初めてまともな手がかりに触れられたことは幸いだったけれど、各々の母親について聞き回ることで得られた成果は、逆に言えばその程度が限界でもあった。花子は怪しい、Aはもっと怪しい。……これが現在の俺に言えることの全てである。
手がかりが手がかりを呼ぶ……などと都合のいいことは起こらない。Aと別れたあと、次の策を思いつくことが出来ないうちに日は暮れて、夕食が終わり入浴が終わり、やがて恒例の「夜」が来る。順番からして今日は花子が、苦痛と引き換えに俺から魔力を受け取りに来る。
前回、男側の性癖に当てはまりもしないプレイを要求された花子は、それについて事後に少し腹を立てているようだった。けれど何も策が思いつかない今晩は不幸中の幸いとして、今日の彼女がそういった茶番を要求されることはない。俺はただ自分の欲望の赴くままを花子にぶつければいいだけだ。……それは一度アクセルを踏み込んでしまえば何も難しいことではなかった。
やるだけのことをやったと思う。物理的にも精神的にも、彼女を痛めつけたという自覚があった。……なのに、身体中につけられた痣をその不死身性でみるみるうちに消しながら、彼女は困ったような笑みを浮かべて言う。
「青ウニくんは優しいんだね」
「え……?」
「今日もまだ遠慮してたでしょ」
「え、いや……」
そんなつもりはなかった。A相手ではとても出来ないようなプレイの数々を好き勝手に実践したつもりだった。
けれど花子はまだ不満らしい。それはつまり、得られた魔力の量や質が不十分だったということなのか。それとも必要十分であるかどうかとは別に、人の性欲を察する力の方が俺の不完全燃焼を示していて、それが気に食わないとでもいうのだろうか。
多少不可解に思いながらも、しかし、俺はそれが好機であることに気づく。今なら至極自然な流れで、この質問を投げかけられるから。
「……ちなみに花子さんが今までされたSMプレイの中で、一番キツかったやつってどんなですか?」
母親に関する質問の時とは違う、自然な会話の流れによるもの。もしここに花子が完全な無意識で「子どもの頃に大人の男に輪姦されたことかな」とでも答えてくれれば、俺たちは一撃でクイズを突破できる。もしくはそこまでクリティカルな物でなくても、何か新たな手がかりを得られればそれは大きな前進だ。
と、俺は純粋にそういった気持ちで質問したはずだったのだけれど。んー……としばらく悩んだ花子がやがて口にした話は、別の意味で俺の期待を満たしてしまうものだった。
「えっとね、アナルに腕を入れられて、中でグーチョキパーって手を動かされたことがあったの。それで、その手とジャンケンをして、負けたらもっとひどい罰ゲームを受けるっていう」
「……罰ゲームっていうのはどんな?」
「そのまま前の方にも腕を入れられたり、その状態でお腹を殴られたり蹴られたり……とか」
「な、なるほど」
「青ウニくんもそういうの好きでしょ?」
「…………いやぁ、まぁ、なんていうか、はぁ」
正直、図星だった。
いや、そこまでひどいプレイを実際に見たことはないし、やったこともない。けれどもしエロ漫画でそういうシチュエーションを見かけたら、俺はそれを自分のお気に入り作品にカウントしていただろう。
サキュバスにとってのフィスト系のプレイは、人間にとってのそれほど過酷ではない。かつて付き合っていたサキュバスのコルカや、現在進行形のセフレであるハクレナに対してやったことがあるから知っている。彼女らの体はそういったプレイにも対応できるようになっている。けれど両穴に腕を突っ込んだ上で腹を殴ったり蹴ったりすることまではやったことがないし、それがサキュバスにとってどの程度深刻なことなのかは分からない。……花子の言う「キツかった」が「つらかった」ではなく「過激だった」の意味であることを願うばかりである。
また、過激な話を聞いて、もう一つ思い出したことがある。俺はついさっきまで花子に思う存分の暴力を振るっているつもりだったけれど、言われてみればそこには確かに遠慮が……もとい手加減があった。それはなぜかといえば、この旅館へ閉じ込められた早い段階で、チャカが俺にこう教えてくれたからだ。
人間だったら救急車を呼ぶことになるようなプレイは、得られる魔力との採算が合わなくなるからやめてほしい。
俺は、ハクレナの背中に給湯ポッドから注いだ熱湯をかけたことがある。自分はリミッター無しで欲望に忠実に動けばそういうことが出来てしまう人間なのだということを知っている。けれど採算の件から考えても明らかなように、この旅館の中では「リミッターを外す」なんて選択肢はあり得ない。あり得ないけれど、花子が言っている「遠慮」とは、まさにその部分を指しているのではないか?
