悪徳プロデューサーへの転生 ~バッドエンドを回避するため枕営業させていた彼女たちに優しくしていたら、いつの間にか好意を寄せられてました ※ただし枕営業は辞めません 作:柊咲
それから真っ直ぐタクシーで京香さんの自宅に向かった。
娘の桜子は既に帰ってきていた。
悩んだが、彼女にさっき起きたことを説明した。
父親の変わり果てた現実を知って落ち込むのではないか、そう心配したんだが、
「そうですか。別に平気です。あの人のこと、前からそういう人だって知ってましたので」
話を聞いた彼女は落ち着いていた。
前からギャンブル癖があったことも、借金を擦り付けて逃げたことも、彼女はなんとなくそうなんじゃないかとわかっていたそうだ。
もしかしたら接触してくるかもしれないことを話すと「わかりました、気を付けます」と。
高校生にしては落ち着きすぎているように感じた。
というよりどこか冷めた感じといった方が正しいかもしれない。
だけど京香さんに「ごめん、ママ」と謝った彼女は涙を流していた。
借金のこと、養成学校の支払いが大変なこと、知っていたのに助けられなかったことへの謝罪だった。
もしもそのことを話したり、声優になるのを辞めると言ったら、それこそ母親を苦しませると思って、気付いていないフリをしたのだそうだ。
自分がすべきことは少しでも早く声優として仕事を貰って、お金を稼いで、母親を楽にすることだと。
母親の優しい性格を理解しているからこその考えだろう。
「社長、ママを……母を助けてくださってありがとうございます。それから母のお仕事まで紹介してくださって、本当にありがとうございます」
それから、母親を助けたことについて彼女に感謝された。
最初こそ落ち着いていたり冷めていたりと感じたが、やっぱり親子なのだなと、京香さんに似て真面目なんだなと思った。
そしてこれからのことを話していると、
「もしあの人が家に来たら危ないので、私は紗奈ちゃんの家に泊まります」
そうか、そういうことも考えなければいけないのか。
京香さんはどうすべきか。そのことを悩んでいると、
「ママのこと、お願いしてもいいですか?」
そう頼まれた。
♦
家に戻ってくると、ソファーに腰掛ける。
「旦那様、コーヒー飲まれますか?」
「ああ、ありがとうございます」
外がすっかり暗くなった頃。
彼女の作ってくれた料理を食べ終え、息を吐く。
桜子に頼まれ、京香さんを家に泊めることになった。
慌てた京香さんは自分も友達の家に行くと言っていたが、桜子が「ママにそんな友達いないでしょ」と言われ、しゅんとしていた。
そして京香さんが家を出るとき、桜子に「母のこと、よろしくお願いします」ともう一度頼まれた。
それが初めて見せてくれた桜子の笑顔だった気がする。
「どうしましたか、旦那様」
「いえ、なんでもありません」
ボーっとしていたら、コーヒーカップを持った京香さんに声をかけられた。
「改めてになりますが、助けていただいてありがとうございました」
「いえ、気にしないでください」
「助けに来てくださったとき、とても嬉しかったです」
頬を赤らめながら言われ、俺は顔を背ける。
「そう、ですか……。まあ、一発殴ってやったらもっとかっこ良かったんですけどね」
転生前もそうだけど、殴り合いの喧嘩なんて一度もしたことがなかった。だから平和的解決というか、あんな方法を取ることしかできなかった。
まるで逃げたみたいでかっこ悪い。
一発ぎゃふんとお見舞いしてたら、男としてかっこ良かったんだろうな。
「……そんなことないですよ。あの時の旦那様、とてもかっこ良かったです」
「え……?」
「私の肩を抱いて連れ去ってくれた旦那様、とてもかっこ良かったです」
そう言われてドキッとした。
京香さんの顔が見れない。
彼女もこちらを見ず、マグカップに視線を落としている。
「旦那様、そのままこちらを見ずに話を聞いてもらえますか?」
「え、はい……」
おかしな質問だと思った。
だけどそう聞かれて、はいと答えるしかない。
そして五秒ぐらい沈黙が生まれてから、彼女は震えた声で話し出す。
「実は私──好きな方にご奉仕するのが大好きなんです」
「は、いッ!?」
一切予想していなかった告白に、咄嗟に顔を京香さんに向けてしまった。
「こ、こっちを見ないでください!」
「す、すみません!」
顔を真っ赤にさせ、涙目の彼女に怒られた。
いや、奉仕するのが大好きってどういうことだ、それは家政婦としての奉仕ってことか?
でもそんなこと、顔を真っ赤にしながら言わないだろ。
恥ずかしがってるということは、性的な意味なんじゃないのか。
いやいや、どっちの意味かわからないから下手なことは言えない。
話の続きを待つことにした。
「私は、好きな男性が嬉しそうにしてくれると、心が満たされるんです」
「は、はい……」
「命令されるのも大好きです。どんな命令だって、望むのであればしてあげたくなるんです」
「……」
「もしも望むのであれば、手でも、お口でも、お、おマンコでも……し、したことないですけど、お尻の穴でだって、ご奉仕いたします」
京香さんの顔は見えない。
ただ部屋中に満ちた緊張感と、吐息混じりの声が、俺を昂らせる。
「私には娘がいます。もう36と若くもありません。他の若い女の子と比べたら、がっかりされるかもしれません。それでも一生懸命、心を込めて──旦那様のことをご奉仕いたします」
「……京香、さん?」
「結婚は望みません。他に女がいても構いません。ただ、ご奉仕させていただきたいんです。旦那様に、喜んでいただきたいんです……」
太股に手を乗せられ、内ももを優しく撫でられる。
「私と”愛人契約”……結んでいただけませんか、旦那様」