※この作品はR-18です。

TSリーガルがプレセアに身体をあれそれされる話   作:タニシカレー

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商品開発の副産物でまたまたTSしてしまったリーガルがバニーになったりプレセアにおっぱい責めされる話■微妙に続きものになってしまいましたが、こちらの話だけでも読める内容にはなっていると思います■11月の新刊に収録するつもりが間に合わず、しかしなぜかこちらを先に公開することになりました
■今回、試験的にバニースーツ姿の挿絵も挟んでみました。デザインは楽しかったと思う反面、文章だけでちゃんと伝えられたらよかったなと思いました。小説難しい。


TS会長にバニーと快楽は付き物

 レザレノ・カンパニーの会長室に設置されている、小部屋ほどの大きさをした金庫の中にそれは眠っている。全身の疲労回復と共に肉体の性転換が一日中続く、劇物とも言える代物だ。以前我が社のアイテム開発部門が試作品を作り、試験の末に開発中止を命じたが、流出した製造法で子会社のひとつが勝手に商品として生産してしまった。幸いにも外部に流通する前に自主回収を行うことができ、今度こそ製造法は破棄され、物が物だけに他の社員が触れぬよう会長室の金庫に運びこんだのだ。

 トランスボトルと呼ばれるそれは、今日まで使用されることなく眠り続けている……いや、実は一度だけ使用してしまったのだが、それ以降は数十と積まれた箱にすら手を触れてはいない。女性の身体への変化に伴う欲求を受け入れたうえで、私は己の理性をもって本来持たぬはずだった欲を制していたのだ。

 元の肉体であれば、性欲は非常に薄い方だ。女性の身体での経験を思い出すこともなくはないが、性転換はしない方がいいという考えは変わらない。肉体と精神の鍛練も功を奏し、多忙ながらも欲に負けぬ健全な日々を送っていた。ところが、そんな私の理性と自制を真正面から崩しにかかる案件が、予想外の方面から降ってきたのだ。

 

 会長室の応接用テーブルに並べられた衣装と資料に、私の脳はしばしの間内容の理解を拒んだ。しかしテーブルの向かいに座る彼女と側に立つ執事の表情が、私が思考を止め続けるのを許さなかった。

「これは、リーガルさんにしかできないことです」

「……だそうですぞ、リーガル様」

「馬鹿な……馬鹿な」

 今回私のもとに降ってきた案件は、アルタミラで働くバニーと呼ばれるスタッフが着るスーツの試着である。以前からスーツのバリエーションを増やしてほしいとの声があり、衣装デザイン部門に命じて数種類のデザイン案を出してもらっていたが、いざ試着の段階になってモデルが見つからないという問題が発生したらしい。

 多忙なバニー達の代わりにスーツを着ることができ、見た目と体型に自信があり、それでいて標準的なバニーよりも体格が良く衣装調整の試験も可能な女性。あまりに厳しい条件を満たす社員はほぼ見つからず、衣装デザイン部門の者が社員食堂で偶然居合わせたプレセアに相談した結果、彼女はある人材を「思い出して」しまったのだ。

「それで、お前達は私にあれを飲めと?しかも試着が明日というのはあまりにも急では?」

「ごめんなさい……私も何人か社員さんに声をかけてみたのですが、忙しいか自信がないと断られてしまって」

「体格以外の条件は適していると思い、私もしいな様やリフィル様にご連絡を差し上げたのですが、やはり断られてしまい……」

「しいなはともかくリフィルと連絡がついたのか……いや、そんなことより、本当に私しかいないのか?モデルだけなら外部から募集すればよかろう」

「それが、そうもいかないのです。このプロジェクトがモデルから外部に漏れては、衣装を発表したときのインパクトが薄れてしまいます」

「ぐ、っ」

 彼女達も、できるだけ人材を探そうと努力したのは事実だ。そして人材への理想があまりに高く、体型への自信を除けば私が性転換するのが一番早いのも否めない。しかし、私にも恥じらいというものがある。どうにかして試着を避けようと、交渉という名の悪あがきをすることにした。

「しかし、私がモデルになれば社員に気づかれるのでは……」

「あのお姿でリーガル様だとわかるのは私と屋敷の者とプレセアだけです」

「それに、私も体型に自信があるわけではないのだ。バニースーツなど恥ずかしくて……」

「大丈夫です。あの身体なら十分魅力的に着こなせます」

「そもそも、三十代もそろそろ半ばの私が着るものでは……」

「我が社のバニーに年齢の上限はありませんぞ」

「都合の悪いときだけ年齢の話を持ち出すのはやめませんか」

「ぐ、ぐう、っ」

 二人の表情は「悪あがきをやめて腹を括れ」と言わんばかりのものになっていた。おそらく、本当に私しかいないという結論に至るまで二人とも相当な苦労をしたのだろう。私にとってはあまりに不本意なことだが、これ以上悪あがきをしてプロジェクトを遅らせるわけにもいかない。私は抵抗をやめ、この案件を渋々受けることにした。

「……よかろう、そこまで頼まれたならやるしかあるまい。ただし、私がモデルであることは決して気づかれぬように」

「は、かしこまりました」

「ありがとうございます、リーガルさん」

 こうして、私は久しぶりにあの劇物、もといトランスボトルを飲むことになってしまった。飲んでから試着に向かうまでの行動、試着の手順、試着が終わってからの行動、そして実質的に私が「いなくなること」への対策……私とジョルジュ、そしてプレセアの三人で行わねばならぬ作戦を綿密に組み、その場は一時解散となった。

