春の穏やかな晴天に恵まれた休日に、俺はこの地に初めて降り立った。
ここまではモノレールに乗ってきた。終点であるここに降りる乗客は俺一人だけで、ちょっと不安になりながらも下車。左右に立ち並ぶ木々に挟まれた、舗装された道を案内図に従って歩き、見えてきた白亜の建造物に目を奪われる。
写真では見たことはあるが、実物の雰囲気には勝らない。俺が通っていた高校とは何もかもが違う、どこか近未来的で綺麗な校舎。
「これが
これから俺が通うことになる特殊国立高等学校だ。
未だに信じられない。俺がこの学園に通うことになるなんて。
とりあえず記念に写真でも撮るか。携帯電話を構え、カメラで撮影をし始めた。
「もう来ていたか」
「え?」
横から女性の声が聞こえて、俺はそっちへ顔を向けた。
レディーススーツを着た黒髪の女性が立っていた。なんというか、モデルみたいに綺麗な人だ。テレビで見掛ける女優が、ドラマの役のためにスーツを着ているかのような。違和感があるとかそういう意味ではなく、普通の人とは漂う雰囲気が違っていた。
少し気が強そうだけど、整った貌に、俺は見惚れてしまった。
「どうした? 私の顔に何かついているか?」
「あ、いえ」
黙ってじっと見つめていたのに気づかれ、俺は我に返って首を横に振った。
コツコツとヒールの音を鳴らして歩いてくる女性。身長は俺より少し小さいくらいか。女性にしては少し高めな背丈で、手足もスラリと長い。モデルなのでは? と改めて思うが、この場所にスーツを着ていて、しかも俺に用事があるという。
となれば、答えは一つだろう。
「ここの先生ですか?」
「ああ。
織斑。ということは、彼女が俺を出迎えてくれる先生だ。
「約束の時間よりも三十分ほど早いが、真面目だな」
「すみません。道に迷うと思って、少し早めに来てしまいました」
「なに、謝ることじゃない。時間を守るのは大切なことだ」
ちょっと低めの声に安心感を覚える。怒らせると怖そうだけど、すごく頼りになりそうな先生だ。ああ、でも怒った顔も見たいかもしれない。見れば見るほど綺麗で、先生のいろいろな一面を眺めていたい気持ちになる。
「時間は早いが、手続きを」
顔がいいのもそうだけど、胸も形が良くて柔らかそうで。
「おい。聞いているのか?」
こういう恋人がいたら、きっと幸せなのだろうなと思いながら、妄想を膨らませる。
先生と恋人になって、一つ屋根の下で暮らす。同じベッドで全裸になって、暇さえあれば抱き合って繋がる。お互いの体が汗だくになっても求め続け、相手の大切なところに俺の欲望の塊を注ぎ込んで。
「って、え……?」
ついつい妄想が捗ってしまい、我に返ったときには、すぐ目の前に先生がいた。
「……え?」
その距離があまりにも近くて、改めて声を漏らす俺。
両手を伸ばせば、簡単に相手を抱き締められる距離間。先生は棒立ちになる俺の体に寄り添って、俺の顔を見上げている。これではまるで恋人だ。出会ったばかりの相手、それも生徒に対する距離の詰め方ではない。
いったい何が。
「ちょ、な、なにをっ……!?」
動揺する俺を他所に、先生はあろうことか俺の股間に片手を伸ばし、まさぐってきた。無造作に撫でる感じで。俺が妄想したせいで、いつの間にか制服の白いズボンを内側から膨らませていた男根の形を触診で確認されている。
「な……え……? ぅあ……」
「どうした?」
生徒の股間を片手で鷲掴みにしているのに、先生は至って真面目な顔をしていた。
「どうした、って……」
なぜ俺のほうが疑問を投げかけられているのか。意味がわからない。この状況はなんだ。もしかして、俺は今夢を見ているのではないか。IS学園に通う権利を得たという信じがたい現状も実は夢だったのではないか。
そう思ったのだが。
「勃起しているな。これでは歩きづらいだろう」
