※この作品はR-18です。

とある原因で母乳が溢れる女魔法使い(爆乳黒髪ロング眼鏡)を少年勇者(黒髪金眼低身長)が乳吸いする事で解決していく話   作:国英

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◯登場人物
-勇者パーティ-
アッシュ 少年勇者
ノウリッジ 女魔法使い
モナ(モナーク) 女盗賊
ウォーム 女司祭

-魔物軍-
テネント 淫魔


遭遇戦/女魔法使いノウリッジの救済

 ゴブリン二十人、オーク三人(金属鎧装備あり)、レッドキャップ――赤い小人――魔法攻師(ソーサラー)二人。

 

 魔王を頂点とした魔界(魔王が支配している地域を指す)と戦争中の人類。

 魔物軍の一般的な一個中隊(あるいは大隊とも言う)と鉢合わせた遭遇戦だ。

 通常この規模の敵、特に魔法には魔法防御役の術師を咥えた密集陣営ファランクスが有効とされている(オークという筋肉達磨に対しては槍衾が効果的なのだ)。

 

 しかし、ここで相対するのは四人。少年一人に女性三人。

 

 少年は短い黒髪に金色の瞳。柔らかい目付きで、元気ハツラツとした様子は今や引き締まり、戦闘に赴く前の若武者という表情であった。年齢は十二支が一回りするかしない程度の年かさに見える。身長は140cm程の高さ。服装は麻布の茶色のシャツに黒いズボンを履いている。そんな服装の上から外套を羽織っている。

 

 三人の女性はメガネをかけている黒髪女性、法衣を着ている銀髪女性、軽装な銀髪女性といった様子だ。

 

 メガネをかけている女性は理知的でキリッとした翡翠の瞳に、本来は腰まであるロングの黒髪を一度、半分で折り返してから、また垂らしているので肩口に届く程度の長さになっている。年齢は20代前半程に見える。身長は160cm前半ほどの高さだ。

 メガネは円縁に黒色のデザインのものをかけていて、長い鍔の広の防止に、長く黒いチュニックを着ており、腰の所をベルトのようなもので革紐で結び留めている。チュニックの丈は膝に届くほどの長さで袖丈は半袖程度のため、ぱっと見は黒い半袖のワンピースのようにも見える。裾から覗く太腿はむっちりとしているようで程よく鍛えられている(旅のせいかあるいは別か)。上半身の衣類を押し上げる胸はとても豊満であり、爆乳であった。そんな爆乳を少し隠すように黒い外套を上から羽織っている。

 手には神樹から掘り出したとされる逸品の長杖は1m近い長さがあり、それを携えている。

 印象としては――女魔法使い。

 

 法衣を着ている女性はとろんと優しく垂れた赤眼に、セミロングの銀髪(鎖骨の所まで垂らしている)。年齢は20代になったばかりのように、あるいは少し上のように見える。身長は170cm後半近くある。服装は白を基調とした法衣を着ているが、動きやすさを重視したデザインなのか腰まで届くような深いスリットが入ったスカートのようなデザインになっており、上はノースリーブになっていて、ある意味、こちらもぱっと見は白いノースリーブ・ワンピースじみている。その上から白い金属の胸当てと腹部を覆う鎧を組み合わせて一体としたものを胸部から腹部にかけて覆っている。また、彼女は黒い長手袋をつけている。首からは彼女の信じる聖女神教のシンボルを象ったペンダントを下げている。最後にそんな容姿を黒い外套で上から覆い隠していたが、戦闘となると、彼女はその黒い外套を脱ぎ捨てる。

 黒い外套を脱ぐと、布地を大きな胸を押し上げるのがわかり、女魔法使いと並ぶ、あるいはそれよりも大きな爆乳であった。高身長ということと、スリットから覗く生脚もまたスラリとしているのに、ぱっと見ではわかりにくいがとてもよく鍛えられている健脚を持つモデル体型だ。

手には何も持っていない。

印象としては――女司祭(それも戦闘司祭だ)。

 

