TSリーガルがプレセアに身体をあれそれされる話 作:タニシカレー
目を覚ますと、私の身体に明らかな異常が起きていた。本来下半身にあるものがなく、上半身には柔らかなものがつき、全体的に身体のシルエットが丸みを帯びている。状況が飲み込めず小さく出た声は本来のものよりずっと高く、体格に合っていたはずの服に心なしか余裕がある。たちの悪い夢かと太股をつねったところで、ようやく私は己の異常を受け入れることができた。要するに、私の身体は女性のものになってしまったのだ。
努めて冷静になろうと日課の早朝鍛練をこなして帰ってきたところでコレットに見つかり、それから(当たり前といえば当たり前だが)一行は大騒ぎとなった。リフィルは変化の原因を探ろうと私をまじまじと観察し、神子は突如現れた異質な存在を女性として扱うか本気で悩み、しいなはそんな神子をこれ以上なく白い目で見つめている。
とりあえず医者に診てもらおうというロイドの提案でフラノールに来ることとなったが、診察で成果らしき成果が得られることはなかった。まあソーサラーリングの動作異常にエクスフィアが過剰反応したとかでしょう、適当に過ごしてればそのうち治るんじゃないですかと投げやりに告げられた医者の言葉に、最早怒りを表す気力も起きなかった。
「ま、まあ元気出せよな?ソーサラーリングで小さくなったりできるんだし、こういうこともあるさ」
「そういうものだろうか」
「そ、そうだって!な、ジーニアス!」
「ボクに聞かれても困るんだけど。でもさ、いつもと違う身体になるってきっと不安だよね……リーガル、本当に大丈夫?」
「あ、あの、具合が悪くなったりしてないですか?無理はしちゃダメですよ?」
「今のところ違和感はあっても不調はない。こんなときに迷惑をかけてすまないな」
「そんなのいいって!痛かったり苦しくなければそれでいいんだ」
純粋無垢な少年少女達は、私の心身の心配をしてくれているらしい。それぞれに重すぎるほど重い事情を抱えているだろうに、下心も好奇心もなく思いやってくれる彼らがなんとも眩しく、それでいて申し訳ない気持ちにさせられる。
「とにかく、今日はここで様子を見ましょう。鍛練ならともかく、慣れない身体で魔物に襲われたら無事ではすまなくてよ」
「すまない、そうさせてもらおう。戦闘には元に戻るか、この身体に慣れた頃に出ることにする」
「ま、どっちの身体でも早く動けるようになるといいな~。特にあんたは最前線で戦うんだし」
想定外の足止めにも快く対応してくれる者達に感謝の言葉をかけようとしたとき、ふと妙な視線を感じて私は振り返る。そして視線の先にいた少女……プレセアが私のことをじっと見つめながら疑問を投げかけた。
「今日はここでお休みするとして……部屋割りはどうするんですか?」
「たしかに、あたしたちと一緒ってわけにはいかないけど、かと言っていつも通り男部屋に入れるのもねえ」
「なんで俺さまの方を見るわけ?」
「さあね~」
随分と噂の絶えぬ神子といえど、さすがにしいなの考えるようなことは起こさぬだろう(多分、おそらく、きっと、ではあるが)。とはいえ、たしかに今の私はどちらの部屋にも入れないだろう。女性達の部屋に入る気はないが、神子はもちろんロイドやジーニアスの前で肌を晒すわけにもいかない。一行の資金を割くのはさすがに忍びないので、私は進んで自腹を切ることにした。
「今のままではどちらの部屋にも行けぬ。私は一人で部屋を借りることにしよう」
「まあ、そうなっちまうか。リーガルだけ一人ってのもちょっと寂しいけど、何か用があったり困ったらいつでも俺たちの部屋に来いよな。必要だったら見張りもするしさ」
「身体のことでわからないことがあったらあたしたちの方にも来なよ。頼まれたら護衛もするし」
「だからー、なんで二人して俺さまの方を見るわけよ?」
「日頃の行いだろう。では、すこし早いが先に部屋を取らせてもらう」
「……」
街で買い物をする一行と離れ、一番隅にある小さな部屋を借りるため一足先に宿へと向かう。雪にはしゃぐ者達、考えごとを言葉にしながら歩く者、相変わらずの言葉の応酬を繰り広げる者達。その中にひっそりと、しかし確実に向けられていた視線に、私は不覚ながら気づくことができぬまま宿の扉を開けたのだった。
