妖怪の山。幻想郷で最も多種多様な種族が集まる場所。天狗はその中で最大の勢力を誇っていた。その社会にも階級が有り、中でも白狼天狗は、山に近付く者を追い払う下っ端の兵隊として扱われていた。またの名を哨戒天狗。
現在、白狼天狗達は上からの命令を受けていた。外部より人員を募り、これを種族へと同化して新しい哨戒部隊を新設せよ、と。
妖怪の山の西に新しく建造された訓練基地。ここの教官として拝命を受けたのは、犬走椛である。
初夏の午後、太陽輝き、基地に土埃舞う時刻。
「突撃っ!」
教鞭代わりの竹刀が振られ、新兵たちが汗を噴き出しながら標的の頑強な人形へ向け突進していく。皆身を覆い隠す程の大盾を構えていた。実戦ではこれで身を守りながら突進し、敵にそのまま体当たりを食らわす、攻防一体となった技である。鈍い音と共に全員が人形にぶち当たるが、腰が入ってない者が二人吹き飛ばされ、何度か地面を転がり呻いた。
「弾かれた二番、九番はその場で腕立て三十回!! 他の者は攻撃!」
各々が右手に握った木製の練習武器で人形を殴りつける。決まった型は無く、全力で武器を相手に叩きつけるだけである。だが木製とはいえ武器は重く、人形も頑強に作られているため思う様に攻撃が決まらない者もいる。
「五番と十番! 攻撃頻度が遅いぞ! 下がって素振り百回! もっと気合を入れろ!」
二人が後方に下がり、新たな訓練兵達が配置につく。椛の竹刀が再び振られた。
「突撃ぃ!」
最後に全員で乱戦の稽古を行った。防具を着けながらも、全力で打ち込まれれば白狼天狗でも苦悶の声を上げうずくまる。そこへ椛はバケツで水をかけ、竹刀で引っぱたきながら叱咤激励した。男達は血反吐を吐きながら、痣と骨がきしむ音を友に立ちあがった。
辺りにサイレンが鳴り響く。
「よし、休憩! 夕食前のオリエンテーションまで基地内での自由行動を許可する! そのままで解散!!」
「イエス・マム!」
椛の声に、訓練兵たちはへとへとになりながらも直立し、敬礼をする。その中で、足音を轟かしながら近づく者がいた。椛の身長より頭二つは高く、筋骨隆々とした大男である。顔もやや本来の狼に近く、首の筋肉が異様に発達していた。
「教官どのぉ。いつまでワシらにこんなチンタラしたお遊びやらせるんで?」
椛は手元のクリップボード(Made in kappa)に、“全員根性はあれど技能足りず、更なる基礎訓練の必要あり”と書き込みながら答えた。
「お前の脳みそがもう一回りでかくなってからだ」
大男の目が見開かれた。
「ワシは実戦で手柄立てるためにきたんだ。人形やザコ相手のお遊びは真っ平よ!」
彼は突撃訓練では人形を壊し、乱戦稽古でも早々と五、六人を倒してしまっていた。 椛はクリップボードから顔を上げ、男の顔を見つめた。
「六番‥‥か。名前は?」
大男は胸を張り歯を剥き出して笑った。
「狼英霊ロボ様の血を引きし北の森の一族、豪勇・
椛も、目を細めてにっこりと笑い返す。
「ほーう。確かに良い図体をしているな?」
「お前らは、ワシに天狗の武器を渡し、飛ぶ術などを教えるだけで良い。これ以上の訓練など茶番!」
「ふむ。なら私を倒してみろ」
笑顔のまま椛の口から飛び出した言葉に、牙堂の顔が引きつった。
「なにぃ?」
「どうした? 私を倒したら、お前を哨戒部隊分隊長に推薦してやるぞ? 最も」
椛の笑いが蔑む様に歪んだ。
「勝てるはずもないが」
牙堂が咆え、その右手が標的に叩き込まれんと振り上げられる。椛はクリップボードを持ったまま、ただまっすぐ、右足を相手のがら空きになっていた股間に下駄ごと打ち込んだ。股間を抑え崩れ墜ちそうになった男の顔面に、椛が顔を近付けた。
「どうした、口づけでもさせてやろうか?」
鼻へ強烈な頭突きが入り、牙堂は鼻血を噴きながら後ろ向きに倒れた。
「誰か医務室へこの独活をひきずって行け。それと十二番!」
クリップボードの血を拭う椛に呼ばれ、水飲み場にいた訓練兵が走ってきた。目鼻立ちは整っているが、身長は椛とあまり大差ない。
「名前は?」
