※この作品はR-18です。

推しのSAW   作:∞色

10 / 11
黒川あかね

 

 

 

 

 

 

わたしは夢を見た。

夢の中ではアクアくんがカミキヒカルに復讐を果たし、そのまま死んでしまった。黒い海の底に沈んで、孤独に死んでいく…そんな夢……

わたしはアクアくんが望むならなんでも出来た。なんにでもなれた。でも、アクアくんはわたしにルビーちゃんを護る役を渡し、わたしたちの前から姿を消した。

目が覚めた時、わたしは悲しかった。そして思った。

 

 

 

『この世界でもアクアくんは同じことをする…どうにかしないと……』

 

 

 

だからわたしは、準備を始めた。アクアくんよりも先にカミキヒカルを消してしまおうと…

これはただの逆恨み。別の世界でアクアくんを死なせるきっかけとなったカミキヒカルへの個人的な八つ当たりだ。

色々と用意をし、カミキヒカルのことを調べあげ接触、彼はわたしの狙い通りに簡単にわたしに狙いを定めた。そして彼にわたしの“予定”をそれとなく伝え、現場に現れた彼の不意をついて拉致した。

 

そしてあのゲームを仕掛けた。

 

目的は彼の“更正”だった。自らの死を目前に、何を犠牲にしても生き残る事を選び、命の尊さを学ばせる。そして彼を自首させ、アクアくんの復讐を終わらせること…

その後のアクアくんは死を望まず、ルビーちゃんの輝ける未来を見届けて幸せになれることを信じて……

 

でもカミキヒカルは変わらなかった。

 

そしてアクアくんも…

 

より酷くなってしまったアクアくん。カミキヒカルの死をほのめかしたニュースに、行くあての無くなった復讐心を苛立ちに変え、周りの人達にぶつけ始めた。それどころか、溢れんばかりの負の感情に苛まれた彼は、自らの命を終わらせるという暴挙に出る。しかもそこは、彼がわたしを助けてくれたあの場所で…

 

……許せない

 

わたしを助けてくれたあの場所で、2人の関係を進め、打止めたあの場所で、彼は自分の死に場所に選んだのだ。到底許せるわけが無い。

 

だから、わたしはこの計画を思い付いた。

何を犠牲にしてもアクアくんが生き残る為の“ゲーム”を……

そこにアクアくんの意思は関係ない。わたしたちの意志を無視して死のうとするアクアくんの意思なんか尊重する必要は無い…

周りの人を救えなかった哀れな彼の死を、誰が望むだろう…

家族と身近な友人たちを謎のシリアルキラーによって殺され、精神に異常をきたした彼は、周りや彼を保護した人達から常に監視され、死のうとしても周りがそれを許さない、そんな生活を送ることになる…

 

だけど、救いも用意した。そのためのゲーム。彼の行動次第で助かる命があり、その助けた命を支えに彼は生き続けるといった、ゲームをクリアした時の報酬だ。

だからこそ、冷静に分析すればクリア出来るゲームにしておいた。

最初のゲームは“鍵は1つ、鍵穴は2つ”、“必要な方を選ぶ”ゲーム。

言葉とは不思議なもので、人間は言い方に趣を置く生き物だ。だからこそ、大事な選択をする場面で“必要な方”という言葉に“どちらか一方”という固定概念が生まれてしまう。たまに子供のわがままで見る“両方欲しい”は通用しないと無意識に捉えてしまうだ。

そう、このゲームでは“両方を選んでもいい”が正解。けど、彼は制限時間が30秒という短さと、2人に迫る死、電気が流れるトラップに阻まれ、2人とも助けられなかった。

 

続くかなちゃんとMEMちゃんのゲーム。途中でアクアは無意識に理解していたみたいだけど、あのゲームで作動していたトラップは規則性を持っていた。“悪意と羨望のサイクル”だ。あのトラップは30秒で各トラップが1度ずつ作動、それが1サイクルで動くことになっている。それを最初の1分で気づければ、2人を安全に出口まで導く順番を割り出して脱出させることが可能だった。

結局は、アクアくんはそこに気付かずに2人を進め、MEMちゃんは自ら生を諦め、かなちゃんはアクアくんの“油断”により助からなかった。“光指すその先まで”は“蛍光灯に照らされた扉の先まで”だから、扉から外に出さないと助からないことにアクアくんは迷路を抜けきったことによる安堵で気付かなかった。

 

それを自覚してショックだったんだとは思うけど、なかなかわたしのいる部屋に来てくれなかった。だからこそわたしは悲鳴をあげた。彼が来てくれないと始まらないから…

モチーフはわたしの見た夢だった。海に沈んでいくアクアくん。その苦しみから解放させるために考えついたゲームだった。我ながら上手いことかけたと思う。わたしの想いを知りながらも利用し、アクアくんのためならなんでもしようと…アクアに囚われたわたしをアクアくん自身がわたしと協力してお互いを水責めから解放するといった内容だ。

両者均等に痛み分けで解放されるために、アクアくんのだけでなくわたしのロープにも糸鋸を巻き付けた。そうでないとフェアでは無い。ただ、わたしの逆さ吊りになっているために溺れるのが早くなる点については、アクアくん側はアクアくんが立っている分重いというところで差し引かせてもらっている。

そして、ここでわたしは“私”を演じた。黒川あかねなら、アクアくんを助けるために簡単に命を差し出す。だからこそ、1度水責めにあって苦しんでいるアクアくんを見て、“絶対に助けなきゃ”と思いロープを引き続けるだろう。そして意識が無くなったところでアクアくんが自らの方に水を貯め、均等を保って開放された。

後はこの先だ。アクアくんとわたしを隔てたパーテーションを動かすためのリモコンがそれぞれの壁に取り付けられていた。アクアくんはそれに気付かず、力無く倒れているわたしの傍に来れることも無く、ただただ立ち尽くしていた。もしアクアくんがリモコンに気付き、わたしの元に来てくれていたら、今度こそわたしはアクアくんの“人”になっていただろうな…

 

ルビーちゃんのゲームは…アクアくんにとっては苦痛でしかない。なにせ、“何も出来ない”のだから。

あのゲームはルビーちゃんに全てを委ねるしかなく、アクアくんの声も届かず、思いも届かない。そのため、ルビーちゃんが選んだ結果が全てになる。

ルビーちゃんはアクアくんを助ける道を選び、自らが助かる道は簡単に捨て去った。その結果をアクアくんはただただ受け入れるしかない…

 

 

 

ごめんね、アクアくん…

 

 

 

でもね、これはアクアくんがしたことなんだよ?

人を遠ざけ、生きる道を捨てて、居なくなろうとしたアクアくんの罪…

その取り残されるという苦しみを知ったアクアくんに、最後のゲームをやってもらう時が来た…

 

 

 

 

 

 

 

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