部屋の暖を点け、ある程度温まったところで、身に着けていたマントを外した。マントは騒ぎの直前に私をいち早く見つけたコレットが差し出してきたものだが、こうしてひと息ついたところで彼女が大慌てでマントを差し出した理由がようやく理解できた。
私は、女性の身体の扱い方を知らなかった。社交界で女性のエスコートをすることはできても、身だしなみの整え方については全くわからず、それでいて無頓着だったのだ。胸元は露出していないものの大きな膨らみが目立ち、腰回りもだいぶ際どいところでズボンが引っかかっている。鍛練のときには意識すらしていなかったが、下着をつけていないことで胸の先端が浮いている有様だ。
(だいぶはしたない恰好をしていたのだな……)
自らの無頓着ぶりを恥じつつベッドの縁に座って、改めて女性のものになった身体をまじまじと見つめてみた。
品無く正直に言ってしまうと、胸はかなり大きな方だと思う。女性の胸など意識して見ることはないが、私の元々の胸囲に合わせたシャツを押し上げているのだから相当な大きさだろう。筋力と体力は幸いなことに、いつもの鍛練をこなし武具が扱える程度にはついている。仲間の女性達に比べるとかなり筋肉の陰影が目立つが、それでもしなやかで丸みのある身体は新鮮な気さえする。下腹は……すこし大きくなってしまったらしい。ズボンが落ちずに引っかかったのは幸いだが、身体を慣らすときには最大の課題になるだろう。前にあったものがなくなり、後ろになかった重みがあるのがどうも落ち着かない。
繋がれた両手首で、目の前の膨らみを掬い上げてみる。ずしりと重く、それでいて柔らかく垂れ落ちない程度に弾力もある。生々しい感触に頭がぐらついたとき、現状を達観しようとしていた自分が思いの外動揺していたことに気づいた。
(この身体に、慣れることはできるのだろうか)
未知の身体と、失われるかもしれぬ本来の身体。どちらに落ち着くかはわからぬが、今はここにある身体を受け入れるしかない。目を背けようとしていたものに向き合うため、手枷を外して服を脱いだ。
一糸纏わぬ姿で姿見の前に立つと、やはりそこには知らない「私」が佇んでいた。正体が自分自身とわかっているからか、初めて間近に見る女性の裸体にも関わらず羞恥も興奮も感じない。ただただ、本来あるべき姿でないことに戸惑いを掻き消すことができずにいるだけだ。
(受け入れるのはまだ難しいが、今はどうにもならぬか……)
姿見から離れて服を拾い上げ、身体の感触を確かめながら着替え直す。そういえば下着を買ってくるよう頼むのを忘れていた、他にも必要なものはないだろうか。そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「今開ける」
鍵を開けドアを開くと、そこにはプレセアがたった一人で立っていた。紙袋を抱え、私の顔をじっと見つめながら。
「どうしたプレセア、他の者は一緒ではないのか?」
「ロイドさん達はもうすこし買い物をするみたいです。私は……これを届けに来ました」
「わかった。受け取っておこう」
「あの、リーガルさんがよければですけど……入れてください。すこし話がしたいです」
「それは構わんが……」
プレセアを部屋に通し、温めていたポットから紅茶を二杯淹れる。私がテーブルを片付けている間に、プレセアは紙袋の中身をベッドの隅に並べているようだった。
「中身はなんだろうか」
「女性用の下着です。これなら大丈夫だとしいなさんが言っていました。あとは、ちょっとしたものを」
ありがたい差し入れに胸を撫で下ろしつつ、整えたテーブルにプレセアを招く。紅茶をひと口含んだところで、プレセアが話を切り出した。
「リーガルさんに頼みがあるんです。今のあなたにしか頼めないことです」
「私にしか頼めない、だと?」
「はい。リーガルさんの身体に……触らせてください」
「承知……ん?」
プレセアのことだ、きっと大事なことなのだろう。半ば二つ返事で受けようとした言葉は、最後の最後で疑問に曲がった。今、彼女は何と言った?身体に触りたい?私の、女性としての身体に?