椛が訓練生に名前を尋ねる時は、大体先刻みたくロクな事が無いと十二番は知っていた。しかし上官命令には逆らえない。
「
「貴様、乱戦の稽古で手を抜いたな?」
「何のことでしょう」
十蔵は視線を逸らした。その脳天にクリップボードの角が食い込む。
「白を切っても無駄だ。私の目はお前らとは出来が違う」
頭を押さえる訓練兵。
「認めます。相手はまだ武器に慣れておらず」
「黙れ! 服を着替えすぐに道場へ来い。私が直々に指導してやる!」
十蔵は黙って敬礼し、自室へ汚れた服を替えに走っていった。
数刻後、十蔵は気が付いたら道場の畳の上に倒れていた。彼の得物は白狼天狗の間では一般的な剛剣である。そして、椛もそれを得意武器としていた。防具を着け、盾無しの百本の剣撃稽古は、乱戦の稽古が終わった後だけに十蔵にとっては大変厳しいものであった。稽古というより、彼は防具の上からひたすら滅多打ちにされていただけである。
椛の剣は重さと軽さを兼ね備え、羽根の様に舞いながら隙を狙って鋭く打ち込まれた。または力任せに叩きつけられたり、剣を籠手の間にねじ込まれ動きを封じられてから、喉に加減した手刀を喰らったり、技の組み合わせが豊富だった。十蔵は反撃する暇も隙も無く、どうやって耐えしのいでいたのかも覚えていない。
日が落ちようやく立ち上がった彼は、道場の掃除を始めとした後始末を終え、会議場へと向かった。オリエンテーションはとっくに終わっており、たまたま顔を合わせた同僚から、欠席扱いになっていた事を知らされる。椛の教官室へ出頭するも留守であり、食堂も閉まっており夕食にも間に合わず、空腹を抱えながら十蔵はふらふらとした足取りで、風呂場に向かっていた。
立派な石作りの湯船は、訓練部隊にはあまり似つかわしくなかった。基地を建造した河童が気合いを入れた結果である。満たされた湯には、河童特製の入浴剤が入れられており、訓練兵達の身体を毎日しっかりと癒していた(牙堂の様な負傷者は別枠だが)。
十蔵は全身を洗い、訓練の打ち身や椛手製の痣の痛みに顔をしかめた。
(何で俺だけ執拗になぶるんだが)
泡だらけにした頭に湯をかぶせ、絞った手拭いを頭に載せ湯船に入る。
(ああ‥‥いつか犬走教官をギャフンと言わせてやる。いや、その名字のようにギャワンと鳴かせるのが‥)
痛みをこらえながら不埒な事を考え、彼の顔は奇妙な引きつり方をしていた。その時。大浴場の扉が開く音がした。
(おや、まだ入ってない奴がいたか?)
訓練生たちは皆夕食が終わると手早く風呂に入ってしまい、大体がその後の自由時間を満喫している事が多い。十蔵は湯船に顔の半分まで沈め対象を観察した。
銀白色のショートカットにした毛髪、大きな黒い瞳、強烈な制裁を生み出すとは思えない細い肩、常に注目され愛される巨乳から下はバスタオルが慎み深く隠している。鍛練で引き締まったなだらかな線の脚を見るに至って、十蔵は自分が誰を見ているか気付いた。
「教官どの?!」
椛は別に驚きもせず訓練兵を眺めた。湯船の中で反射的に立ち上がり、全裸で敬礼している姿を。
「どの、はつけるなと教えたはずだが? 後少し見苦しいな」
慌てて湯船に腰まで浸かる十蔵。
「失礼しました!」
「まあ、何者かがいきなり現れたら警戒するのが基本だ」
椛はシャワー室に入っていき、身体を流し始めた。
(そりゃ、俺の前で色々洗えんよな)
十蔵は立ち上がり、椛に叫んだ。
「十二番、お先に上がらせて貰います!」
そのまま風呂場から脱兎の如く逃げようとする。その足元へ鮮やかに河童製プラスチックの黄色い桶が飛んできた。足元を絡め取られた男は、盛大に前へ一回転して背中から落ちた。全裸の白狼天狗、犬走椛は、髪の毛と同じ銀色の三角地帯などを隠そうともせず、仰向けで呻く十蔵に近づいてきた。十蔵はうめき声を上げた。椛の足が、天空を高々と指す己の陰茎に乗せられている。
「全く貴様はあらゆる点でどうしようもないな。背後から弾幕を浴びればただでは済まなかったぞ?」
ぐりぐりと足が亀頭をいじる。十蔵は何も言い返せない。
(この人は何を考えているんだ?)