男根の輪郭を指先で辿られる。力んで硬くなった竿を五本の指でトントンと叩かれる。ピアノを弾くような気軽さで、けれども先生は真剣な眼差しで俺を見つめている。さっきよりも距離が詰められていて、お互いの息が顔に触れる。
「男が勃起したら、女が処理をするのがこの学園の規則だ」
なに、その規則。
「事前に送っていた資料に、大まかな校則が書いてあったはずだが?」
「ないです……。そんな資料、届いていないです……」
学園側の資料は、制服と共に俺の家に確かに届いた。ちゃんと開封し、隅々まで目を通しておいた。やたらと分厚い参考書もあったが、ちゃんと読破し、自分の知識として取り込むことができている。俺は記憶力には自信がある。その俺が言うのだから、書かれていた情報の見落としなどないと思う。
何より、男の勃起を女が処理するなんていう校則がこの世界にあるはずがない。
そのはずなのに。
「そうか。何かの手違いがあったのかもしれないな。すまなかった」
素直に謝罪をしてくれた先生だけど、手は動き続けている。トントン、スリスリ。制服越しにいろいろな刺激を与えられる。勃起が促されていくせいで膨らみがさらに大きくなって、余計に掴まれやすくなってしまう。
「熱いな。それに、随分と大きい」
「ぁ、ぁ……」
ぐにぐにと揉まれている。こんなことされたのは初めてだ。
「溜まっているようだが、性欲処理を怠っているな? 我慢は体に毒だ。若い体ならば尚更な。ちょうどいい相手が近くにいないときは私を呼ぶといい。お前が満足するまで、溜まった欲望を発散させてやろう」
俺の耳元に口を近づけ、囁いてくる先生。声が耳内を通り抜け、鼓膜を震わせる。
「ぁぁぁ……」
ゾクゾクと背筋が震え、両足から力が抜けそうになる。先生が空いた手を俺の背中に回し、倒れないように支えてくれる。けれども股間弄りは全くやめてくれず、それどころかチャックを摘まんで勝手に下ろし始めた。
「いつまでもズボンの内側というのは良くないな。窮屈な場所では発育が妨げられる。性欲を感じたら、自分でズボンから陰茎を出すよう習慣づけるように」
とんでもないことを言われている。そんなことをすれば、普通に捕まる。
先生は冗談だとは言ってくれず、手も止めてくれず、細くて綺麗な指先が開かれたズボンの穴から潜り込む。指で探られている。穿いているボクサーパンツの前の穴も発見され、そこにも侵入を許してしまい、遂にそこへ指が直接触れる。
「出てこい」
そのまま先生に誘導され、俺の男根がブルンッとズボンから顔を出してしまった。
「なんで、こんな……」
こんなことになるなんて、想像もしていない。外で男根を露出させて、それを教師に見られている。それだけでも羞恥心で頭がおかしくなりそうなのに、先生は何の躊躇もなく竿に手を掛けた。
「立派なものだ。男として魅力的だぞ? 恥ずかしがる必要などないだろう?」
先生は俺が恥ずかしがっている理由を履き違えている。
さっきから全てがおかしい。生まれてから十六年、俺が培ってきた常識が通用しない。生徒を教え導く教師の職に就いておきながら人の常識を知らないはずはない。だというのに、先生は至って真面目に、俺の性欲処理をするのが当たり前のことだと認識している。
となれば、答えは簡単だ。
何らかの理由で先生の認識が狂っている。
いや、答えは出たけど意味がわからない。認識が狂うなんてあり得ないだろう。頭でも打ったのか? 新手の病気? あらゆる可能性を考えてみるが、脳の専門家でもない若者の俺に原因がわかるはずがない。
「いつまでも立ったままではやりづらいな。そこのベンチに行くぞ」
「ぁ……」
先生の誘導を拒めない。常軌を逸する状況とはいえ、これは男としては夢のような出来事だ。美人な女教師に性欲を処理してもらう。大人向けのビデオにありそうな状況で、そんな魅惑的な体験ができるかと思うと、童貞の俺には抗えない。
