はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話 作:ケロリビドー
番外編1.新婚夫婦はごはんが先
「できた~。あとはレイモンドさんが帰ってくるまで弱火で煮込んだらちょうどよさそう!」
その日のわたしの装いは白い丸襟の紺のワンピースにフリル付きのエプロン。髪の毛が邪魔にならないように白い頭巾をかぶって、いそいそと料理をしている。なんだか見ようによっては貴族のお屋敷で働くメイドさんみたいだと思った。
レイモンドさんと婚礼の式をしたあと、彼の行動は早かった。式をした丘の上の土地の持ち主と交渉してその一角を買い取り、家を建てたのだ。
「この街にずっと居たいという気持ちは前からあったのですが、今仲良くしている人たちが命を終えたときにもしそれを乗り越えられなそうになったら旅に出ようかとも思っていて、なかなか踏み切れなかったんです。でも今は君が居てくれるので腹が据わりました」
家ができるまでの間はレイモンドさんの部屋で二人で同居してて、その生活はその生活でとっても幸せだったんだけど、慌てていても入り口でおでこをぶつけない家で生活するのはレイモンドさんの憧れだったらしくて、それが叶うと喜ぶ彼を見ながらわたしもわくわくしていた。
あれからレイモンドさんの性欲はかなり落ち着いている。わたしを連れていなくてもダンジョン探索をすることができるようになったので、彼はダンジョンに潜って子供の冒険者を引率する活動を再開した。その間わたしは基本的にお留守番になる。お買い物したり、お洗濯したり自由に過ごしているんだけど、最近は元居た宿屋を手伝いながらお料理を教えてもらいに行ってることが多い。
いや、料理くらいわたしだってしたことあるけど! おねえちゃんと交代でご飯の当番だったこともあるし! だけど、こっちの食材とサキュバス界の食材が全然違うの!! 今まで買ったほうが安かったから出来合いの物を買ったり、宿屋の一階で食事したりしてたから今まで必要に駆られなかったけど、おねえちゃん仕込みの揚げシバリックビをレイモンドさんに食べて欲しくても、猛りの粉はそもそもないし、野菜のお店で「火を通したらお肉みたいになるお芋はありますか?」って聞いたら「は?」って言われた。そんなものはない。シルキィ覚えた。素直にお肉を揚げるしかない。
「娘がいたらこういうこともしたかったんだよねえ」
宿屋のおかみさんはわたしが働きながら料理を教えて欲しいとお願いしたら喜んで引き受けてくれた。お昼時は大衆食堂にもなるので人手が多いのは嬉しいそうだ。今着ている紺色のワンピースはそこで給仕として働くために用意した服ってわけ。余ったパンや料理をわけてもらえる時もあるので、今の所とってもいいかんじ。
「そろそろレイモンドさんが帰ってきそうな時間かも」
わたしはうきうきと、お皿やパンをテーブルに用意する。頑張って作ったごはんを愛する人に食べてもらえるのもとっても幸せだ。窓辺から外を眺めていると、遠くからぴっかぴかのおでこと長い耳が見えてくる。新しい家での生活の中ではこの瞬間が一番嬉しい。
いつもは普段着に着替えてから家事を始めるけど、今日は宿屋での仕事が多くて帰ってすぐごはんを作り出さないと間に合わなそうだったので給仕スタイルのままだった。
「なーんか最近わかってきたけど……レイモンドさんは結構こういうわざとらしいやつ好きなんだよね……すけべさんなんだから……」
わたしはドアの前で彼が入ってくるのを待った。
「シルキィ君、ただいま帰りましたよ。君の好きな果汁を途中で買って……」
「おかえりなさいませっ♡ 『ご主人様』っ♡♡♡♡」
「ッアーッ……♡♡♡」
ドアが開くのを見計らって、わたしはスカートの裾をつまんで片膝を曲げ、もう片方の足を後ろに引いておかえりなさいのごあいさつをした。
片手に瓶の入った袋を下げたレイモンドさんは空いているほうの手で顔を抑えて気を吐く。耳の先がぶわっと赤くなった。
