は見ている。
古びた廃工場の一室、そこで1人の男が机に突っ伏している。男の頭にはワイヤーが数本繋がれたヘルメットが被らされており、目元まで覆われているため口元以外は見えない。同じようにワイヤーの着いたベストを着せてあり、それらのワイヤーが男の後方で床を張って伸びており、それを辿れば大型の粉砕機に繋がっていた。もちろんどれも簡単には外れないように細工が施されている。
そこで男は目を覚ました。飛び起きたように上半身を起こし、周りを見渡す。自分の置かれた状態に理解が追いついていない様子だ。
大声をあげ助けを求めているが、その声は誰にも届かない…
彼はようやく目の前にあったテーププレイヤーに気付き、それを再生した。
『やあ、……ゲームをしよう。君の過去には同情する。だが、自らの価値を高めたいがために他人の命を測るなんてことは誰にも許されてはいないことだ。君はその身勝手な自己承認欲求のために、その指で多くの命に触れてきた。自分勝手な理由でベタベタと…。そんな君が、今度は測られる番になったのだ。君の身体に繋げられたワイヤーは、後方にある粉砕機に繋がっている。あと2分もすれば君の身体は測りやすくなるだろう。助かりたければ君がその指先で測ってきた命を文字通り手放すのだ。君の命と釣り合うかどうかは君次第だ…』
聞き終わると同時に粉砕機が起動し、ワイヤーが引っ張られていく。長さ的にまだ余裕はあるからか、男はヘルメットとベストを外そうともがき始める。しかし簡単には外れない。そのことに気づいた男は慌ててでアーミーナイフを握る。それでベストやワイヤーを切ろうとするも、結果は変わらない。
震える手を見詰めた男は右手でナイフを持ち、左手の小指に刃を添える。
そして小指を一気に切り落とした…
大きく悲鳴をあげるが、それで終わるわけは無い。そして男は意を決して薬指、中指と切り落としていった。切り落とす際に歯を強く食いしばっているせいか、その口からは血が溢れてきた。だがその執念は素晴らしく、遂に左手の親指をも切り落とした。だが、それが失敗だった…
男はそこで気付く。左手の指を切り落としたまでは良かったが、それでは数が足りない。右手の指を切り落とさないと行けないのだが、左手の指を全て切り落としたのでナイフを握れない。
男は絶望を感じているのだろう、指を全て切り落とした左手を見つめて呆然としていると、後ろに身体を引っ張られていった。遂にワイヤーにテンションがかかり、粉砕機へ向けて床を引きずられていく。その衝撃で持っていたナイフも落とし、既に手の届かない所へ行ってしまう。
必死に手を伸ばすがもう届かない、しがみつけるようなところもない、残り30秒。このまま彼は“終わる”だろう…。
男の断末魔にも似た悲鳴が響き渡る。
引き摺られていく彼の跡には赤い血が細く伸びているだけだった…