ハイスクールH&S with [Nioh2][Wild Heats] and more 作:「秀吉」
「ええ、『匠工房』にはうちも同席します」
「うん、ごめんね」
「構いませんよ。同年代の男子は、凛子にとってトラウマでしょう」
「うーん……でも、あの人は」
「ええ、そうですねぇ。だってあの人は、うちらと同い年でも、この学園にいたワケじゃないですものねぇ」
「うん。それに叶馬くんたちも良い子だよ」
「……そこは、うちは分かりませんけども」
──麻鷺荘二年女子の会話──
白む空を窓から見上げ、誠一は物思いに耽っていた。
ベッドを見ると、麻依が全裸で眠っている。
明らかに事後のまま寝たのが分かるような姿だった。
とは言うものの、昨夜は一回だけセックスをしただけで体力の限界を迎えて気絶するように麻依は寝てしまった。それを見届けて、誠一も意識を失ったのだが。
小ぶりだが確かにある胸をさらけ出してすやすやと眠る麻依に布団を掛けてやる。ジャージを着込みながら麻依の『つくも』に風呂に行くことを告げて、誠一は外へと向かった。
「……」
「湊」を歩きながら、誠一は考える。
妹の事。
麻依の事。
秀龍の事。
今後の事。
そして、叶馬の事。
当初の『プラン』から色々と逸れてしまったが、それでもやる事は変わらない。
取り零した自分の魂。
それを拾い上げて貰ったのだ。
ならば、その恩は返さなければ。
「お」
「あ」
そんな事を考えていると、秀龍とばったり出くわした。
「風呂か?」
「はい。先輩もっスか?」
「ああ」
湯上がりに浴衣を着ているその姿は、まさしく温泉宿にやって来たプロレスラーのようだった。
「……あの」
「ん?」
「ちっと……相談、あるんスけど」
そう言うと、秀龍は眉を怪訝そうに寄せたが縦に頷いた。
何やら深刻そうな顔をした年下の男*1を、邪険にしない程度には良識は持っているつもりだ。
というよりも、後輩が頼ってきたら助けてやる甲斐性くらい秀龍は持ち合わせていた。
「叶馬の事か? あれの唐変木っぷりは、俺なんぞじゃどうにもならんぞ。適宜良きタイミングで殴るしか出来ん」
「いや、その事じゃなくて。……いや、それもお願いします。俺だけじゃ不安なんで」
場所を移し、湯屋へと二人はやって来た。
秀龍は既に入浴を終えていたので湯船に浸からなかったが、誠一は髪と身体を洗って木で出来た浴槽に浸かる。
日差しが昇るのを見ながら入る露天風呂は、格別だった。
夜に大きな獣と死力を尽くして戦い、帰って女子を抱き、そのまま寝て。
そして起きたら雄大な自然を見ながら温泉に入る。
ある種の贅沢だ。
「ふうぅぅ──……」
ついつい至福の溜め息が出てしまう。
「満喫してんねぇ」
苦笑する秀龍は、そう言って壁に備えられた長椅子に腰掛ける。
「で、話って?」
「あー、と……すんません」
誠一が、謝罪する。
立ち上がり、頭を下げてきた。
「何を?」
「……ちと、先輩と叶馬の過去を、調べました」
「うん? ……俺らの過去? なんかあったか?」
「それがなーんにも」
豊葦原学園の関係者どころか、どこかの名のある家の『紐付き』というワケでもなかった。
全くの一般人。
少なくとも、二人の家族はそうだった。
湯船に浸かり直して、誠一は昇る日差しを見ながら話す。
「ま、だろうな。前に言った通り俺がここを知ったのは、俺の両親が死んでからだ。それまでは一般家庭のちょっと背が高い普通の男子中学生だったからな」
「そうっスね。でも……叶馬なんですが」
「言っとくけど、俺はアイツの家庭環境がどうなのかなんて知らんぞ」
そう言われて、誠一は驚いた。
「マジっスか?」
「そりゃあ、俺の両親とアイツは会ったことあるけどな。でも俺はアイツの家族については何にも知らん。担任からも訊かなかった」
「そりゃまたどうして?」
「決まってるだろう? 言いたくないってアイツが言ったからだよ」
誠一が固まる。
まさか、そんな理由で?
