照明を反射する白いスタジオの中、奏と美嘉は見つめ合っていた。ただ視線を合わせているだけではない。ビーチボールを左手に下手打ちのサーブの構えをしている奏に対して、美嘉は前傾姿勢になり、素早くレシーブに移ることができる姿勢だ。
(な、何これ……?普通、撮影のビーチバレーってワイワイやるものじゃないの……?)
(『本気でサーブしろ』って言われたけど……ここ、屋内スタジオだし……どういうつもりなのかしら?)
奏と美嘉の絡みに際して悪徳スタッフ陣が要求したのがビーチバレーだった。だが、それはビーチボールを抱えて微笑むだけの穏当なものではなく、“2人で本気でビーチボールを打ち合え”という意味不明なものだった。決して短くないアイドル活動の中でも未経験の屋内スタジオでの本気のビーチバレー。機材を壊しはしないか、お互いに怪我をするのではないか……どうすべきか悩む2人を尻目に、カメラマンが狙っていたのは前傾姿勢でグイッと突き出された美嘉のヒップだった!
(やっぱビーチバレーの“待ち”の姿勢ってサイコー!女のケツを眺めるためにあるようなスポーツだぜ!)
(尻肉がぱっくり割れてアナルまで剥き出しじゃん♡)
(あちゃ〜、ケツの穴も苦そうなキャラメル色♡乳首もアナルも色素沈着してちゃ、もうカリスマギャル名乗っちゃダメだよ♡)
(はははっ、いつボールが来るかって緊張してアナルがヒクヒクしてら!)
乳首に続いて暴かれてしまった、美嘉の色素溜まり。美しく引き締まった小尻にもかかわらず、画竜点睛たるアナルは小汚いキャラメル色なのだ。しかし、このカリスマにあるまじき庶民的なアナルは、美嘉自身にとってはコンプレックスではなかった。着替えるとき、入浴するとき、常に目に入る乳首……女性の象徴たる乳房における最大のアクセントである乳首はともかく、自分のアナルは手鏡を使ってVIOラインを処理するときにしか目にしない。その上、その手の経験の薄いウブな美嘉にとって、アナルが性的に注目される部分だという認識があまりないのである。つまり、ヒップを突き出して特殊カメラの前にアナルを無防備に曝け出し、その色や動きを性的に嘲られているなどと、美嘉には思いもよらないのだった。
「美嘉、ボールいくわよ!」
「うん!」
2人ともダンスで鍛えているだけあって運動能力は良好。奏のサーブから始まったラリーは決して激しくはないものの、危なげなく続いている。しかし、特殊カメラを通して見た光景はあまりにも危険なものだった。全裸ビーチバレー……お笑い芸人や手段を問わず名を売ろうとするセクシータレントしか参加しないような汚れ仕事に、あの速水奏と城ヶ崎美嘉が興じているのだから……。
(スッゲー、ビーチボールが“3つ”‼︎トスに合わせておっぱいがばるんばるん揺れる♡)
(レシーブも見ろよ!両腕におっぱいが挟まれてすごい谷間だ!ボールを受けるたびに衝撃でプルプルしてるぞ♡)
(ボールに夢中で股が開いてるぞ〜♡マン肉から“具”が見えちゃってる♡)
「あっ、奏、ごめん!」
「えっ……きゃっ……!」
いつまでも続きそうだったラリーは唐突に終わりを告げた。美嘉のトスが高く上がりすぎ、奏の頭上を超えて背後に落ちたのだ。哀れ、奏はレシーブしようとして大きく尻もちをついてしまった!
(うわっ、奏ちゃん、尻もちでM字開脚♡)
(アワビマンコ丸出し♡こりゃ高値がつくぞ〜〜!)
