※この作品はR-18です。

地味で眼鏡だけど体は最高なTS女が親友おじさんと軽口叩き合いながらエッチする話   作:TSペルペト

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前編

「ただいま……おお、凄い良い匂いする……」

「おう、おかえり! だろー? やっぱ火鍋専門店のスープだからな、この本物感は安いやつじゃ出せないだろうな」

 

 マンションの玄関が開くのと同時に聞こえて来る同居人の声に、オレはにやりと笑みを浮かべると、少しばかり得意げに言葉を返した。

 こたつの上で音を立てて煮える鍋から目を離して振り返れば、スーツ姿の三十代後半の男――『葉山雄二』――が、普段はやや感情の読み取りにくい朴訥とした顔にしっかりと喜色を湛えている。

 こいつにしては珍しいが、無理もない。今日の首都圏は初降雪が予報される程の強烈な寒冷前線に曝されていて、つまり、鍋物をやるには絶好の日なのだから。

 

「この金属鍋も専用のやつなのか?」

「ああ、セット売りされてたんだ。麻辣スープと白湯スープ、こんな風にそれぞれ入れて使うらしい」

「へぇ……本格的だな」

「だろ!」

 

 葉山が興味を示したのは、カセットコンロにかけられた金属の鍋だった。真新しいそれは波打つ仕切りで二つに分けられていて、紅白二色のスープが注ぎ入れられている。まるで太極図のような形状だ。

 鍋込みの値段はやや躊躇わされるものだったが、この反応を見ると買って良かったと思える。それに、他の鍋物にも使えるのだから無駄にはならないだろう。

 

「ほら、早く着替えて手洗ってこいよ。残りの準備もやっとくから」

「……腹減って仕方ないんだが、すぐに食べちゃ駄目か?」

「その方、汁がシャツに跳ねて悲惨なことになる覚悟は有りや否や?」

「あー……わかった、着替えてくる」

 

 言葉通りすぐに手を出しそうになっているバカを押し留め、さっさと着替えさせるべく共用のベッドルームへ追いやる。

 名残惜しそうな表情が哀れを催すが、駄目なものは駄目だ。とはいえ、気持ちは分かるし嬉しくもある。甲斐があるとはこのことだった。

 

 ちなみに、オレは既に戦装束を整えている。アッシュグレーのハイネックソフトニットTシャツと、同じ色のルームパンツ。どちらも量販店で安く買ったもので、汚れても惜しくない部屋着だ。

 二十そこそこの女が着るものとしては地味過ぎる色合いだが、俺には似合いだろう。それに、最初は平凡な格好の方が秘策の威力も上がるに違いない。

 

「さてと、残りの支度を――」

 

 直前に入れる食材を取り出そうと冷蔵庫に向かったところで、ふと、外の暗さで鏡のようになった窓に自分の姿が反射する。

 やや長めのショートヘアに、ハーフリムの細い黒縁メガネを掛けた女。年齢は二十代前半程度で、見ようによっては女子大学生にも思える。身長は高くも低くもなく、ゆったりとした服に包まれた体は外見上痩せても太ってもいない。

 受ける印象は、一言で表現すれば地味女。顔立ちそのものは整っているがどうにも華がなく、髪型や眼鏡、服装や体型に至るまで尽くが無難で面白みに欠ける。きっと、街中ですれ違ってもほとんどの人間は気にも留めないし、留めたとしてもすぐに忘れてしまうだろう。

 

 それが、今のオレという人間だった。

 

 そう。

 今の、というからには、数ヶ月前までは違っていたのだ。

 

 あの頃のオレは――地味だった。

 いや、確かに地味だったが、地味なだけではなかった。

 そもそも性別から違う。オレは男だった。

 

 今の名前は『古守八尋』、以前の名前は『古守康弘』。

 三十路も半ばを過ぎたいい年のおっさん――その筈だった人間だ。

 

 

 - - -

 

 

 『急性性別転換症候群(Acute GEnder REassignment Syndrome)』という病気がある。英語名の頭文字を取って、略称をアジェレ症候群。

 しかし、こと日本においては大半の人々がこう呼んでいる――『TS病』、と。

 数年前から世界中で発生が確認され始めた新興病であり、今のところ発症に至るプロセスは全くの不明。ウイルス性の感染症ではないかという説が有力視されているものの、それも仮説の段階でしかない。

