ハイスクールH&S with [Nioh2][Wild Heats] and more 作:「秀吉」
「こんばんは、凛子。気分はどうや?」
「……うーん、まあ、ちょっと落ち着いた、かな」
「…………そか」
「蜜柑ちゃんから聞いたけど、色々と骨折ってくれたんだって?」
「うちかてメリットがあるんや。凛子の為だけやないよ」
「……ふーん」
「まあ、蜜柑さんから聞いとるなら、明日会うて自分の目でも確かめたらええと思うわ」
「そう、だね……」
「…………(やっぱ、まだ根深いんやなぁ)」
──麻鷺荘にて友人同士の会話──
「東の国」の中にある春霞の古道と呼ばれるフィールド。月明かりが照らすその森の中、気配を消して駆ける少年少女たち。
小さい獣を避けて、目的の獣がいる場所まで走っているのだ。
光る『糸』の先導に従って。
「……便利だな、この『糸』」
誠一が感心した様子で、宙を流れる複数の光の糸を評価した。
明らかに人が全力で走るような速度で駆けながら、まるで自然体だ。普通に会話する余裕すらあった。
そして全員が、腰に刀を佩いていた。
「これってさ、キレーなだけじゃないんでしょ?」
「秀龍先輩のお話では、「天つ糸」の基本的な使い方らしいですけど……」
「目標を決めればそのターゲットまで案内してくれる『糸』なんて、チートそのものだぜ」
「うむ。……見えたぞ」
そんな話をしながら四人は、目的の獣に追い付いた。
強化された眼が、その姿を捕捉する。
大きな白い鼠。
それがターゲットである『ハナヤドシ』である。
どうしてそんな名前なのか、初めは疑問だったがその姿を見て納得した。
その鼠には、「花」が咲いていた。
一番目につくのは、その左目を覆うように咲いている赤い花だろう。
その身体の至る所から植物が生えていて、その鼠の尻尾の先端には大きな果実のような瘤があった。あのサイズがハッタリでなければ、かなりの重量だろう。
あの鼠、恐らくだが尻尾を鈍器としても使うと推測できる。
気を付けなければならないのはまずそこだ。
「先輩は、「東の国」のモンスターはどれも自然現象を操る、と言っていたが……」
「ならあの鼠は木や花を操るのか?」
「……むぅ」
誠一や叶馬は、植物を操るという事がどういう事か理解出来なかった。
秀龍も上手く説明出来ないと苦笑していたが。
「ま、取り合えず一当てしてみようぜ」
「……誠一」
麻衣が、腰の刀の柄に手を添えながら呼ぶ。
鋭い、というよりも真剣な表情で腰を落としていた。
抜刀の構えだ。
「気付かれたよ」
彼女の言う通り、ターゲットの鼠が涎を垂らしてこちらに襲い掛かろうと駆け寄ってくるではないか。
「散開!」
咄嗟に誠一が叫ぶ。
四方に避けるその中心に、ジャンプした『ハナヤドシ』が飛び込んでくる。
土が抉れ、小石や土が舞う。
「むんっ!」
「えいっ」
叶馬と静香の斬撃が、双方向から襲い掛かる。
その表皮を『からくり刀』の刃は切り裂くが、しかしその程度では『ハナヤドシ』の動きを鈍らせる事も出来ないようだ。
くるり、とその場で身を回転させて尻尾にある果実のハンマーが二人に襲い掛かる。
斬った姿勢のままだった二人にその攻撃を防ぐ事は出来ない──だが、誠一や麻衣なら出来た。
「おい!」
「静香!」
左腕の籠手に
二人が作った『匣』が、しかし呆気なく大鼠の尻尾にあるハンマーに破壊される。
だが、地面からせり上がるように形成された『匣』のお陰で、叶馬と静香は空中へと跳び上がって回避する事が出来た。
そのままの勢いで二人は頭上から『ハナヤドシ』へと強襲する。
誠一や麻衣もまた、滑るように距離を詰めて──合計四つの白刃が大鼠にヒットした。悲鳴を上げる『ハナヤドシ』。反撃しようとするが、敵が四人もいればヘイトも分散するのが普通だ。
故に、面白いくらいに攻撃が当たる。
が、しかし──
「かってぇなコイツ!」
「手が痺れてきたんですけど!」
その身体の堅さには舌を巻いた。
「静香」
「はいっ」
叶馬は冷静に静香に呼びかけ、二人で『匣』を幾つも作成しては、『ハナヤドシ』の周囲を埋めていく。
あの尻尾の果実の攻撃には無力でも、噛み付きや引っ掻く攻撃は防げるのだ。
数回斬っては『匣』で防御する。
これを何度も繰り返せば、いずれはこちらが勝つ。
叶馬は本能的に。
静香は理論的に。
そう考えていた。
だが──この堅さはどうだ?