「リーガルさんの身体に、触らせてください」
「私の身体に?女性の身体に触りたいというのか?」
「はい。女の人の身体だから触りたいんです。今のリーガルさんの身体に触りたいです」
彼女が私の身体に触れたがる理由が、全くわからなかった。たしかに身体に触れたいという頼みは他の女性には打ち明けがたいだろう、ある意味私が最も都合の良い相手だというのはわからなくもない。しかし何故、そこまでして女性の身体に触れたいのだろうか。滅多に見られぬ熱を持つ瞳に身構えているとプレセアは静かに、それでも芯のある声で告げたのだ。
「私は知りたいんです。大人の身体が、どういうものなのか」
彼女の言葉に、私の中に浮かんでいた疑問が一気に晴れた。彼女がどのように生き何を失ったのか、年端もいかぬ少女に見える彼女が本当は何者なのか、それを考えれば彼女が突然この話を切り出したのも不思議なことではなかったのだ。
なんと切実で、胸が痛む願いなのだろうか。そしてその願いに応えるのがよりにもよって私とは、なんと罪深いことなのだろうか。
「……承知した。プレセアが触れる分には、好きにしてくれて構わぬ」
「ありがとう、ございます」
彼女の願いに応えてやりたい、罪深き身体で応えなくてはならない。その気持ちに突き動かされるように、私はプレセアに自らの身体を触らせることを許した。
……そしてそうかからぬうちに、彼女の願いに対して思慮も覚悟も足りていなかったことを、私は自らの身体で思い知ることになる。
部屋に鍵をかけ、プレセアに言われるがままベッドの上で胡座をかく。手枷を外したままなので両手は自由だが、行き場がわからず太股の間に投げ出されている。そんな状態の私に、プレセアは最初の指示を出した。
「シャツを上にずらしてください。胸が全部出るまで」
「こう、だろうか」
真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐに刺す視線を浴びながら、着るというより引っかかっている状態のシャツを上にずらし、裸の胸を晒す。プレセアは私の胸をじっと見つめたかと思うと、おもむろに手袋を外して両腕を伸ばし、寄せ上げるように私の胸を掴んだ。
「っ⁉」
「大きい……私の手では、こぼれ落ちてしまいそうです」
「な、何を言って……」
「重くて指が沈むのに、弾力もあります。これが大人の胸なんですね」
「う、っ」
小さな両手が離れるのと同時に、ふたつの膨らみが大きく揺れる。その動きが新鮮に映ったのか、プレセアは私の胸を持ち上げては落とす動きを繰り返す。触れるのを許しはしたが、繰り返されるとさすがに痛みが出ると判断した私は、窘めるようにプレセアを制止した。
「プレセア、すまないがもうすこし丁寧に扱ってはくれないだろうか。その、何度も揺らされると痛むのだ」
「そう、なんですね。あまり揺らさずに、ゆっくり触ります」
「う、うむ……っ」
小さな手のひらが、細い指が、一転して優しく胸を撫で回し、揉みしだく。熱を持つ瞳が胸元に注がれ、ありとあらゆる動きで胸を探られているという状況に、心なしか呼吸がわずかに乱れ始めている。あくまで触らせるだけの行為で、性的な快感や興奮など与えられていないはずなのに。
「っ、く」
「すごいです。しっとりしてて、柔らかくて……こっちは、どんな感触なんでしょうか」
「ぁ、っ⁉」
プレセアの指がある場所を摘んだ瞬間、未知の感覚が身体を襲った。純粋な快楽ではない、しかしただ胸を触られる感触とも違う。聞くのも恐ろしいが聞かないわけにもいかず、肌がじわりと汗をかいた。
「プレセア、ど、どこを、触って、っ!」
「こっちはしっかりした弾力が……あ、すこし硬くなりました。ここが硬くなると、周りの部分が膨らむんですね」
「ま、まて、話をっ、ぅ」
「すこしだけ、引っ張ってみます」
「引っ張る、っ⁉ぁ、っ」
「また硬くなりました……こうしたら、どうでしょうか」
「くぅ……っ!」
引っ張られた先端を指先で引っ掻かれて、思わず腰が浮く。声が出るのを耐えようとするが、構うことなく彼女の指は容赦なく私の胸を責める。すこし強めにいじられたり、じんと疼く先端を軽く撫でられたり。彼女が指を動かせば動かすほど、受けるべきではない背徳的な刺激が私の身体を這い回る。
こんなはずではなかったと、私の頭はそればかり繰り返す。互いに浅くはない関係はあれど、恋愛の情は一切ない。ただ彼女の切実な願いに応えるだけ、ただ身体に触られるだけで、進んで快楽など与えられるわけがない。そう思っていたのに、今の私は後ろに手を突くのが精一杯で、彼女にされるはずのないことばかりされている。
「い、いけない、こんなことは……」
「痛いですか?」
「違う、そういう、ことでは、っ!」
「それならよかったです。リーガルさんが痛い思いをするのは、よくないですから」
(何故、会話がすれ違うのだ……!私の考えが間違っているのか……?)
