悪徳プロデューサーへの転生 ~バッドエンドを回避するため枕営業させていた彼女たちに優しくしていたら、いつの間にか好意を寄せられてました ※ただし枕営業は辞めません 作:柊咲
「律儀に契約書を作ってくるとはな」
「社長が本当に守ってくださるか心配なので」
「なるほど」
次の日。
会社に来るなり、社長室に入ってきた眞由美はテーブルに何枚かの契約書を並べる。
しっかりと作られた契約書。
無駄のない文章。抜けのない必要事項。クソが付くほど真面目な契約書に、彼女の性格が現れていた。
だからこそ秘書として優秀なのだが。
俺はそんな契約書にサインをしながら問いかける。
「旦那とは帰って話したのか?」
「はい」
「どんな会話をしたんだ?」
「それを社長に話さなければいけないと、契約書に記載してませんが」
「期日である一ヶ月間、眞由美は社長の命令を絶対順守する。命令だ、話せ」
「……謝られました。それと、決してやましいことはしていないと何度も言われました」
「信じるのか?」
目線だけを向けて問うと、眞由美は一瞬だけ間を空けてから「ええ、もちろん」と答えた。
「そうか。まあ、お前がそれでいいなら俺は何も言わない」
「はい」
「さて、これで契約書は全部か?」
全ての契約書に目を通し、サインをする。
それを眞由美に渡すと、彼女はサインする項目を確認して無表情のまま頷く。
「はい、これで以上です」
「そうか。じゃあこれからは好きに命令していいわけだな?」
「……一ヶ月だけです」
唾を飲んだ。
無表情で無愛想な彼女でも、一対一の個室で、しかもこれから夫以外の男に身体を好き勝手弄ばれると自覚して冷静でいられるわけない。
というよりも普通の感覚なら、こんな契約すら許容しないんだろうがな。
馬鹿な旦那なんて切り捨てればいいんだ。
そもそも眞由美が嫌な思いをする必要なんてないのだから。
ただ真面目な彼女だから。
そして、俺が知らない彼女の”旦那の為なら嫌なこともできる”という一面があるのだろう。
「さて、早速だが一つ命令だ」
「……」
「この一ヶ月間、俺が許可するまで旦那とのセックスは禁止だ」
「……はい」
少し疑問混じりの返事。
だが俺の命令には全て従うという契約した彼女は拒むことなく頷く。
「お前にはこの一ヶ月間でたっぷり仕込まないといけないからな。それなのに他の男と寝たら台無しだろ?」
「言っている意味がわかりません」
「まあ、眞由美がわからなくてもいい。ちゃんと命令に従えばな」
「はい」
俺に嫌悪感を抱いている眞由美を少しずつ堕とす。
心も身体もだ。少しずつ変わっていかせるのに、心の拠り所になるかもしれない旦那に抱かせるわけにはいかない。
それに、眞由美に夫婦の営みを拒ませてたら面白い展開が待っているかもしれないからな。
「事前に話しておくのはそんなところか。それじゃあ、始めるか」
立ち上がると、眞由美の全身がビクンと反応する。
ゆっくりと歩き、彼女を──ではなく、ソファーに座る。
「ほら、隣に座れ」
「……はい」
教室の隅で本を読んでいるような少女を大人にさせた見た目の眞由美は少し離れて隣に座る。
黒のスカートに黒タイツで細く長い脚は色気があるが、白のYシャツのボタンもぴっちり上まで止めていてなんとも言えない。
「まずはキスしてもらおうか」
「……私から、ですか?」
「ああ。夫がいる眞由美の方から俺にキスする方が、シチュエーションとして興奮するだろ?」
笑いながら伝えると、眞由美は「最低ですね」と、吐き捨てるように呟く。
だがやるしかないと理解している眞由美は、上半身を前に出し、ゆっくりと旦那じゃない男にキスをする。
「ん……ちゅ」
軽く触れ合わせただけのキス。
それで満足かと言わんばかりに顔を離そうとする。
だから華奢な眞由美の身体を抱き寄せ唇を奪う。
「ん、はあっ……ん、むっ、ちゅ……はあ、むっ」
固く閉ざされた唇を強引にこじ開け舌を口内へと挿入する。
触れ合わせないように奥へと引っ込ませていた舌を見つけると、唾液を交換するように絡ませる。
「あっ、んん、れろ、ちゅ……はあ、んんんっ!」
「もっと舌を出せ。旦那とキスしてるときみたいにな」
そう言うと、眞由美は俺を睨みながらも舌を突き出す。
強張って固さのある舌だが、まあ、初日にしては上出来だろう。
何分間も休むことなく、全身をほぐすように唇を重ね、舌を絡ませ、唾液を交換する。
そして顔を離すと、涙目の彼女の頬は赤く染まっていた。
「中学生がするキスみたいにぎこちなかったな? 旦那とはあんまりキスしないのか?」
「するに、決まってるじゃないですか……」
「じゃあそれと同じ感じですればいいだろ」
「──ッ! あなたは洋一郎さんじゃ……」
初めて感情を表に出して怒ったが、社長相手ということでグッと押し殺して我慢した。
別に我慢しなくてもいいのだが。
その方がこれからの変化を味わえて楽しめたのだが。
「まあいい。それより今度は横からじゃなく跨ってしてくれ」
「跨って、ですか……?」
「そうだ。どうした、できないのか?」
「……わかり、ました」
眞由美は嫌がりながらも俺の上に跨る。
だがぴちっとしたスカートが邪魔で上手く跨れていなかった。
「ほら、捲ってやるよ」
だからスカートを捲ってやった。
地味な白地のパンツがタイツ越しに見えたが色気はない。
それでも下着を見られたことは、眞由美にとっては衝撃的なことだったらしく顔を真っ赤にさせていた。