悪徳プロデューサーへの転生 ~バッドエンドを回避するため枕営業させていた彼女たちに優しくしていたら、いつの間にか好意を寄せられてました ※ただし枕営業は辞めません 作:柊咲
よければ!
「──はあっ、はあっ、んん……ッ!」
──これは、夢か?
目を開けると絶世の美女が俺の上に跨り、腰を激しく動かして喘いでいた。
ギシギシと鳴らすベッド。
もわっとした部屋中に蔓延する熱。
そして、ペニスを包む温かく気持ちいいマンコの感触。
夢には思えない。
現実のような、そんな感覚だ。
だけど、
「あ、んんっ……早く、イってよ!」
目の前で腰を振る美女を俺は知らない。
というより彼女、セックスしてるのになんで俺のことこんなに睨んでくるんだ? ってぐらい、美人が台無しなほど怖い。
Fカップはあるだろう豊満な乳房は激しく揺れ、胸元まで伸ばした茶色の巻き髪が乱れる。
切れ長で大人っぽい目。その左目の下の黒子が、彼女の色香を際立たせる。
身長は160ほどで胸とお尻以外は細身。脚なんかスラッとしていて、まるでモデルのようだった。
ああ、やっぱり夢だ。
こんな美人とセックスできるわけがない。
そんなことを思っていると、我慢できず勝手に射精してしまっていた。
「ぐッ!」
「あ、はあ、ぁ……あ、ああっ♡」
射精したとき一瞬だけ色っぽい顔をしたけど、射精が終わるとすぐにさっきの目に戻ってしまった。
まるで俺のことを、汚物でも見るかのような目だ。
しかも射精が終わると俺から離れ、さっさと自分の服を着始めた。
ピロートークも無し。すぐに萎えてしまったペニスと、大量の精液が詰まったコンドームがどこか虚しい。
せっかくの夢なのに、なんだか悲しい気分になった……。
って、
「あれ、俺いつの間にこんな太ったんだ?」
顔だけ上げてペニスを見ようとしても見えないほど、ぽっこりとしたお腹が邪魔をしていた。
それに声も、いつもより低い。
どういうことだと起き上がると、着替え終わった名も知らない彼女はホテルの部屋の扉に手をかける。
「……今度は約束、ちゃんと守ってくださいよ」
「え、約束?」
「あなたが言ったんじゃない! 今日ここで、あなたとマクラしたら、今度はちゃんとしたモデルの仕事を回してくれるって!」
さっきよりも怒りを滲ませた表情で迫られ、俺は「ああ、うんうん、わかってるわかってる」と咄嗟に嘘を付いた。
そして去り際。
彼女が泣いているのが見えた。
「もし約束破ったら、絶対に殺してやるから……」
捨て台詞のように、それだけを言い残して美女は去って行ってしまった。
いや、なんだこの夢。
というよりリアルすぎだろ、めちゃくちゃ気持ちよかったぞ。
俺は立ち上がり洗面台へ向かう。
やっぱり俺、いつの間にかめっちゃ太っている。
「他人の人生を堪能できる夢か、珍しいな」
初めての体験に笑みがこぼれた。
だが洗面台に到着して鏡を見て絶句した。
「おい、こいつ……」
他人だ。
他人なんだけど、こいつの顔を見たことがある。
しかもテレビでだ。たしかあれは、そうニュース番組だ。
「所属事務所のアイドルとかモデルとか声優とかを食いものにして逮捕された、悪徳プロデューサーの
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──蛇口蜂馬、37歳。
大手芸能事務所の社長兼プロデューサーだ。
180ないぐらいの身長で、昔は筋肉質で強面の男だったらしいが、今では高身長が台無しなほど丸々と太っている。
昔はやり手のプロデューサーと評判だったが、茶色に金のメッシュを入れた髪に、派手な服にアクセサリーを付け、ヤクザっぽい見た目の為、ここ数年では良い噂は聞かず、悪い噂しか聞かなくなった。
そんな悪い噂の一つが、担当した女性を喰い漁る悪徳プロデューサーだということ。
しかもそのほとんどが、仕事をエサにして枕営業をさせていたとか。
ただこれに関しては噂止まりで、今まで証拠というのが出てこなかった。
だが年数が経てば。
多くの女を喰っていれば。
当然ながらいつか綻びが生まれる。
枕営業させていたとある女性が警察に提出した音声データや映像によって、蛇口蜂馬は逮捕された。
「そんな蛇口蜂馬に転生した、俺が転生したってことか?」
ラブホテルのお風呂に一人浸かりながら俺は考える。
ぶよぶよの自分の頬をつねっても夢が覚めない。であればこれは夢ではない、そう結論付けるしかない。
まあ、非現実的だけど。
「一度寝て、目が覚めたら元に戻ってるとかだったらいいんだけどな」
風呂から上がり、ハンガーにかけられていたスーツを着る。
手持ちは財布とスマホだけ。スマホを見て真っ先に目に止まったのは、大量に残された連絡先だった。
「さすが元凄腕プロデューサー。悪徳だが、人脈は凄いんだな」
番組のプロデューサーや有名会社の社長。それにテレビでよく見た有名人の連絡先だって載ってる。
「うわ……」
ふと気になって、スマホに入っていた銀行口座のアプリを見てしまった。
一、十、百……とんでもない桁の貯金が口座に入っていた。俺の年収の何十倍だよって額だ。
「この転生、意外と悪くないかもしれないな」
人脈はある。
お金もある。
地位も名誉も昔はあった。
顔も、ダイエットしたら別に悪くない。
これまでの自分の人生、そこまでいい人生を送ってきたわけじゃない。
どこにでもいるようなサラリーマンで、趣味といった趣味はない、ああ、体を動かすことは好きだったかな。
これぐらいしかパッと出てこない。
そんな平凡な人生だったから、社長でありプロデューサーで金持ちのこいつに転生したのは、まるでゲームみたいな感覚で少しわくわくする。
だが、それも今はの話だ。
「いつか逮捕されるんだよな、こいつ」
いつ逮捕されたかはっきりとは思い出せないけど、たしか逮捕される。しかも枕営業を迫った女性にリークされてとかだったはずだ。
今から改心すればいいのでは?
いや、たぶんだけどもう遅いだろう。
「さっきセックスしてた美女って、枕営業の相手だよな」
マクラ、って言ってたし。
既に地獄への歯車は動き出してしまっているかもしれない。とすれば、ここから改心してももう遅いだろう。
それでもこのまま何もしなければ、俺──蛇口蜂馬の行きつく先はバッドエンドだ。
「だったら、リークする可能性のある彼女に優しく──それとちゃんとしたモデルの仕事を提供したらいいんじゃないのか?」
そうすれば、もし彼女がリークした本人だったのなら、蛇口蜂馬が逮捕される可能性はなくなるのではないか。
そしたら真っ当で、悠々自適な生活を送れるかもしれない。