戦った事がある「戦国奈落獄」の餓鬼や牛頭鬼よりもその身体は堅く、俊敏に動きながら攻撃してくる。
厄介な敵だ。
「──ぐぅっ!?」
「叶馬さん!?」
その振り回される鈍器のような果実が、叶馬に当たる。
逃げ損なった静香を庇う形で、攻撃を受けたのだ。
『ハナヤドシ』はただ純粋に静香を狙ったのだろう。しかしそれを叶馬が防いだ。
吹き飛んだ餌を見て、鼠は咄嗟にその牙を剥いて追従した。
しかし──
「余所見はいかんぜお客さん!!」
誠一のフォローが入る。
彼の『からくり刀』が励起し、緑のオーラが迸った。
刀身が分割され、オーラの鞭がそれらを繋いでいる。
解放状態。
そう呼ばれる蛇腹剣の形状だ。
時間制限付きとは言えども強化状態における斬撃は容易く鼠の身体を斬り刻む。
悲鳴を上げて『ハナヤドシ』は敵意、というよりも食欲に満ちた眼を誠一に向けた。
だが──
「余所見はいけない、と誠一が言っただろう……!」
叶馬たち三人による同時解放による斬撃が襲い掛かる。
古来より人間は、自分よりも大きな存在を徒党を組む事で打倒してきた。
だからこそ、ただ堅いだけの獣ならば十分に対処出来る。そう思っていた。
だからこそ、雄叫びを上げた『ハナヤドシ』の行動に驚愕する。
逃げ出したのである。
呆気に取られる四人。
しかし直ぐに誠一が気を取り直して、叶馬に手応えを訊く。
「……どうよ?」
「いける、とは思う。だが、あの堅さは……」
「先輩、そこまで苦戦しねぇって言ってたよな」
「だが言っていたのは秀龍先輩だぞ?」
「……あー、納得した」
あの秀龍ならば、何度も死に戻りを経験しようともソロで倒していても不思議ではない。
だが、静香は違和感を覚えた。
口元に軽く触れながら、何かを思い返す。
結論。
「……違う」
「静香?」
「どうしたの?」
何かに気付いたのか、静香は思考を纏めるように口に出していく。
「……多分ですけど、秀龍先輩と私たちの相違点を考えたんです。恐らく……人数」
その言葉で何かに気付いたのか、誠一が口元を手で覆って思考を回す。
「人数が敵の堅さに影響してるってのか?」
「如何に先輩が人外の力を持っているとしても、ここは序盤です。その時期から、怪物のような力を持っていたとは考え難いんですよ」
秀龍はこのダンジョンで自分を鍛えた、と言っていた。
それはつまり、昔は弱かったという事だ。
叶馬もそれは同意した。
「ああ、初めて逢った時の先輩は、当時の俺よりも弱かった。俺より『強い』と感じるようになったのは、先輩が行方不明になってからだ」
一年の行方不明。
叶馬と同じ学年となった理由。
ここで狂ったように戦い抜いたと聞いている。
「……静香の仮説がマジだとしてだ。シングル系のゲームで、協力プレイする時に敵の体力が増えるのと同じか」
「えー、それってさー。この敵とはペアかソロの方が良いってこと?」
「多分な。ただ、安全面を考えるならこのままか、三人組とかでやる方が良いんだろうな」
「一人ハブんの? だったらペアで分かれた方がいいんじゃない?」
誠一と麻衣が話すのを聞きながら静香は随伴する『つくも』が表示する時間を見て嘆息した。
突然のダンジョン探索だったので、全員の生徒手帳は寮に置いたままだ。……叶馬の手帳は初日に壊れたまま、寮の机の引き出しに放置されていた。だから叶馬はプリペイドカードでしか買い物はしていない。
「……まあ、それでも今日は無理そうですね。もう十時を過ぎました。これから追って狩るにせよ『墨烏荘』に戻るのは十二時を過ぎる可能性も……」
「静香」
危惧するパートナーに、しかし叶馬が告げる。