手を引かれ、近くにあったベンチに座らされる。
「隣、座るぞ?」
先生は俺の右隣に腰掛け、できるだけ身を寄せて、改めて男根を右手で握った。
「こうやって耳元で囁きながら、ペニスをゆっくり扱いてやる。こうすれば気持ちいいだろう? お前はじっとして、耳とペニスに意識を集中させればいい。存分に気分を高めて、溜まった精液を吐き出すんだ」
「く、ぅっ、ぉっ……」
先生の手で、シコシコと男根を扱かれる。初めての手コキ。学校の敷地内で、それも外で体験することになるなんて。人生何が起こるのかわからないというが、それにしたってこれは凄すぎる。
この日の出来事はきっと、今後の自慰でも頻繁にオカズとして活用できる。
そう確信していた俺は、
「ふぅぅうう~……」
「ぁぁああ……!」
耳の穴に吹き込まれた息の感触に悶絶した。
「ほぉ、耳が弱点か? それなら……はぁぁあ~……」
「ん、ぉっ………!?」
今度は温かい息で耳を犯される。ビクビクと震える俺に合わせ、反応を示す男根。そこは絶えず先生の手で摩擦されている。俺の反応を楽しんでいるようで、視界の端にチラリと見えた先生の表情は不敵な笑みを見せていた。
「どうだ? ペニス、いや、勃起チンポを扱かれながらの吐息攻めは。はぁぁ~」
やばい。
「さらに硬くなったな。限界が近いのか? 我慢することはない」
本当に良いのだろうか。
「お前が射精したいと思ったタイミングで、遠慮せずに絶頂しろ」
ああ、本当に良いのか。
優しい低音で囁かれ、息を吹きかけられ、男根を扱かれ続ける。尿道口から我慢汁がたくさん漏れていて、それに先生の手が触れたことで手コキが卑猥な水音を立て始める。ぬちゃっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ、ぐちぃっ。余計に鼓膜を刺激されて、俺は、もう。
「ぅ、ぁぁぁあ~……!」
欲望を抑えきれず、俺は声を上げながら尿道口から精液を噴き出した。
真っ直ぐ伸びていく白濁液。ベンチ前の、舗装された石畳に白い線を作る。断続的に放たれるそれによって何本も線が作られるのを、俺は茫然と眺めていることしかできなかった。
「好きなだけ出せ。私が傍で見ていてやる」
手コキで射精を支援され、耳元で囁かれ、射精する様子を見られている。
突然訪れた非日常体験。襲い来る圧倒的な快感が、この出来事が夢ではないと知らせてくる。だからこそ、どうしてこんなことになっているのか頭を悩ませる。そんな俺に対し、自分の行動に一切の疑問を抱いていない先生が、こう囁いた。
「なんて濃い精液だ。こんなものを子宮で受け止めたら、高確率で孕んでしまうな。今回は手コキで済ませたが、お前が望めば本番もしてやろう。もちろん避妊なしで、な。もしも私がお前の子を妊娠し、お前が望むというのなら何人だって産んでやるぞ? それも、私たち女の役目だからな」
本番、妊娠、出産。
「お前はただ気持ちよくなることを考えて、学校生活を送れ。好きな女子生徒や女教師に性欲を処理させ、気に入れば寮の自室に持ち帰ってもいい。そのまま好きなだけ交尾をし、相性が良いと感じたならば、そのまま恋人にしても構わない。ああ、結婚も自由だ」
交尾、恋人、結婚。
一気に情報が流し込まれ、処理が追いつくのに時間が掛かる。
この異常事態を受け入れるのに時間を要する。
けれども俺の男根はやる気で、先生の手の中で萎えることを知らずに膨張した。
「お前が良ければだが、私とも結婚できるぞ? 反応から察するに、どうやらお前は私のことを好ましく思っているようだ。私にお前好みの格好をさせ、暇さえあれば抱きまくって種付けし、できちゃった婚をするというのはどうだ? 妊婦腹でいやらしいウェディングドレスを着た私の姿を、夫としてじっくり眺めてみたいと思わないか?」