 そしてもちろん、治療法などありはしない。

 

 当然、瞬く間に大パニックが生じた。事例の九割が男性から女性への転換例だったことから、世界中の男どもはビビりまくっていたと言っても過言ではない。

 ただ、少し経つとその混乱は急速に収まり始めた。皆が想像したよりずっと、拡大が穏やかだったのだ。

 一般的な感染症のように患者数が増えていく訳でもなく、共通点のない人々が世界各地でポツポツと発症しては報じられる。でも、マスコミやネットが騒いでいる程には流行っている感がなく、周囲の人間が罹ることもない。

 そんな繰り返しに世間は慣れたのだろう。ちょうど、少し前に流行った新興感染症が日常化したように。

 

 オレもそんな一人だった。騒ぎ過ぎだろうと思っていた。

 

 ――自分が女になるまでは。

 

 ある朝目覚めると、そうなっていたのだ。

 後から得た知識だが、この病気は就寝中に急速な肉体の再構築が行われるらしい。だから、発症者の多くは『あさおん』することになる。

 

 当然、オレもパニックを起こした、多くの男達と同じように。

 そして病院に飛び込み、諸々あってアジェレ症候群だとのお墨付きを受け、ソーシャルワーカーだかなんだかに言われるがまま役所へ赴いて、気付いた時には戸籍から名前まですっかり女になっていた。

 ちなみに、『やひろ』という名前は、『やすひろ』から一文字抜いただけの安易な改名だ。細かく考える余裕なんてあの時にはなかった。

 

 兎にも角にも怒涛のごとき日々を乗り越えたオレは、しかし、途方に暮れた。

 派遣先からはとうに契約を切られていたし、次の仕事を紹介して貰おうにも一朝一夕にはいかない。原因不明・経路不明の推定新興感染症罹患者という肩書は、社会的には決して無視できないレッテルだった。

 

 実家や親類縁者はというと、とても頼りには出来ない状態だった。父親とは元々折り合いが悪かった上、オレの新卒就職失敗をきっかけにほぼ絶縁状態となっているし、母親なら言えば助けてはくれるだろうが、父親との板挟みになって苦労を背負わせる羽目になるのは目に見えている。

 未婚の身で、彼女など生まれてこの方いた覚えもないし、手を差し伸べてくれそうな友人も思い当たらない。いや、正確には一人だけすぐに浮かんだ名前もあったが、そいつとは十年以上も連絡を取れていなかった。

 

 突きつけられた事実、オレは社会的に孤立していた。

 以前ならそれでも良かった。待遇は良くないとはいえ食うに困らないだけの仕事はあるし、安アパートだが住む家もあるし、贅沢しなければ金にもそこまでは不自由せず、オタク趣味を楽しむくらいの余裕もあった。

 だが、それはあくまでも、安定した暮らしという土台の上に成り立つ話だ。いざ土台が崩れてしまえば、孤立した人間は脆い。オレは間もなく、精神的にも経済的にも追い詰められていった。

 

 そんな時だった。あいつと――高校時代、人間関係の悩みから一方的に喧嘩を吹っ掛けて疎遠になり、卒業以来かれこれ十年以上も連絡を取っていなかった、取れなくなっていた相手。オレにとって唯ひとりの親友と呼べる男、『葉山雄二』と再会したのは。

 偶然立ち寄った実家近くのコンビニに、偶然帰省中だったあいつが買い物に来ていたという、ほとんど奇跡のようなめぐり合わせだった。

 オレは最初、気まずさから逃げようとして、結局は耐えきれずに縋り付いたのだ。

 

 それから、本当に色々なことがあった。

 

 一つ一つ思い出せば長くなるが、葉山はオレの近況を冷静に受け入れてくれて、オレは過去の過ちを謝罪し、紆余曲折を経てルームシェアをすることになった。

 二人で家賃を出し合えば東京近郊にそれなりの家を借りられるだろう――とはあいつの言葉だったが、当初は生活費の大部分を負担してもらっていたことを考えれば、詰みかけた状況から救い出されたという以外の何物でもない。

 

 以来、オレと葉山は半年を超えて同じ家で生活を共にしている。

 

 

 - - -

 

 

「――っと」

 