 軽装な女性は三白眼に短い銀髪ショートヘアといった出で立ちだ。年齢は10代後半から20代に届くかどうかという容姿に見える。身長は160cm後半から170cmに届くという高さになる。シャープな顔立ちで、やや狐顔に近く、左耳の一部には銀色のリングピアスをつけており、反対に右耳は少し欠けている。

 服装はノースリーブの黒いシャツを上に着ていて、下は焦げ茶のミニスカートを履き、そのミニスカの下には黒く薄い布地を履いている(いわゆる黒スパッツともいえる)。胸は大きな方だが、女魔法使いと女司祭が並ぶと一番小さい方だろう。身体全体にほどよく鍛えられた筋肉が乗り、身体の随所に浮かぶ傷跡はどこか生々しい。そんな彼女は前二人とは違い、黒い外套を羽織っていない。胸当てのみ革装備をつけており、篭手や肩当てのようなものもなく、軽装でとても動きやすそうな印象を持てる。

 小さなダガーを持ち、戦闘の準備を始める。

 印象としては――女盗賊(偵察・斥候とも言えるが)。

 

 状況はやや開けた道、左右は雑木林。

 お世辞にもこの四人は、この四人の悲惨な運命は決まっている。

 中隊の慰み者になって、その一生を終えるか、あるいは偶然誰かに助けられるか、という万に一つもない望みに託すかだ。

 

 だが、この四人はただのか弱い四人ではなかった。

 少年――勇者一人、そのお付きの女性三人(いずれも強者)で構成される勇者パーティ――人類の希望にして四騎当千の小隊チーム。

 

 少年は黒い外套を脱ぎ捨てると、外套の下からは先程の旅人たる少年の姿からいきなり戦闘態勢の格好へと切り替わる。瞬時に換装される少年の体躯にあわせた全身鎧の姿と、少年の身長の半分はあろうかという長剣。

 

 パーティの仲間達も戦うために構え――女盗賊だけは「後はまかせた」といった雰囲気となるが――戦闘の開始だ。

 

 少年勇者が先行で中隊の群れに飛び込んでいく。全身鎧の重さを感じさせないような軽やかな動き。

 

 乱れた戦線からあぶれた四人のゴブリンめがけて、女司祭が手には――いつの間にか――光り輝く白いメイスを持ち、彼女の周囲には同系色の白いショートソード、ロングソード、ハンマーといった白輝の武器を同行させ、一振りのメイスの動きに合わせてそれぞれの武器が炸裂し、四人のゴブリンの頭部をミンチにさせ、その脳漿と血を地面にぶちまけていく。

 

 固まっているゴブリン達は少年に殺到し、それぞれ持っていた棍棒やショートソードと共に殺到するが、ゴブリンと勇者の打ち合いは実に虚しい。ゴブリン達の胴がまとめて長剣によって薙がれていく。

 

 戦力低下を見かね、仲間たちの加勢に慌てて割って入り、レッドキャップソーサラーは詠唱を始める。味方を巻き込みかねない高火力魔法だが、隊の損耗よりも軍全体の脅威と判断。少年勇者を灰にすべく「火球」の呪文を選択(火球の脅威度は爆弾をイメージして貰えれば良いだろう)。

 

「誘導……選択……火力倍増……破壊……火球(ファイア・ボール)!!」

 

 レッドキャップソーサラーは中隊に配属される雑兵にしては優秀な部類だった。本来であれば難しい、魔法に対する追加効果を付随させる為の「魔法付与(マジック・エンチャント)」。更に味方を巻き込みかねない対象の選択と誘導という高難度な技術にも成功している。

 

――発動すれば、だが。

 

「!?」狼狽するレッドキャップ。

 

 もちろん、呪文を妨害したものは女盗賊と共に本陣(さいしょのちてん)から動いていない魔法使いが行った、遺失技術、「呪文喪失(スペルクラッシュ)」に他ならないのだが、レッドキャップ達はそんな事も知ることは出来ずに、困惑しているだろう。

 