「今日はここに泊まろう。先輩のお話だと、「湊」の家はどこも使っていないそうだ。……だからセックスする時間は確保出来る」
かなり広い港湾都市だからか、人が住める住居はいくらでもあった。
そう言われて静香は少し押し黙る。
というか麻衣も少し目を逸らした。
どうやら女性陣は内心、まだまだセックスがしたかったらしい。
「……おいおい」
つい、誠一が呆れる。
「な、なによ! エッチしたいのはせーいちもでしょ!」
麻衣が股間を手で押さえながらそう言い返す。
誠一や叶馬は、初期装備である獣狩の装束に身を包んでいたが、女性陣は鉄の意志でその装束を改造してミニスカートを履いていた。明らかに「その」為だ。
自分たちの装備を整備してくれる『つくも』に、どの装備もスカートが良いと二人が要望を出していた。要は直ぐに性器を露出させてセックスしやすいように求めたのである。『つくも』はからくり──つまり機械なので怪訝に思う事なく了解した。
このダンジョンは二つとも、学園のダンジョンのように強い性欲が沸き上がる事はないが、しかし毎晩セックスしていれば夜になれば自然と身体は求めてしまう。
少なくとも静香と麻衣はそうだ。
そして、元から性欲旺盛な男共は、そんないじらしい女子の姿を見れば、無視していた性欲がふつふつと沸き上がってくる。
「……分かった。取り合えずこのまま四人でさっさとあの鼠を狩ろう。人数的な強化が入っていようとあれぐらいならなんとかなんだろ」
「……うむ」
少し早口にそう説明し、全員が『
空中に「天つ糸」が流れ、行先を指し示す。
無言で駆ける四人。
先程のように全力の疾走。
しかしその速度は明らかに速くなっていた。
□
「さぁて、と……」
俺は手にした『からくり刀』を腰に佩いて、この異世界で一番高い山の頂上にいた。
そこにしかいない獣を狩るつもりだからだ。
これまで何度も倒した相手ではあるが、しかし強敵には変わりない。死に戻りも何度もやってる。
ゲームでは美味しい相手、なんて言うプレイヤーもいたが……設定的にはかなり強いんだよなコイツ。国中を大雨で全てを押し流すみたいな天変地異が能力の一端なんていうチートだ。俺も基本的にボロボロにされる。
そして、コイツの討伐こそが──「東の国」のクリア条件
言うなればラスボスだ。
だからそこから造られる武器はどれも一線級で、俺もよく使っている。
この刀も、ただの太い木の枝にしか見えないような外観だが、俺が柄に手をやると柄を縛っていた細い枝が花開くように広がった。
すらりと鞘から抜いた白刃はただ真っ直ぐで特徴はなく、普通の刀のようにも見えるだろう。
それも間違いじゃない。
多分、あらゆる『からくり刀』のデザインで一番シンプルなのがこれだろうな。
鍔すらないデザイン。
しかしそれが内包する力は本物だ。
「今日も頼むわ、『
からくり刀の内に在る龍が、無音の咆哮を上げる。
それが聴こえたのか、眼前の『蕾のような頭の龍』が現れ、俺を見据えた。
まあ、自分じゃない自分が使役されてんのを見れば、興味は出るよな。
向こうさんも抑えられないくらいに戦意が迸っている。
それが分かった。
まあ、こうして向かい合うだけも詰まらんよな。俺らは戦ってナンボだ。
──さて、それじゃあ往こうか。
「獣狩・斎藤秀龍──推して参る」
命(魂)の奪い合いだ。
「せいやぁっ!!」
俺の『
俺も相手もボロボロだ。幸い俺は骨は折れてないが血だらけになっているけどな。
頭の蕾は既に開き、中にあった龍の頭が苦悶の声を上げた。
その瞬間、何度も振るってきた経験則から、からくり刀のエネルギーが溜まった事を手応えで分かった。見ている暇はないからな。
だから俺は即座に『からくり』を起動させる。