 不意に思い出された苦難の記憶から覚めるように、頭を振る。あまり思い出したくはないが、忘れてはいけない日々。

 ベッドルームの方をそっと確認すると、着替えている葉山の背中が見えた。オレが男だった頃は180cmはあったから、あいつとの身長差はほぼ無かったが、160cmあるかないかという今の目線からは妙に逞しく、頼もしく思える。

 もっとも、そこにはきっと、贔屓目も含まれているのだろう。だってオレは――。

 

「古守、こっちは終わったぞ」

「あ……わ、わかった! 少し待ってろ!」

 

 またしても思考があらぬ方向へ飛びかけて、いつの間にか黒のスウェット姿になっていた葉山が目に入る。

 オレは慌てて声を上げると、冷蔵庫の中から春菊とレタスが乗った大皿とおかわり用の豚バラ肉皿、それに、シメに使う中華麺を取り出してこたつへと戻っていった。

 

「はい、おまたせ! じゃあ、早速食べるか」

「ああ」

「チューハイ飲むだろ。レモンとウメどっちがいい?」

「レモンがいいな」

「それなら俺はウメな、カンパイ!」

「カンパイ」

 

 斜向かいに潜り込み、350ml缶を開けると、かつんと打ち合わせてアルコールを喉へ流し入れる。

 7%の酒精は、当たり前のようにストロングだった頃なら物足りなかったが、今の体になってから少し弱くなったらしい。心地よい酩酊感がじわりと脳にしみる。

 

「ふはーっ」

「ふぅ……」

「よし、食うぞ。たっぷり用意したから、遠慮せずにいってくれ」

「助かる」

 

 オレも葉山も昔からよく食べる方だった。もっとも、運動が得意だったこいつに比べてオレはからっきしで、必然的に小太りになってしまっていたのだが。

 そういえば、小中高と同級生連中は平気でオレの体型を揶揄してきたのに、葉山だけは一度もそんなことを口にしなかった。本当に人格の出来たやつだと思う。

 

「ん、はふっ……んむっ……」

「おーおー、よく食うな」

 

 よほど腹を空かせていたのか、若者顔負けの見事な食べっぷり。オレはどこか誇らしい気分で独りごちると、鍋から二つの皿に具材を取り分けていく。

 一つは唐辛子やクミン、花椒などの食欲をそそる香りが立つ麻辣、もう一つは穏やかな味付けに旨味がしっかり効いた白湯。どちらのスープにも大蒜や生姜、その他の漢方素材が入れられた本格的なもので、そこに豚肉やエビ、ねぎ、白菜、豆腐などの食材が混ざり込んでたまらない見た目になっている。

 そこに彩りを添えるのは、もうもうと立ち上る湯気だ。眼鏡に曇り止めを塗っていなければ、今頃きっと真っ白になっていただろう。

 

「……」

「……」

 

 ここから暫くは無言でお腹を満たすターンだ。

 ご飯茶碗を片手に、臨戦態勢に入る。

 

 まず、痺れる辛味の麻辣がたっぷり絡んだ豚肉を口に含むと、大蒜が鼻に抜け、すぐに強烈な旨味と薬膳の香味に満たされる。これがご飯に合わないはずがない。全身がぽっと温まり、こたつとの合せ技で薄っすら汗をかくほどで、それが心地よくもある。

 そうして辛さを堪能したあと、今度は白湯スープで煮込まれたネギと白菜、最後に乗せた春菊を運ぶ。こっちにもしっかり香辛料は入っているが、麻辣と比べて柔らかい旨味の方がずっと強い。野菜の甘味と歯ごたえに口を癒やされつつ、チューハイで流し込めば、至福の一時とはこの瞬間のためにあるような言葉だ。

 

 麻辣、白湯、麻辣、白湯。辛味と旨味が交互に襲ってきて、食欲が無限に湧き上がってくる。

 BGM代わりに点けた地上波のバラエティを耳に流しながら、オレと葉山はひたすらに肉と野菜、海鮮とその他諸々を貪った。持ってきた炊飯器からはご飯が減り、チューハイの空き缶が増える。

 どれほど食べていたのか。同時に箸が止まったのは、おかわりの豚肉も消費して、大体の具材が鍋の中から姿を消したあたりだった。

 

「はー、食った食った……美味かった、本当に……」

「ふあー……。はは、そりゃ良かった! この店の選んだオレも嬉しいよ」

「俺、ぶっちゃけキムチ鍋と火鍋との違いが分かってなかったんだが、これは完全に別物だな」

「香りとかぜんぜん違うよなぁ……ま、キムチはキムチで好きだが。あ、シメも作っちゃうか? ラーメンでいいだろ」

「ああ」

 