もしそうだとすれば、それで向こうから不服そうにされることの意味が分からないのだけれど。
「でも、両穴に腕を突っ込んだ上で腹パンって、一人じゃ腕の数足りませんよね」
あまり無茶なプレイを提案されても困るという意味だったのか、それとも図星を突かれた動揺を誤魔化すためだったのか。俺は自分でも意図がよく分からないまま、雑談の流れとして適当にそう返した。
すると、予想外な角度からの返事が寄越される。
「誰か呼んだらいいよ。せっかく人数いるんだし、チャカさんとかなら快く協力してくれそう」
「……いや、やめときましょうよ」
「えー」
花子がつまらなさそうに唇をとがらせて、それきりこの話は終わった。
就寝前、花子を部屋に入れたまま目を閉じて、俺は想像した。アナルフィストをされたとして、中で蠢く加害者の手の形が、被害者に正確に分かるものだろうか。もしかしてその時の花子は、本当はジャンケンに勝っているのに「お前の負けだ」と言われて、理不尽に罰ゲームを強いられていたのではないか。
……最低なことに、そんな想像をすることで俺はムラついてしまった。隣で寝息をたてている花子についさっき欲望をぶちまけたばかりなのに。心のリミッターは確かにかかっているはずなのに。黒幕のことを偉そうに糾弾できたものではない己自身の醜悪な性癖は、他人の弱みにつけこむように煮立ち始める。
そんな性欲の出現を、真横にいた花子は夢の中からでも見逃さなかった。俺が自己嫌悪に陥り始めたその数秒後には、彼女はむくりとその場に起き上がったのだ。
暗闇の中で、はだけた浴衣の奥に秘められた熱がこちらにもたれかかってくる。
「……していい?」
まるで自分の都合であるかのように、花子は言った。
明かりを消した部屋の中では頷きを返事とすることに自信が持てなくて、俺は行動で自分の意思を示した。彼女の口元を指でなぞって、そのままそれを咥えさせたのだ。……あとは全て任せているだけでよかった。彼女は自分の首を絞める男の手すら、自分自身で導いてくれた。
そうして、自分の上で苦しそうに息を詰まらせながら腰を振る花子を見るともなく見ながら、俺は興奮の傍らで、クイズの正解にたどり着く自信をまたしても限りなく薄れさせていた。だってまるでその時の花子は、何の後ろめたさも隠し持っていないような、ただサキュバスらしく淫乱なだけのマゾに見えたから。
けれど彼女が過去に受けた過激なプレイは、人間女性であればトラウマになっていてもおかしくない物だった。なのに彼女はこの旅館へ閉じ込められたばかりの頃、あんなにも普通に「ジャンケン」でセックスの順番を決めていたのだ。
やはり俺には何も分からないんじゃないか。……そんなことを考えながらした射精では、彼女もきっと不味かっただろうに。その時に限って花子は、満足そうに「ごちそうさま」と言ってのけた。
花子と一緒に寝た翌朝は、目覚ましフェラが付いてくることがどうやら標準らしかった。二度目ともなると一度目ほどの驚きはなく、素直にありがとうを言えるようにもなってくる。お礼の言葉と共にピンク色の髪をなでると、彼女は得意げに微笑んで奉仕を打ち切った。
朝食の席でチャカの顔を見ると、昨晩の花子の提案が脳裏によぎった。要約して「チャカなら快く加虐プレイの共犯者になってくれるだろう」という意味合いだった花子のあの言葉は、俺としてもなかなかどうして的確であったように思える。チャカはこの旅館の中で俺の性癖に口出しするほどの道徳的理想主義者ではないはずで、加虐に怖気付くほどウブではないだろうし、そして何より、他を蹴落としてでも生き残ろうという意思がまるで感じられないから。
サキュバスたちが一人ずつ性欲を受け取りに来るのは、直接的な奪い合いによる揉め事を起こさないためだ。きっと3Pをすれば性欲(とそれに伴う魔力)をめぐって、俺の目に見えない世界で綱引きのような争いが起きかねないのだろう。そうでなければ、特にAなどは、俺のような男のところにわざわざ一人で来る理由はないはずだから。