 オーク三人はそのまま少年勇者に向けて斧を振り下ろす。魔物軍において主要戦力にして花形の戦闘種族。巨人・オーク・人岩(マン・ロック)は現代で言う所の戦車の役割に近い。金属鎧を着た男を両断できる力が彼らにはある。

 巨体に任せた体当たりも凄まじい。なので、戦車の砲弾に等しい――オークの大ぶりに対して自ら突っ込んでくる少年勇者には驚くしかない。

 

 少年勇者は長剣の片手持ちでオーク一人の斧を受け止め、残りの二人のオークから飛んでくる斧二本に関しては、鎧の肩当ての部分と腕の篭手、手鉄甲の部分をそれぞれ当てることで弾く。脅威の動体視力と判断力だろう。

 

 人と魔物の戦いで、魔物の筋力の強さで忘れられつつある戦闘技術だが、人対人の時代では有用技術であった「鎧防御」の技術。硬岩か何かでも弾かれたように驚くオーク達。しかし、彼らは強かだ。打撃は防がれても剛腕の衝撃は鎧内部に伝わり、ダメージは確実に入ってることに。また、一撃がダメなら、二撃三撃目を叩き込むまで。

 

 もちろん、混戦中なのだ。その隙に横槍を入れれるのは敵・味方両方に存在する権利だ。

 

 鉄砲弾のように飛んでくる女司祭。ゴブリンを殺した次はオークの脅威を優先し、少年勇者と肩を並べて、戦闘を継続する。一振り四撃の女の司祭の一撃が一体のオークを削り、残りの二体がそれぞれ勇者と女司祭に一撃を加えようとするのに対し、再び勇者は長剣で受け止め、女司祭はひらりと身をかわす。

 

 激戦を繰り広げる五人に対して、そこへ加勢できないゴブリン達は右往左往する。魔法使いと女盗賊に気づき、呪文への脅威排除を判断し、そちらへ向かおうとするが、反対に「火球」を唱え終えた魔法使いの一撃により、ゴブリン達は残らず灰と化していく。丁度いい距離で勇者達を邪魔することはないまま、ゴブリン達は全滅し――否、二匹は火を免れる。そして、そのままその場から逃げ去っていく。敵前逃亡。

 

 続け様の「火球」の一撃で、レッドキャップソーサラーの一人もまた灰燼と化す。二連続魔法詠唱もまた魔法使いの高等技術の一つであり、女魔法使いの技量の高さを示す。

 

 残るはソーサラー一人とオーク三人……否、今、正にオークの一人が少年勇者と女司祭の二人の連携攻撃によって沈む。

 

「アザーブ!」オークに向かって叫ぶレッドキャップ。

「「?」」首を傾げる少年勇者と女司祭。

「「!!」」声を聞いて何かを察して武器を捨てて急いで走る二人のオーク。

 

 ソーサラーは叫ぶ。

 

「転送!」

「あっ」しまった、という声が漏れ出る女魔法使い。

 

 レッドキャップとオーク二人は逃げおおせてしまう。「転送」の呪文はその場から離れ、距離の決まった遠くに行くか、「(魔法的な)座標」の決まっている任意の地点まで飛ぶかという所だ。追うことは不可能。

 

 一人を欠いてるものの、主戦力のオーク二人を回収し、レッドキャップは逃げ帰れたので、敵の損害は酷くない。もちろん、魔物軍はゴブリンが減ったことは少し手痛いが、ゴブリン数十体とオーク一人の釣り合いが取れているかといえばそうではないからだ。

 

 とはいえ。

 少年勇者パーティの完全勝利と言えよう。

 

 五分足らずで魔物軍の一個中隊が沈んだのだ。

 

「あれ?(モナ姉は――)――わ?!」

 

 ごろん。

 少年勇者は気づく。周りを見渡していて、女盗賊がいないことに。だが、次の瞬間にはゴブリンの首二つが地面に転がってきた。その視線の先には銀髪ショートお姉さんが胸の下で腕を組み、胸を持ち上げている(どこか誇らしげな顔だ)。

 

「逃亡した『二匹』は倒したぜ」

 