 言いながら鍋用の袋麺をスープの中に投入し、煮立ちすぎないように火の勢いを調整しつつも、葉山の様子をうかがう。

 あいつは、すっかりリラックスしたようだった。こたつの後ろに置かれたソファに寄りかかって、満足そうにぼうっとしている。酒も入っているし、この調子だと眠気も来るかもしれない。

 

 それではまずい――なら、頃合いか。

 

「しっかし暑いな! すっかり暖まっちまったぜ……」

「ああ、ほんとにな――」

 

 ややわざとらしい位にはっきりと口に出しながら、オレはソフトニットTシャツに手を掛ける。そして、一気に脱いでしまった。

 葉山の言葉が途切れ、息を呑むような雰囲気が伝わってくる。予定通りの反応。オレは内心で笑みを浮かべると、手のひらを団扇のようにして顔を扇いだ。

 

「ふー、あっついあっつい……」

「古守……その服って」

「ん? ああ、これか? 最近買ったんだよ、なかなか機能的だろ?」

 

 葉山の反応の原因は、明らかにオレの服装にあった。

 いわゆるホルターネック・タイプの黒インナーというやつで、極薄のストレッチ生地が首周りだけを支えに上半身を覆っている。といっても、ノースリーブな上に背中が大きく開いているため、隠している部分よりも肌色が見えている部分の方が多い仕様だった。

 

 オレは地味女だ――が、全てが無難で無個性というのは嘘だ。普段は意図的にサイズの合っていない服を着て芋っぽく見せているが、この体のスペックは凄い。主に女として、女体としての魅力という意味では。

 とにかくエロいのだ。乳と尻は爆乳爆尻といっても過言ではないサイズ感だし、太ももはふっとくムッチムチで、それでいて腕や腰回りは程よく引き締まっている。まるで男が想像する理想のスケベ女を体現したかのような、曲線と柔らかさの暴力だった。

 童貞なりにそういったコンテンツには親しんできたつもりだったが、こんな体つきの女は見たことがない。比較するなら間違いなく二次元が相手だ。エロ漫画体型と言ってもいいだろう。

 

「この生地、すごい手触り良くてさ。気持ちいいんだよな」

「……」

 

 とはいえ、こいつが過剰反応しているのは、オレの体だけが全てではない筈だ。

 同居し始めてから半年とちょっと。当初は男同士の距離感だったが、かたや肉体的には男、かたや肉体的には女。何も起こらない訳がなく――オレ達は必然の帰結として『そういう関係』になっていた。

 もっとも、男女として付き合っているのではない。あいつもオレも態度としては男同士、親友同士のままだし、だから言葉のやり取りも気安いものでデートなんかもしたことがない。比較的近い表現を探すならセフレだろうが、セックス以外に付き合いがないわけでもない。

 なんとも言い表しにくい、それでも居心地のいい関係。まぁ、今は多様性が重んじられる時代だ。エッチなこともする男女の親友が存在したって良いだろう。

 

 ともかく、最近は葉山の仕事が忙しくて回数が減っているものの、オレ達は何度もやることやっていて、互いの体もそこそこ見慣れている。

 だから、スパイスを加えたのだ。香辛料たっぷりの火鍋よろしく、『性癖』という名のスケベなスパイスを。

 

「どうよ? 似合うか?」

「……まぁその……うん、似合ってはいるな」

「なんだよ、目ぇ逸らして。童貞みたいな反応してないで、見たければ好きなだけ見ればいいじゃねぇか」

「……むぅ」

 

 軽く背を反らして豊かな乳の曲線を強調してやると、あからさまに視線が揺れる。面白いほどに露骨な反応。

 そう、性癖だった。多感な思春期のほとんどを親友同士として過ごし、なんならその出会いからしてエロゲが原因だったオレ達は、相当なむっつり男子だった。互いの性癖なんぞとっくの昔に把握している。

 こいつの弱点は『ぴっちり黒インナ―』だ。特に巨乳爆乳に弱く、体のラインがくっきり浮かんだ衣装のむちむち女退魔師や、ハイレグレオタードを露出させたドスケベ魔法少女などを頻繁に使用していた。

 

