「はっ……」
目が覚めて、俺は慌てて体を起こした。
「……あれは、夢?」
織斑先生、いや、千冬とベッドで生ハメ交尾をしまくった。年上の美女と付き合うことでさえ俺の人生ではあり得なかったというのに、結婚の約束までして、子作りセックスまで経験した。誰かに話せば、夢だとか、寝ぼけているのだとか言われそうな現実感のない話で、俺は本当に夢ではないかと疑った。
部屋には今、俺しかいない。
「千、冬……」
だが、徐々に頭が冴えてきて、正確に状況を把握できるようになってきた。
俺が眠っていたベッドは、さっきまで使っていたベッドの隣。俺と千冬がお互いの体液で散々汚したはずのベッドを確認してみると、シーツが新しいものと交換されている。
一見、何事もなかったかのように整えられているけど、この部屋に満ちた雄と雌の性交による匂いまでは消えていない。きっと、俺が風邪を引くかもしれないと思って、窓を開けて換気するのはやめたのだろう。
「夢じゃない……。俺は、本当にあんなことを……」
興奮が再燃し、股間に血が滾るのを感じていたときだった。
枕元にあった携帯電話がピコンと音を立てた。手に取って確認すると、コミュニケーションアプリに一件着信があった。送信者の名前は、――千冬。織斑名義ではなく、俺の名字を名乗った千冬だった。
二人だけのチャット欄。そこに、たった今送信された千冬からのメッセージがあった。
『まだ寝ているか? 夜眠れられなくなるだろうから、あまり寝すぎるなよ? 一応、体の汚れを簡単に拭って服は着せておいたが、風邪は引いていないか? もしも引いてしまったら、私が看病してやるからな』
千冬の優しい気遣いに、胸の中が温かくなる。
これが、誰かと付き合うということ。
深く感動を覚えながら、俺は返事を入力しようとした。
だが、それよりも先に、千冬によって携帯で撮った複数の写真が投稿された。
寝落ちした俺に騎乗し、腰を振っている途中の千冬。
俺の腕に抱き着き、頬にキスをする千冬。
俺の横で股を開いて座り、大量の精液を漏らす膣穴を見せつける千冬。
精液で汚れた男根に美味しそうにしゃぶりつき、スケベすぎるフェラ顔を披露する千冬。
『お前が寝ている間に、記念に撮っておいた。相手がいないときの自慰に使ってくれ』
寝ているときに、こんな。直接見ることができなかった悔しさと、こんなことをされていたのだという興奮が同時に生じる。散々射精したはずの男根がカマ首をもたげていき、直立して触ってほしそうにビクンッと震えた。
「いやいや、いい加減起きないと」
IS学園に来てからというもの、ずっと卑猥な体験をしっぱなしだ。ここで自慰を初めてしまったら、どんどん自分が駄目になっていく。物事にはメリハリが大事だ。そろそろ、まっとうな生活に戻らないと。
「でも、また千冬と……」
絶世の美女と言ってもいい、綺麗な千冬。俺の彼女。俺の妻。俺の物だ。
「やばい、幸せすぎるっ……」
考えるだけでニヤニヤが止まらず、俺は意味もなくベッドの上で転がった。
「……あ」
体の汚れを拭ってくれたと言っていたが、体の至る所が湿っているように感じた。あれだけ汚せば仕方がないか。このまま過ごすにはちょっと居心地が悪く、一度改めて体を洗ったほうが良さそうだ。
「確か、部屋にはシャワーが」
寮には大浴場があるらしく、男女で時間帯を分けて使用できる。しかし、学園がおかしくなった状況で不用意に使う気にはなれない。何というか、使おうとするととんでもない目に遭う気がして、今日中には覚悟が決まらない。
部屋であれば、一人でゆっくりと使える。
俺はベッドから起き上がり、積まれてあった段ボールの中から衣類やタオルを回収し、シャワー室に向かった。