「それでは、私は明日の支度を整えておきますので」

 そう言い残し、ジョルジュが会長室を出る。すっかり日も暮れた会長室で二人きりになると、プレセアが心なしか声を潜めながら私のある意味触れたくない話題を切り出した。

「リーガルさん、女性の身体になるといやらしい体質になりますよね」

「そ、それは……」

「試着が終わるまでは我慢できますか?」

「変に触れられない限りは。ただ、試着が終わってからは、その」

「わかりました。試着が終わってから私が対処できるよう、用意しておきます」

「す、すまない」

 衣装と資料をまとめ、プレセアも会長室を出る。一人残った私は金庫を開け、唯一封の開いた箱から小瓶を取り出し、閉めた金庫の扉にもたれかかってある記憶と悩みを思い返していた。

 かつて身体が女性のものになってしまったとき、私の身体はプレセアによって暴かれてしまった。性感帯を見出され、心とは裏腹に身体が求める背徳を自覚し、そして本来の身体であれば決して起こらぬ性への渇望に気づいてしまった。女性になった途端に身体が満たされたいと快感を求め、理性すら削ってしまう。しかも厄介なことに欲は自慰では満たされず、プレセアに身体を暴かれることでしか満たされないという性質がある。もしかすると他の者との交わりでも満たされるかもしれないが、心も身体もそれを望むことはない。私の女性としての行為は私の欲求と、プレセアの大人の身体や女性としての私の痴態への興味、そして恋愛関係でもなければ肉体だけの関係でもない、誰にも言えぬ信頼でしか成り立たないのだ。

 再びこの小瓶の中身を飲むということは、己の欲求に従い、背徳を自覚しながら快楽を貪るということだ。しかし、それすらも私のどうしようもない一面として受け入れたのも事実。

(これに依存してはいけないと、ずっと手を伸ばすことはなかった。明日の私はどうなるのか、それは……考えても仕方のないことかもしれぬ)

 随分重く感じる身体を金庫から引き剥がし、会長室を出る。明日も朝は早く、加えて何が起きるかもわからぬ。寝るまでにせめて体調だけは整えなければ、そう思いながら自邸に帰ることにした。

 

 次の日、早朝鍛練が終わった私は私室に戻らず、密かにレザレノ本社の社長室へと連れていかれた。

「もう着いたのか。怪しむ者はいなかったか?」

「怪しむ者どころか、誰とも会っておりません」

「最初の移動は無事成功、か」

 およそ数分ほど身を隠していた衣装ケースから身体を出し、ジョルジュが使う社長室に降り立つ。私の身体は、既に女性のものに変わっていた。

 今回の案件で重要な点は、いかに私の身体の変化を社員達に悟られないようにするかだ。そのため、自邸や会長室など、本来の私に関わる場所への出入りを見られるわけにはいかない。そこで、自邸とレザレノ本社をまたぐ移動は衣装ケースに隠れる形で行われることになった。私が衣装ケースに隠れ、ジョルジュとプレセアが私の隠れたケースをワゴンで運ぶ。衣装ケースに入るため、私は就寝前のタイミングでトランスボトルを飲んでいたのだ。

「社員達にはリーガル様は疲労ゆえに自邸で療養されていると通達済みです。本格的に社員が出社するまでに、ここで着替えを済ませておきましょう」

「承知した。それで、私の着替えとは?」

「これです」

「なっ……!」

 プレセアに差し出されたもの、それは局部を最低限しか覆えないシートと、既に使用されているデザインのバニースーツだった。

「な、なぜこのようなものを」

「バニースーツの試着ですから、スタッフさん達と同じようにシートを貼って着用する必要があるんです」

「な、に……」

「では、私は階下で見張りをしておりますゆえ、着替えが終わりましたらプレセアと降りてきてください」

「ま、待て!お前は私がこのような衣装を着ても何も思わぬのか!」

「まあそれが今回の案件ですし、リーガル様も色々ございましたから。今更それくらいで困惑することはありませんな」

「……」

 無情にも我が執事はエレベーターを呼び、社長室から階下へと降りていった。残されたのは唖然とする私と、淡々と準備を進めるプレセアの二人だけだ。

「早く着替えてください。あと、ジョルジュさんが言葉遣いに気をつけて、取引先や社交界の方とお話しするみたいにしてくださいと仰ってました」

「う、ううっ」

 催促されるまま私は身につけているものを脱ぎ、一糸纏わぬ姿となる。頼りない面積のシートを下腹部と両胸の先端に貼り付け、バニースーツを身につけるが、どうにも胸部が安定しない。着方を間違えたのかと首を傾げていると、背後にいたプレセアがバニースーツの何かを急に引き上げた。

「ぐっ⁉︎」

「ファスナーが上がりきってないです」

「ど、胴回りが、苦しいのだが」

「きつく締めないと胸がこぼれ落ちてしまいますから」

「な、なるほど」

 胴回りの締めつけに耐えながらストッキングや残りのパーツを身につけていき、最後に髪を高く結い上げる。ハイヒールを履き、姿見で見た目を確認すると、プレセアはこくりと頷いた。

「大丈夫そうです。これなら気づかれないと思います」

「だといいが……とにかく、早くジョルジュと合流せねば」

 そろそろ多くの社員が出社する時間となる、色々な意味でこの姿を見られたくはない。私はプレセアと共にエレベーターに乗り、ジョルジュの待つ階のボタンを押した。

 階下のジョルジュと合流し、人の少ない時間帯に加えてなるべく人通りの少ない通路を選び、試着を行う会議室に入る。会議室で待っていたのは、衣装デザイン部門の社員達だった。

「失礼いたします」

「モデルさんになれる方が見つかりました」

「彼女が今日の試着を担当するスタッフだ。よろしく頼む」

「プレセアさん、社長、本当に見つけてくださったんですね!ありがとうございます!」

 おそらくプレセアに相談した女性社員が近づき、私の姿をまじまじと見る。そして満足げに頷くと、私に向かって深々と頭を下げた。

「試着にご協力いただき、本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いしますね」

「こちらこそ、本日はよろしくお願いいたします。不慣れな点もございますが、ご容赦いただけますと幸いです」

「まあまあ、そんなにかしこまらないでください!それではこちらに」

 そう言われて、机で囲まれた空間の真ん中に立たされる。私を囲む衣装デザイン部門の社員は、皆女性のようだ。慣れない姿になる者への配慮に安堵しつつ、しかし全方位から見られているのは少々落ち着かず、私は視線を泳がせた先でジョルジュとプレセアに助けを求めようとした。

(わ、私はどうすればいい……?)

