※この作品はR-18です。

はらぺこサキュバスが性欲の強い男エルフと一夜のあやまちで契約してしまう話   作:ケロリビドー

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 書いてる最中顔上げて外見たらほんとに雪が降ってたのでびっくりしました。


番外編7.病めるときも健やかなるときも①

「ア゛ッチェ!!」

 

 

 昨夜の夜、おゆはんの後レイモンドさんがくしゃみをした。窓の外を見たら結構雪が降っていて、寒いはずだと毛織の服を取り出して着る。

 今からお風呂入ったら逆に冷えちゃうかもねとか、明日は積もりそうだから雪かきしないととか話しているレイモンドさんの手に触れたらびっくりするほど熱くて、顔を見ると白い顔が赤くなっていた。

 

「やられた……エルフ風邪ですね……」

 

 ベッドに行く頃には結構ふらふらしていたので支えてあげながら二階にあがる。寒くないように毛布を増やしたり濡らしたタオルで頭を冷やしてあげたりしていたら二人ともいつのまにか眠っていて、積もった雪が白く明るく窓の外から照らしている光で目を覚ました。

 

「レイモンドさんおはようございます。苦しくないですか?」

「シルキィ君おはようございます……体が重たいですね……頭がドクドクして自分の体ではないようです。雪の中で飢えや寒さに凍えている子供がいないか街を見回ろうと思っていたのに……情けない」

「もう。風邪の時くらい自分のことだけ考えてゆっくりしてください。朝ご飯を作ります。こっちに持ってくるから寝ていてくださいね。食欲、ありますか?」

「ありがとうございます……食べたいです」

 

 シャツを着替えてもらって、下に持っていくと、わたしは台所で火を起こしてミルクのパン粥と風邪に効くハーブティーを作る。これで体を温めてもらうのだ。

 全部食べ終わるとレイモンドさんは眠ってしまったので、わたしは水仕事をすることにした。冬の水は本当に冷たい。余ったお湯ですこしぬるめて食器を洗っていると、誰かがドアを叩いた。

 

「おはようシルキィちゃん! レイモンドの奴、風邪引いたんじゃないかい」

「アイツ毎年寒くなると絶対一回は引くからよぉ、昨日雪降ったしそうじゃねえかと思って様子見に来たわぁ」

「リィナさん! ドーソンさん!! おはようございます!」

 

 雪にまみれた二人を迎え入れて、わたしは新たにお湯を沸かしてお茶を淹れた。

 

「え? 雪積もってましたよね。どうやってきたんですか?」

「漕いできたよ。ドーソン、昔から雪平気だし、積もるとおおはしゃぎすんだよね」

「レイモンドは本当に寒いのダメなんだよなあ。まあ、シルキィちゃんが街に買い物行くときは同じ道通っていけばいいぜ」

 

 暖炉の前で暖まってもらいながら、レイモンドさんの様子を話す。レイモンドさんは体は大きいけど案外痩せていて、皮膚の下がすぐ筋肉なせいか寒さに負けやすく、もともと綺麗な空気の森から来た人だから街の汚れた空気の中ではどうしても風邪を引きやすいらしい。同じ班の二人はもう慣れっこで、昨日からここに来ることは決めていたそうだ。

 

「どうせあいつのことだから家のない子供らのこととか気にしてんだろ。今日はあたしらが代わりにやっとくから、心配せずに寝てろって言っといてよ」

「俺もジャリどもに先生とか言われてみてーしな」

「わ……ありがとうございます、よろしくお願いします」

 

 お茶を飲み終わると二人はお大事にね! と帰って行った。

 わたしは眠っているレイモンドさんの額の濡れタオルを交換すると、鋤を持って外に出た。家の出入り口周りだけでもちょっと雪どけておかないとね。傷みそうな食材とかちょっと埋めておこうかな。

 レイモンドさんがやったらあっという間に終わるような作業だけど、彼はあの様子だから仕方がない。非力なわたしが地道にちまちま雪をどかす。今日はもう雪自体は止んでくれていて助かった。照り返しが眩しいな。

 太陽がてっぺんに登った頃、遠くからドーソンさんたちが漕いだ跡をたどってやってくる人影が複数見えた。

 

「ドーソンとリィナから話は聞きましてよ! レイモンドったら今年もエルフ風邪引きましたのね!! 良く効く薬を持ってきたからちょっと上がらせていただけませんこと? ちょっと診ますのよ!!」