怪訝な表情を浮かべて浴衣姿の秀龍を見る。
「そりゃお前、後輩とは言えダチの頼みだぞ。聞くだろ普通」
「え、ええ。そりゃまぁ」
動揺してしまった。
何らかの約束をしているから、叶馬の家庭の話は秘密になっているものと思い込んでいた。
「元々、中学の担任からあんまり愉快な家庭じゃない、ってくらいは聞いてたんだよ。でもそんだけだ。わざわざ聞くような事でもねぇだろ」
「ごもっとも」
「で、話を戻すが……それがなんだって?」
心底ワケが分からんといった表情をする秀龍。
少しだけ、そんな秀龍が羨ましくなった。
「俺は、叶馬を利用するつもりだったんス」
そう言われても秀龍は表情を険しくしない。
寧ろ納得した様子で頷いている。
「寧ろ『それ以外の理由』で、アレに近付こうとする人間がいるとは俺も思ってないぞ」
勘の良い人間なら──いや、鈍い人間でなければ気付く、と言われる。
事実、叶馬の醸し出す圧し潰すようなプレッシャーは、それ程に強烈だった。生きたまま食われてしまう。そんな恐怖を抱いた中学のクラスメートは多かった、と秀龍は思い返す。
気付いていなかったのは、同じ中学にいた不良学生たちと秀龍本人だ。だから前者は敵対した挙げ句に蹂躙され、後者は先輩風を吹かせてメシを食わせたりしたのである。
秀龍が叶馬の異質さに気付いたのは「この異世界」を攻略した後だった。鋭敏になった感覚が、「有り得ない存在」だと語っていた。だがそれと同時に、「自分よりもまだ弱い」とも囁いていた。しかしそれ以上、に「友人である」との意識があった。
そして、仮に暴れてもなんとか出来る暴力を備えていた。
「だから誠一、お前はそんなに気にしなくていいんだぞ」
「……そう、なんでしょうね。でも」
一拍、息を吸う。
「俺は、アイツとは対等でいたいと思ってます。力の差はあるでしょうし、色々と助けて貰った手前、烏滸がましいかもしれませんけど」
「だから、きちんと腹を割って話したいって?」
頷かれる。
「俺の目的はアイツらも先輩も知ってますよね。手助けも約束してくれました。……だけど」
罪を告白するかのような態度で誠一は語る。
病院で機械に繋がれて眠ったままの妹を助けたい。その為ならどんな事だってするつもりだった。
例えば、
「俺は、今後のプランの一つとして、静香を『黒鵜荘』の上級生に差し出すつもりでした」
叶馬と静香を引き合わせたのはその為だと語る。
女子を寮に引き込んで、上級生たちに犯させるつもりだったと、告白する誠一。
少々下衆い発想だが、木霊たちに調べて貰ったこの学園の状況と照らし合わせれば、間違った方法だとは言えない。ただし、輪姦される静香やそれを間近で見ることになる叶馬の精神状態は置いておくとして。
秀龍は、もしそうなったら『黒鵜荘』の上級生が死んでいてもおかしくない事態になるだろう、とも思っていた。
場合によっては、静香が「終わって」しまう可能性もあった。
そうなったら、色々と拗らせた二人が周囲の人間をグチャグチャにしただろう。
そして主犯の誠一は、もう二度と笑ったり泣いたり出来なくされる。
そんな『
「……でも、やってねぇんだろ」
「そうっスね。先輩が自分の寮に来ていいって言ってくれましたから。お陰で他の上級生と繋ぎを取るプランは
「……その割には嬉しそうだな」
「ま、感謝してるのは本当ですからね。俺だって、仲間を見ず知らずのヤロー共に犯らせるのに抵抗を覚える程度の良識はあります。……それを通せないくらいに弱いのがいけない、ってのがこの学園のルールです」
本当に色々と知っているな、と秀龍は思った。
恐らく繋がりのある誰かから情報を得ているのだろう。
それを察しても秀龍は何も言わない。
何も言われない事に誠一は、本当にこの先輩はこっちが聞かれたくないと思った事を訊かないのだと理解した。