もしかして、私は彼女の願いを誤解しているのだろうか。そんな疑問が浮かぶのと同時に、私の胸はようやく彼女の指から解放された。ようやく終わった、加減ができないだけで彼女の行為にやましい意味などなかった。そう自分を納得させて安堵したのも束の間、今度は胸の先端に顔を寄せられた。まさか。
「どう感じるか、声に出して教えてください」
「さすがにそれは……っあぁっ⁉︎」
「んっ……」
「ん、ぐぅ、っ!」
粘膜と小さく熱い舌が、散々弄られて痺れる先端を包みこむ。舌先が敏感になってしまった部分を掠める度に、出してはいけない声を出さぬよう歯を食いしばる。肩を揺らして呼吸をすることで刺激から逃げる私の胸に、プレセアは容赦ない仕置きを与えた。
「っぁ、また……⁉︎」
「我慢はだめです。我慢しないで教えてください、身体がどうなっているのか」
「わかった、わかったから、強く引っ張るのは、っ!ぁ……」
私の返事を聞くと、口での愛撫が再開される。舌で転がされる音に理性を削られながら、それでも言葉を紡げるよう呼吸を整えた。
「っ、は、あつ、い……」
「ん……」
「胸が熱くて、っ、先が、痺れて……腹が、ぁ、疼く、っ」
「……っ、お腹が疼くんですか?」
「っ!ぁ、そこ、押すのは、っ!」
「んっ、ふ……んぅ……」
「と、とめてっ、くれ、たのむ……うぅっ!」
懇願と化した制止など気にも留めず、敏感になった場所を徹底的に責められる。胸を弄る口と指から逃れたくても、腹の中を探るように押す指を止めたくても、身体をなんとか支えている両手を動かすことができない。快感を得てはいけないのに、逃がすどころか腹の底に溜まっていく。昇りつめたくない、けれど一秒でも早く解放されたい。心も身体も目の前の少女に支配されながら、口からは理性で留めきれない言葉が溢れてしまった。
「あ、ぁ!からだが、おかしくなるっ……!プレセア、私は、わたしは、っ」
「っ、ん……っ!」
「っひ、あ、っ!うぁ……っ!」
ひと際大きな音と共に先端を吸われ、より強い力でもう片方の胸と腹を弄られた瞬間、頭の先まで駆ける快感と共に全身の力が抜けた。上半身はプレセアのもとを離れ支える力を失い、胡坐をかいていたはずの脚はだらしなく開き、私の身体はそのままベッドへと倒れこむ。焦点の合わぬ瞳で見上げた先には、馬乗りになって私を見下ろすプレセアの姿があった。
「は、はっ……」
「すごいです。これが大人の、女の人の身体なんですね」
「あ、ぁっ」
「ごめんなさい、リーガルさん。私……もっと知りたいです」
彼女は鈍く輝く瞳で横たわる身体を一瞥すると、私の腰に辛うじて引っかかっているズボンと下着に手をかける。服を脱がされた後に何をされるか、それが私にとってどれほど罪深い行為になるか。快楽の余韻を引きずった頭でもわかることなのに、私の心と身体は彼女に従順で、彼女の望むままに身体を捧げるときを待っていた。
一人分のベッドの上で、私は倒れこんだままプレセアと向き合っていた。せめて彼女の願いを叶えられれば、彼女が知りたいものを与えられれば……そう思いながら、脚を開いて秘めたる部分をさらけ出す。プレセアは私の両脚の間に身体を滑らせ、さらけ出された部分をじっと見つめていた。
「これが大人の……」
「あまり、見るものでは、っ」
「動いたり濡れるのはどうしてでしょうか?触ってもいいですか?」
「っう、ぁ」
問いかけはするが、最早彼女は私の答えを待たない。首を縦に振るとわかっていて、彼女の指先はゆっくりと縁をなぞっていく。切ない刺激に身体を震わせていると、指先が粘液を纏うように動く。多分指を挿入れようとしているのだろうと、頭の中は案外冷静に彼女の与える刺激を捉えていた。
「っ、ぁ、う」
「ここから何か出てます、触ってみますね」
「あ!あっ⁉︎」
突然襲いかかってきた刺激に、身体が大きく跳ねた。ここが女性の性感帯だと、指が離れても収まらない感覚が私に伝えてくる。こんなにも強烈な刺激を与えられ続けたら、どうなるか全くわからない。快楽を通り越した恐怖に身体を動かそうとしたが、彼女の見た目からは想像もできぬ力と探求心はそれを許してはくれなかった。