連結からくり──『銛撃ち』
複数のからくりを連結する事で、巨大なからくりを作り出す。
今回用意したのは、敵に銛を打ち込んで行動を阻害するからくりだ。空を飛んでいれば強制的に地面に引き摺り下ろすのも可能だったりする。地面へと落下する龍に俺は駆け寄った。
更に。
連結からくり──『仕掛け槌』
大きな木槌が柄をしならせて、地面に倒れた頭に襲い掛かる。
苦悶の声。
経験則で分かる。スタンが入ったな。
朦朧とする『アマツオロチ』を見て、俺は『匣』を三つ積み上げる。
その即席の塔を駆け上り、跳躍。
天高く跳んだ俺はからくり刀を振りかぶる。
『解放・空中捻り落とし』
刀身を解放し、リーチが伸びて多段ヒットするようになったからくり刀を、その頭へと叩き込む。
更に連続居合斬りにて複数の斬撃を増やし、更に斬り抜ける。
そして、
連結からくり──『炸裂玉』
頭の傍に爆弾を設置する。
再度斬り抜けて、頭部の反対方向へと俺は移動する。
ついでにもう一度『匣』を三つ積んで、捻り落としを叩き込む。
あとは敵に居合斬りを連続して打ち続ける。
そうしている間に、爆弾──『炸裂玉』が爆発した。
瞬間、俺は爆風に巻き込まれないように木製のバネである『発』にて遠くへと避難する。
着地し、最後の連結からくりを作成する。
連結からくり──『轟雷砲』
巨大な砲身が形成され、砲口には「天つ糸」がエネルギーとして充填される。
発射される砲弾は誤る事なく龍に直撃し、エネルギーを大爆発させた。
それでも死んでいない事は分かっている。
俺はもう一度、からくりを造る。
『匣』二つに『発』一つ。
何も連結からくりを起動出来ない組み合わせで作り、俺はその『匣』を駆け上がって『発』で龍へと一直線に跳んだ。
まだ、刀のエネルギーは尽きていない。
ただしこの一振りでエネルギーは終わる。ボーナスモードは終了だ。
「──おぉおおおおおおおおっ!!」
吼え、一閃する。
その瞬間──龍の身体から、澄んだ何かが『折れる』音が聴こえた。
これは大型の獣と龍脈との間に繋がっていた『天つ糸』が断たれた音だと、俺は思っている。
自然現象を操り『天つ糸』を身体に溜め込んでいる生態をしているんだ。
多分、龍脈から力と『天つ糸』を吸い上げる過程で繋がっているんだろうな。
だから、介錯を経て漸く──獣を狩ることが出来る。
「──御免」
倒れた龍を前に、俺は鞘へと刀身を納め、居合の構えから──抜刀、一閃する。
──獣伐・アマツオロチ
介錯を受けて、巨体が音を立てて斃れる。
俺はその姿に頭を下げた。
命を戴いた、その礼儀だ。
ゲームしてる時よりも、今の方がずっと真剣に相対してる気がする。
やっぱり命の遣り取りをしている実感は大事だ。
だからこそ、今回の骸も有効活用させて貰おう。
「さてさて、深夜の狩りになっちまったワケだが……アイツらは大丈夫か? やっぱ最初は朝か昼ぐらいにやらせりゃ良かったかなァ」
『天つ糸』は緑色に光る糸だ。
夜中でも視認性は高い。
と言うよりも『獣狩』のクラスを得れば自動的に身体能力は高くなり、夜目も効くようになる。
ただ、『
俺だって「耳栓の護符」を使っているからなんとか無視出来ているんだ。
何もないアイツらは、その度に攻撃が中断してしまう。護符は自分で見つけるかドロップしないと装備出来ないからなぁ。
まあ、それでもなんとかなる相手だから大丈夫だとは思うが……
取り合えず俺は「湊」に戻って、湯屋の準備をしとくか。
からくり風呂もいいが、『湊』の湯屋の露天風呂はそりゃあ絶景だからな。
明日に疲れは残らないだろうさ。
と言うか、俺が満身創痍だからなぁ。
木霊に頼んで癒しの湯でも張って貰うか。
