それは、ボクが仲間たちと一緒にメルトキオの下水道に行ったときのことだった。テセアラで手に入れるのが難しくなった食材を求めて、ボクとロイド、それから姉さんとリーガルの四人で下水道の魔物を討伐することにしたんだ。
「小さくなった方が毒を持った敵に襲われにくいし、ソーサラーリングの機能を変えて進もうよ」
「そうだな。頼むぜ、ジーニアス」
「うん、任せてよ!それじゃあみんな、いくよ!」
ソーサラーリングの機能を変えて、身体が小さくなる機能を起動させた……はずなんだけど、ソーサラーリングはうんともすんとも言わなかった。
「あ、あれ……?おっかしいなあ、もう一回やってみるね……んん?」
ソーサラーリングをつけ外しして何度起動させようとしても、全然何も起こってくれない。もしかしてまた不調になったのかも、ちょっといじって直せないかな。そう思ってリングを自分に向けた瞬間、一番後ろで様子を見ていたリーガルが血相を変えてボクのもとに駆け寄ってきた。
「待て、ジーニアス!自分に向けてはならぬ!」
「え?」
その瞬間、ボクの手元で一瞬だけソーサラーリングが眩しいくらいに光って、それからすぐにリングを取りあげられた。
「遅かったか!ロイド、リフィル、今日は撤退する。それからすぐに医者へ……いや、アルテスタ殿のもとへ向かった方がいい」
「ど、どういうことだよ」
「詳しくは後で話す」
「……了解よ。さあ二人とも、今日の調査は終わりにして、すぐにアルテスタのもとへ行きましょう」
姉さんに引きずられる形で、ボクたちは下水道を抜けて宿にいたみんなと合流する。そしてそのまま、アルテスタさんの家まで一直線に向かうことになった。
アルテスタさんの家に着くなり、リーガルはタバサとミトスに目もくれず、ボクの肩を掴んでアルテスタさんに突き出した。
「な、な、なに⁉」
「急で申し訳ないが、彼のエクスフィアと要の紋を診ていただきたい」
「それは構わんが……一体何があったのじゃ」
「ジーニアス、どうしたの?どこか具合が悪いの?」
「ミトス……ううん、べつにどこも悪くないけど」
「ミトスはジーニアスのそばにいてやってくれ。私はリフィルと話をする」
「え?は、はいっ」
そう言って、リーガルは姉さんを連れて奥の部屋へと消えていく。ボクはというと、言われた通りアルテスタさんにエクスフィアの様子を診てもらっていた。
「ふむ、エクスフィアにも要の紋にも特に異常はないな。術も問題なく使えるじゃろう」
「そ、そうなの?」
「よかった、何か悪いことがあったらどうしようって心配したよ」
エクスフィアも要の紋も変になってないし、魔法だってちゃんと使える。それなのに、どうしてリーガルはあんなに深刻そうな顔でボクからリングを取り上げたんだろう。何もわからず首をかしげていると、姉さんとリーガルが部屋から戻ってきた。しかも姉さんまで、なんだか深刻そうな顔になっている。
「みんな、大事な話があるの」
「どうしたんだよ先生、深刻な顔して」
「しばらくの間、ソーサラーリングの使用を禁止します」
「えっ⁉︎どうしてだよ⁉︎︎」
ロイドだけじゃなくみんなやアルテスタさんたちもざわつく。ボクもどうしてそんな話になったかわからずにいると、リーガルが渋い顔で口を開いた。
「以前、私の身体が女性のものに変わってしまったことを覚えているだろうか」
「ああ、覚えてるよ。でも、あれってなんというか……原因不明の事故じゃないのかい?」
「それが、そうでもないようだ。身体が変わる前の日、私もあの下水道に行ったのだ。今回のように食材を求めて、ソーサラーリングを使おうとして……そして今回と同じことが起こった。あのときはあれが原因とは思わなかったがな」
リーガルの言葉に、ボクの顔から血がさっと引いていく気がした。まさか、まさかそれって、そういうことなの?