 つまり、極上の女体と最高の性癖を兼ね備えた今のオレは、こいつにとっての劇物と化しているのだ。

 

「……ああ、でも……疲れてるよな。明日から三連休っても大変だったろうし、今日は寝たいんじゃないか?」

「いや、まぁ……」

 

 体を捻って、インナーからはみ出した横乳を見せつけてやれば、言葉はどんどん歯切れの悪いものになっていく。

 ちょっと可哀想だが、これは意趣返しでもある。オレだって仕事で疲れている夫に放置された若妻、なんて定番過ぎるシチュエーションを実体験させられたんだ。このくらいの反撃は許されるだろう。

 しかし、ここまでして本気で寝られても困る。あと一押し、トドメを刺しておこう。

 

「いいぜ、無理しなくても。あー、しっかし本当に暑いな……火鍋食って体温まりすぎたか?」

「――っ!?」

 

 オレは再びのわざとらしいセリフと共にやおら立ち上がると、ルームパンツを勢いよくずり下ろした。

 『見よ、これが我が秘策、ワンピース型のハイレグ黒インナーだ! お高めのコスプレ用品店で買ったから、安っぽさなんて欠片もないぞ!』と言わんばかりに視線を向けてやると、案の定あいつの目はオレの股間に釘付けだった。

 丁寧に毛を処理したつるつるの陰唇の上に、辛うじて割れ目を隠せる幅しかない黒い布地がぴっちりと張り付いている光景は、オタクには刺激が強すぎるのだろう。とうとう、悪あがきめいた言い訳さえも無くなって、無言のままに固まってしまった。

 

「……」

「……」

「いやなんか言えよ」

「……な、なんか……」

「なんかってなんや!」

 

 しかし、ここで思わぬ欠点が発覚した。この衣装、さすがに恥ずかしい。

 いや、試着した時から過激すぎないかとは思っていたが、実際に凝視されると加速度的に羞恥が高まってくる。下着無しで直接着込んでいるせいか動くたびに擦れるし、なんなら尻に食い込みまくって凄く落ち着かない気分にさせられる。

 こんなのを着て戦ってるヒロインすごいな、おい。

 

 という訳で、沈黙を打破すべくオレは突っ込んだ。そこに定番のボケをかましてくるのはさすがの親友だが、単に余裕がなくて鸚鵡返ししただけのような気もする。

 ともかく、再び微妙な空気になる前に動くことにする。

 具体的には葉山の隣へ。デカい体をぐいぐいと押しのけて、密着するようにこたつへ入り込む。

 

「あっ……」

「ん?」

「いや、びっくりしただけだ。急にこっちへ入って来たから」

「へぇ? びっくりねぇ……」

 

 こたつ布団の中に下半身が隠れてしまったことを残念がっているのは明白だったが、敢えて指摘はしない。言っても意味がないからだ。

 さて、元男の立場からこいつの心理状態を推察してみよう。簡単に言えば、引っ込みがつかなくなっているのだろう。出来ればすぐにでも手を出したい、要するにセックスしたいのだが、オレが少し虐め過ぎたせいで言い出しにくくなっている。

 男のプライドっていうのは、こういうとき少し面倒くさい。だから、助け舟を出してやることにする。

 

「――」

「っ……!」

「――」

「おい……」

「ん? どうした?」

「いや、手が」

「丁度いいところに握りやすい棒があったから、ついつい」

「なんだそりゃ……っ、ふ……!」

 

 布団に隠れた指先で葉山の太ももをなぞり、スウェットに隠れた中心へ辿り着く。つまりは性器、股間、竿と玉――呼び方はなんでも良いが、ちんこだ。

 少し触るだけでも分かるが、ガッチガチのバッキバキに勃起している。ただでさえこいつのは長い上に太いから、服の布が引き伸ばされて可哀想なくらいだった。いや、本当にすごいな。

 オレがブツを軽く握り込んでやってから、労わりつつ興奮を加速させるようにゆるく指を這わせて雑談を続ける。

 

「しっかしこの棒熱いな……なんだろうなぁ、これ。まさか、お前の勃起チンポってことはないよな……。だって反応イマイチだったし?」

「ぐっ……っ、べ……別にそんなこと言ってないだろ。イマイチなんてことは……!」

「そうかぁ? じゃあ、はっきり言えよ。オレだって感想楽しみにしてたんだぞ」

「わ、わかっ――似合ってる! 似合ってるよ……!」

「エロい?」

「エロい……!」

「どこらへんが?」

「そんな……全部だよ!」

「具体的に!」

 