「生き返る……」
程よい温度のお湯を頭から被って、温まりながら汚れを洗い落としていく。
ようやくリラックスしてきた頭で、俺はこれまでのことを整理してみた。
俺が訪れたIS学園は、何らかの要因によってそこにいる全ての人間の認識に異常を来たしている。その結果、男の俺にとって非常に都合の良い展開になった。千冬が俺との関係を望んでいるのも、認識がおかしくなっているからだ。
ということはつまり、この現象が改善されてしまえば、今の生活は終わる。
「……嫌だな」
俺は絶対に千冬と離れたくない。そう思えるくらい虜になってしまった。
こんなのは間違っているという考えもあるが、それ以上に自分の幸福を優先してしまう。俺に千冬みたいな恋人ができるのなんて、こんな状況でもなければあり得ない。ここで善人ぶって問題を解決して、はいさよならなんてことにはしたくない。
できれば、このままずっと続いてほしいと思った。
シャワーを浴びて、部屋着に着替えてから部屋に戻った。
「……そう言えば、もう片方のベッドも使っちゃったけど」
この部屋には二台のベッドがある。片方はきっと、織斑一夏君のものだろう。未だに姿を現さないけど。千冬が俺を隣のベッドに運んで寝かせてくれたのだが、使っても良かったのだろうか。
「……この時間になっても来ないな」
時計を見ると、既に夕方になっていた。窓の外は茜色に染まっている。
結構な時間が経過しているのを確認していると、途端にお腹が空腹を告げた。
シャワーは自室で済ませられても、食事はどうにもできない。この学園で生活を送るには、食堂を利用しなくてはならない。一応、自室にキッチンもあるのだが、食材もないし自炊の能力もない俺には無意味な設備だ。
「とりあえず、食堂に行くか……」
人前に出ることを恐れていては、学園生活は成り立たない。俺は身嗜みを確認した後、意を決して部屋から廊下に出た。
廊下には誰もいなかった。最初はそうして安心していたのだが、寮にある案内図に従って食堂へと近づくに連れて、俺以外の人の姿を見掛けるようになる。当たり前だけど、出会う人間全てが女子生徒。
この学園は、入学させる生徒を顔で選んでいるのだろうか。そう疑ってしまうほどに、出会う女子生徒たちは皆、容姿端麗だった。
この学園には、IS適性のある世界各国の優秀な才女たちが集められている。国籍や人種は様々で、髪や肌の色も様々。俺が今まで通っていた日本人だけの学校生活と比べて、明らかに景色が異なっている。
その上、今この学園は認識が狂っている。
「ねえねえ、あの子だよ。噂の子」
「早速織斑先生をお嫁さんにしたみたいだよ」
「いきなり先生を? それじゃあ、私が誘惑しても見向きもしてくれないじゃん」
「比較対象が織斑先生かー。ちょっと様子見しようかな?」
段々と人が増えてくるのだが、その恰好が非常に際どい。太股を堂々と晒し、へそや肩まで出している。夏場で過ごすような布面積の少ない恰好でうろついている女子が多く、視線を向けた先に映る柔肌が目に毒だった。
俺が歩くたびに女子が廊下の左右に退いていく。まるでモーゼだ。全員が俺へと好奇の視線を向けてくる。獲物を品定めするようなねっとりと絡みつく視線も感じながら、俺は足早に食堂を目指した。
これは、非常に居心地が悪い。どこを見ても、美少女、美少女、美少女。以前の俺だったら羨ましいと思ったのだろうが、実際にこういう場所に男一人でいると、喜びよりも戸惑いのほうが強くなるのだと俺は十分に理解した。
なるべく意識しないようにして、俺は食堂にたどり着いた。
まだ早い時間帯のため、そこまで混んではいない。注文用のタッチパネルで料理を選び、それを受け取る流れのようだ。早速俺も、無難に和食を注文し、できるだけ人目のつかない奥まった席を確保して料理が出来上がるのを待つ。