けれどその中でチャカだけは、残りの二人へ出来るだけ俺の性欲を譲ろうとしている。3Pの相方としては適任の性格だ。花子が昨晩チャカの名前を挙げたのは、彼女のそういう性格面を知ってのことなのだろうか? それだけ確信的にお互いの性格を把握出来ているのだとすれば、この旅館の中にも、俺の知らないところで行われているサキュバス同士の交流があるのかもしれない。いや、むしろそうであってくれなければ心配だ。複数人の女子というものは、男子禁制のコミュニティを築いていてこそ健全なのだから。
……などと考えていると、チャカと目が合った。すると彼女は子どもをなだめるような……何かを許すような笑みを浮かべた。順番通りなら今晩俺の部屋へ来るのは彼女であるわけだけど、俺の目の中にいったい何を見出しどう解釈してそんな表情をしたのやら。変な誤解があったような気がしないでもない。
それについてはあまり気にしないようにして、俺は食堂のメニューを開く。古今東西の品々が時には写真付きで羅列されているそれは広く分厚く相応に重く、あらゆる食欲を受け止める願望機としての迫力を伴っている。俺はそんなメニューの後ろの方、ファミレスならデザートが載っているあたりを目指してページをめくった。元々朝方は食欲があまり湧かないタイプであり、今朝の気分としてはデザートから入るくらいがちょうどいいと思ったからだ。
が、ページをめくる勢いが余って、実際にはドリンクの欄にまで飛んでしまう。コーヒーに並々ならぬこだわりがある人ならともかく、自分のようながさつなタイプが飲み物のためにわざわざ数多の選択肢に目を通すようなことは……とすぐに引き返そうとしたところで、ふと思い立った。
ドリンク欄を数ページ進むと、そこには俺が思った通りのコーナーがあった。酒類のコーナーだ。あらゆる飲食物が念じるだけで召喚できるこの食堂では、当然といえば当然に酒類の提供も守備範囲内らしい。その程度のことが、誰一人として飲みたがる人がいなかったことで、今の今まで頭から抜け落ちていた。
べつに朝から飲みたいわけではない。けれど、そうか酒か……と新たな発想を得た気分にはなった。「他人の無意識下から情報を聞き出す方法」には、そういえばそういう物もあったのだと。
適当なカットフルーツを召喚して食べながら、俺はそれとなく三人に聞いてみた。
「ところで皆さんって、普段お酒を飲んだりはするんですか?」
それぞれが何とはなしに頷く。
「よく飲むよ」
とチャカが答え、
「誘われたら飲む」
とAが答え、
「旅行に行った時とか飲むよ」
と花子が答えた。
幸いなことに下戸はいないようだ。俺は自分も酒が嫌いではないことを伝えた上で、こう提案した。
「今メニューで目に入って思い出したんですけど、よく考えたらせっかく飲み放題ですし、今晩あたり一回くらい皆で飲んでみません?」
悪趣味な空間に監禁されたこんな切羽詰まった状況で何を呑気なことを……と思われるリスクはある。けれど酔った勢いで誰かの口から無意識下で有益な情報が聞ける可能性があるなら、そのリスクを取る価値は大いにある。
だから白い目で見られるとしても提案するしかない。……と、そんな俺のちょっとした覚悟が拍子抜けするくらいには、三人ともが気軽にそこへ同意してくれた。いいね〜そうしよう、と二つ返事で。
もしも三人の内心が本当は穏やかではなかったのだとしても、表面上の愛想はありがたいものだった。何せ俺には酒の勢いに頼る以外には、何ら他の策が思いついていなかったのだから。