こうしていてもどうにもならん。さて、『つくも』にこの亡骸を任せるように指示を出して。
さっさと「湊」に戻ろう。
□
吠える巨大な獣。
その外見は、鼠ではなかった。
端的に説明するなら、その姿は
ターゲットである『ハナヤドシ』を追うその過程で、数度目の戦闘にてヤツの
ギロリ、と片側の三つの目が鼠と叶馬たちを同時に睨んだ。
その時に、鼠と人間たちは同じ思いを抱いた。
あ、やっべぇ……
あとはコメディ映画やアニメの世界だ。
耳が痛くなるような咆哮に怯んだ全員を睨み付け──猪は襲い掛かったのだ。
『おい、叶馬っ! どう見る!?』
『至極残念だが、今の俺たちでは勝てん! 逃げるぞ!!』
男共はそう判断し、『ハナヤドシ』を放ってダッシュで離脱。
サイズ的に誰が自分の眠りを邪魔したのか、猪は分かったようでその眼を全て『ハナヤドシ』へと向けた。
そこからは、猪と鼠の追い駆けっこに発展。
つかず離れずでそれを追う展開になった。
「おーおーどつき回してやがんな」
「うわ、あの猪って木を操るんだ。すっごく器用なんですけど」
誠一と麻依がそう話す間に、猪は鼠をフルボッコにして溜飲を下げたのか、のっしのっしと去っていった。
叶馬たちがいる方に一瞥して。
その瞬間、背筋に冷たい物が走った四人。
「……見逃された、か」
「どちらかと言えば、相手にされていないように見えましたが……」
叶馬と静香がそう話していると、ボロボロになった鼠が足を引きずりながら逃げ出しているのが目に入った。
「ま、それでもだな」
「ああ、逃がす理由にはならん」
そう言って、四人は『ハナヤドシ』の跡を追った。
「同情はするぜ」
「容赦はせんが」
鼠の視線の先に、男が二人立っている。
「そろそろ十一時過ぎるし、終わろっか」
「済みません」
背後には、女が二人。
鼠は、理解していた。
自分は、きっとここで終わる。
あの猪にやられなかったとしてもこの四人は強かった。
なんとか生き延びることが出来たら、もう少し慎重に食欲とは付き合っていこう。
生き延びる為に戦う。
これは当然だった。
弱いから喰われる。
自分は今まで強かったから喰われなかった。喰ってこれた。
そして今、この強い群れに勝たなければ終わる。
だから、ありたっけを──
「あ?」
「む?」
気付いたのは、男たちだった。
「なんか……気配が」
「ああ。強くなった」
鼠が、自分の限界以上に「天つ糸」を喰らう。
周囲が緑のオーラに染まり、表皮が剥がれた場所からは「緑の肉」が目映く発光している。
しかし、その光は強くまるで肉が宝石のようにも見えた。
「……おい」
「やるか」
手にした『からくり刀』は、既に解放状態に移行出来るのが分かっていた。
オーラが刀身に薄く滲んでいるからだ。
鼠が、食欲ではなく──生き残る為に牙を剥く。
生存の為に、限界を越えて戦おうとしている。
「やはり……違うな」
ふと、『羅城門』で戦ったモンスターと比べてしまう。
あそこのモンスターは、ヒト型も多かった。そのせいか行動がどうしても人に似通っていた。
調べた所、人間に対して性欲を抱くモンスターもいるのだとか。
だが、この獣は違う。
食欲、もしくは生存本能のままに戦おうとしている。
嘗て山中にて戦った熊との死闘を彷彿とさせる敵の姿に、叶馬はついつい厳かな気持ちになった。
「叶馬さん!!」
静香の警告。
勢い良く突っ込んでくる『ハナヤドシ』に、まるで滑らかに滑るように腰の鞘から刀身が引き抜かれる。
叶馬の動きに連られるように、誠一もまた半歩下がって刀を抜いた。
交差する鼠と叶馬。
鼠の爪は、叶馬の頬を裂き。
叶馬の刀は、その脇腹を斬った。
血が吹き出る。