そうしてただ待っていると、またしても俺に集中する視線を肌で感じてしまう。
「声掛けて、子作りセックスを頼んでみる?」
「頼むだけ? それならさ、おマンコくぱぁって披露して誘ったほうが良くない?」
「え~、そうかな~」
「競争率高いんだからさ~、声掛けるだけじゃ駄目だよ、君~。雌なんて雄に媚びてこそだよ。私たちが可愛く成長したのは、一人でも多くの男の目に留まって、たくさん抱いてもらって、妊娠する確率を上げるためなんだから」
「そうそう。女ってのは男の子供を産むためだけに存在してるんだよ? それなら、まずはおマンコを開いてご挨拶しないと。ここにあなたのおチンポ入れてもらって、中出ししてもらえれば妊娠できますよーってアピールしないと、って、あ……」
饒舌に話している一団の横を通り過ぎて、俺の下へ歩いてくる少女がいた。
白いリボンで黒髪をまとめ、長いポニーテールにした少女。見るからに日本人だけど、俺が今まで出会ってきた日本人の少女の中でも際立って美少女だった。そこにいるだけで人目を惹く。
俺も少女の到来にすぐ気がついて、その容姿に見惚れた。千冬のような綺麗系。今はまだ少女の幼さを顔に残しているけど、これからどんどん魅力的な大人の女に成長していくのだろう。他の少女と違って普通の私服姿をしているけど、それでもはっきりとわかるくらいにスタイルが良い。
この少女が抱いてほしいと迫ってきたら、きっと断れる男はいないはず。
素直にそう思える黒髪ポニテ巨乳美少女が、俺の目の前で立ち止まった。
無言で、胸の下で腕を組んで。他の女子たちから向けられる視線とは違い、こちらに肉欲は感じられなかった。何か複雑そうな心境のようで、椅子に座る俺を見下ろしたまま、微かに唸っていた。
「この男が、一夏の代わり……」
「えっと?」
「そうなると、私はこの男の……。いや、本当にそうなのか? 私はまだ一夏のことを……。しかし、一夏はもう姉さんのものだ……。その姉さんにも言われた……。この男に人生を捧げたほうが、私は幸せになれると……」
少女はブツブツと呟いて、俺をジロジロと観察してくる。これはこれで、居心地が悪い。
困っているのか、怒っているのか。どうとも区別がつきづらい様相を呈している。美人が怒ると怖いというのは、こういうことか。それでも、目鼻立ちが整った顔を見ていると目の保養になる。
……やろうと思えば、俺はこの子にも手が出せるのか。
以前の俺ならば手の届かない高嶺の花が、こうして俺に触れられる距離で咲き誇っている。全部俺次第だ。この異常な状況下であれば、俺がどれだけ男として最低な行いをしても、拒まれることはない。
俺はごくりと唾を飲み下すと、席を立った。
「な、なんだ……?」
自分でこちらに詰め寄っておきながら、こちらから近づかれると狼狽える少女。何をしに来たのかは知らないけど、堂々と俺の前に現れたんだ。こんな可愛い子を好きにしても許される環境で、俺はいつまでも耐えられる気がしなかった。
やってもいいんだ。
自分に言い聞かせ、俺は少女に片手を伸ばした。
「っ……!?」
着ているシャツの上から、少女の胸を鷲掴む。力を入れすぎず、かと言っても優しすぎず。服とブラジャーの内側に感じる柔らかい乳房を揉み潰していき、布越しでも伝わってくる体温をしっかりと感じる。
たった今出会ったばかりの少女の胸を揉む。本来あってはならない行為に自分から手を染め、心臓が高鳴る。やってしまったという後悔と、それを上回る達成感。続いて興奮が高まっていく。
大きい。まだ高校生なのに、随分立派だ。千冬と同等か、それ以上か。とにかく立派な乳房の片割れに、俺は掴みかかっている。