 話しているうちに、だんだんオレも興奮してテンションが上ってくる。自分より体格のいいヤツを指先だけで翻弄し、コントロールしているような感覚。

 意外とSの素質でもあるのかもしれない。そのくらい、このバカみたいなやり取りが楽しい。

 指先で竿を撫で回し、爪でカリカリと亀頭をひっかき、手のひらで弄ぶように全体を圧迫してやって、玉は痛くないようにやわやわと揉みほぐす。自分にもついていた器官だからこそわかる、手慣れた仕草と力加減。

 それに加えて、この数ヶ月の経験でこいつの弱点は大体わかっている。

 

「ぅ……お、おっぱい! 乳首浮かんで、エロ過ぎるっ……! 横乳も! デカイし! まんこにも食い込みすぎだろ……この、スケベ野郎! ってか古守っ! お、おまえ……ちょっと、あれだろ! 俺の性癖把握しす――ぐ、おっ……待て、出るっ!」

「いいぜ……出しちゃえよ、親友♡ きもちよーくびゅるびゅる~って♡」

「ぐ、うぅっ――」

 

 切羽詰まった声で吐き出される、オスの欲望たっぷりの称賛に頭が茹だる。

 以前なら、いくら親友同士でもさすがに――となったろうが、既に二桁も体を重ねた同士では今更だ。既に女の体に馴染みきった現状では、性欲をストレートにぶつけられるのは心地良くさえある。

 オレは肉棒を包んでいた手を筒状にして、押し付けつつ扱き出すように揺さぶった。おまけに耳元へ唇を寄せて、エロいASMR音声のような口調を真似て囁いてやれば――。

 

「おお、出てる出てる。へへっ、出しすぎだろお前、ドロッドロじゃん」

「古守……お前なぁ、誰のせいだと」

「エロいの大好きなのに素直に褒めないお前が悪いんだよ」

 

 大柄な男の体が一瞬こわばり、弛緩する。

 厚手の布地越しにも伝わる熱が爆発し、握り込んだ指先にねとねとドロドロの精液の感触が伝わってきた。気持ちよさそうに出しやがって、まったく。

 こういうのは、名残惜しくも羨ましくもある瞬間だ。

 

「そういうお前はどうなんだよ」

「んぁッ――」

「なんだよ、ぐちゅぐちゅに濡らしてるじゃないか……」

「お、お前なぁ、葉山! いきなりまんこに指突っ込むなよ、っんん……! びっくりするだろ!」

「お前が言うか」

 

 ちょっとした感慨深さに耽っていると、いきなり股間に――というより膣の中に異物感を覚えた。

 言うまでもなく、葉山の指だ。こいつめ、レオタードの股布を押しのけて指を入れてきたらしい。自分でもわかっていたがドロドロに濡れていることを暴露されて、射精させたことでの精神的優位が一気に雲散霧消する。

 すかさず抗議するが、もう一本指をねじ込まれて腰が浮いてしまった。

 

「あっ、おまっ……少し優しくしろ!」

「……っと、すまん」

「素直かよ!」

「お前が言ったんだろ……」

「素直で大変結構」

「なんだかなぁ」

 

 オレが強めに言うと、葉山はすぐに指を止めた。

 少しだけ強引にして欲しかった気持ちがないわけでもないが、こいつのこういう素直なところは嫌いじゃない。

 そうこうしている間に二本目の指も馴染んできたオレは、軽く膣道を締め付けて合図をする。遊んでやってもいいぞ、と。

 

「痛かったら言えよ、無理はするな」

「別に平気だって」

「お前、我慢しすぎるところがあるからな。あの時なんてまさにそうだろ?」

「それは……悪かったって、っん……」

 

 オレの合図に呼応するように、葉山の指が膣粘膜をゆるゆると捏ね回し始める。触りやすいように太ももを開いて腰を突き出してやると、長い指がつぷつぷと奥へ沈んでいくのが分かった。

 