 この後の段取りが書かれた資料は、一応目を通している。衣装調整とスーツの利便性を検証するため、社員達の前で着替えをしていくことになっているのだ。しかし、いざその場に立ってみると身体がうまく動かない。そんな様子を見て察したのか、二人は助け舟を出そうとした。

「モデルのスタッフさん、バニースーツを着るのは初めてだそうです。私が着替えのお手伝いをします」

「それでは、サポートはプレセアに任せて私は会議室から出させていただこう。そろそろ社長室に戻らねばならぬ時間なのだ。それに、私が見ている中では彼女も着替え辛かろう」

「かしこまりました。それでは、ジョルジュ社長が退室次第試着を始めましょう」

 ジョルジュが社員達に会釈し会議室を出ると、早速社員の一人が衣装を差し出し、私をモデルにした試着と衣装調整のテストが始まった。

 まずは今の衣装を脱いで、プレセアの手も借りながら差し出された衣装に着替える。下半身はミニスカートで覆われ、胸元と背中は筒状に覆われているものの、僅かに谷間ができるようになっている。袖の膨らんだ上着もあって全体的に露出は少なくなったが、どうも私の体格や顔つきでは似合っていない気がする。そしてやはり、胴回りがどうしても気になる。

「セクシーというよりも、可愛いタイプのデザインですね。昼の業務にあたる若手のスタッフに合わせたデザインですが、ご試着した印象はどうですか?」

「その、私の体格では少々不釣り合いのような気がす……します。若手のスタッフには好印象と思われますが、ベテランや背の高いスタッフは、あまり好まないかと」

「なるほど……今回のデザイン案では一番可愛く、身体が見えすぎないのがいいと思ったんですが」

 ああでもないこうでもないと議論する社員達を横目に、プレセアに目配せをする。背を丸め、耳打ちするように問いかけた。

「やはり胸元よりも胴回りが苦しいのだが」

「これ以上緩めるとずれてしまいますから」

「耐えなければならぬ、か」

 十分ほどの議論が終わり、次の衣装を渡される。上半身は既存のデザインと変わらないが、下半身はスリットの入ったミニスカートとなっており、タキシードのボタンをかけてしまえばかなり落ち着いた雰囲気だ。

「一気に大人っぽくなりましたね!」

「うむ……ええ、この程度の露出であれば、カジノでもリゾートエリアでも問題ないと思われます。ただ、昼間の暑い時間帯にはタキシードを脱ぎ、カフスはタキシードのポケットに入れておく必要があるでしょう」

「モデルさん的には、着心地はどうですか?」

「先程の衣装よりは恥ずかしくありません。年齢、体格問わず着やすい、かと」

 再び議論が行われている間に、プレセアを介して次の衣装が手渡される。今度は彼女から私に目配せをされ、こっそりと言葉を投げかけられた。

「リーガルさん、恥ずかしがっていても意見はとても真面目に出していますね」

「あくまで案件だから、真剣に考えなければならないだけだ。社員達にもしっかりとしたフィードバックを渡さねば」

「そういうところは、やっぱり変わらないんですね」

「……」

 議論が終わり、次の衣装に着替え、率直な意見を述べ、また議論が始まる。プレセアの助けもあって、会議はスムーズに進んでいる。

 プレセアに言われた通り、本当はどの衣装も恥ずかしくてたまらない。明らかに女性として見られ、女性社員ばかりとはいえバニースーツを着た姿をくまなく見つめられるなど、元の身体ではまず体験しない。女性の身体には慣れ始めているが、女性として扱われることにはまるで慣れていないのだ。しかし、案件を受けたからには役目を全うしなければならない。私は恥に耐え何着もの、ときに違いもほとんどわからぬバニースーツを着続けていった。

「これが最後のデザインになります」

(や、やっと終わる……!)

 そんな安堵も束の間、私に与えられたのは水着に光沢感を与えたような生地でできたバニースーツ、脇の下ほどしか覆えないコルセット風のベルト、そして非常に艶のある素材のストッキングを挟んだガーターベルトであった。しかもバニースーツの付け根部分は腰どころかあばらの位置にあり、腹部には大きく穴が空き、胸元と背中には大きなハート型の穴が空いた、あまりにも煽情的な形状だ。こんな布面積では胸元が丸見えなうえに横からもはみ出してしまう、それに尻に至っては丸出しではないか。ウサギの耳と尻尾は付いているが、格好はとてもバニーとは言い難い。

「待て……お待ちください!もしかして、これを試着しろ……しなければならないのですか⁉︎」

「はい、セクシーなバニーと最高の駆け引きをというコンセプトのもと、デザインしたものです!」

「この衣装はセクシーというより卑猥では……駆け引きどころかカジノの風紀を乱すのでは……」

「それはとりあえず着てから確認しますので」

「早く着替えましょう。私も手伝いますから」

「う、ううっ」

 バニースーツとストッキングを脱ぎ、ガーターベルトを履く。柔らかく伸縮性のある生地のバニースーツは、胸元のハートを作るスナップボタンのおかげで腹が立つほど着やすく、胸の下に巻かれたベルトも苦しくない。幸いなことに下腹のシートは最低限のラインで隠れており、胸元は誰が着用しても先端のシートをしっかり守れる程度には布がある。しかし、やはり恥ずかしいものは恥ずかしく、しかもこのような姿をしている私を何人もの社員達が真剣に見つめているのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「すごい……モデルさんの体型もありますけど、とんでもなくセクシーです!」