びゅくっ、びゅるっ、どびゅるっ。
その光景を妄想し、興奮を得た男根が追加の射精を始めた。それは先生の作戦だったようで、精液が絞り出されるのを見て、控え目だが満足そうに微笑んだ。でもやはり今の言葉は冗談ではなくて、本当に実現可能なのだと知ると、射精は止まらなかった。
青空の下、解放的な射精に身も心も蕩ける。
どれだけそうしていたのだろうか。呆然としていた俺は、周囲の変化に気がついた。
「はっ……!?」
俺と先生が座るベンチは、いつの間にか遠巻きから女子生徒たちに囲まれていた。その数、数十人。誰も彼もが興味津々といった様子で、中には携帯電話を取り出して堂々と俺たちを撮影している生徒もいた。
「あの子誰?」
「もう、ニュース見てないの? ISを動かせた世界で二人目の男の子だよ」
「織斑くんの代わりの子だ~。結構好みかも」
「今晩、あの子の部屋に押しかけちゃおうかな? とびきりエッチな格好で」
「ちょっと、抜け駆けしないでよね?」
今日は休日。俺は初めて学園に来ることもあって制服を着ているのだけど、女子たちは全員制服ではなく私服姿だ。暖かいから薄着になるのはわかる。けれども、肩やへそ、太股まで大胆に曝け出しているのは、思春期の俺には目の毒だ。
だけど、それはまだ可愛いほうかもしれない。
「美味しそうね。たっぷり可愛がってあげたいわ」
大人びた魅力を備えた女子が、ついさっき寝床のいたかのようにネグリジェを纏っていた。その生地は非常に薄く、肉感的な裸身が容易に見て取れる。形が良くて重たそうな乳房も、細い腰も、割れ目も。……って。
俺は、その女子が膣穴にバイブを深々と挿入しているのに気づき、啞然とした。
あんなことをしているのに。いや、そもそもさっきから聞こえてくる女子たちの会話の内容でわかっていたけど。誰もこの状況に違和感を抱いていない。
このIS学園には、例外を除いて女性しかいない。
例外というのは俺と、去年IS学園に入学したというもう一人。男でありながら、女性にしか起動できないはずの現代最強の兵器『インフィニット・ストラトス』、通称『IS』を起動させることができた、世界でたった二人だけの存在。
女子たちが俺を見ているのは、ここでは珍しい男子だからという理由だけのようだ。
「あとで逆レイプして子種奪っちゃおっかな~」
「え、そんなことしていいの……?」
「こらこら、駄目に決まってるでしょ? 女子から暴行振るうのは校則違反だよ?」
「そうですよ。私たち女は所詮、生き物として優秀すぎる殿方の足元にも届かぬ下賤な存在。やるのならば、目の前で衣服を全て脱いで、全裸で土下座をし、学生証を提示。敵意がないことを証明した上で性行為を懇願するのが本来の礼儀作法ですよ?」
「わかってるって~、冗談だよ冗談。でも、今時そこまで丁寧な人もいないでしょ」
「あ、でも、逆レイプしてもいいか許可を取ればいいんじゃないの?」
「お、それいいね~。この先の人生丸ごと捧げてお願いすれば、もしかするといけるかも~」
「男の人をレイプ……。知らない人にレイプされたことはあるけど……。背徳的だね……?」
狂っていたのは、織斑先生だけじゃなかった。ここにいる全員が、いや、この学園全体が不道徳的に狂っている。そのことを誰もが当たり前だと受け止めていて、俺との淫行に躊躇いはないようだった。
「雄に誘われて群がってきたが、この後入寮の手続きがある。場所を移してもいいか?」
男根を握ったまま、先生がそう提案してきた。
「そこで、性欲処理の続きもしてやらないとな」
このまま、先生の言うとおりにしていいのだろうか。流れに身を任せたら、ますますとんでもないことになると思う。けれども、俺は先生から受けた快楽を忘れられない。今よりもっと気持ちいいことが待ち構えているのかと思うと、俺は頷くことしかできなかった。