「でも、頼ってくれて嬉しかったよ」

「んっ……んんっ……お、オレもだよ。あのコンビニで会えなかったら、今どうしてたから想像もできない――ってか、したくないな」

「ああ、全くだ」

「あっ、く……Gスポこねこね気持ちっ……お前さぁ、おまんこ弄り上手すぎない? 弱いとこ……んぁ、すぐ当てられて怖いんだけど?」

「古守の淫乱おまんこで鍛えられたからな」

「はぁっ!? ばか、淫乱言うな!」

 

 オレがこいつのチンポの弱点を知っているように、こいつもオレのおまんこの弱点を熟知している。

 二本揃えて指を押し込みながら、第二関節のあたりで膣の肉をぐいぐいと圧迫されると頭の芯まで蕩けるような快楽と多幸感が溢れ出して、たまらなくなる。怖いほどに気持ち良くなってしまう。

 メスらしさを煮詰めたような甘ったるい声を発しながら、力が入れられず不安定になった体を預けるように、オレは葉山に寄り掛かった。ふと見上げると、ちょうど向こうもこっちを見下ろしていて、視線が合う。

 

 そこに色恋の気配はない。男女の繊細な機微のようなものもない。

 気心の知れた男同士のどこか雑なやり取りと、互いに肉欲を絡め合うストレートな性の発散の同居。こんな不可解な関係、世にそうあるとは思えない。

 でも、その奇妙さが不思議と馴染む。ずっと続けばいい、と願うくらいに。

 

「ふぁっ、ふぅ……はぁ……あっ♡ イ、イきそうっ……」

「そうか。だったら――好きなだけイッちまえよ、親友。お前の絶頂する姿、俺が見ててやっからよ」

「ひっ……お、お前、お前ぇ……!」

 

 膣ヒダの一つ一つを広げるような指使い。逞しくも繊細なその動きが腰の奥にどろどろの熱を溜めて、耳元までも愛液の濡れた音が響いてくるような錯覚を抱く。

 思考は鈍ってぼんやりぼやけ、太ももや下腹部の筋肉が自分の意思と無関係に痙攣し始めた。絶頂が近い。イきそう、イきたい、絶対に気持ちいい、こんなの。

 

 そう思っていた矢先に、耳をくすぐる囁き声。さっき俺がやったことへの仕返しか。

 背筋がゾワッと震え、オレは小さな悲鳴を上げて。

 

「やめろっ、キモいから! あっ、ぅ……っ……」

「うわひど。そりゃないだろ、さっきお前もやったのに」

「女にやられるから良いんだろ!? 男にやられたら罰ゲームだっての! んっ、んっ、ふっ……!」

「うーわ、傷ついたわー」

 

 キモい止めろと軽口を叩くが、それで快楽が冷めるわけでもない。

 葉山の指は手慣れた仕草で一定の性感を送り込み続け、受け止めた雌の肉体はアクメに向けて溶けていく。緩みきった表情筋は、卑猥な女の顔を見せているに違いない。

 

「ほら、お前の大好きなクリとんとんもしてやるからな」

「あっ……やっ、それだめっ♡ それ……あっ、ひびくっ♡ おまんこ響くっ、もっ……イクっ……♡」

「いいぞ、イけイけ。弱いとこ全部ほじほじしてやる」

 

 ますます腰が揺れて、浮かび上がるような、沈み込むようなふわふわとして感覚が全身を包み込む。

 たまらず葉山の体に縋り付きながら、膣内からのぬるま湯のような快楽と淫核からの弾けるような快楽を受け止め、絶頂に上り詰めていくのが分かった。

 何を考えているのかがわからなくなり、頭の中がイくことに染め上げられる。女として味わう深い淫悦。最初は怖かったそれが今では待ち遠しい。

 

「い、イくっ♡ イくっ♡ あっ……だめ、あっ! あっ! あっ……う、あぁっ♡」

「お前……ほんとエロいな、ヤバいわ……」

「あっ♡ うるさっ♡ やっ、やば……すごっ、深いのっ♡ くる、くるぅ……♡ あっ、やだっ――イっク……ぅ、うぅ、ぅッ――♡」

 

 白い光が視界を埋め尽くして、全身がビクンッと跳ねる。四肢に力が入り、背筋が弓なりに反り返って、膣内を埋め尽くす男の指を媚肉がきゅうきゅうと締め付けた。まるで男根から精液を搾り取ろうとするかのような動きは、メスの本能が無意識下で身体を支配している何よりの証拠で。