「彼の話を聞いて確信したわ。身体に異常を起こす原因はソーサラーリングにあって、しかも厄介なことにいつもおかしくなるわけじゃない。特定の機能に変えた場合に動作がおかしくなるみたいね」
「つまりどこでどう身体がおかしくなるかわからねぇから、ソーサラーリングは使っちゃいけねえってわけだな。せんせー」
「そっか……ってちょっと待てよ、さっきジーニアスがリーガルと同じことをしたってことは……」
「これから、ジーニアスの身体に異変が出る可能性が高いわ」
「そ、そんな!ボク、女の子になっちゃうの……?」
姉さんから告げられた言葉が、頭の上に重くのしかかった。リーガルのときも心配だったけど、今度はボクの身体が変わる。そう思うと身体の震えが止まらなくなって、怖くてたまらなくなってくる。
「そう、なるわね。あなたには辛いことだけど、今後の対処のためにも言っておかなくてはいけなくなったの」
「……っ」
「ジーニアス、あなたは身体と心が落ち着くまでここにいなさい。やれることは少ないけど、調査は私達で続けます」
「う、うん……」
「ジーニアス、きっとだいじょぶだよ。早く元に戻る方法が見つかるかもしれないし、何も起きないかもしれないし、リーガルさんだって元に戻ったでしょ?」
「そうだぜ!それに、もしつらいなって思ったときはいつでも俺たちに言ってくれていいから。根本的な解決にならなくても、一緒にいることはできるからさ」
「ありがとう、コレット、ロイド。でも、ちょっと一人にさせて」
ボクはみんなのいるテーブルを離れて、部屋の隅にあるベッドに横になる。これからどうなっちゃうんだろう、もし身体が変わったら本当に戻れるのかな、身体が変わるって、どういうことなんだろう。考えれば考えるほど怖くなって、ボクは無理やり目を閉じて眠れるようになるのをじっと待ち続けた。
目が覚めたとき、ボクの目の前には姉さんがいた。きっとボクを心配して一緒に寝てくれたんだろう、握られてる手がとてもあたたかい。だけど、それと同時にとてもつらくて怖くて、起きたばかりの目から涙がぼろぼろこぼれた。姉さんが握ってる手はいつもより細くてすらっとした、女の子の手だったから。
本当にボクは、女の子になっちゃったんだ。そう思うと涙が止まらなくなって、姉さんが起きてくれるまで声も出さず泣き続けた。
ようやく着替えて部屋を出た頃には、みんな朝ごはんのためにテーブルに座っていた。テーブルの上には湯気の立ったグラタンと、フルーツポンチが並んでる。
「おはようジーニアス、こっち空いてるぜ」
「朝早くから用意してくれたんだよ、冷めないうちに早く食べようよ」
「え、うん……」
手を引かれるまま、ボクはロイドとコレットの真ん中に座る。まだ頭の中はぐちゃぐちゃだけど、とりあえずボクはグラタンを口に運んでみた。
「おいしい」
「ね、おいしいよね!」
「うん」
「ジーニアスが作るグラタンもうまいけど、これもうめえんだよなー!」
「おいしくて、懐かしい味がします」
「プレセアちゃん、何か言った?」
「いえ、なんでもありません」
「食後はやっぱり紅茶なのかい?」
「当然だ。コーヒーの用意はない」
「私はコーヒーが飲みたかったのだけど」
(いつもの朝ごはんだ……)
不自然なくらい、穏やかに朝ごはんの時間は過ぎていく。ボクが女の子になったってわかってるのに、みんなはボクの身体のことを何も言わない。みんなの優しさが温かいのに寂しくて、ボクはただうつむいて朝ごはんを食べ進めていた。
朝ごはんが終わるとみんなは外に出る支度を、ミトスとタバサはボクたちの食事の片付けを始める。ボクがテーブルの片付けをしていると、姉さんがアルテスタさんにソーサラーリングを渡した。
「ではこのリングの動作不良について、調査をお願いします」
「わかった、調べておこう。それと、もし直せるようじゃったらわしの方でリングを直しておく」
「ありがとうございます。それからジーニアスのことも……よろしくお願いします」