「ここも、触ると膨らむんですね」
「あ、ぁっ!そんな、そんなに、さわったらっ!ああっ!」
「さっきより濡れてます……もしかして、気持ちいいと濡れるんですか?」
「ぁ、だ、だめだっ!や、やめ、やめてくれっ!やめ、あ!あっ……!」
「リーガルさん……気持ちいいんですね。すごくいやらしい顔してます」
「あ、ぁっ、あ……」
頭が刺激で麻痺しそうなところで、プレセアは何かを思いついたようにそこから指を離す。ようやく強烈な快楽が離れられたと思いたかったが、今度は粘度のある水音と共に浅く出し挿入れされる感覚が下腹に伝わる。
これからされるのは更に罪深い行為のはずなのに、心のどこかで「ようやく受け入れるときが来た」と思う私がそこにいて、その瞬間を全神経を集中させて迎えていた。
「指、挿入れますから。痛かったら教えてください」
「う、うあぁっ……!」
「すごく熱いです……ぬるぬるしていて、狭くて、指がすこし動かせるくらい……」
「は、あっ⁉︎そこ、はぁ、っ!」
「ここ、ですか?」
「あ!ぁ、ぅっ、ううっ!」
腹の中を探っていた指が、ある一点を執拗に押す。ナカから押される度に腹の底に甘い快楽が溜まり、つま先から脳までじわじわと侵食していく。どこが弱く、何に私の身体が反応するか、プレセアは理解している。がくがくと震える脚を、触られてもないのに小さく揺れる胸を見て、彼女はたしかに微笑んでいた。
「指を増やして、慣らさないといけませんね。痛がる顔は見たくありませんから」
「ん、っ」
腹から粘液を纏わせた指が抜かれ、開かれた場所にまた指をあてられる。ふと、視界の隅に映っていた紙袋にプレセアが手を伸ばす。紙袋を漁り、中から取り出されたものに私は全身の血が引いていくのを感じた。
「そ、それは……っ!」
「作りました。リーガルさんがよければ、挿入れてほしくて」
彼女の手に握られていたのは、木製の張型だった。さすがに簡易的で実物のような生々しい形状ではなく、無理のない太さではあるが、挿入されれば届いてはいけないところまで届いてしまう気がする。
「安心してください。怪我をしないよう、仕上げも丁寧にしています」
「それを、気にして、いるわけでは……あっ」
「指、増やしたのにさっきより簡単に挿入りました。でも、ナカは熱くて、すごく濡れてます」
「くっ、ひっ、あ、ゆ……指、動かすのは、ぁっ!」
「嫌ではないですよね。とても綺麗で……いやらしい顔してますから」
「っ、そんなことは、っ!ぁ!言わない、で、くれぇ……っ!」
「本当のことです。綺麗で、いやらしくて、いつものリーガルさんが絶対にしない顔です。大人の、女の人の顔です」
「ああぁ……!」
私を蹂躙している彼女の本質が、年端もいかぬ少女ではなく大人の女性であることを思い知る。彼女に蹂躙されている自分自身が、本来の性も持つべき矜持も失った女性になりつつあることを思い知る。今ここにいるのは、背徳を共有する番なのだと、身体が理解する。
「最後まで教えてください。大人の身体が、どういうものなのか」
「は、あ……」
「教えてください。指じゃないものも、挿入れてもいいですか?」
何度も私の限界を引き出そうとしていた指が、突如として緩やかな動きと共に抜かれていく。己を満たすものを失った場所が、切なく疼いて収まることを知らない。彼女が望むものを与えるために、いや、最早自分自身を満たすために私は脚を開き、そして懇願した。
「プレセア、それを……私の、ナカに……」
「……はい」
濡れる入り口を見せつけるように拡げた瞬間、私は辛うじてしがみついていたものを全て手放した。異様な状況でなんとか保とうとしていた正気も、今もなお愛する者との記憶が繋ぎとめていた理性も、私達の関係から来る躊躇いと戸惑いも、リーガル・ブライアンという男であったことすらも。そして目の前に迫る最大の背徳を受け入れることに、薄暗い期待と幸福を感じようとしていた。