「ご主人様♡ ご夕食の用意ができております♡ それとも、メイドシルキィにねぎらいのご奉仕をさせてくださいますか?」
「シルキィ君、それ駄目、ズルいから。そんなこと言われたら私、ご奉仕のほうをしてほしくなっちゃうでしょう。シルキィ君が作ってくれた料理が冷めるのも構わずに。そんなひどいことしたくありません。だから普通にしててぇ!」
「ちぇー。ちょっとひとくちおしゃぶりするくらいなら、ごはんが冷める前でもできるかと思ったのに……」
「それで私が我慢できるわけないでしょ! ごはんが先!」
「はぁーい」
レイモンドさんとのえっちは、ローパーに支配されてた頃ほど長時間ずっと全力って感じではなくなったので、夜注いでもらったとしても夕方くらいになると流し込まれた精気が足りなくなってきて、わたしのサキュバス袋が飢え始める。はらぺこサキュバス卒業かと思ったけど、全然そんなことはなかったな。
「じゃあごはんが先だとして、お風呂とご奉仕、どっちが先がいいですか?」
「ご奉仕が先がいいです。でもお風呂でもご奉仕してもらいます」
「えへへ、かしこまりましたぁ♡♡♡」
おかみさんに教わったシチューで晩ごはんにする。一緒に住む前から知ってたけど、レイモンドさんはめちゃくちゃたくさん食べるので、大きい鍋で作っても一回の食事で空になっちゃう。身体が大きいし、とてもお腹を減らして帰ってくるから、お腹の中に歯がある? ってくらいの勢いでおいしそうに食べてくれる。こんなに喜んでくれるならもっといろんな料理が作れるようになりたいなって見てて思う。
「おいしいですか? レイモンドさん」
「おいしいですよ。シルキィ君が作ってくれたごはんならなんだっておいしい」
「レイモンドさんが買ってきてくれた果汁もおいしいです」
「そんなこと言われたら毎日だって買ってきますよ」
ああ~♡ 幸せ♡ 幸せ♡♡ 幸せ~♡♡♡ 幸せすぎて淫紋がぎゅんぎゅん♡ ってしたので、レイモンドさんも多分今ぎゅんぎゅん♡ ってなったと思う。それとも先にそうなったのはレイモンドさんのほうなんだろうか。
「洗い物をしてくるので、ゆっくり待っててくださいね」
食事を終えて、後片付けをする。宿屋のおしごとでいっぱい洗い物をするので、効率よく片付けができるようになった。淫紋がキュンキュンしちゃってるので早く終わらせてレイモンドさんと遊ぼっと♡♡♡
この後のお楽しみを思うと、味気ない後片付けだって楽しくて、鼻歌を歌いながらお皿を洗う。あらかた洗い終わって水気を切るために縦に並べているところで、いつの間にか後ろにレイモンドさんが立ってるのに気が付く。
「わっいつの間に!! やだぁ、びっくりした……」
わたし歌へったくそなのに聞かれちゃったかな……もー。
「どうしたんですか? もうすぐ終わりますけど……」
「鼻歌を歌いながらうきうきしてる君が可愛くていてもたってもいられなくなったんですが、メイドの仕事を邪魔する悪いご主人様になってもいいでしょうか」
振り返ると、レイモンドさんはめちゃくちゃムラムラしてる顔をしてた。お皿割っちゃったりしたら大変だから、終わるまで待ってくれてたんだな……。言い方がおかしくてちょっと笑っちゃいそうになったけど、わたしはなんでもないふりをして答える。
「いついかなる時でも、ご主人様の要望に応えるのがメイドの仕事でございます♡」
前を見て背筋を伸ばしたままそう言うと、レイモンドさんは長い腕で後ろからわたしのことを抱きしめて来た。
「ただのメイドがこんなに可愛すぎるのはおかしいから、忍び込んだ賊じゃないかどうかちょっと身体検査しないといけないかもしれませんね?」
「いやですわ♡ なんにも隠してませんってば……♡♡♡」
ごっこ遊びの時間が始まった。
でろでろ新婚夫婦の新生活、続きます。
まだこの二人のことを考えていたいので、その後の話や本編で触れられなかったことなどを気ままに更新していこうと思います。
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