アルテスタさんにソーサラーリングとボクを託して、姉さんも外に出る支度をする。そして支度が終わると、ボクになるべく早く帰るとだけ言い残してみんなと一緒に外へ出てしまった。
(みんな、行っちゃったな)
さっきまでごはんを食べていたテーブルを拭きながら、改めてボク一人が取り残されたことを実感する。いつもの身体じゃないことへの不安と、いつもの身体じゃないから外に行けない寂しさが混ざりあって、また泣いてしまいそうになる。涙をこらえるために上を向いていると、後ろから優しく肩を叩かれた。
「どうしたの?ジーニアス」
「ミトス……なんでもないよ」
「そんな顔して、なんでもないわけないでしょう?ボクでよければ話を聞くから、一度部屋で落ち着こう。ね?」
ボクは肩を抱かれて、ミトスに支えられるように部屋に行く。部屋の隅にあるベッドなら、大声さえ出さなければ作業場にいるアルテスタさんやいつもの場所で待機するタバサを気にせず話ができる。ボクらは一番奥のベッドの隅で、寄り添うように腰掛けた。
「やっぱり、身体のことが心配?」
「うん。いつ戻れるのかな、本当に戻れるのかなって考えると不安でたまらなくて」
「でも、リーガルさんは戻れたんでしょう?」
「たしかにリーガルは三日くらいで元に戻れたけど、でも……もし人間だから戻れたんだとしたら」
みんなの前では言えなかった言葉が、ミトスだけには引っかからずに言える。みんなを信頼してないわけじゃなくて、ミトスはボクと「同じ」で、ボクの言葉をわかってくれるって思ったから。
「ハーフエルフのボクが、人間のリーガルと同じように戻れるのかわからない。それどころか、女の子になる以外の変化も起きるかもしれない。もし戻れなくなって、もっと身体が変わっても、みんなは……ロイドはボクのことを受け入れてくれるかな」
ボクの言葉に、ミトスがとてもつらくて苦しそうな顔をする。同じ痛みを知ってるミトスにそんな顔をさせたくはなかったのに、ボクは不安を隠すことができない。
「ボクが今までのボクじゃなくなっても、ロイドは友達でいてくれるのかな」
「……ジーニアス」
こらえてた涙がまたあふれてきて、ボクは必死にそれを拭う。だけど拭う手がいつもと違うことに、また涙が止まらなくなる。そうして何度も顔をこすってると、ミトスの手がボクの手を包んでそれを止めた。
「大丈夫だよ。どんな身体になっても心はジーニアスだもの。みんな受け入れてくれる」
「今はみんな、いつもと同じように接してくれてる。だけど、身体が変わったらっ、心までボクじゃなくなりそうで……そしたらみんなと一緒に、いられなくなるって思って、っ」
「それでもキミはジーニアスなんだって思ってくれるはずだよ。それにね……もしも周りが受け入れてくれなくなったとしても、ボクは、ボクだけは絶対にどんなジーニアスも受け入れる。だから大丈夫だよ」
ミトスが包んでいた手を開いて、ボクの手のひらをミトスのほっぺたに寄せる。濡れた手のひらで触るミトスの肌はすこしひんやりしていて、それでも重ねてくれる手のひらは温かかった。
「女の子になっても、ジーニアスの手は温かいね」
「ミトス……」
「顔は、すこしまつ毛が長くなったかな。でも、いつもの男の子の顔も好きだよ。男の子でも、女の子でも、元気いっぱいなジーニアスが好き」
「あ……」
自然に、ゆっくりと、ミトスの腕がボクを包みこむ。温かくて、心地よくて、首に触れる金色の髪がくすぐったくて、ボクは気づけばミトスに身体を預けていた。
「ジーニアスはね、すごく温かいんだ。どんな姿になってもジーニアスは温かくて、ボクはそんなジーニアスが大好きなんだ」
「温かい……ボクも、すごく温かいや」
ボクを抱きしめてくれるミトスの身体を、ボクもそっと抱きしめる。じっとしてたら伝わりそうなくらい胸がどきどきして、耳元に聞こえる呼吸の音にくらくらしそうで、ゆっくりと上を向く。
そのときだった。ミトスと目が合って、ミトスは綺麗に、本当に綺麗に微笑んで、そしてボクらは引かれ合うように顔を近づけていた。
(キス、した……?)