「……誰から聞いた、とか知りたくないんスか?」
「ああ。興味が無い」
はっきりとそう言う。
それ以前に、と前置きして秀龍は訊く。
「なあ誠一、お前は色々と知ってるみたいだが、裏取りはしてるのか?」
「それって、どういう……」
「信頼のおける情報源なのか? こういう学園とダンジョンだぞ? 出揃っている情報が全部正しいってどうして言える?」
「そりゃ……言われてみればそうっスね」
「全部設定が決まってるゲームじゃねぇんだぞ。まだ知られてない事も多いんじゃねぇのか?」
「……ここみたいに、っすか」
「おう」
確かにそうだ。
誠一も、秀龍の意見に納得する。
「正直に言うとな、俺自身が完璧に「この世界」を知り尽くしてるとは思えん。多分、俺の知らない仕様は山ほどあるんじゃねぇか? 四人とかで獣と戦うと、その分相手が硬くなったり強くなるなんて知らなかったしな」
「……自分で調べて分かった事だけ信じるってことっスか」
「流石にそりゃ遠回りし過ぎだって。きちんと学んで、それで納得したら信じればいいんだよ。疑うのは、学んだ事と違う部分が出てからでいいと思うぞ?」
「もう今まさに、俺の知るダンジョンとは別物が目の前にあるんですがね?」
「そりゃそうだ」
二人して苦笑する。
自分たちしか知らない「異世界の日本をモチーフとしたダンジョン」。
明らかに『羅城門』ダンジョンとは法則や手にするスキルやアイテム等が違う。
「まあ、なんだ。これからパーティーを組むのに、ちょっと引け目があるからなんとかしたいって話で合ってるか?」
「有り体に言えば」
「うーん……だったら殴られるか?」
「は?」
「いや、そんな未遂どころか考えただけの悪行の話をされても『だから何じゃ?』で終わるんだよ、正直」
「……まあ、そうですね」
「だったらアイツに一発殴られてチャラって事でいいだろ」
そう言って秀龍は立ち上がる。
「多分だけど、お前さん。アイツと友達になりたいんだよ。だからそんな事考えてるんじゃねぇの?」
「俺が……叶馬と?」
思ってもない事を言われたとばかりに呆然とした表情を見せる誠一。
そんな折だ。
「おーい、誠一ーっ! オンナノコ置いて勝手にお風呂行かないでよね!!」
「……浴衣ですか。叶馬さん、どうでしょう?」
「ああ。浴衣は確かに俺としても嬉しいコスチュームだ。しかし」
「大丈夫です。温泉に濡れた浴衣も、お部屋で乱れた姿でも、帯で縛られても、私はどんなプレイでも受け入れます」
「静香、ステイ」
麻衣たちがやって来た。
その姦しい喧噪に、誠一が少し口元を綻ばせる。
秀龍はそんな後輩の姿を見て、さっさと元の世界の『墨烏荘』に戻ろうと考えた。
いい加減、朝食の準備をしなければ時間的に厳しいからだ。
ギャアギャアと叫ぶ後輩たちに苦笑しながら、秀龍は黄金の鳥居を潜り、「湊」を後にした。
□
気付けば、今日の午前の授業は終わっていた。
──なんて感じの一年は多いんだろうなぁ。
今日は大多数の一年が待ちに待ったダンジョン探索解禁日。
確か、一年は一クラス四十人の二十四クラスで、生徒は総勢千人だったか。そんな人間の大多数がダンジョン探索に行こうとするんだ。購買は死ぬ程混雑してるだろうな。
事前に買ったヤツとか、今日は見送るヤツが何割かいるだろうが、既に二年の『
何故なら、そんな倶楽部で閑古鳥が鳴いているからだ。
「……なんか、逆に可愛い看板なのが余計に寂しいね」
こらこら麻依ちゃん、思ってても言ったら駄目だぞそれは。
時として事実は人の心を抉るからな。
「……あんな良い武器作ってるっつーのに、明らかに待遇が悪いな。こりゃあもしかしたら……」
おいおい誠一くんよ、なんぞ悪巧みを考えてるな?
