はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話 作:ケロリビドー
その日私はドーソンとライオットと三人で食事をしていた。脚を折ってしまったライオットは今は杖をついて歩いている。もともと元気な青年なので日常生活にさほど支障はなく、落ち込んだりもしていないが、ダンジョンマッピングはさすがに無理なので療養中だ。ライオットが歩けるようになるまで、マノンとアーダの二人は私の班で預かり、一時的に六人でマッピングをするようにしている。今日はその報告会だ。リィナとシルキィ君は女性たちだけで買い物に行くらしく、不参加。行きつけの食事処の隅のテーブルで男だけの会食だ。こうしていても前ほどには非難の陰口や視線を感じることは多くなくなった。嘲りの声が聞こえない食事はいいものだ。
「純粋に昔よりもダンジョンが盛況だから、三人とか四人で潜るのがもう危なくなってきているんだなぁ」
「あまり多いとダンジョン内でもたつくので絞っていましたが、違反者に徒党を組まれると対処しきれないというのが今回嫌というほどわかりましたね」
「あの時はアーダひとりに伝令を頼んだけど、ああいう時何人かに頼めたほうが生存率はあがるね」
「今回は全員カルキノスにやられて死んだってことで、この街にいる冒険者の中ではマッピング前のダンジョンにフライングしようって奴らはしばらく出ねえと思うけどよぉ、流れて来た新参とかにまで自治ルールを守らせるのも限界があるなぁ」
もう今日は潜らないことに決めてるので、昼からエールを呷りながらドーソンが言う言葉は酔っている割には的確で、私は深くうなずく。いろいろと考えをまとめてギルドに提案する必要がある……。
「流れて来た新参っていえばさあ、シルキィちゃんって急にレイモンド班に入ってきたよね? 何? あの娘、レイモンドの今の彼女なの?」
「えっ? な、なんです? その言い方! わ、私エルフの里を出てから彼女とかそういうのいたことありませんけど!! というか、急に何の話ですか」
「いちいち狼狽えんなよぉ、俺も気になるわ。急に連れてきてなんか、なんだ? 契約だかなんだかしてるカキタレだとか言われてよぉ、話してみたら滅茶苦茶素朴ないい子だしよぉ。何がどうなったらあんな子とそういう関係になれるんだよ、羨ましいなあ」
「カキタレって……また野卑な言い草で……」
「お前の『お弁当』だって相当野卑だよ」
「え? レイモンドとあの娘って付き合ってないの? 付き合ってないのに性欲処理してくれるの? あんなスレてなさそうな娘が? 男の夢か?」
真面目にダンジョンの決まりの話をしていたはずなのに、なぜか両側からシルキィ君との関係を問い詰められる私。どうして?
「我慢しすぎるとああいう風になってしまうってこと、二人とも見てわかってくれたでしょう……必要なんですよ、私には彼女みたいな女性が」
「贅沢か!? 自分でマスかきするなりなんなりして抜けよ! どうしてわざわざ毎回女の子にやらせるの!!?」
「マ……って、エルフは自慰をしないんですよ……。私も自慰でイけたことないですし……」
ライオットは素面なのにいやに興奮している……。
「羨ましい! 俺もああいう可愛い彼女欲しい!! おんおん!」
「ライオット泣いちゃった!!」
「囃さないでください。ウソ泣きです」
まったく、収拾がつかない。けど私も実のところ、シルキィ君に負担をかけすぎではないのかという罪悪感のようなものが沸いては来ていた。彼女も私の精気に慣れて来たのか、初めての日のようにふにゃふにゃになるまで酔っぱらったりすることはなくなったとはいえ、最後には失神してしまうことが多いし……。
「あの……恥を忍んで聞きたいんですけど。二人は自慰ってどうやってやってるんですか?」
「は? イヤミか!? 急にエルフっぽいこと言うなよ!!」
「エルフっぽいかぁ? 今の」
「怒らないでくださいよ。私だって恥ずかしいんですから……ただ、確かに言う通り自分でなんとかできたらそれに越したことはないと思ったんです。ただ本当にエルフは自慰とかしないので、うまくできないんですよ……」
なんでこんな話になってしまったのかわからないが、いい機会なので私は二人に教えを乞うことにした。
「どうって、普通にこう、手で握って縦に……っていうか、レイモンドは精通はどうしたの?」
「60歳くらいの時に木に登ってたら変な感じがして……」
「そこは人間と大体同じなのかよぉ!! てか、レイモンド結構エロ絵物語とか読むじゃねえよ。ああいうので興奮とかしねえの?」