「お尻も大きいですよね。スーツでシルエットが変わらず、触れないのが惜しい形です」

(言うな、プレセア……)

「そのまま歩いてみてください。ふむふむ、なるほど……胸元はそれなりに支えられてるので揺れも過剰になりませんね」

「セクシーで体型を最大限に活かすシルエット……これいけますね!特にバニー目当てのスケベ貴族達なんて一撃です!」

「ディーラーとして立ってるだけで、いやフロアで歩いてるだけでお財布も即スッカラカンですよ!」

「この衣装でスケベ貴族達をカモにしましょう!」

(テセアラの貴族はそのように思われているのか……)

 今バニースーツを着ているのもまた貴族なのだがとか、カジノに来る貴族はそこまでスタッフに下品な視線を向けているのかとか、問い詰めたいことはそれなりにあるが、それよりも私はある身体の変化に気づき、一気に汗が噴き出すのを感じた。

(な、嘘……)

 感じるはずのなかった、少なくとも先程までは起きることのなかった変化に、身体が熱を帯びていく。下腹が切なくなるような、覚えのある感覚が蘇りかけている。何故、今のタイミングなのだろうか。社員達の目線は恥ずかしくはあるが、私の欲を煽っているわけではない。ということは、私の身体の火照りの原因は……

「どうしましたか?」

「い、いや……」

 下腹に食い込むバニースーツが、どこかもどかしい感触を呼び起こす。残り十数分でこの空間から解放されると安堵する一方、解放された後のことも考えてしまう。プレセアが用意した「対処」とは、私はこの後何をされるのか……考えると身体が疼き、身体の疼きが欲への期待を考える。吐息がすこしずつ熱くなっていることを、身体の疼きに耐えていることを、社員達に気づかれてはいないだろうか。

 まだその時ではないのに、じりじりと脳を焼く欲望が私を背徳へと誘い、考えてはいけないことを考えてしまう。早くこの案件の褒美か、あるいは仕置きが欲しくてたまらない、と。

(いくら特殊な案件とはいえ、これは仕事……仕事、なのに……)

 言葉として処理できない議論、バニースーツの中まで知っている彼女の視線、内股に伝う汗。光沢のある生地に染みができることはないが、下腹の心地と全身から滲む汗が私の理性と感情を揺さぶる。我慢の限界に近づき、両脚が微かに震えたその瞬間、私にとって救いの言葉が告げられた。

「以上で試着は終了です。ご協力いただき、本当にありがとうございました」

「は……お役に立てたならよろしいのですが」

「もう、本当に参考になることばかりでしたよ!プレセアさんもモデルさんを見つけてくださってありがとうございます!」

「どういたしまして」

 やっと終わった、なんとか耐えられた。元のバニースーツに着替え、脱いだスーツの状態を確かめる。下腹部の裏地は多少湿っているものの、局部に貼ったシートのおかげでなんとか染みにはならずに済んでいた。後は人気のない通路から社長室に向かい、行きと同じように衣装ケースに隠れて帰ればいい。そう思って机の囲いから抜けたそのとき、予想外の言葉をかけられた。

「あ、その衣装持って帰っていいですよ」

「な、何故……っ⁉︎」

「試着の間にセクシーさはそのままに、より可愛さを押し出せるデザイン案が出たんです。要するにボツになっちゃったんですね」

「は、はあ」

「ただ、すごく似合っていらしたので謝礼としてお贈りすることにしました。ぜひプライベートで着てみてくださいね!」

(こんな衣装など、どこで着ろというのだ……)

 不要な衣装を半ば強引に押し付けられた気がするが、もらってしまった以上社員達の気持ちを無下にすることもできない。仕方なく私はバニースーツという名の何かを手に、プレセアと共に会議室を後にした。

 

 人目を避けて社長室に戻ると、机の上にジョルジュの書き置きがあった。どうやら別件で一時的に外出しているらしく、先に自邸に戻っていてほしいとのことだ。私はプレセアと共に自邸に戻ると書き置きを残し、自邸から出たときと同じように衣装ケースに身を潜めた。

 プレセアの押すワゴンに揺られ、衣装ケースの中で待つこと約十分。突然差し込んできた照明は薄暗く柔らかかった。どうやら、無事私室に辿り着いたようだ。

「お疲れ様でした。部屋に鍵をかけたので、もう大丈夫です」

「すまない、世話をかけた」

 衣装ケースから抜け出し、大きく伸びをする。さすがにハイヒールはもう履いていないが、丈夫で崩れにくいバニースーツで衣装ケースに隠れるのはかなり窮屈だった。

 試着は色々な意味で大変だったが、あとは身体が元に戻るまでこの部屋で待つだけだ。風呂と用を足す際は部屋を出るが、食事は部屋に届けるよう命じている。プレセアには客室を用意しているが、おそらく使われるのは就寝時くらいだろう。

 間接照明で薄暗い室内、整えられたベッド、鍵をかけて誰も入れない空間に、バニースーツを着た私と何故か防水性のコートを着だしたプレセアだけがいる。このために、というわけではないが、恥を忍んで受けた案件の報酬が支払われるのにはおあつらえ向きの状況だ。