……しかしその後、一つ不穏なことが起こった。朝食を終えて、各々が自由行動として解散したあとのことだ。部屋に戻ってもすることがないからと、半分癖のような感覚でゲーセンに向かって歩き出した俺の前に突然、黒幕の少女が現れたのだ。
ハッとして周囲を見渡しても誰もいなかった。偶然なのか、それともまた時が止まっているのかは分からない。ただもっと分からないのは、なぜこのタイミングで彼女の方から現れたのかということ。
内側が明るい青色に染まった髪をだるそうにかきあげながら、少女は言う。
「君に朗報だ」
「はぁ」
「もし酒に酔った誰かが打算の意識込みでクイズの答えに言及しても、それは精神錯乱として、セーフの扱いにしてあげよう」
「え」
「いいチャンスを見つけたね。まぁせいぜい頑張りなよ」
それだけ言って、少女は消え去った。
なんとも親切に、不可解なほどこちらに有利な話を報せに来てくれたものだ。酔った勢いで、クイズのルールを念頭に置いた上で答えに言及するだなんて、いくらなんでもそんな無茶苦茶なことをあの三人のうちの誰かがするとは思えないけれど。万が一それが起こったとすればこちらの圧倒的リターンになることを約束してもらえたのはルール上の有利としては大きい。……がしかし、どちらかといえば今のやり取りで、俺の不安は急激に増していた。
俺たちは黒幕の約束を全て信用するしかない。彼女が約束を破るような人物なら、クイズの細かいルールを語る以前に「条件を満たせばここから脱出できる」という希望自体が消え失せてしまうから。……けれど彼女の約束を信頼することと、彼女自身の人格を信頼することは同じではない。
なぜ黒幕はわざわざ自ら出向いてまでこちらに有利な条件を伝えに来たのか? それを伝えなかったとしても向こうに不都合はなかったはずだ。 ……と考えてみれば、「期待させて落とすため」が答えではないか? と察せられる。彼女の性格ならそれが大いにあり得る。少なくとも親切心で喜ばしいルールを伝えに来てくれたという説よりはもっともらしい。
俺はまた何か選択を誤ろうとしているのか? 飲酒を提案したことで黒幕の術中に嵌ってしまいかけているのか……? 途端に不安に苛まれるけれど、しかしそれでも、やはり俺には他に策がない。指をくわえて回答期限の日を待つよりは、思いついたことを片っ端から試してみた方がいくらかマシだろう。だから黒幕が何を考えていようとこちらの方針は変わらない。いや、変えられないのである。
前向きとも投げやり……どちらとも言えない感情を抱えながら歩き、ゲームセンターに着くと、先客としてチャカがいた。彼女は今日もメダルゲームをプレイしている。相変わらず巨大な円形の筐体は、前回とは別の機種になっていた。
俺は彼女の隣に座り、餌も付けずに釣り糸でも垂らすような気持ちでメダルを投入する。
「チャカさんには言っておこうと思うんですけど。俺はべつに、現実逃避に酒を飲もうって言い出したわけじゃないんです」
チャカはメダルプッシャーの上に備え付けられたディスプレイを見たまま、黙々とメダルを入れながら応える。
「酔わせて口を滑らせようっていうんでしょう? 意図的にクイズに言及してはいけないってルールをかいくぐるために」
「え、よく分かりますね」
「ちょっと考えたんだよ。なんでこんなタイミングでお酒の話なんかしたんだろう、って」
「不自然でしたか……?」
「君の性格を思えばね」
俺の性格とはなんだろう? と少し考えて、あぁそうかと思い至る。自分では自然な流れを演出したつもりだったけれど、俺は異性を飲みに誘うような陽キャではないし、そのように擬態出来てもいなかったのだ。
しかしチャカは「考えた」と言ったけれど、それにしては推測が正確すぎる。「本当にそれでルールをかいくぐれるのか?」と聞きすらしない。もしかすると俺の知らないところで、黒幕は彼女にも同じ「朗報」を伝えていたのかもしれない。