「……なんだか、嫌な予感が」
「どうした? 風邪か?」
「…………いえ。どうしてか、ライバルがダースで増えそうな予感が」
はっはっは。
静香ちゃんよ。
……そうならない事を祈るよ俺は。
コイツならやってもおかしくないって、嫌な予感は俺も感じた。
「頼もう」
で、叶馬はあっさりと『
「いらっしゃい、叶馬くんっ」
「いらっしゃいませ、皆さん」
小柄な蜜柑嬢と、高身長の紅華嬢が近付いてくる。
とてとてと足音が鳴りそうな蜜柑嬢を見て、叶馬と麻依がほっこりした顔をする。
「お約束通り、推参しました」
「うん、待ってたよっ」
弾むような声で蜜柑嬢が叶馬の手を引く。
彼女の方が年上なのに、まるで兄と妹のような印象を受けた。
二人を目で追っていると、まるで遮るように紅華嬢が俺の前に立った。胸を強調するように俺を覗き込んでくる。……ちょっとうきうきしてるように見えるが、なんだろこれ。
「ちょっと、お話しません?」
媚を売っているのは分かるんだが、なんだ?
取り敢えず頷いておく。
すると紅華嬢が俺の手を引いて外へと連れ出す。
「すまん、ちょっと席を外す。なんか良いのがあるか見といてくれ」
「了解っス」
さて、いったい全体、どんな話なのやら。
「さて──端的に言いますけど、秀龍さんは、なるべく『
「……トラウマでもあるのか?」
「…………ほんに鋭いお人だこと。ええ、こんな学園で一年も過ごしてれば、そりゃあもうクズの見本市みたいな男ばっかり遭うてきましてん。うちもあの娘たちも」
「で、殆どの女子が男にトラウマか。ならなんで叶馬や誠一は良いんだ?」
「簡単ですぅ。お二人は既にパートナーがいて、その娘らも一緒にいるからです。パートナーの娘がどんな扱いをされてるかなんて、二年になったコなら見るだけで大体気付きますよ」
「……成程」
「まあ、兎に角。今日はうちと蜜柑さんが対応しますんで、ちょっと様子がおかしいコを見かけてもスルーしてあげて下さい」
「了解」
ダンジョンでの装備を見繕い、寂しくなった懐。
購入した『
俺は、叶馬と同じで斧をそれを二本装備している。あと、防具は買ってない。だから学生服のまま行くつもりだ。……カモフラージュ用にデカいバッグを買ったせいで、銭が底を突いた。だから金策を頑張るつもりだ。
そんな俺を、周囲は「コイツマジか」みたいな目で見らている気もするが、些細な問題でしかない。
中にはもっと切羽詰まった顔をする生徒も多いからな。
俺と同じく余裕なのか無謀なのか、制服姿でダンジョンに赴く生徒は一定数いる。
だからまあ、大丈夫だろう。
「んじゃ、行くか」
「うむ」
誠一が軽い調子で言うと、叶馬が頷く。
そんな男二人の遣り取りを、静香が
……なんか、こう、変な感覚だな。
尻に違和感を感じると言うか。
「叶馬、お前が中心に入れ。多分、今の誠一たちならなんとかなる」
「はい」
サークルの中心に叶馬が立つ。
景色が歪んでいく。
ダンジョン探索開始の時間だ。
「ふん!」
「はっ」
叶馬と誠一の攻撃によって、ダイブポイント付近にいたゴブリンたちが殲滅される。……若干、「戦国奈落獄」の餓鬼に似たヤツもいた気がするが、まあ見間違いだろう。*2
兎に角、安全の確保は出来た。
「周囲は俺が見張っといてやるよ」
「……ありがとうございます」
誠一にそう告げて、俺は四人から背を向ける。
「叶馬、それに静香。ちょっと話がある」
その真剣な表情に、二人はワケが分からないといった顔で頷いた。
麻衣だけは、どこか微笑ましい表情をしていたが。
俺は、
「さて、来るかなァ
来るかもしれない黄泉醜女を求めて周囲を警戒する。
そんな俺の耳に、誠一の懺悔の言葉が聞こえてきた。
……やっぱ、考えすぎだと思うんだけどなぁ。
「話は分かった。静香は、ともすれば黒鵜荘の男子たちに犯されていた、と」
「……ああ。その段取りを踏むつもりだった」
「……むう」
あ、叶馬が困惑してるな。
まあ、そうだよな。
ちらりと静香の方も見てみるが、困惑が大半で、残りに納得と嫌悪がある感じか。
「だからよ、こんな事考えて、実行に移し掛けた俺が……このまま一緒にやっていくのは難しいと思ってる」
これ、ともすれば袂を分かとうとしてる台詞に聞こえんか?