「リーガルさん、最後の試着でいやらしい気分になっていましたね」

「そ、そんなことは」

「デザイン部門の皆さんは気づいていませんでしたが、すこし顔が赤くなってました。それに、内股に汗をかいてました」

「そこまで、よく見ていたのか……」

「それでも試着が終わるまで我慢したリーガルさんが、案件を受けてくださったいやらしいバニーさんが、満足できる報酬を用意しました」

 そう言って、プレセアは背後にあるバニースーツのファスナーを全開にする。胴回りの苦しさがなくなった代わりに、先端にシートを貼った両胸が露わになってしまった。

「あ……っ」

「この状態でもいいですけど、いただいたバニースーツの方がより満足できると思うので着替えましょう」

「……っ」

 あんな衣装などいつ着るのかと思っていたのに、その「いつ」がたった今来てしまった。あの衣装はこのバニースーツよりも遥かに恥ずかしいが、身体は彼女から与えられる報酬に正直で、私は言われるがままに着ていたバニースーツを脱ぎ、より着やすい代わりに露出の高いスーツに着替えたのだ。

 薄暗い室内でも、やはり扇情的な姿になっているのだと感じられた。辛うじて隠された下腹、側面からはみ出し、谷間が強調されるように開いた胸元、スーツが食いこんで丸出しの尻。まるで自ら恥辱を求めているようなバニースーツに、下腹は再び疼きだした。

「デザイン部門の方が仰っていた通りです。とてもよく似合ってます」

「そんな、こと」

「女の人としての身体が綺麗なこと、バニーさんとして見るのが楽しいこと、そして、恥ずかしがりながら期待している顔をしていること」

「わ、私は、そんな顔は……」

「そろそろ始めましょう。まずはソファの後ろに立ってみてください。背もたれを掴んで、胸と顔を乗り出すような姿勢で」

 プレセアは手袋を外してソファの座面に片膝をつき、背もたれをとんとんと叩く。要するに、彼女に向かって胸を突き出す姿勢になれということだろう。背もたれはさほど高くなく、私は胸を寄せ上げるような体勢で背もたれを掴み、腰を反らした体勢で上半身を乗り出した。

「こ、こうだろうか」

「はい、その姿勢のままでいてください……間近で見ると、本当に大きいです。スーツが窮屈に見えるくらい……」

「そんなに、じっくり見られると、その」

「今更だと思います。これまで、もっと恥ずかしいことをしてますから」

「それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいのだが……」

「じゃあ存分に恥ずかしがってください」

「じゃあ、とはどういう……あっ」

 彼女への言葉を繋げる前に、微かだが甘やかな刺激で途切れてしまう。彼女の両手が私の胸を下から鷲掴み、ゆっくりと揺らしながら揉みしだき始めたのだ。

「大きい胸が波打つように揺れています。触り心地のよさも変わりなくて何よりです」

「ん、それは、っ、褒めているのか?」

「褒めてます。見るのも触るのも楽しくて、どんどん知りたくなります。例えば、触る場所での細かい反応の違いとか」

「っ、ぁ……はぁ」

 スーツからはみ出した胸を指の腹で押されたり、胸をさらに寄せて上げられたり、かと思えば手を離して揺らされたり。以前ほど荒々しく触られてはいないが、その分心地よいと感じてしまうことに己の慣れと欲深さを自覚してしまう。性への渇望という花は、彼女の手によって一枚一枚丁寧に開かれていた。

「ぁ、ぅ……」

「まだ外から触ってるだけなのに、気持ちよさそうです。これも試してみましょう」

 プレセアは胸を触る手を止め、テーブルに置かれた紙袋から何かのボトルを取り出す。そしてボトルの蓋を開けると、寄せ上げられた胸の谷間に中身を垂らす。粘性の高いオイルのような液体は胸の谷間を伝ってスーツと胸の下の隙間に溜まりつつ、谷間の上にも小さな水溜まりを作った。

「これは……スパリゾートのマッサージオイルか?」

「はい、新しい香りのサンプルをもらったので持ってきました。オイル自体に変な効果はないので安心して使えます」

「そう、なのか……んっ」

 オイルの溜まった胸を下から掬われ、何かを擦るように上下に揺らされる。谷間の上のオイルと胸の下に溜まったオイルが音を立てて跳ね、寄せ上げられた胸を濡らした。

「っ、あっ、ぅ」

「胸全体に行き渡るよう、広げますね」

「っ、は、ぁあ……」

 スーツと肌の間に両手を差しこみ、オイル塗れの谷間から横にはみ出た乳房に向かって満遍なく塗りたくられる。ラベンダーの爽やかでほのかに甘い香りが広がっていくことに、かえって羞恥を煽られる。オイルを塗られ、マッサージのように揉みこまれて、心地よくも焦れるような快感に浸ろうとしていた。

「あ、ぁっ、そこ、んんっ」

「気持ちいいですか?すこし、物足りないですか?」

「そ、れは」

「感じたことは正直に伝えてください」

「こ、心地よくて、ただ……その触り方だと、っ、もどかしい、ような」

「たしかに、このままだと私も触りにくいです。前も開けましょう」

「ん……」

 返事を求められる間もなく胸元に付いていたスナップボタンを外され、めくれたスーツからオイルに塗れた両胸が露わになった。先端に貼られたシートは剥がれていないが、シート越しでもうっすらわかるほど、先端は主張を始めていた。

「すごい景色です。バニーさんの姿も、スーツからこぼれた大きな胸も、恥ずかしがる顔も」

「や、やはり、楽しいの、だろうか。私の身体を、こ、こうして、弄ぶのは」

「はい、とても楽しいです」

「あ、ああっ」

 シートの際を指の腹でなぞられ、胸を揉みしだかれ、シート越しの先端を爪で軽く引っ掻かれる。決して強い刺激ではなく、しかし恐ろしいほど的確に私の性感を引き出す愛撫に、上半身を支える両腕と腰が震えだした。