「急に胸を……。いや、別に悪いことではないはず。女が男の欲望を受け入れるのは当然のこと、だが……。一夏は私にこんなことは……んんっ……!」
この少女の認識も狂っているが、どうも他の少女とは何か違うようだ。自分が置かれている状況に疑問を抱いている? けれども自分の常識を疑いきることはできなくて、そのまま身を委ねているといった感じだ。
認識の狂い方に個人差があるのだろうか。
「ん……ぁ……」
とは言っても、もう止められない。俺は少女との距離を詰め、今度は抱擁してみた。
「ぁ……」
正面から抱き締めて、片方の手を少女のスカートに伸ばす。垂れ下がる裾から潜り込ませ、中に隠れたショーツを指でなぞる。そうしてから手を目いっぱい広げて、恐る恐る尻に掴み掛かった。
「は、ぁぁっ……!?」
少女が震えて、その振動が俺に伝わってくる。それも合わせて、俺は尻の柔らかさを楽しんだ。胸とはまた違う弾力。ショーツという頼りない生地からは熱が色濃く感じられて、揉んでいるのだという感覚が強く手に残る。
本当に柔らかい。良い匂いもする。俺今、やばいことしてる。その自覚はあるけど、止められない。この美少女をずっと抱きしめていたい。
「やはり、お前は、私の……?」
俺を見る少女の顔は火照っていた。さっきまで強張っていた表情が緩んでいる。今までも十分可愛かったのに、途端に見せてきた女の顔はさらに可愛かった。この学園の生徒は本当に、テレビで見るアイドルなんて目じゃないくらいに魅力的だ。
美少女を抱きしめる多幸感。股間で膨らむ欲望。
このまま目の前の少女にぶつけたくなってきた。
「おーい、料理できたってー」
「あっ」
受け取り口近くにいた女子が声を上げた瞬間、俺は正気に戻って少女から慌てて体を離した。
「ぁ……」
少女の口から漏れる残念そうな声。
「いや、私は今、何を考えて……。ただ胸を揉まれて抱き締められて、尻を掴まれたくらいで……。しかし、何故なのだ……。この男を見ていると、下腹の奥が熱く……」
再び呟きはじめ、少女は俺から身を引き始めた。
そうして、俺が呼び止める間もなく、少女は来た道を引き返して食堂から足早に出て行った。料理を注文していないようで、俺に会いに来ただけのようだった。そんな行動を取ったのかは謎だ。結局、少女とは会話もできなかった。
「料理冷めちゃうけど、持っていったほうがいいの〜?」
「ご、ごめん! 自分で運ぶから!」
苦笑いしている食堂のお姉さんの代わりに、大声を張り上げて俺を呼んでくれた少女。放っておくと俺まで恥ずかしくなってくるので、俺は慌てて料理を受け取りに行った。
なんだかよくわからない出来事だったけど、今は食事に集中しよう。
幸い、食事中に誰かが介入してくることはなかった。相変わらず視線は四方八方から向けられてくるけど。千冬と肉体関係を持ったという噂がどういうわけか生徒たちの間で広まっているらしく、千冬と比較されるのを恐れたのか気安く俺に近づけないようだった。
俺としては好都合、なのか? 今となっては、どちらが良いのかわからない。美少女たちに迫られて、揉みくちゃにされて、酒池肉林を体験したくないかと言われると嘘になる。しかし、そこまで道を踏み外す勇気はまだなく、はっきりと頷けない。
ただ、一つ言えることがある。
さっきの少女を抱いたときに感じた、あの幸福感。あれをもう一度味わいたい。股間に宿った欲望が発散できずに残っていて、あの子と繋がれることを期待してまだ震えている。
あの子はどこへ行ったのだろうか。食事に集中しようとしたけど、結局そればかりが気になってしまい、きっと美味しいはずの料理の味は殆ど味わえなかった。