誠一が、鼠の進行方向に『匣』を三つ生み出した。
ぶつかり、勢いのままに破壊される。
だが、その頃には既に誠一は宙にいた。
刀身が、背中に刺さる。
悲鳴を上げる『ハナヤドシ』。
振り払おうとする動きに抵抗しようと、誠一が緑の肉に左手で触れる。
すると──知らない『記憶』が囁く。
だから、誠一はその緑の肉に左腕を突き刺した。
光が誠一の腕に集まっていく。
集まって集まって集まって──
遂に引き抜けば、肉は弾け飛んだ。
獣狩の腕。
そう呼ばれる技能だ。
潤沢に獣が溜め込んだ「天つ糸」を、人が奪うスキルである。
それは、本来の人が貯められる以上の「天つ糸」を誠一に与えた。
怯んだ『ハナヤドシ』を見て、誠一は背中に突き刺した刀を強く握る。
叶馬たちは、距離を詰めて。
四人は、『からくり刀』を解放した。
後は先程の焼き直しである。
四人が思い思いの位置に陣取り、斬り刻んだ。
すると──
なにかが、『折れる』音が響き渡った。
どさりと地面に倒れる『ハナヤドシ』。
息も絶え絶えで、何もしなくとも死んでしまうそうだ。
誠一たちはそう思った。だから手を下すのを躊躇ってしまった。
だが、
「命を戴くのだ。最期まで手を抜いてはならん。それは失礼に当たるぞ」
叶馬はそれを否定する。
ゆっくりと刀を鞘に納め、『ハナヤドシ』の前に立った。
何をすべきなのか、それは分かっていた。
「────御免」
言葉と共に、介錯の一閃が『ハナヤドシ』の命を奪った。
力無く倒れ伏す亡骸に、叶馬は一礼する。
その雰囲気に呑まれたのか、誠一たちも続くように一礼した。
──獣伐・ハナヤドシ
「さて、帰ろう。今宵は良き狩りであった」
「はい」
四人の初めての狩りは、こうして終わった。
独自設定『獣狩のからくり武器』
巨大な獣を倒し、素材を集めて武器を造る。
しかしその過程で武器には『獣の意志』が宿る事がある。
「戦国奈落獄」による影響で、『妖怪武器』のように意志もつ武器へと成長するようになった。
独自設定にある「ソハヤ武器」化が可能。
『魂代』による召喚攻撃のような事が出来る。
武器に充填された使用者の『天つ糸』によって、モチーフとなった獣を再現する。
再現された獣は、主人の為の力になる。
ただしそれには獣の意志が発現し、主を認める必要がある。
しかし意志が発現するのは持ち主との相性が良いことが前提。なので発現した時点で半分は認められている。あと半分はどう武器(己)を扱うかを見られている。
※もしかしたら出るかも
独自設定『●の手』
同会社製品である某和風狩りゲーのナンバリング二作目にて登場した新要素。
それを『天つ糸』によって再現されたもの。
某遊戯の王におけるオッドアイズPドラゴンのような手で敵を握り潰す事が出来る。
今後登場する某山のようなサイズの岩熊と戦う際に、何かないかと考えて登場させるか迷い中。
恐らく読者諸兄は気付いているだろうが、現状「同じゲーム製作会社」縛りで物語は展開している。ワイルドハーツは若干厳しいかもしれないがシステム構築は同社なのでご容赦願いたい。
……ただそうなると、某オリジンも出せる事に。ジャ〇クの能力やあのジョブシステムはそれはそれでチートなような……
ちなみに筆者は一人称視点よりも三人称視点派。やはり主人公が動く姿が見えてナンボだろう。
※PCが青画面になりました。一応復活したのですが、どうにも怖い現状です。なのでスマホにキーボード繋いで執筆しています。というよりも新しいPCを買うか、買うにしてもどこにすべきか悩み中。取り敢えず現行PC(NEC)は触らんでおくつもり。データ移行しようとしてデータ消し飛んだりしたので怪しいとは思っていたんだが。