「は、ぅっ、ぁ、そこはぁ……っ」

「胸だけで、そんなに気持ちよくなれるんですね。シートもまだ剥がしていないのに」

「い、言うな、っそんな、こと……ああ……」

 彼女の爪がシートの縁を掻いて剥がそうとしては、指を離して別のところを触りだす。手での愛撫を受けながら、焦らされている。彼女は私が求めるまで、あえて察しないふりをする。敏感になっていく胸も、疼いてたまらない腹の底も、欲を求める私の心さえも、彼女の手のひらでこんなにも簡単に転がされてしまうのだ。

「は、はっ、ぁ、んんっ……じ、焦らすのは、や、やめて、くれ……っ」

「それでは、リーガルさんは何をしてほしいんですか?」

「し、シートを剥がして、っさ、触られ、たい……疼いて、うずいて、たまらないっ」

「どこを、どう触ればいいですか?」

「い、言えぬっ、ぁ、そんな、こと……言えな、ぁっ」

「欲しがるのに言えないなんて、いけないバニーさんだと思います」

 そう言うとプレセアは私の胸から手を離し、ソファを降りて私の後ろに回る。スーツを脱がせて、シートを剥がすつもりなのかもしれぬ。しかし薄暗く背徳的な願いを砕くように、尻たぶに鋭い痛みが走った。

「あっ⁉︎プレセア、な、何をっ、んぁっ⁉︎」

「お仕置きです。正直になれない、お尻の大きなバニーさんにはこうします」

「ひっ!あ、うぁっ!」

 鞭のようにしなりを効かせた彼女の手のひらが、私の尻を思い切り叩く。力強く尻を叩かれる度に目の前の胸が揺れ、汗とオイルで濡れた肌が大きく音を立てる。内股に伝うものが汗だけではないとわかって、今まで自覚していなかった一面を見出すと、腰がぶるりと震えた。

「お尻を叩かれるのが好きなんですか?お尻もこっちも、すごいことになってます」

「はっ、あっ!んっ!わ、わからなっ!ああっ!」

 尻を叩かれながら内股を擦り合わせ、貪欲に刺激を求めて下半身を誘うようにくねらせる。仕置きにすら興奮する身体を恥じつつ、それでも刺激と与えられぬ褒美には逆らえず、私は被虐の悦びに目覚めた女性として屈服してしまった。

「正直に、おねだりできますか?」

「する、するからっ!叩くのは、やめてくれ、っああ!」

「おねだりがちゃんとできるまで、終わらせません」

「スーツを、あっ!脱いで……!シートをっ、剥がして……胸を、先端を、もっと、っ!弄られたい……!」

「正直になれましたね。偉いです」

 プレセアは尻を叩く手を止め、スーツの背面に手をかけられる。胸の下のベルトを外され、うなじから背中の穴に続くスナップボタンを外され、背中の穴から尻の上まで続くファスナーを下ろされると、身体が解放される感覚に陥る。促されるまま腕の部分も抜くと、スーツは完全に私の身体から離れた。

「はぁ……ぁ……」

 スーツが脱げても、襟とカフス、ウサギの耳とガーターベルトは外されていない。今の私はシートだけで局部を覆った、淫猥なバニーと化していた。

 

 叩かれ続けた尻は痛み、しかしその痛みすら心地よく感じている。羞恥を具現化したような姿になっても、褒美に期待する自分がいる。私の心を見透かすように、プレセアの瞳は薄暗い照明の中で輝きを湛えていた。

「おねだりできたバニーさんには、ご褒美をあげますね」

 プレセアが再びソファに乗り出し、私の胸を見つめる。そして両胸のシートに爪を引っ掛けると、ゆっくりと時間をかけて剥がしていく。焦らされながら剥がれていくシートが完全に肌から離れたそのとき、シートに引っ張られていた胸が大きく揺れた。

「んんっ!」

「もう準備はできているみたいです。それではご褒美を始めましょう」

 オイルの滴る胸をなぞり、その指先は先端に辿り着く。そして親指と人差し指で根本を握ると、すこしずつ力を入れて先端を引っ張られた。

「あ、ぁ、こ、これは、っまるで……んん!」

「もちろん何も出ませんけど、多分こうされるのも好きかもしれないと思いました」

「そ、んな、ああぁっ!」

 根本を握る親指と人差し指はそのままに、残りの指が先端を握ると同時に下へと引っ張り、そして元に戻す動きを繰り返す。交互に左右の胸を引っ張るその行為は、まるで私の乳房から何かを搾り出そうとしているようにも見える。その行為を繰り返しても何も出ないことはわかっているが、それでも新たな背徳は私の身体に快感を与え、吐息をより甘く熱いものに変えた。

「ぁ、はぁ……はぁ、っ、あ、あ、ん……っ」

「やっぱり、こうされるのも好きなんですね。うっとりした顔になってます」

「あ、ぅう……っ、あっ……っ⁉」

「!」

 両胸を同時に引っ張られたそのとき、与えられた刺激と滴り落ちたオイルで手を滑らせ、私は身体のバランスを崩してしまった。咄嗟に肘をつき、背を反らし、プレセアと頭をぶつけることは避けられたが、胸の上に乗る重さで今の体勢がどうなっているか気づく。おそるおそる視線を下げ、背もたれを掴み直そうとした私の両手首を、彼女はとんでもない握力でがしりと掴んだ。

「プ、プレセア、は、離せ、はな、して……んっ」

「だめです。またバランスを崩してしまいますし、今の体勢もいやらしくていいと思います」

 プレセアは片手で私の両手首をまとめると、テーブルに置かれた紙袋からリボンを取り出し、背もたれの向こう側で手首を縛りつけてしまう。両手の自由を奪われ、両胸を見せつけるように差し出し、尻を高く上げる私を一瞥し、プレセアは再び私の胸の上に頭を乗せた。