「あれは単純に話が結構面白いから好きで読んでるだけです。エルフは変わった物語に目がないんですよ。興奮したら娼館に行ってましたし……」
「ほんとうに贅沢な……。金がなくなるわけだ。でも、そしたら簡単じゃないか。見ながらしなよ。みんなそうやってるよ」
「ええ……あれ絵じゃないですか。それにインクと紙の臭いが強くて途中で萎えそうで……」
「お前はもうなぁ~。わかったわかった。いい考えがある。こうしようぜぇ。シルキィちゃんに脱ぎたてほかほかのおパンを借りろよ。それで抜けばぁ?」
「へっ? おパ……下着を? 借りる? そんなことして何するんですか?」
「ああそうだそうだそれがいい。シルキィちゃんのぬくもりと匂いで致せ。相手がいる奴のオカズの中では一番パンチがあるわ。パンツだけに」
「ライオットまで!?」
いまいちわからないが、実物を手にすれば自然とわかる、男ならわかると言われてこの話は終わりになった。私は釈然としないまま帰路につく。シルキィ君は帰ってきているだろうか。
自分の部屋に帰る前にココココン、とシルキィ君の部屋のドアを叩いてみるが、彼女はまだ帰ってないようだった。下でお湯を貰ってお茶でも飲むか……。
ポットにハーブを入れてお湯を注ぐと、部屋に蜜のような花の香りが広がる。これは町中にも割と植えられている花なので比較的安価で手に入れられるお茶で、鎮静効果があり、愛飲しているものだ。
「はぁ……」
一口すすってしばし考えを巡らす……。
「いやいや、私、なんて頼むつもりなの!!?」
さっきは特に何も考えず隣のドアを叩いたが、開けていきなり下着を強請る男に対して彼女がどう思うかとか、今になって急に心配になってきた。大体私は彼女の下着を借りて何をどうするつもりなんだ。
「そうだ、対価。対価がいるよな……」
思えば私は彼女の下着をこの間ビリビリに破ってしまった上に、今回また下着を借りて何かをするつもりでいるのだ。この間の分は報酬に上乗せして受け取ってもらったが、今回もいるよな……。
「しかし私は女性の下着の相場なんて知らないし、物の値段を払ってはいお終いって話でもなさそうだし……娼婦が一晩安くて小金貨二枚で……。直接彼女に何かするつもりではないから、一枚ぐらいが適当だろうか……」
悩んでいると、彼女の部屋のドアが開く音がした。どうやら帰ってきたらしい。しばらくうろうろと部屋を歩き回って悩んでから、意を決して私は再び彼女の部屋を訪ねた。
「はい! 喜んで!!」
彼女は突然の呼び出しに子犬のように喜んでついてくる。見えないが、スカートの後ろがばさばさとはためいているのでまた尻尾をぶんぶん振り回しているのだろう。こんな彼女に私は下着を強請るのか……。
「……今穿いている下着を、脱いで私に貸してくれませんか?」
「は?」
お茶を出して、小金貨を差し出し、下着を要求するとシルキィ君はぽかんとしていた。そうだね。は? 以外に言うことはないよね……。私は頭の上にハテナを連続で出しているような彼女に拝み倒して、なぜ下着が必要なのかを必死で説明し、乞う羽目になった。私は本当に何をやっているんだ。
「いけませんか……?」
食い下がるように乞う私に、シルキィ君はしばらく考えて……。
「わかりました。貸します。だけど、このお金じゃいやですね」
そうですよね。そうですとも。勝手に値段をつけて、失礼極まりない。
「そうですか。それではいくらだったら……」
「お金はいらないので、ちゅーしてください」
ちゅー、と薔薇の実のようなぷっくりした可愛い唇を尖らせて、シルキィくんは私を見上げる。
「えっ!?」
舌を入れるいやらしいやつじゃなくて、優しく、ちゅ、ってしてください、とスカートの裾を握ってもじもじ見てくるシルキィ君の上目遣いを見ていると、私は頭が沸騰しそうになってきた。いやいや落ち着け。初めて会った時もそういうキスはした! 「キスをしても?」なんて余裕綽々に宣言して、確かにした! だけど、今日はなんだか、すごく照れる。目を閉じて唇を突き出し、今にも咲きだしそうな花の蕾のように待っている彼女を見て、私はどうしようもなく狼狽えてしまう。
あー、うー、と言葉にならない呻きが小さく漏れた。誰も見ていないというのに、つい周りを見回してしまう。どうしたというんだ。私はどうしたというんだ。ええい。
ちゅっ。
ぎゅっと目を瞑って、彼女の唇を啄む。目を開けると、花は満開になっていた。
前回答え合わせとか言っておいて、男子会書くのが楽しすぎてエロまで行きませんでした。じらして申し訳ない……。
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