それがキスだって気づいたのは、ミトスの顔が離れてからだった。目の前で閉じられた長いまつ毛も、唇に感じる温かさも、ちょっと息苦しかったのもなんだか夢みたいで、それが夢じゃないんだとわかったときにはキスは終わっていた。
「ミトス、ボクたち……キス、したの?」
「うん。ジーニアスは初めてだった?他の人とは、ロイドとはしたことなかった?」
「あ、当たり前だよ!ボクとロイドはそういう関係じゃないもの!ミトスだって、今のボクが女の子だからしたんじゃないの?」
「ボクは、ジーニアスだからキスしたんだよ。キミの身体が変わらなくても、男の子のままでも、いつかボクらはキスしてたんだ」
そう言ってもう一度キスをするミトスの目は優しくて、ボクも応えるようにキスをする。小さく唇が鳴るようなキスを繰り返すうちに、ボクらは上着を脱いでお互いの身体にしがみついて、背中や腰を触りあっていた。元々ボクよりちょっと大きいミトスの肩や背中がもっと大きく感じられて、優しく背中や腰を撫でられるのが嬉しくて、二人でキスと触りあいっこに夢中になった。
「ん、ふぁ、ミト、ス、ぅ」
「っ、はぁ、可愛いよ、ジーニアス」
「ぁっ……」
抱き合ったまま、ボクの身体はベッドに押し倒される。ミトスの体重とくっつく身体にどきどきしながらキスを繰り返していると、ごそごそと動く手がボクの服の中に入ってきた。ミトスの手がどこに行くのか、経験のないボクにだってわかった。
「だ、だめだよミトス……!アルテスタさんやタバサが来たら、っ!」
「大丈夫、大声を出さなければタバサはここに来ないし、作業場のアルテスタさんも気づかないよ」
「っ、それに、そこは、っ」
「わかってるよ。ジーニアスの胸、ボクの手に収まっちゃうんだね……すごく可愛い」
「ん、ぁっ、んん、っ」
「声は我慢しなきゃいけないけど、ほかの我慢はしないでね。ボクはただ、変わった身体とありのままのキミが両方気持ちよかったらいいなって思うから」
インナーの中で、ミトスの手がボクの胸を触る。いつもは全然意識してないところを触られて、先っぽを軽くつままれて、ボクは変な声が出ないように必死で口をふさぐ。気がつけばインナーが上にずれて、裸の胸が丸出しになっていた。
「ん、んっ……ふ、ぁ、はずかし、っ」
「ふふ、一生懸命我慢してて可愛い……ちょっと控えめなのも可愛くて安心するね。大きかったら、変な男に狙われないか心配になるもの」
「狙われる……?ミトス、なにいって、んっ」
「ああでも、ジーニアスなら大きくても可愛いって言うんだろうな。どんな姿でも、どんな身体でも、可愛いから」
可愛い、かわいい……ミトスにそう言われながら触られると胸がドキドキして、なんだかお腹の下がむずむずする。これはボクが女の子になってるからなのかな、それとも、ミトスが言ってくれてるからなのかな。
ミトスの手が胸からおへそへ、おへそから腰へとゆっくり動いていく。触られてるって思うほどむずむずして、太ももをこすり合わせてやり過ごそうとする。ミトスはボクのズボンに手をかけると、ゆっくりと脱がせて枕元に置いた。
「あ、ミトス、っ、なに、するの……?」
「ちょっとだけ、二人で大人になろう」
ミトスは、下半身のインナーに手を伸ばしてボクの下着に触る。ミトスの言う「大人になる」がどういうことか、わからないわけじゃない。だけどこのときのボクはたしかに、ミトスとなら「大人」になりたいと本気で思っていた。
すらっとしたミトスの指が、下着越しにボクの女の子になった場所を触る。ゆっくりなぞられるもどかしさと、時々やってくる強い刺激に声を抑えるのがやっとだった。
「ん、んん……!ぅ、んっ、ぁ……っ!」
「ごめんね、声我慢するの難しいよね。でも、ジーニアスのここ、すごく濡れてるってわかるよ。下着越しでもボクの指が濡れてくる」
「だめ、ぁ、だめ、いわない、でぇ……っ!はずかしいっ、やだぁ、っ!」
「恥ずかしいことじゃないよ。ジーニアスは気持ちよくなってるだけ、今のジーニアスは気持ちいいから濡れてて、ボクも……ジーニアスと同じことになってるんだよ。ほら」
ミトスに導かれるまま、ボクの手がミトスの股間を触る。そこはたしかに熱くなってて、膨らんでて、ミトスがボクで興奮してるってすぐにわかった。