(マン肉、クリ皮、ビラビラ……パーツが全部わかる♡)
(おいっ、あの影って膣口じゃね?奏ちゃんの赤ちゃん出るところじゃね⁉︎)
(この開脚おまんこでモザイクなしとかキッツ〜♡)
「ごめんっ、奏!」
「ふふっ、良いのよ、この程度」
両手をバシッと合わせて奏に尻もちをつかせてしまったことを謝る美嘉。しかし実際のところ、奏は美嘉のノーコンのせいで、大人のグロさ満点のアワビマンコを豪快にご開帳してしまい、あまつさえ女にとっての最深部である膣口まで晒してしまったのだ。いくら戦友たる『LiPPS』メンバーの行いとはいえ、この事実を知ったら奏は美嘉を恨まずにいられるだろうか……。
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その後も2人はありきたりでありながらもどこかおかしいポーズ要求に困惑し続けることになった。
「線香花火やりましょう!」
「え゛っ、ここ火気厳禁ですよ⁉︎」
「火花部分はCGでつけるんで、線香花火をつまんでしゃがんでくれるだけでOKです!」
こうして2人は向かい合ってしゃがみ込み、火のついていないただのヒモ同然の線香花火をつまんで微笑み合うことになった。
(美少女のうんこ座り、オツだね〜!夏だね〜!)
(前からはマンコ、後ろからはアナルが見える♡)
(2人とも線香花火だって言われなきゃ普段はこんなポーズしないよな!)
カメラマンはしゃがみ込む奏と美嘉の周囲を回ってシャッターを切りまくる。全裸で線香花火をする姿は想像しているよりも滑稽で扇情的だった。美嘉の幼いパイパンマンコと奏の海苔付きアワビマンコ……美嘉の小粒なキャラメルアナルと奏の吸盤赤ピンクアナル……2人のプライベートゾーンの対比を強調するショットだ!
(うっ……ビーチバレーしてすぐだから脚が震えてきちゃった……)
アクティビティなら自分に一日の長がある、と張り切った代償か、美嘉は足腰に疲れを感じていた。つま先立ちでしゃがむ姿勢が意外に辛く、脚がプルプルと震える……。
(おっ、美嘉ちゃん、脚が震えてる……アナルもヒクヒクしてる♡)
(ははっ、バランスが崩れそうになるとアナルがキューッと窄まって、安定したら緩むんだな。人体の神秘♡)
一方で、周囲には余裕の態度を見せていたとはいえ、スタジオの硬い床に強かに尻もちをついた奏は、密かに痛みを堪えていた。
(……結構お尻が痛い……あんなに派手に転んだの、いつぶりかしら……)
お尻の付け根、尾骨のあたりが時折ズキッと痛む……。
(奏ちゃん……余裕ぶってたけど、お尻赤くなってるじゃん!痛そ〜〜……)
(軽くお尻をゆすって痛みを逃してるね♡あの速水奏が尻もちついてお尻フリフリかよ♡)
実に静謐なポーズだったが、2人が感じている苦痛とスタッフ陣が手に入れた撮れ高は大きいものだった。
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2人が最後に要求されたポーズは一見すると穏当なものだった。
「それじゃ、最後に抱き合う感じで向かい合ってくださーい……あっ、顔はカメラ目線でお願いしまーす!」
(ふぅ……これで最後……)
(最後は結構フツー、かな?)
仲睦まじさとセクシーさが入り混じるポーズは2人の十八番だった。カメラに向かって左に立った奏は右腕を美嘉の背中に回し、右に立った美嘉は左腕を奏の背中に回し、もう片方の手はお互いに恋人繋ぎをする。吐息を漏らすように口を半開きにし、少し上から見下すような目つきをカメラに向ける美嘉。対して、奏はアルカイックな微笑みのまま、カメラの向こうにいるファンの心を見透かすような視線を送る。怪しげな現場で何度も動揺させられても、決めるべきタイミングでばっちり決めることができる点が、彼女たち2人の超一流たる所以だった。日本中の男性ファンを沸かせ、女性ファンに羨望のため息をつかせるワンショット……だが、ある意味で誰よりも彼女たちに魅了されなければならないスタッフ陣は、薄暗い嘲笑を隠せなかった。
(やった〜〜っ、残念乳首揃い踏み〜〜♡)
(2人とも美巨乳なのに乳首だけガッカリすぎでしょ♡)
(美嘉ちゃん、右乳首がシワシワしょんぼりだよ!もっとシャキッとさせて!)