 魔物軍の敵を匹とするか、人と呼ぶかは人によって違うのだ。

 

「ありがとう、モナ姉」懸念点が潰れて安心する少年勇者。

「よかったわ。逃げたやつはどうしてやろうか、って思っていたの」微笑む女司祭。

「まー、これがオレの仕事みたいな所あるしなー……レッドキャップはどうしようもねえな」小さくため息をつく女盗賊。

 

 女魔法使いは重い面持ちでため息をついた。

 

「ごめんなさい。レッドキャップの魔法使いに逃げられたわ。やつは『転送』を使ったみたい」

「うん、オークと逃げていたね」その光景を思い出す少年勇者。

「転移では仕方ないです」仕方ないと諭す言葉をかける女司祭。

「魔法を失敗させる、って言っても万能じゃないんだなー……ってなんだよ、ノウリッジ……?」女魔法使いから飛んでくる視線に気づき少し怯む女盗賊。

「いえ、べつに」

 

 四者四様の反応を示してから、少年勇者はパーティの仲間たちの顔を見渡してから、彼は小さく笑う。

 

「けど、僕たちの勝利ですよ!」

 

 少年が天に向けて勝鬨を上げると二人の女性――女司祭と女魔法使いは頷き、同じ様に腕を天に掲げて、勝利を喜ぶ。

 

「(呑気だなあ)」

 

 女盗賊は戦闘後の残心。周りを警戒し続けており(また彼女の役割でもある)、天に腕はとくに上げないのである。

 

 とある日の遭遇戦の事。

 

 ☆ ◯ ◇ △

 

 魔物軍団の中にはいくつも「魔物将軍」がおり、その周りには専門の専属部隊がついている。軍団長ともいえよう。そんな将軍兼軍団長ともいえる「第三軍団(単に遭遇したのが第三の軍団なだけ)」の魔物将軍、ギガスケルトン(ギガは巨大の意)将軍との戦いにより傷つく勇者パーティ。

 しかし、怪我人を出しながらも彼らは一人も欠けずに、また一つ勝利した。

 膝をつくギガスケルトン。

 

「将軍……あなたも強かったです」

「カカカカ(スケルトンは声帯たる肉の部分が無いので骸骨が震えるだけで発声はしない)」

「ぎ、ギガス(通称)将軍――――ッ!!」

 

 魔族独自の鉄、「魔鉄」で鍛えられたギガスケルトンの鎧は完全に壊れ、その奥、肋骨の辺りに紫に輝いている――彼/彼女 の心臓ともいえる――魔核(コア)に剣を差し込んだ少年勇者――アッシュ。

 

 彼の長剣の剣先により、魔核の芯が貫かれている。

 幸運にもこの魔核は聖別された聖なる鉄、「聖鉄」でなければ壊せなかった。だが、アッシュの長剣の素材は聖鉄(ちなみに鎧も聖鉄だ)。なので、トドメをさすことに成功したのだ。

 

「に、逃げろー!!」

「ギガス将軍がやられたぞー!!」

「な、なにぃー?! 無敵のギガス将軍がやられるなんてー!」

 

 力を主とし、軍隊を構成している魔物軍だが、本来の魔物社会は弱肉強食社会だ。強い頭を頂点として損沿いする強者の存在。しかし、本質は群れのボスに近い。それは様々な種族が集まり、その中でも最強の頭たる「魔王」が力でそれぞれの種族の頭を抑えつけて、命令させているのが現状だ。強い奴以外の命令を効きにくい烏合の衆。なんと面倒くさい集団であるか。

 ギガスケルトンのような声帯が無いので命令が出来ない者で強者に対し周りが勝手についてくるパターンもある(かなり自由な軍規ともいえる)。

 魔物将軍が指揮する「軍団(大隊~師団まで数は様々)」規模になると、圧倒的な強さのカリスマのもとで運営する他無いのだ。というか、これほどの大多数になると、カリスマがいないと指揮できず、バラバラになりやすい魔物の性質があるのだ。