「ね、ボクたちは今、大人になりそうなんだよ。怖くも恥ずかしくもないでしょう?」
「……ボクが女の子じゃなくても、こうなったの?」
「うん、ジーニアスだったら男の子でも、もっと違う姿でも、こうなるんだ」
ミトスの熱を持った言葉に、しっとりとした眼差し。ミトスはボクを受け入れてくれる、ボクもミトスを受け入れたいと思ってる。ボクはミトスの手を下着の下に導いて、ミトスだけに聞こえるようにそっとささやいた。
「ミトス、一緒に大人になろう……?」
「ジーニアス……うん、ボクたち二人で大人になろうね」
ミトスがズボンと下着をずらして、ボクの手に熱いものを握らせる。それは硬く勃ちあがっていて、手を動かすとぬるぬるしたものが音を立てる。ああ、ミトスが気持ちよくなってるんだ。そう思ってまたお腹の下がむずむずしたところに今までと違う刺激が襲ってきて、ボクの身体はびくんと跳ねた。
「ひゃっ……⁉︎んん……っ⁉︎」
「指、挿入っちゃったみたい。痛くない?」
「ん、い、痛くない……ぁ、ぁ、きもち、いぃ」
「嬉しい……ボクも、ジーニアスの手、すごく気持ちいい」
「ミトス、ん……っ」
「ん、ぅ……」
短いキスをいっぱい重ねながら、ボクたちは夢中になってお互いの大事なところを触りあった。ミトスの指はちょっとずつ本数を増やしながら、それでもお腹の中から優しく気持ちよくしてくれて、ボクもミトスを気持ちよくさせようと手を動かした。下着はぐちゃぐちゃで、多分インナーも濡れてると思うけど、もう気にもしなかった。だって、これからインナーも下着も脱いで、ミトスに大人になるところを見せるんだから。
ミトスの手をそっと止めて、ボクもミトスのそれに触っていた手を止める。そして両脚をめいいっぱい開いて、ボクは恥ずかしい体勢のままインナーと下着を脱いだ。
「ジーニアス……?」
「すごく、恥ずかしい……でも、ボクが大人になるところ、ちゃんと見てほしい」
「ボクたちがこれからすること、ちゃんと知ってるんだ」
「ちょっとだけ、勉強はしたから。でも、勉強で習わなかったことは知らない。だからミトス、残りはキミが教えて。どんなボクでも、大人にしてよ」
「ジーニアス、ジーニアス……っ!」
「んうぅ……っ!」
口を塞ぐようにキスをしながら、ミトスが熱い塊を濡れた入り口に擦りつける。ボクは大人になる、ミトスと大人になる。ほんのすこしの不安と期待に目を閉じたそのとき、熱いものがお腹の中に入っていく感覚に身体がこわばった。
「ん、ん……ぅ、ううっ!」
「んっ……!」
内側から切られるような痛みとお腹の底から湧くような気持ちよさの中で、ミトスがボクのナカに挿入ってくる。キスの息継ぎは荒くて、必死のキスがやめられなくて、それなのに心の中は穏やかな温かさに包まれている。ああこれが大人になることなんだ、これが受け入れられるってことなんだ。その嬉しさに涙をにじませていると、ミトスが唇を離してボクの耳元でささやいた。
「全部、挿入ったよ。ボクたち、大人になったんだよ」
「うん、わかるよ……女の子になってもミトスがボクを受け入れてくれたから、大人になれたんだ」
「ジーニアス」
「痛いけど気持ちよくて、すごく嬉しいんだ。だから今は、ボクをミトスが好きな女の子にして」
「うん、うん……!」
「ぁ、あ!ん、んっ!」
激しく優しい勢いで、ボクの女の子としての身体が揺さぶられる。初めてだらけのことで、痛いのがだんだん気持ちいいものに塗り潰されていく。女の子になったことがあんなに怖かったのに、寂しかったのに、今は嬉しいとさえ思ってる。だってミトスのボクへの想いとボクのミトスへの想いが、女の子の身体をきっかけに繋がったんだから。
「ん、んっ、ぁ、んっ!ぅ、んっ!ぁ、はぁ、あぁ……っ!」
「んっ、ぅ、はぁ、ジー、ニアスっ、好き、すきっ……!」
「ミトスっ、ボク、もっ、っぁ」
「もっと、こうしてたいけど、っ!そろそろ、我慢、できない、っ!」
「あ……っ」
「ジーニアス……っ、うぅ」
ミトスのそれがボクのナカから離れた瞬間、自分でもびっくりするくらい名残惜しくて切ない声が出た。そしてその余韻のままミトスはボクのナカに挿入れてたものを何回か擦ると、ボクのお腹に向かって想いの証を吐き出した。
「すごい、出たね……」
「ごめんね、でも、やっぱりナカには射精せないから」