「お見舞い持ってきたよ。レイモンドが楽しみにしてる絵物語の新作」

「一人で雪かきしてたニャ? ニャーたちも手伝ってやるニャ!!」

「ライオット班のみなさん!」

 

 マノンさんがレイモンドさんを診察しているあいだにライオットさんとアーダさんが手伝ってくれて、あっという間に雪かきが終わってしまった。お茶を淹れて診察が終わるのを待っているとやがてマノンさんが降りて来た。

 

「薬飲んで寝てれば治りますのよ。あの男、基本は頑丈にできてますものね。それよりシルキィさん、精気? 取れてないのでしょう。あんまり寒い中動きすぎたら駄目ですのよ。二人そろって寝込んだら目も当てられませんもの」

「俺たちも長居しすぎはいけないからそろそろ帰るよ。早く良くなってギルドに来てほしいな」

「新しい入り口ができるかもしれないから相談したいのニャー」

 

 飲み終わったカップを置いて、三人は帰って行った。ありがたいなあ。同業者の助け合い。みんな本当にいい人たちだ。

 わたしは羽があるので、雪が積もって道がふさがっちゃっても街にはいける。こんな雪の日にこんなところでぶらぶらしてる人なんかいるわけないのであんまり人目は気にしなくていいし、いざとなれば隠密ができるし。それを知ってるのに彼らはわざわざここまで来てくれたのだ。レイモンドさんの人徳だし、彼らの人がいいのも大きい。本当に、ここは長い間悩み続けたレイモンドさんの見つけた居場所なんだなあって思った。

 当のレイモンドさんはというと、マノンさんからもらった薬を飲んで起きているような眠っているような境目のところをうつらうつらしている。タオルを替えようとしたわたしの手を掴んで冷たいと言ったり、心細くなっちゃったのか愛してるなんてうわごとを言ったり。弱ったレイモンドさんは、不謹慎だけどとても可愛い。わたしも愛してる。

 

「あ~どうしよう。キスしたい……でもキスしたら多分風邪うつっちゃうよね……。それともエルフ風邪だからうつらないのかな」

 

 だけどこんな子供みたいないたいけな弱ったレイモンドさんにそんないけないことできない。キスでもちょっと精気は奪っちゃうし。風邪が悪化したら可哀そう。

 

「我慢したぶん、治ったらわたしもすっごいことしちゃうかも……」

 

 寝息を立てるレイモンドさんの熱い頬を撫でていると、またドアが叩かれる音がした。今度は誰だろう。

 

「クソエルフ、今年も風邪引いたんだって!? まったく、軟弱だねえ!!」

「ツブラさん!!」

「お嬢ちゃん、風邪によく効くスープと酒の作り方教えてやるよ、台所貸しな」

 

 両手に食材やお酒を下げてやってきたのはドワーフのツブラさんだった。ツブラさんは慣れた手つきで蜂蜜と柑橘とスパイスの入った暖かいお酒を沸かしたり、香りの強い野菜やスパイスと煮込んだ鶏のスープを作って見せてくれた。

 

「毎年作ってやってたんだがね。来年からはお嬢ちゃんが作ってやるといいよ。多目に作ったし、お嬢ちゃんもちゃんと食べるんだよ」

「はい、ありがとうございます、ツブラさん! あれ、また誰か来た」

 

 ツブラさんと話していたら、またドアが叩かれる。今日は本当に来客が多いな……。

 

「あの、レイモンド先生のおくさんですか。おれたち、レイモンド先生が風邪引いちゃったって聞いて、その、果汁買ってきました」

「今日、一緒にダンジョン行ってもらおうと思ってたんだけど、風邪引いちゃったんなら早くなおってほしいので」

 

 ほっぺを真っ赤にして立っていたのは冒険者風の二人の少年だった。レイモンドさんが今世話してる子たちなのだろう。レイモンドさんのことを先生って呼んでるんだ。

 二人はすぐに帰ろうとしていたが、スープの匂いに反応したのか、どちらからともなくお腹をぐうとならして恥ずかしそうにしていた。なんだか胸がぎゅうとなる。レイモンドさんもいつもこんな気持ちでこの子たちを見ているのかな。

 

「スープ、食べてく?」

 

 レイモンドさん。レイモンドさんのやってること、きっとちゃんと形になってるよ。今は熱の中で眠っている旦那様の目線になって、わたしは温かいスープを飲む子供たちを愛おしく見ていた。




 一話で終わらなかったのでもう一話続きます。えっちがないとこの二人じゃないので……。もうすぐ終わります。
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