悪徳プロデューサーへの転生 ~バッドエンドを回避するため枕営業させていた彼女たちに優しくしていたら、いつの間にか好意を寄せられてました ※ただし枕営業は辞めません 作:柊咲
ガレイドカンパニー、声優部門所属。
身長は150ほどで、肩まで伸ばしたボブカットの黒色の髪。まだ高校一年生ということもあり、化粧っ気のない幼い顔付きだ。
まだまだ発育途上の体付きだが、少しずつ大人っぽくなってきたと声優部門に所属する者たちが口にしていた。
小さい頃からアニメや漫画が好きで、小学生の頃にガレイドカンパニーが運営する養成学校に通うように。
既にアニメの声優としてデビューしているが、名前の無いキャラばかりで、主役クラスの声を担当したことはない。
そんな彼女には父親がいない。
母子家庭で育ち、母親が一人で彼女を育てた。
当然、小学生時代から続く養成学校の支払いも全て母親がしていた。
「──そして、蛇口に目を付けられたと」
目を付けられたのは娘ではなく母親の、
年齢は36才。朝早く起きて新聞配達の仕事をして、娘の学校を見送り、お昼前にお弁当屋へ働きに行く。
週に一回か二回ほどスナックで雇われ店長もしている。
どんなに辛くても顔に出さない良き母親。
全ては娘が夢を叶える為に頑張ってきた母親の鏡のような女性だ。
「愛人契約、か……」
そんな京香に、転生前の蛇口が打診した。
お金の援助をする代わりに、自分の愛人になれという契約だ。
「枕営業してるのはレイカ一人だけじゃないとは思ってたよ。絶対に何人かにちょっかい出してるだろうなって。だからレイカの件が片付いても、絶対にバッドエンドを回避できないって……わかってたよ、わかってたけどさ、愛人契約って……」
はあ、金持ちの考えることがよくわからない。
というよりレイカが言っていたけど、蛇口は一回射精したら満足するんだろ。だったらそんなに相手欲しがらなくてもいいだろ。
「いやまあ、いろんな女性とセックスしたいってのは同じ男だからわかるけど」
転生した男に文句言っても仕方ない。
「だけどまあ、今回は回避するのは簡単だ」
この小中京香との愛人契約について確認したら、まだ打診してるだけで身体を重ねているわけではないという。
そして今回送られてきたメッセージには、会って話したいということが書かれていた。
なので「冗談です、忘れてください!」って言ったらなんとかなるかもしれない。
「よし!」
行動に出るなら早い方がいいだろう。
そう思い、俺はお昼過ぎに待ち合わせ場所であるおしゃれなカフェに向かった。
「ここか」
このカフェは蛇口のお気に入りのお店なんだとか。
その理由はというと、高級感があるだけでなく、カフェなのに個室があるというところだろう。
女性との密会や、他人に聞かれたくないような会話をするには、最も適したお店だと言える。
店内に入ると、ウエイトレスに席へ案内してもらう。
「個室というよりは、壁で区切られてるだけか」
想像していた感じじゃないけど、ここなら誰かに聞かれる心配はなさそうだ。店内の音やお客さんの声は聞こえない、聞こえてくるのはおしゃれなBGMだけだ。
そして10分ぐらい席で待っていると、
「お待たせしてすみません!」
年齢を知らなかったら20代後半だと思っただろう。
それほどまでに芸能事務所に所属するタレントと間違えるぐらい美しい女性だった。
キャメル色のケープコートに、黒のズボン。
160ほどの身長に、丁度いい感じのエロい肉付きのいい体型。
ふんわりとした空気感のある茶色の髪を肩まで伸ばした髪型。
どこかおっとりとした顔付きで、色気と包容力が顔面から滲み出ているようだった。
そんな彼女──小中京香は俺と目が合うなり、勢いよく頭を下げる。
「お待たせしてすみません、蛇口様」
「いえ、そんなに遅れてないですから。それより座ってください」
蛇口様と呼ばれて「えっ、誰?」ってなったけど、ああ、俺だった。
そう呼ばれることになんだか拒否反応が出たけど、ぐっと堪えて彼女を正面の席に促す。
「お忙しいのにお時間を取っていただき、ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください」
随分と物腰の低い女性だな。
まあ、娘の所属する事務所の社長相手だから当然と言えば当然かもしれないけど。
もしも不手際があったら、娘をクビにされたり、仕事が与えられなくなる可能性もあるからな。
愛人になるよう契約しろとか言ってくる社長なのだから、その可能性は十分にある。
それから頼んでいたコーヒーが運ばれてくると、早速だが彼女から話される前に本題へと移った。
「今回、小中さんからメッセージをいただいた理由は、愛人契約……についてでよろしいですか?」
「は、はい。そのことです」
「それでしたら、その……申し訳ありません、忘れていただけないでしょうか」
「え……?」
そう伝えると、彼女は目を丸くさせた。
こっちから提案しといて忘れてくれなんて虫が良すぎるけど、なんとか誤魔化さないと。
「気分を悪くさせてしまって申し訳ありませんでした。実はその、魔が差したといいますか……なので気分を害させたことについては謝罪させてください。それで──」
「──ど、どうして、ダメなのでしょうか!?」
「え」
前のめりになった小中さんは、どこか焦っている様子だった。
「ダメ、というのは?」
「年齢が問題なのでしょうか!? それとも容姿ですか!?」
「いや、ちょ、落ち着いてください小中さん」
「お願いです、なんでもしますから……だから、だから愛人にさせてください!」