丁寧な仕上げでつるりとした張型が、愛液を纏おうと何度も入り口を滑る。これからこの張型で満たされるのだと、私の身体が焦らされる快感に酔い張型をさらに濡らす。満たされたい、背徳で全てを満たして塗り潰されたい。張型の先端が入り口に触れた瞬間、悦びで全身が滾るような感覚に襲われた。
「あ、ぁ、く、くる……ナカ、に……っ」
「……挿入れます」
「ぁ、は、あああっ……!」
「痛くないですか?」
「はぁっ、は、はやくっ、なか、いれて……っ」
「よかった、このまま奥まで挿入りそうですね」
「お、ぉく、くる、っ!きてる……っ、このまま、奥まで……っぁ!」
「全部、挿入りました。リーガルさん、すごく嬉しそうです」
「は……っ、はぁ……っ」
痛みもなく腹を満たす質量に、自分のものとは思えぬ甘さを含んだ吐息が漏れる。きっとプレセアの瞳に映る私は、想像もできぬほど快楽に蕩けきった顔をしているのかもしれない。だが、もうそれでもいいのだ。今の私にとっては、彼女が与える背徳に浸ることが全てなのだから。
「動かしてもいいですか?」
「う、動いていい、動いて、ほしい……っ!は、はやく、わたしを、っ」
「……はい。動かしますね」
「ぁ、っ!あぁっ!くぅっ、うぅ、ああっ!」
激しすぎず、しかし確実に奥を押す動きに全身で悶え、腹の中を熱くする。再び昇りつめようとする身体に、絶え間なく背徳的な快感を施される。己を蹂躙されることが、本来持たぬ性で淫らな姿を晒すことが、この世で最も番うべきでない者と歪に番うことが、こんなにも気持ちいい。
「あ、ぁ!おく、あたってっ!い、いい……!」
「すごいです、挿入ってる場所がどんどんいやらしい音を出して……ここも、触ってないのに硬くなってるみたいです」
「なっ⁉︎そ、そこ、一緒に、さわられたら……!っああ!だめだっ!だめ、からだが、ぁ、ああっ!」
「教えてください。お腹の中と硬くなったところ、気持ちいいですか?」
「あっ!あっ!きもちいい、きもちいいっ!た、たえられないっ、きもちいいっ、あっ!んあぁっ!」
「っ、ごめんなさい。私も……耐えられないです。リーガルさんの一番いやらしいところが、見たいです」
その言葉と同時に張型の抽送が激しくなり、性感帯を濡れた指で擦られる。桁違いの快感に身体全体ががくがくと震え、受け止めきれない感覚で冷静さを完全に失い、私は嬌声をあげながら張型の動きに合わせて腰を揺らしていた。
「はっ、はっ、あっ!はげしいっ!んっ⁉︎あっ⁉︎と、とめてくれ、っ!へっ、へんになるっ!なにか、きてるっ!」
「そうなんですか?何が来るんでしょうか」
「し、らぬっ、しらないっ……ひいっ!ああっ!」
「リーガルさんも知らないこと、私も知りたいです」
張型の抽送が、擦る指が、私を絶頂へ導こうとする。知らぬ身体の未知の絶頂へ、自制の効かない身体と背徳に染まりきった意識が引きずりこまれていく。快楽に耐える気力もなく、私は限界を迎えようとしていた。
「あ!あっ!あっ!いっ、ぃく、なにか、くるっ!あ、あぁ、あっ……!」
「……」
「あぁっ、ああああっ……!ぁ、あっ、あ……」
身体が絶頂に揺れて張型が抜けたそのとき、身体から愛液と違うものが噴き出した。それはベッドを濡らし、私の太股や尻を伝い、あやうくプレセアの服をも濡らそうとした。糸が切れたようにベッドに倒れると、下半身のあたりは水をこぼしたようにシーツが濡れている。もしや失禁してしまったのかと思ったが、プレセアは何故かうっとりとした溜め息を漏らしていた。
「想像よりも、ずっとすごいです……大人の身体が、いいえ、リーガルさんがこんなにいやらしくて、それなのに綺麗で……。私の中にも……こんな感情があったなんて」
「あ……」
濡れたまま投げ出していた両脚が、再び大きく開かれる。まだ終わらせてもらえない、けれど頭は受け入れる以外の選択肢すら浮かばない。私は絶頂の余韻でぼんやりとした頭と力の入らない身体で、彼女が与える全てを迎え入れた。