 余談だが、冒頭のような中隊規模であれば、現代の軍隊のような上からの命令を絶対とする是とした軍隊運営が出来る。ゴブリンとオークとレッドキャップも仕方なく肩を並べて戦える(あの中隊ではオークの一人が隊長なのだ)。

 閑話休題。

 「軍団」では「将」が倒れてしまうと、散り散りになり、方々に散ってしまう。カリスマゆえに成り立つ「軍」はカリスマの存在こそアキレス腱なのだ(とはいえ、軍団規模の魔物将軍と軍団がそもそも最強なので、人類軍にただぶつかって物量を強いるだけで勝てるので、細かいことは気にしなくていい)。

 

「逃げていくぞ」「今回も私達の勝利ですね。ありがとう――様」「気を引き締めて、まだ向かってくる敵もいるかもしれない」

 

 勇者パーティはこうして三つ目の「軍団」を潰したのだった。

 

 ☆ ◯ ◇ △

 

 このパーティの頭脳ともいえる人物がいる。

 女魔法使い――マニフィック=ノウリッジである。

 首都にあるとされる王立魔導図書館の副司書長兼第四魔導ギルドのギルド長であった。魔法技術の発展と魔法知識の伝授に携わる仕事に従事していた。だが、魔法に関する事故により、彼女はギルドの施設を吹き飛ばしてしまう。ノウリッジと対立していた第五魔導ギルド長 (おばさん) の妨害工作のせいだったのだが、ノウリッジは平民出身であり、後ろ盾が無いのにに対し、第五ギルド長は名家に連なる貴族の血脈だった。

 

 彼女はギルド吹き飛ばしとあらぬ余罪をかけられ(それらは第五魔導ギルド長のせいだった)、調査のため幽閉され、社会的な死は免れず、結局の所、ノウリッジに対する犯罪者のレッテルは剥がすことができず、そのまま弁解の機会を得ぬまま、刑罰五年を言い渡される。刑罰的労働をこなしつつ、彼女は牢の中で心を腐らせていった。類稀れな賢さと膨大な知識と実績を積み重ね、様々な魔法を扱える才人で、輝かしいキャリアの道を歩んでいた人物が社会的に死んだ。

 5年後に出られたとして、彼女は26歳。犯罪者のレッテルがついたまま放逐される。魔法先進国のこの王国から離れ、技術後進国に士官を求めるのも大変だった。

 刑罰のために幽閉され、半年が既に過ぎた。

 

 そんな中で新しい道が示された。

 

 勇者からの直接スカウトである。ノウリッジの学友である人物からの紹介だった。学友はノウリッジの無実を信じていたが、社会構造と貴族の誇りはそれを許さなかった。

 そんな社会から連れ出し、世間の役に立ってほしい願いももちろん学友にはあった。

 

 勇者が牢屋に着た時、既に女司祭と女盗賊は共に居た。

 

「こんな犯罪者本当に役に立つのか」唇を尖らせる女盗賊。

「いけません、そんな呼び方は。これから仲間になるかもしれないのに」女盗賊を柔らかい口調で嗜めるが怪訝げな瞳の女司祭。

 

 信頼関係を築く前の人物間の信頼関係はどちらかというと、レッテルの方が先行するだろう。二人はややレッテルを通しての物事を見ている見方だ。

 

 代用メガネ――メガネのレンズを覆うフレームや弦が壊れていて簡易的な大枠と紐を耳にかけている――越しにどんよりと見る瞳は昏い。猫背気味で俯き、整えられていない、女性らしくない「女性」の部分を見れば、世の女性は少なからず見下してしまう。無論、こんな牢で女磨きも維持もできるわけもない。黒く長い髪ももちろんぼさぼさだ(かろうじて長い髪を異空間に格納する魔道具だけは見逃してくれている)。

 

 しかし、ノウリッジの学友から夜通し話を聞いていた少年勇者――アッシュは、ここでもまた長時間、朝から寄るに差し迫るまで面会し、話を聞いた。

 