(奏ちゃんは乳首がはしたなくゴリゴリだよ!そんなんじゃ美嘉ちゃんの右乳首が怖がっちゃうよ♡)
悪徳スタッフたちにとっては、彼女たちが“決めれば決めるほど”おかしくてたまらなかった。特殊カメラを通した光景を見てしまうと仕方のないことだった。超一流アイドルの完璧なキメ顔のすぐ下で、二流どころか三流の残念乳首が控えているのだから……。
おそらく無意識だったのだろうが、美嘉がカメラに向かって右に立ってしまったのは手痛い誤りだった。ぷくっとハリのある左乳首の方ではなく、しょんぼりと萎びて先っぽにシワのある右乳首がカメラの正面を向いてしまったのだ。中学生の一時期、右乳首のシワが気になるあまり、自宅の洗面所で密かに保湿クリームを塗りこんでマッサージをしたり、風呂場でつねったりひっぱったりして乳首を矯正しようとした過去すらある美嘉……結局、右乳首は一時的に勃起をして大きくハリを取り戻してもすぐに萎んでしまうだけだったのだが、そんなコンプレックス乳首をキメ顔で晒しているのはカリスマギャルとしてカッコ悪すぎる振る舞いだった。
一方、美嘉の萎んだ右乳首のせいで悪目立ちしてしまったのが奏のデカ乳首だった。太く、長い上にシャンパンのコルクのように先太りしている奏の乳首は、美嘉の右乳首に比べてご立派すぎだった。第二次性徴が始まった頃、急速に肥大化した乳首を見て、奏は母親に相談をした。優しい母は“すぐにおっぱいが大きくなるから目立たなくなるわ”と諭したが、不運なことに、奏の乳首は乳房と一緒にどんどん大きく育っていき、結局、巨乳であるにしても存在感のありすぎる乳首にまで成長してしまった。奏がどれだけミステリアスに決めても、そのデカ乳首を見れば彼女の女の子の悩みが1発でバレてしまうのだった。
「お二人とも、もうちょっと身体を近づけてください!」
「は、はぁ……」
「こうですか?」
「もっと、もっとです。お互いに抱き合うような感じでお願いします!」
(そ、そんな……奏とおっぱいくっついちゃう……)
(胸を擦り合わせるなんて、そんな……どういうつもり?)
カメラマンからの不可解な要求に、奏と美嘉は顔を見合わせる。そしてほぼ同時に思ったのだ。
((これで撮影が終わるなら、やっちゃおう……))
2人はさらに身体を寄せ合った。すると当然のように、奏と美嘉のおっぱいがぶつかり合い、むにゅっと形を歪ませた!
(す、すげぇ迫力……!美巨乳でおっぱい相撲♡)
(大きさだとやっぱり奏ちゃんだな……!86cmのモチモチ巨乳が美嘉ちゃんのおっぱいを飲み込みそうだ♡)
(でもハリで言えば美嘉ちゃんだよ!80cmのプリプリおっぱいが奏ちゃんの美巨乳を跳ね返してる♡)
(は、挟まりてぇ〜〜!指1本でいいから突っ込ませてくれ〜〜‼︎)
「もっと身体をぶつけ合う感じで!擦り合う感じでも良いですよ!」
カシャカシャカシャカシャッ!