「それはそうだよ、だからさ、そんな申し訳なさそうな顔しないで。ボク、大人になれて……ミトスとひとつになれて、本当によかったって思ってるんだから」
お腹についたそれを近くにあったタオルで拭って、そっとミトスを抱きしめる。ミトスがどんなボクでも受け入れてくれるように、ボクだってミトスを受け入れたい。その気持ちだけをこめて、ボクはミトスにボク自身としての言葉を捧げた。
「ボクね、ミトスがどんな姿のボクでも受け入れるって言ってくれて本当に嬉しかった。だから、もしミトスがどんな姿になったとしても、ボクもミトスのことを受け入れるよ」
「……本当?」
「うん、約束する。あと、このタイミングで言うのはちょっと恥ずかしいんだけど」
ん?と純粋に首をかしげるミトスがちょっとおかしくて、でもそんな綺麗なミトスが大好きで、ボクはいやらしいかなって思うような言葉を包み隠さず伝えていた。
「もうちょっとだけ、二人で大人になろう?お昼ごはんまで、まだまだ時間があるからさ」
姉さんたちが帰ってくるまでの間、いや、帰ってきた後もボクらは隠れて「大人の時間」を過ごしていた。想いが通じあっていると思うと、受け入れあえると知っていると、何をしても抵抗感がなかったんだ。お腹の下がむずむずするって伝えたときのミトスの赤い顔と恥ずかしそうな笑顔が、たまらなかった。
そして迎えた次の日の朝、ボクはミトスの手の温もりとアルテスタさんの「修理が終わった」の一言で目を覚ました。ミトスのおかげで目を覚ますときの不安はなかったけど、それでも目の前に見えたものにボクは安心感と嬉しさでいっぱいになった。ボクの手は、ちゃんと元の男の手に戻っていたからだ。
「ソーサラーリングはわしの方で修理しておいた。それから、動作不良の原因と対処法はこれに書いておる。今後のためにも持っておきなさい」
「ありがとうございます。リングのことも……ジーニアスのことも」
アルテスタさんに深々と頭を下げる姉さんを横目に、ボクはロイドとコレットにぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。ミトスは、ちょっと離れたところで微笑んでくれている。
「よかったね、ジーニアス!これでもう大丈夫だね!」
「まさか、エルフの血を引いてると戻るのが早くなるなんてな」
「うん、そうみたい。ボクとしてはちょっと複雑だけど、早く戻れたからいいのかな」
「いいんだよ。だってジーニアスの元気な顔も早く戻ってきたんだもの!」
「気にしないフリしてたけど、本当はみんな心配してたんだぜ。帰ってきたときはちょっとだけ元気な顔しててホッとしたけど、先生なんか調査中もずーっと落ちこんでたもんな」
「リフィル先生、身体も心配だけど元気がなくて泣いてたことの方がつらい、代われるなら自分が代わってあげたいってずっと言ってたんだよ」
「そう、なんだ」
ロイドとコレットの言葉に、胸の奥からじんとするものが湧いてきた。ボクはみんなの優しさがただの気づかいから来てて、身体が変わることでみんなから置いていかれるんじゃないかと思ってた。だけど本当は、みんなボクを置いていくことなんて考えてもいなかった。最初から、ボクが姿形に関係なく元気でいてほしいって思ってくれていた。ボクが思っていた以上に、みんなはボク自身を好きでいてくれてたんだ。
腕を精一杯伸ばして、ロイドとコレットの身体をなんとか抱き返す。そしてボクがもらって嬉しかった言葉をボクなりの言葉に変えて、二人に伝えることにした。
「ありがとう、女の子になってもボクを、ボク自身を心配してくれて。ボクのことを、好きになってくれて」
「当たり前だろ?ジーニアスはジーニアスだよ。女の子になっても、どんな姿になっても」
「そうだよ、私たちはジーニアスが大好きなんだから」
「ボクも、みんなのことが大好きだよ。みんながどんな姿になっても、ずっと大好きだからね」
そうして三人の固い輪を解くと、ボクらはみんなの待つテーブルへ向かう。今日のボクの席は、ミトスの隣みたいだ。
(ありがとう、ボクの大好きなミトス。それから……ボクたちのことはずっと二人だけの秘密にしようね)
変わらず綺麗に微笑んでくれるミトスにまだお腹の下がむずむずすることだけは内緒にして、ボクはいつもみたいにみんなと朝ごはんを食べることにした。
終