はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話 作:ケロリビドー
俺の名前はライオット。ダンジョンマッピング師で、ライオット班の班長だ。班のメンバーはアーダとマノン。アーダは夜目が利いて素早く器用だし、マノンは子供だが浄化の腕がいい。俺はというと何の変哲もない戦士だ。おまけに童顔だし。まあ俺のことはいいじゃないか。二人の女に助けられて、新進気鋭のマッピング師としてバリバリ働いてたわけだ。
最初はアーダと二人で冒険者をやってたんだ。マッピングじゃなくて、ダンジョンから資材や宝箱の中身を持って帰ったり、依頼を受けたりとかしててな。だけど去年、レイモンドからマノンを仲間に入れてくれないかと頼まれた。もともとマノンはレイモンドの班でダンジョンマッピングをやってた子だったんだが、本人の希望で班を抜けたいと言い出したらしい。レイモンドは、「自分がちゃんとしていないせいで人にマノンを任せることになったのは心苦しいのですが、ライオットなら任せられると思ったので、是非ともお願いしたいんです」と真剣に打診してきたので、断るなんてことはできなかった。レイモンドはダンジョン踏破第一号だ。あいつに憧れてる奴は多かった。そんな奴に認められるなんて俺としても嬉しいじゃないか。
そんなこんなで、マノンを仲間にしたんだが、マノンは仲間になるなりすぐに「ダンジョンマッピングをしたいんですの!」と言い出した。元々あの子はダンジョンマッピング師だ。そしてかなりやる気があり、なにより、レイモンドに対抗意識を燃やしているようだった。
「レイモンドがいなくても、わたくしはやれるってこと、思い知らせてやりたいですのよ!」
そんなことを鼻息荒く言っているので、アーダと相談して、結局今はダンジョンマッピングをしている。危険だが、マッピングは報酬がいいからな。
そうそう、マッピング師って仕事ができたのもレイモンドがきっかけなんだよな。一番目のダンジョンを踏破して帰ってきた後、どんだけの死闘を繰り広げて来たんだかあいつはボロボロで、「冒険者各々に探索を任せていたら、成りたての若い冒険者の命が危険すぎます。腕に覚えがある猛者でなくても安全に日銭を稼げるようになったほうがいい」とギルドに直談判したんだ。それで、ダンジョンを踏破したいと思うようなガッツがあるやつは申請して、マッピングをする。そうでないものは彼らの作った地図を参照しながら決められた階層で仕事をする。そんなやり方が確立したんだ。すごい奴なんだよ。レイモンドはさ。
でもあいつ女癖悪いんだよね。俺と出会ったのも娼館だったし。俺はそん時の仲間の冒険者に連れられて初めて娼館に行ったんだけど、絵物語から出て来たのかってな金髪のエルフが待合室でソワソワしてるんでなんの冗談かと思った。そうかと思えば俺の仲間に「彼はいくつですか? こんなところに子供を連れてきたらよくないですよ!」とか言うしさ。そんとき俺もう二十歳超えてたんだよ? 傷つくよなあ。まあその時はちゃんと話して俺が大人だってわかってもらったんだけど、雑談中に俺が「女に生まれたら冒険者なんかやってないでこういうところで楽して働けたのに」って言ったらめちゃめちゃ怒られたんだよね。
「自分の体一つで大勢の男を相手にするような仕事が楽なわけないでしょう! 君、自分より大きなモンスターと素手で一日五、六体とか戦いたいですか!?」って怒ってきてさ。なんだこいつめちゃくちゃ変な奴だなって思った。娼館の待合室で男に説教すんなよってさ。自分も今から娼婦抱くのになんかクソ真面目なこと言っちゃってさ。そんなことがあってから、たまに一緒にダンジョンに潜って仕事したりして仲良くなっていったんだよ。
レイモンドはそう言う奴だから、マノンがレイモンド班を抜けた理由が、レイモンドがマノンに手を出したせいだって噂してる奴もいるんだけど、俺はそれはないと思ってるんだよね。具体的に何があったのかとかはどっちからも教えてもらってないんだが、子供に手を出すような奴ではないからそれはデマだって思う。けど噂って大げさなほうが面白いからな。すごい奴の醜聞が何より好きなろくでもない奴もいっぱいいるしさ。
何の話だっけ。そもそもなんで俺は虚空に向かって自分の話をしてるんだ。ああ、そうだ。怪我が痛くてさ。こうでもしないと意識がなくなりそうなんだよ。だって、俺以外みんな死んでんだもんさ。賊が五人。二人は俺が斬った奴。
まったくこういうことがあるからさあ、マッピングしてないとこ勝手にウロチョロしないようにって取り決めがされてるってのにさ。欲かきやがって大馬鹿野郎共が……。あー、腹立ってきた。腹立ってるうちは元気だから大丈夫って誰か言ってたな。誰だっけな。まあいいか。
「休むのは一日だけで十分です。早く先の階層のマッピングがしたいですの!」ってマノンが言って、昨日またダンジョンに入ったんだよ。マノン、ダンジョン内でレイモンドにばったり会って興奮してたからね。あの時はレイモンドにかなり酷いことを言っていたんで焦ったんだけどさ。レイモンドの様子が最近とみにおかしいのも事実だし、なんだかんだレイモンドのことが気になるんだよね、マノンはさ。まあ、俺もレイモンドみたいにダンジョン踏破してみたかったしな。先に進んだんだけどさ。そこでこいつら、違反者に出くわしちまって。
ダンジョンの中で人間同士で戦って死んでも死体はモンスターが食っちゃうし、死人に口なしがそのまま通用する世界だから、ここはさ。あっちは突き出されたくないし、こっちは殺されたくないしで泥沼になっちゃったんだよ。
そしたら、あろうことかそこにデカいモンスターが突撃してきたんだ。あれなんだった? 俺、弾き飛ばされてよく見えなかった。マノンが逃げて、それを賊の一人が追いかけて行って、モンスターもどうやらそっちに走っていったようだ。俺はアーダに助けを呼びに行くように叫んだ。俺はダメだ。脚が折れちまったし、賊にもいくらかいいのもらってるし。レイモンド班は割と地上に戻ってから二日ばかり休むことが多いから、運が良ければレイモンドがギルドにいると思うんだ。けど、レイモンドは助けに来てくれるかな。マノンに酷いことを言われて、顔には出してなかったけど、あんなの気分が良いわけがないからね。ドーソンとリィナも怒ってたし、そもそもモンスターが跋扈するダンジョン内で人間相手に戦いたい奴なんていない。だから、断られても不思議じゃないと思う。けど、俺はマノンには助かって欲しいんだ。生意気で口うるさいけど、あいつはまだ子供だから。それに、レイモンドならきっと来てくれる。あいつはそういう奴だ。
アーダも怪我してたな。ここは、地下三十七階だったか。休まずに走り続けて、帰り道にもモンスターが出るだろうし、地上までたどり着けなかったとしても誰か他の冒険者と会えれば伝えてもらえる可能性はあるかな……。
「頼むぞ……アーダ……レイモンド……。マノンと、あとできれば俺のことも助けてね……」
俺の独り言が冷たい石の部屋の中で響いている。ここにアーダとマノンがいなくてよかったな。ライオット班で男は俺一人なのに、情けないこと言ってるの、聞かれたくないじゃない?
「あああああああ!!! 腹の傷! 痛え!! 足も折れちまったよ! こんなとこで一人で死にたくねえよ!! 誰でもいいから早く助けに来てくれよおお……!!」
もう全部どうでもよくなって、俺は泣きわめいていた。
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