2人の胸がぶつかり合い、弾き合い、また寄せ合うたびにカメラが連射される。2人の胸がこすり合わされるたびに無邪気なほどに食いつくカメラに、2人はドン引きだった。
(うわっ……おっぱいがぶつかるたびにめっちゃ撮ってくる……キモ……)
(はぁ……そんなに女の胸が好きなの……?恥じらいってものがないのかしら)
あまりの惨状に2人は表情を作ることを忘れ、嫌悪と侮蔑が入り混じる視線をカメラに向けてしまっていた。本来ならばNGカットのところだが、自らの悪性を知り尽くしている悪徳スタジオの面々は、彼女たちの最大級の軽蔑の表情すら楽しんでいた。
(あ〜〜……いつも明るくて裏方スタッフへの人当たりも最高なはずの美嘉ちゃんのあの目つき……逆にギャルっぽくて良い〜〜♡)
(大物女優レベルの貫禄と礼儀正しさのある奏ちゃんもすごいまなざし……汚いものを見る目つき!年相応の顔になったね♡)
「お疲れのところ申し訳ありませーん!最後の1枚、最高の笑顔でお願いしまーす!」
(はっ……!いけないいけない、いくらわけわかんないスタッフでも、お仕事は完璧にこなさなきゃ……それがカリスマ……!)
(しっかりしなさい、奏……今の私は単なるオンナじゃない、アイドルなのよ……)
奏と美嘉は互いの腕で身体を引き寄せ合い、これまでにないほど胸を合わせた。互いの吐息を感じるほどに顔を寄せ、互いの残念乳首が互いの乳房に埋まるほど胸を寄せ、2人は自らの信じる最高の笑顔を作る。2人の間には数え切れないほどの楽しい思い出があった。アイドルとして、『LiPPS』として、奏と美嘉個人として……2人は言葉を交わすこともなく、それでいて示し合わせたように、年末のドームライブを成功させたときの最高潮の瞬間を思い出し、笑顔を作った!
(さすが超一流アイドル!おっぱい相撲しながら最高の作り笑い、いただきました〜〜♡)
こうして奏と美嘉にとって不可解な水着グラビア撮影は終了した。
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“この前の水着グラビア、評判良いみたいだよ”……
事務所関係者や同僚アイドルからのその言葉に、奏は釈然としないものを感じながらも、ほっと胸を撫で下ろしていた。
(あのスタッフ陣……明らかに私情混じりだったけど、やることはやってくれたのね……)
仕事はできるが、私人としては受け入れ難い……芸能業界には、ときにそういう人物もいる。奏は1つの仕事をやり終えたということにして、あの撮影の記憶を忘れ去ろうとしていた。
奏は事務所でファンレターを読んでいた。これも仕事のうちだが、あの撮影とは正反対に、アイドルとして最も充実感のある仕事でもある。老若男女のファンから送られてくる応援、共感、賞賛のメッセージは、奏に勇気と力を与えてくれる。だが、その日のファンレターチェックには不思議なものが混じっていた。
(封筒の中に何か入ってる……?)
厚紙の封筒の中に感じるゴロゴロとした手触り……一瞬身の危険を覚えた奏だったが、事務所側で中身のチェックは行われており、危険物が入っていることはない。実際、封筒の糊付けは1度剥がされた形跡がある。奏が封筒を開くと、果たして中に入っていたのは2つのシャンパンのコルクだった。
(何、これ……?)
奏は“ファンレターにコルクが入っている”というミステリじみた状況に困惑していた。コルクと一緒に入っていた2つ折りの手紙には、ごく短い文章が記されていた。
“貴方に似合うと思って”
(似合う……?コルクが、私に……?)
奏にはまったく意味がわからなかった。大人っぽいということだろうか?未成年にシャンパンが似合うとはおかしなことだし、もしそう思ったのならシャンパン自体を送れば良いのでは……まぁ、何らかのイベントでもない限り、ファンからのシャンパンなど受け取れないが。
(…………まさか、ね)
チクリとトゲが刺さったように奏の胸が痛む。とても悲しいことだが、このシャンパンのコルクに“お似合い”のところがお前にはあるではないか、と奏の皮肉屋な部分が自身に告げたのだ。とにかく、意味不明であるにしても、これはこれでファンの大切な想いなのだから……と、奏は2つのコルクをまた封筒に戻し、次のファンレターのチェックに移るのだった……。
(終わり)