ゲームセンターには俺たち二人しか来ていない。残りの二人が今どこで何をしているのかは知る由もなく、それでこそ健全な……なけなしのプライベートが保たれていると言える。
そんな中でチャカが、少しだけまわりを見渡してから言った。
「……どうして私に今の話をしたの?」
「え?」
「もし私がクイズの答えの人物だったら、今の話を聞いたことで、口を滑らせなくなるかもしれない」
「……あ〜。俺は、チャカさんは違うと思ってるんです」
「えっ」
ずっとゲームにばかり注目していた彼女が、驚いた様子で俺を見た。
「え、そんなに絞れてるの……? すごいじゃん」
「今のところはですけどね。……でも確かに迂闊でした。言わなくてもよかったことだ」
「そんなことないよ。君が絞れてるっていうなら、それはきっと正しい」
以前はロクに期待していなさそうな感じだったのに、今日は妙に優しい言葉をかけてくれるものだ。……内心で少しだけ驚いて、今までの手詰まりに対するそっけない態度も、俺にプレッシャーを与えないための物だったのかもしれないと考え直し始める。実際、彼女が本当に俺に興味を持っていないような人物であれば、俺も今のような迂闊な口の滑らせ方はしていなかったようにも思える。
正直なところ負い目があった。下戸がいるわけでもないのに今日まで誰も酒を飲まなかったのは、そう言い出しもしなかったのは、全員が「それどころではない」「今はそういう空気ではない」と認識していたからではないか。それをあえて無視して提案を出すことには、必要とはいえ相応の負い目を伴った。それでつい、チャカにそのことを弁明したくなってしまった。俺は甘えたのだ。
けれど世の中にはいつだって、甘えを受け止められる余裕がある人などいない。それがあるように見える人は、ただそういう幻を演出しているだけで、実際には皆生きることに必死で、誰にも余裕なんてない。だからチャカも、バツが悪そうな顔をして俺に言った。
「あ、それとね青ウニくん。今日の夜は私の番でしょう? ……今日は思い切り犯してもらってもいい?」
「え?」
「正直ちょっと、魔力を切り詰めていくことにも限界が見えてきたっていうかさ……」
「あ……、はい」
前回、チャカが順番通り俺の部屋に来た時、彼女は他の二人に性欲を譲ると言って、射精に至らないフェラチオだけに行為をとどめていた。そうなると当然彼女の得られた魔力は、バチボコに犯されることで欲望を髄まで吸いきった他二名に比べてずっと少なかったことになる。そして今日であれから三日が経った。やはり軽い行為で得られる魔力だけでは、サキュバスは長くは生きていけないのだ。
けれど、ほかの二人に魔力を回すためなら自分は死んでもいいと言っていた彼女が、説得の甲斐あってかまず生きることをマストに考えるようになってくれたのは不幸中の大きな幸いだ。
その幸いに報いるためにも、今晩は本腰を入れてチャカに性癖を開示しなければならない。Aをイラマで吐かせたところまでは彼女にも話したけれど、それは俺の悪辣な性癖の天井ではないのだと。……だけどもしもチャカがそれを天井だと思っていたらどうしようか。酒などよりもそちらの方がよほど空気を悪くしてしまったら、四人の中で唯一のリーダーシップを持つ彼女に拒絶されてしまったら、俺はどうすればいいのだろう……。
チャカを説得したのは自分なのに、いざという時になると不安が湧いてくる。……しかし確かに不安に思っているはずなのに、同時に心のどこかでは、ただただ性的な期待を膨れさせていくだけの自分もいる。サキュバスたちのことを思えばその手のやましい心は喜ばしい物であるはずだけれど、どうしても自分ではそれを肯定すらべき物としては認められない。
俺は自己嫌悪という、この旅館内にあるストレスの中でおそらく最も自己中心的な物を抱えたまま、メダルゲームに逃避した。