 ただ気持ちいい。全てを委ねて溺れたい。逞しい体に抱かれて、身を預けて。頭を空っぽにして、何も考えずに快楽と絶頂だけに耽る。オレ自身、まだ心は男だと思っているが、この一時だけはそれすらも忘れてしまう。女の肉が与えてくる圧倒的な性感の威力は、それほどまでに強烈だった。

 

「よーしよし、びくんびくん気持ちいいな。古守お前、どこに出しても恥ずかしい立派なエロ女だぞ」

「ばっ、ばか♡ ばかぁっ♡ あっ、イク、イってる♡ まだっ――うぅ、ぁ……♡」

「すげぇ気持ち良さそうだな……ちょっと羨ましいかもしれん」

「ふぅーっ、ふぅっ……ふぅぅ――っ♡」

 

 やがて、少しずつ身体に感覚が戻ってくる。それでも絶頂の余韻は消えない。

 指が僅かに動いたことさえ分かるほどに、全身が敏感になっている。必死で呼吸を整えようとするが、葉山のちょっとした言葉に反応するだけでも、アクメの名残りが襲ってきて軽くイきそうになってしまう。

 深呼吸、深呼吸、とにかく息を吸って、吐いて、それから。

 

「……じゃあ、お前も女になるか?」

「やめとく。そしたらお前を抱けなくなっちまうし」

「そん時はオレが男になって抱いてやるよ」

「マジか」

 

 ようやく普通に会話が交わせるようになって、いつもの調子で軽口を叩く。

 普通の男女関係なら、もう少しムードのある会話でもするシーンかもしれないが、オレ達はいつもこんな感じだった。しかし、それにしても、女の膣に指を突っ込んでいる男と突っ込まれている女の雰囲気とは思えない。

 

「よし、抜くぞ」

「おう」

「……うっわ、凄いな。ドロドロじゃん、濡れ過ぎだろ古守」

「やかましいわ」

「……なあ?」

「なんだよ」

「舐めて良い? お前のマン汁」

「……好きにしろよド変態」

 

 おまんこから指が引き抜かれて、こたつの中のぬるい空気が膣内に流れ込んでくる。奇妙な感覚に複雑な気持ちを抱きつつ見遣れば、葉山の指は確かにドロドロだった。

 絶頂による締め付けで泡立ったのか、ねっとりと粘性の高い愛液は淫猥にてらてら輝いていて、あれが自分の出したものだと思うと、どれだけ興奮していたのかと恥ずかしさが込み上げてくる。

 

 もっとも、そんな感情などこいつの変態発言で吹き飛んでしまったが。

 女相手にこんな発言すれば、ドン引き確定だろう。下手すると、そのまま破局まであり得るのではないか。

 だが、オレは理解ある男だ。寛容の気持ちでド変態に許可を出してやる。

 

 ――うわっ、コイツ本当に舐めやがった。

 

「……」

「なんだろうな、この味……しょっぱい?」

「うるせぇバカ! 論評するな!」

「ってか、さっきの麻辣のせいで舌が馬鹿になっててよく分からん」

「マジで馬鹿なの!?」

 

 反射的に葉山の頭を引っ叩いてやると、何が面白いのか笑い始めた。

 オレも、何が面白いのか釣られて笑ってしまう。

 いい年こいた男二人――片方は若い女だが――がやっている行為としては、とても他人に見せられたものではない惨状だが、まあ、これはこれで悪くないのかもしれない。

 

「……あ」

「どうした?」

 

 そして――オレは、あることに気付いてしまった。

 

「鍋のシメ……」

「あー……」

 

 放り込んだまま忘却されし哀れなラーメンの存在に。

 慌てて救出を試みるが、でろでろで半ば溶けたようになってしまっている。これではもう、ラーメンとは言えない。別のナニカだ。

 

「……葉山、これ食う?」

「捨てるのも勿体ないしな……」

「ご飯と混ぜたら美味くならんかな?」

「それ、名案かもしれん」

 

 オレは濡れたままの膣口にティッシュをあてがいながら、レオタードを戻して固定し、立ち上がった。

 

「持ってくるから、そこらへん片付いといてくれ! あと着替えろ! 臭いぞ!」

「ああ、わかった――うわ、くっさ!?」

 

 未だ腰に気だるい余韻を抱えながらも、ひとまず最後まで食事を終えるために。

 明日からは三連休。続きを楽しむ時間はたっぷりとあるのだから――。




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