「このまま胸だけで気持ちよくなって、一番いやらしいところを見せてください」

「なっ……ぁ、あっ!」

 プレセアが顔を埋めた谷間から、オイルとは違うぬるりとした感触が襲う。弄られ続けて敏感になった先端から、微弱な電流のような快感が脳へと駆けていく。彼女の頭を挟むように乳房を揉まれ、先端を親指で捏ねられ、汗とオイルで滴る谷間を舐められ、内股を擦り合わせていた両脚はガクガクと震えだした。

「だ、だめだっ、ぁ、お、オイル塗れの、胸をっ!な、舐める、など、っああ!」

「ん、ふ、大丈夫、です……スパリゾートの、オイルは、はぁ、口に入れても、んっ、平気な成分ですから……」

「う、ぁ、こんな、んん!胸、ばかりっ、責められたらぁ、っ!」

「触られて、っ、ないところから、ん、溢れてしまいそう、ですね」

 背徳と酔いの中で聞く彼女の言葉に、私はあることを思い出す。そう言えば、今日は一度もナカに何も挿入されていない。それどころか、秘部を隠すシートすらまだ剥がされていない。それなのに胸だけで下腹の疼きが止まらなくなり、尻を叩かれてシートが意味をなさぬほど愛液を滴らせ、欲求をこれでもかと引き出されている。私の身体は、女性としての私は、背徳と欲望のもとにさらなる開発を彼女に施されている。

「は、ひっ、からだ、からだがっ!か、変わってしま、ああっ!」

「変わって、っ、ないです。はぁ、女の人のときの、っふ、あなたの身体が、とびきりいやらしいだけ……」

「ち、ちが、お前の、指が、っ舌があっ!わたしの、か、からだ、を……っ!」

 そうだ、そうに違いない。私が淫乱なのではない、プレセアの指使いが、舌使いが、私の身体を開発するほどの技量なのだ。どこで習得したかは知らぬ、考えたくもない、しかしそう信じることで己の受け入れた以上に淫猥な一面を否定してしまいたい。しかしそんな私の願望を見透かすようにプレセアは私の胸から顔を離すと、口角を僅かに上げてささやいたのだ。

「本当は、わかっていますよね。私が得られる知識は、せいぜい本に書かれていることくらいしかないと」

「な……っ」

「本で読んだ程度の知識で触る私と、それくらいの触れあいで毎回絶頂してしまうあなたと、どちらがいやらしいか、わかりますよね」

「あ、あ……」

 彼女の口元が、既に空気の揺らぎまで敏感に捉える先端に近づく。そして小さく口を開けると、絞り出せない何かの代わりにオイルの雫を落とす先端に吸い付いた。

「あああっ!く、ううっ!」

「ん、んっ……」

「ぁ、あっ!し、舌、いけないっ、ああっ!だめだ、両胸、一緒に、いいっ!いじる、なんて……!」

 プレセアの唇が膨らんだ先端の輪を吸い、舌先が胸の先端の敏感な場所を突く。そしてもう片方の先端は、人差し指の先で敏感な場所を突かれていた。

「あっ、あっ!ひ、んぁっ!」

「う、ん、んっ」

 両胸の先端が舌と指先を受け入れようとしては、名残惜しくしがみついてしまう。まるで下腹に挿入されたときのように、作りものの男性器と情事に耽ったときと同じように、抜き挿しされている感覚が脳と身体を支配する。私は今、胸で情事を行い、彼女と番ってしまっている……そう感じた途端、触られてもいないナカからも快感が襲いかかってきた。

「ぉ、あっ!あ、ああっ!き、きてしまうっ!これ以上は、あっ!こ、これ以上はぁっ!」

「んっ、ん、ふ、んん」

 哀願も虚しく、彼女の舌と指は容赦なく私を追い詰める。辛うじて立っている両脚の間からは、既に愛液が溢れて足元まで伝ってしまっている。このままもしあの絶頂が訪れたら、胸だけの刺激であれを噴いてしまったら……そう考えると恐ろしく、己の欲深さと罪深さが恥ずかしく、それでも快楽と背徳に期待して手を伸ばしてしまう。女性の身体でしか起こらぬ性への渇望を受け入れた先に待っていたのは、底なしの快楽を求めて乱れる「私」だったのだ。

 舌と指の動きが速く激しくなり、唇は強い力で先端を吸い上げ、残りの指が絶頂を促すように乳房を弄ぶ。私の限界は、目の前まで迫っていた。

「あ、あっ!ああっ!くる、でるっ!むねで、あ、ぁ、う、ああああっ‼︎」

「んっ……!」

 先端を強く吸われる感覚をスイッチに、喉元を大きく反らし全身を大きく震わせ、意識が飛ぶような感覚と共に私の身体は絶頂を迎えた。下腹で弾けるように溢れ、シートで抑えきれなかった絶頂の証はシートの隙間から漏れ出し、あるいはシートの素材を通り抜け、足元でパシャパシャと音を立てる。本当に、胸だけで床を汚すほどの絶頂を迎えてしまった。私の身体はより貪欲に、敏感に、淫らに快楽を享受できるよう開発されてしまったのだ。