「お茶、温めました」
「すまないが、持ってきてくれないか。まだ、その、身体が」
「そう、ですよね」
申し訳なさそうな顔をして差し出された紅茶を、ベッドの上で上体だけを起こして受け取る。私を見つめる彼女を見ると、さっきまでのことが嘘のようだと錯覚してしまいそうになる。実際は身体中が言うことを聞かず、裸のまま下半身をシーツで隠しただけの自分を見ると、さっきまでのことが嘘ではないと嫌でも思い知らされるのだが。
あの後も、私の身体はプレセアの手で弄り尽くされた。触れる場所は余すところなく触られ、性感帯という性感帯を暴かれた。何度も絶頂し、途中からは思考もほとんど麻痺してしまってよく覚えていないが、身体に覚える違和感から考えるに、おそらく後ろの方も指までは挿入ったらしい。
結局私が得たものは、プレセアにこれ以上ない痴態を晒したという事実と、絶頂の際のあれは失禁ではないというこの先活用されぬ知見だけである。今は女性の身体とはいえ、三十を越えた男が得たものにしてはあまりに悲惨で正気に戻ったときには涙が出そうになった。散々快楽を叩きこまれて鳴かされ続けた後では、涙は一滴たりとも出てくれなかったが。
「ロイド達はもう宿に来ていたか?」
「はい、皆さんの買い物が終わってそれぞれの部屋にいるみたいです」
「この部屋で何があったか、よく怪しまれなかったものだ」
「元々私だけが先に宿を取って、リーガルさんに万が一のことがないか付き添うことになっていましたから。部屋もわざわざ一番遠くの部屋を選びましたし、必要になれば私の方から皆さんの部屋に行くことになっています」
「……その、随分手際がいいな。目的を考えればそこまで徹底するのも当然だとは思うが」
「そう、ですね。あの……すみませんでした。リーガルさんが何でも受け入れてくれたので、つい」
「うむ、それは……そうだな。少々受け入れすぎてしまったとは思っているが、進んで受け入れたのは私だ。罪悪感は覚えなくていい」
「そうでしょうか……」
会話の内容は不健全だが、二人して紅茶を飲む時間にはどこか穏やかな空気が流れている。雪の静寂を窓の向こうに見ながら、ふとプレセアが呟くように私に話しかけた。
「大人の身体を知りたいという願いは叶いました。でも、私の本当の願いがどこにあるのか、途中からわからなくなってしまったんです」
「本当の願い、というのは?」
「純粋に女の人の身体を知りたかったのか、私が失ったものへの気持ちをぶつけたかったのか。リーガルさん自身のことを見たかったのか、それともリーガルさんの向こう側に彼女を見たかったのか。今となってはわからないんです」
「そうか」
彼女の本当の願いが何だったのかは、私にもわからない。どれもそうだと言われれば納得できなくもないし、どれもそうじゃないと言われても腑に落ちる。ただ、たったひとつだけ叶わない願いがあると、私は確信を持って言うことができた。
「私自身、あれだけのことをされてもプレセアの真意がどこにあったか教えてやることはできぬ。ただ、もし私の向こうに彼女を見たかったのなら、それは叶わぬ願いだろう」
「どうして、ですか?」
「当たり前だが私と彼女は何ひとつ似ていないし、そのうえ私自身が彼女の素肌も濡れた表情も知らないからだ。私とアリシアの関係は、清らかな姿のまま永遠となってしまった」
「そうですか。それなら……私の願いは他のどれかだったことにします。これだけ心が満たされているのに、絶対に叶わない願いを抱えるのは虚しいですから」
その言葉と共に紅茶を飲み干したプレセアに空のマグカップを渡し、私は再びベッドの上に横たわる。身体という身体を弄られた中でたった一か所だけ、唇だけは奪われなかったことに安堵しながら、私はすこしの間だけ彼女に見守られて仮眠を取ることにした。
かくして背徳の時間は終わりを告げ、さらに数日後には無事に元の身体に戻ることもできた。そしてあのときプレセアが本当に願っていたことについて、男の身体に戻った私は考えるのをやめることにした。
終