「ノウリッジさんは、鳥の鳴き声に違いがあるのを見つけたんですよね」

「ここで、私は授業をする必要があるのか? まあ、いい。それについては真実だ。フィールドワークをしている時にオオトビソロメが、クロミネワシの接近に伴い、声の高さや声の抑揚を変えて鳴いたんだ」

「! クロミネワシが近づくと、どういう風になくんですか」

「チィーチィー(実践)と啼くのだ。ちなみにこれらの鳴き声は他にも――」

 

「ノウリッジさんは魔法を開発したりするんですよね。仕事の方も聞きました。火球の「誘導」追加付与詠唱を、道具を使うことで簡略化できるようにしたとか」

「あれは難しくない。それにプリュネル(学友)の力があったからな。しかし、道具といっても、まだまだ巨大だ。施設といってもいい。宿屋の部屋4つ分もあるくらいの大きさのものが必要な時点で次の課題は小さくする必要があるしな」

「なるほど……(?) ……そういえば、プリュネルさんとはお話しましたけど……ノウリッジさんは、狙った所に魔法を当てたり自由にできる、という高等なことができるとか」

「私にとって『誘導』付与は造作でもない」

 

「ノウリッジさん」

「ノウリッジさん」

「ノウリッジさん」

 

 純粋に知的な会話をしたのは半年ぶりだった。犯罪者として幽閉されてから初めてのこと。手まめができるほど労働活動(奉仕活動)をさせられ、彼女の相手といえば地面と仕事ばかりだ。夢中に流れた半年。フィールドワークの方がまだ有意義だ。

 ノウリッジはどうやら教師たる素養もあった。アッシュほどの少年に分かりやすく噛み砕いて説明できる才能も、アッシュと話すうちに開花していった。

 

 そろそろ夜に差し掛かる時、彼女はアッシュとの会話の終わりを惜しんでいた。

 

 

「……っといかんいかん。そろそろ時間だぞ」牢の外から差し込む光りに気づく番兵。

 

 うつらうつら眠りそうになっていた番兵は面会の終わりを告げる。王国の全面的な後ろ盾のある勇者にのみ許された特権。

 ノウリッジが今日一日は奉仕活動せずに会話できているのも王からの依怙贔屓、王権に付随する。

 

「そろそろ行かないとですね」番兵に促されて会話を切り上げるアッシュ。

「んぁ……もう終わりか?」寝ていたが身を起こす女盗賊。

「……(目を開く)終わりですか」瞑想していた女司祭。

「……そうだな。面会は終わりだ。ウォーム(女司祭の名前)」

 

 楽しかった時間に終わりがおとずれ、アッシュが去ってしまえば、ノウリッジは再び昏い幽閉の日々。四年と半年の刑務が残っている。

 冷静を繕っているが、ノウリッジは勇者達が去ってしまえば、嗚咽を漏らして、泣いてしまいそうなほどの絶望が胸に去来する。

 

 知識の探求者である研究者にとって無為な時間ほど苦しいものはない。

 胸の辺りの血管が、ノウリッジの感情によって細まり、ぎゅっと締め付けられていく。呼吸も少し苦しくなる。激しくなる動悸。

 けれど、優しく好奇心旺盛な少年に気取られないように彼女は頑張る。

 

 そんな彼女に対し、立ち去ろうとしていた少年はまた振り返り、ノウリッジに向き合う。

 

「あの、ノウリッジさん」

「何かな?」

「自分、今……すごく賢くていろんな魔法を使える魔法使いを……パーティに募集していまして」

「?」

 

 有能な知り合いでもいたかな、と紹介する人物を咄嗟に考えていたノウリッジだったが。

 

「ノウリッジさんがよければ、自分に力を貸してくれませんか?」

「――――――」

 

 手を自らの差し伸べ、絶望の日々から少年が救い出してくれた日のことを、ノウリッジは今もしっかりと覚えている。




今回は実験的に一括投稿ではなく、毎日0時更新を予定しています。
11/17「体調異変と乳吸い」
11/18「失敗と助言」 
11/19「少年勇者の変化」
11/20「少年勇者と女魔法使いの契り」(最終話)
といった投稿スケジュール予定となっています。
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