その間、椛は陰茎が進めば引き、引けば進み、少しずつその先端から透明な液体を絞り出していた。
「いきなり出したらお前を窓から放り出す。頑張ってみせろ」
先刻まで浸かっていた河童の湯は効果てきめんで、既に十蔵の体内に新たな活力を生み出していた。そのため、勃起した陰茎も相手の圧力に負けず必死に戦っていた。
椛はサディスティックに笑った。
「風呂で何を考えていた?」
十蔵はどういう形であれ相手が笑う事に微かな安堵感を抱いていたが、それを捨てた。
「何かを考える余裕も無く、疲れ切っておりました!」
椛の顔が更に歪む。
「大方、ここで私への復讐でも企んでいたのだろう? お仕置きが必要だな?」
足に力がこもる。十蔵は、椛が滑りやすい風呂場で片足立ちしながら“足コキ”という名のお仕置きをしている異様さに若干興奮しながら、ただ堪えていた。
「おや? 貴様踏まれているくせに何か出しているではないか。昼間の木偶の坊より頑丈だとでも言いたいのか?」
十蔵にも一物が泣いている状態はどうにもならない。そして、ついに限界が来た。放たれた白濁の液体は、勢いよく椛の足や腹まで飛んだ。
「ふん、この早漏が」
「もう勘弁してください教官‥‥色々とマズいというかもうヤバいというか」
「黙れ。上官の体を汚した上に泣き言とは、貴様の様な奴は哨戒部隊に入る資格などない」
椛の瞳は爛々と輝いている。
「お前など」
器用に片足で体制を低くし、野生の狼に戻った様に四つん這いになった。
「私の肉人形で十分だ」
萎えた一物を強めに握り、その手を上下させる。強引な刺激に再び男のモノは硬さを取り戻し始めた。
「教官、せめて一洗いさせて下さい! ていうか誰か来たらどうすんですか」
「外の札は私専用の表示だ。誰も来ないぞ」
訓練兵は皆男である。教官の椛だけが女性なので、風呂に関しては一人でゆっくりと入る特権が与えられていた。彼女は今回、それを悪用巧みな状況判断の元別解釈の観点から用いた。椛は手淫を止めず、自ら体を乗り出した。谷間にモノを挟み込む、と見せかけ右胸の前にそれを当て、体で包み込む様にしてしごきはじめる。
「どうだ‥口でなど千年早い‥お前にはな」
椛の顔は上気している。胸の表面でこするという事は、乳首に時々一物が当たる。
「よし。これから再試験だ。私を満足させたらお前は訓練に戻れるぞ! 嬉しいだろう?」
「もうどうにでもしてくれ」
「返事は?!」
「い、イエス・マム!!!」
椛は仰向けの姿勢で陰茎を怒張させている十蔵の前で、小椅子に座った。足を大きく開き、秘所を相手に見せつける。
「ほら、何をしている?」
「え?」
「これは再試験だと言っただろう! 私を自分の力で喜ばせてみろ!!」
十蔵は辛い股間を労りながら陰唇に吸い付いた。シャワーのせいもあるが、椛のその部分は湿り気を帯びていた。男は丁寧に毛の間を掻き分け、まず口の周囲から愛撫していく。その舌はやがて陰核へと向かい、皮を攻め始める。椛は声こそ上げなかったが、手で十蔵の頭を掴んで快楽に浸っている。舌が中へと侵入するに至り、椛は十蔵の顔を股間から引き剥がした。
白狼の女は十蔵を静かに横たえ、陰茎がやや元気を無くしているところへ手で数回しごきを入れ活を入れた。そこへまたがり、ゆっくりと腰を下ろしていく。椛の秘所はすでに煮えたぎる程熱く濡れており、合体はスムーズに成功した。
十蔵の中で何かが切れた。
全身をアドレナリンが駆け巡り、全身の痛みも空腹も敗北感も吹き飛ばした。背筋を使って強く椛を突き上げる。
「ああっ?! い、いきなりっ」
「頑張りますよ、頑張ればいいんでしょう!」
勝気な椛の表情が崩れた。二、三度と突き上げられる内にどんどん表情が緩み、恍惚へと変わっていく。
「こ、このバカ、こ、こんな激しくなんて」
「何だってぇ!?」
十蔵は椛の巨乳を掴み、乳首を弄びながら乱暴に揉みしだいた。
「やめて、そんな、乱暴に」
互いの言葉遣いが逆転していた。
「先刻まで人をボコボコにしていたあんたに言われたくはない」
男は強引に身体を引き寄せ、唇を奪う。舌をこじ入れ、激しく絡ませた。今や椛は自分から腰を微妙に角度を変えながら振っている。十蔵も強弱を付けながら陰茎を挿入し続ける。
「うっ!!」
声を聞いた瞬間、椛は素早く腰を抜き取り、自分の顔を陰茎に近づけた。白い液がその顔を汚していく。滴る液を舐めとりながら、椛は苦笑した。
「早漏なのは変わらないな? ぎりぎり及第点、再試験、合格」
汚れきった身体を互いに洗った後、二人は静かに湯船へ浸かっていた。静かな声で、椛が語りかける。
「驚いているか?」
十蔵は湯のもたらす心地よさにやや忘我しながら答える。
「教官、お互い言いっこ無しですよ。人間の初心な子供じゃあるまいし」
「そうだな。今度はどうやってシゴいて欲しい?」
「さすがに腹が減ってもう無理です」
「後で私の夜食を分けてやろう」
「まさか教官のお部屋でありますか?」
椛は笑った。にっこりと、それは本日一番優しい笑顔だった。
「さて、声を出さない・証拠を隠滅する隠密訓練はまだだったな?」
続く?