを教えてくれるはずだし、私を紹介してくれてたはず。
だからあり得ない。
けどおばあさまは懐かしげな表情でミッキーの名を口にする。
ミッキーの親類が知り合いにいたのかな?
そんなことを考えながら、もう一度おばあさまにお願いして念を押すと私は礼をして退室した。
大事なのは私がミッキーと結ばれることなのだから、他の誰が周りにいても構わないのだ。
そう考えを固めると、彼との甘い未来の生活に思いを馳せ、またおまたを濡らしてしまうのでした。
おばあ様の本名は「咲 希望(さき のぞみ)」と言います。
お母様の名前は「咲 稀有(さき ゆき)」です。
まぁ洒落でつけた名前ですw