叶馬が苦い顔をしてる。
まあ、コイツにとっては初めて出来た同年代の同性の友達だしなぁ
ちと執着心はあるだろうな。……おいおい静香、さん? まさか、まさかだよね?
その赤ら顔、まさか。
「……まさかお前、ナマモノ派かよ」
「なんの事でしょう?」
「涎が出てるぞ」
「あ」
慌てて口をゴシゴシと拭う静香。あー、やっぱりコイツは腐女子だったか。
これで静香はどうとも思っていないのは確定、と。
叶馬は逆に、どうすれば誠一を仲間のままでいられるのか頭を回転させているな。
「だから──」
「待て」
「俺を殴ってくれ」
呆気にとられた顔をする叶馬。
まあ、殴ってくれってシチュエーションなんて想定してねぇよな。
「知っての通り、俺は妹を助ける為ならなんでもするつもりだ。だから、伝手を増やす事には躊躇しない──つもりだった」
まあ、どこから妹さんを救う霊薬が出るか分からんものな。
……今度、店主さんに逢ったら訊いてみるか。
「でも、どう考えても、お前や秀龍先輩とつるんだ方が、俺の目的には近付く──そう思ったんだ。だからさ、ケジメとして」
「殴られて禊としたい、と」
「ああ。図々しい願いだけどな」
難しい顔で腕を組む叶馬。まあ、それでいいのか分からんものなぁ。
「話は分かった」
「そうか。なら──」
「殴り合おう」
簡易ボディーアーマーと制服を脱ぎ、上半身裸になった叶馬。
「おい、なんで脱いで」
「俺にはお前の考えはよく分からん」
誠一の言葉を遮って、叶馬は言う。
「だが、これを冗談で片付けるようでは、俺は
「……」
まあ、そうなるよな。
お、敵が来たか。
さあ、俺の手斧の餌食となるがいい。
「だから、お互いに殴り合おう。俺だけが殴るのでは対等の友人など夢のまた夢だろう」
「……そりゃあ」
お、随分デカいゴブリンだな。
ホブゴブリンってヤツか?
お、この手斧だと肌に弾かれるな。だったら──炎のエンチャントだ。
炎が手斧を覆う。
手斧の炎によって、ホブゴブリンの肌が焼かれていく。
火傷の痛みで敵は絶叫しそうになるが、
「喋るな」
そこに生み出した小さな氷塊を高速で放り込んでやる。
窒息しそうなったホブゴブリンが、顎を上げてもがいている。なので、その無防備な喉に、手斧を叩き込む。
首が舞って、床に落ちる前に結晶を落として消えていった。
お、ドロップ品か。
「……ん?」
視線を感じて、振り返ると男二人がなんとも言えないような顔でこっちを見ていた。女子二人は引いた顔をしていたが。
「……? おお、好きにやったらいいぞ。大丈夫だ、俺がいればモンスターの襲撃なんざ余裕で捌いてやれるから」
「……はは」
そんな俺を見て、誠一も笑う。
「対等、か。お前も、そんなこと考えてたのな……」
「誠一?」
溜め息を一つ。
そんで、馬鹿がボディーアーマーと制服を脱ぎ出した。
麻依が少し顔を赤くして、静香が興奮した顔でそれを見ていた。
「あーあ。これで俺も馬鹿の仲間入りかぁ」
「男なぞ、馬鹿なくらいで丁度良いさ」
「……ああ、こういった時くらいは、な」
上半身裸で拳を握り、笑う馬鹿二人。
ま、存分にやりゃあいいさ。
「いくぞ、叶馬ぁ!!」
「こい、誠一っ!!」
俺は俺で、無粋な連中を潰しといてやるからさ。
□
で、顔をお互いにボコボコに膨れ上がらせた馬鹿が二人、床に転がっていた。
いや、いいんだよ?
俺は今日は露払いのつもりだったから。
でもなぁ、まさかまた『
まあ、秒殺した俺が言うことでもないか。
※この後、回復した馬鹿二人と女子二人は、ダンジョンを普通に探索し、様々なドロップ品を収集する。
※史実通りゴブリン関連の武器を大量に入手する。
※装備している、もしくは入手した『戦国奈落獄』の武器も入手している。
※別法則のダンジョンを攻略している挑戦者が『羅城門』に参加した事で、「戦国奈落獄」の武器がドロップするようになった。しかし『東の国』の武器はドロップしない。