 絶頂の波が収まり、胸元へと視線を下ろす。触れるか触れないかという具合で両胸の先端をさする彼女は、やはり微笑みを浮かべていた。

「胸だけでも、ちゃんと出せましたね。私にもちゃんと聞こえていました」

「ぁ、ぁっ、あ……」

「いやらしい姿も、綺麗な顔も、触り心地のいい身体も、いつ経験してもいいものです。リーガルさんは、満足できましたか?」

「ん、ぁ……」

「気持ちいいけど、まだ足りなさそうですね。本当に、女の人になると欲しがりさんになりますね」

「は、は、プレセア、この後は……」

 私の問いかけに、プレセアは部屋の時計を一瞥する。そして私の身体を解放すると、オイルに濡れたコートを脱いでテーブルの上を整えた。

「そろそろ夕ご飯の時間みたいなので、私は一旦お部屋に戻ります。ご飯とお風呂が終わってから続きをしましょう、そのときになったらドアをノックしますから」

「し、承知した……おそらく風呂は私の方が先に終わるが、何か準備することはあるだろうか?」

「そうですね……お風呂が終わる頃にはカジノの営業が始まりますよね」

 再び私の背後に周り、汗ばんだ背中を指でなぞりながら、プレセアは恐ろしくなるほど穏やかな声で私に言い放った。

「この部屋で遊ぶ準備をしていてください、バニーさんとして」

 その言葉を残して、プレセアは私の部屋を去った。一度バスローブに着替えると、ほどなくして食事が運ばれる。なんとか興奮を抑えながら部屋の前で夕食を受け取り、食事と風呂の時間で冷静さを取り戻しながらも、自室に戻った瞬間に身体が熱を持つ。プレセアがドアをノックするまで、そう時間はかからないだろう。何を望まれているか、そして私が何を望んでしまっているか。自ら卑猥な衣装に手を伸ばし、手早く着替えてテーブルの準備をし、来訪者を待った。

 待つことおよそ十分、ドアをノックする音が聞こえた。この時間帯に、私の部屋を訪れる者は一人だけだ。私はドアをすこしだけ開け、手招きをする。来訪者が部屋に入り、鍵を閉めたところで私は「おもてなし」を始めた。

「いらっしゃいませ、お客様。当リゾートのカジノへようこそ」

 食事の前に使ったものと対面のソファにプレセアを通し、テーブルを挟んで向かい合う。テーブルの中心にトランプの山札を置き、カジノ用のチップを配り、私は淫らな報酬の跡が残るソファに座った。

「当カジノではお互いのチップの枚数に応じて、お客様に様々なサービスをご提供いたします」

 ハート型の穴から覗く胸の谷間から手書きのリストを取り出し、テーブルの上に広げる。プレセアのチップで要求できるサービス、私のチップで自ら提供するサービスを並べたリストである。どうしてもできないことはリストに書かなかったが、内容を確認したプレセアは納得するようにうなずいた。

「本当に、いやらしいバニーさんです。いやらしくて綺麗な姿を、たくさん見せてくださいね」

「はい、今夜はこのバニーの身体で……特別なカジノをお楽しみくださいませ」

 そう言って山札からカードを配ると、ソファから立ち上がり深々と一礼する。局部に貼るシートが使いものにならなくなり、素肌にそのまま着用したバニースーツからは胸の先端が浮き、下腹部はゲームが始まる前から既に愛液でしとどに濡れていた。

 

 目が覚めると、私は裸のままベッドの中にいた。どうやらベッドに向かう前にトランスボトルの作用で眠りについてしまい、プレセアに裸で担がれたらしい。身体は男のものに戻っているが、あたりを見回すと昨夜の跡がほとんどそのまま残っていた。

(夢ではない、悪夢でもない、か……)

 トランスボトルの効能で、身体は何事もなかったかのように軽い。しかし脳裏に残った昨日の出来事を思い返し、私は罪悪感と羞恥心に頭を抱えた。頭を抱えることが、身体が元に戻った直後の恒例行事と化している気がしなくもないが。

 カジノの真似事をしたのは、女性の身体での経験を重ねるにつれて淫乱になりゆく己を誤魔化そうとしたからだ。あえて卑猥な衣装を身に纏い、淫猥なゲームを持ちかけることで、私はただ淫乱な女性を演じているのだと錯覚したかった。しかし、いざゲームが始まると、私の欲求が演技という言葉では到底誤魔化せないことに嫌でも気づかされたのだ。

 ゲームが始まってから眠りにつくまでの間、私はバニーとして実に様々なサービスを行った。ナカに玩具を挿入し、再び胸で絶頂し、後ろにも玩具を挿入し、玩具を挿入したままナイトティーの給仕をし、尻を叩かれて絶頂し、脚を大きく開いて自慰を見せつけ、両胸の先端に鈴付きのクリップを挟まれ、胸の鈴を鳴らしながらナカと性感帯を責められてソファとテーブルを汚し……それ以外のサービスも、人には到底言えぬ淫らな内容だった。使用人が部屋を掃除する前に片付けねばならぬ部屋の惨状が、それを物語っている。

 何より、サービスを行っていたときの私は、痴態を晒すことに全く躊躇いがなかった。それどころかサービスをすることで与えられる快楽を受け入れ、悦び、さらなる快楽を前に腰を揺らしてすらいた。意識が落ちるまで「お客様とバニー」の役割を崩さず淫猥なゲームに興じた時間に、演技の入りこむ余地はなかった。私は、女性としての私は、受け入れた以上に性を渇望する淫乱な身体を持て余す存在だったのだ。

(あのようなこと、この身体であれば決してしようとも考えぬ。身体が精神を変えてしまうのか、それともこの身体への抑圧の反動なのか……抑圧しているつもりはないのだが)

 そう、本当に女性の身体になったときだけなのだ。心も身体も、あれほど背徳や快楽を受け入れてしまうのは。しかも、私自身も原因も対処法もわからない。幸いなことに、女性の身体になることは頻繁に起こるものではない。ただあの薬を飲まなければいいだけだ。

(私があの劇物に依存しなければよいだけだ。幸い依存性のあるものでもない、この身体が快楽を求める体質でない限りは自制できるだろう。さて……)

 時計を見ると、既に早朝鍛練の時間は終わっていた。プレセアもこの屋敷を出たか、残っていても朝食を食べている頃だろう。私はとりあえずバスローブを羽織り、使用人が掃除に来る前に目の前に散らかる行為の跡を片付けることにした。

 

終

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