一寸先は闇である。
誰もが未来を見ることはできない。
だからこそ人はその瞬間を必死に生き、上手くいくよう存在しない神にすら時には縋り付く。
自分の周りを照らすことしかできない弱い光を求めて。
ご多分に漏れず俺もその刹那を生きるのに全力を使っている。
睡眠不足で重い瞼、運動不足が祟り年々体力はなくなり、半ば強制的に行かざるをえない校舎への足取りは重い。
月曜日の朝から遅刻をしていれば尚更だ。夜ふかしをするには些か早かったということか。
数メートル先を恋人が歩いているが、小走りで追いかけて話しかけるほどのモチベーションと体力は、満員電車に揺られている間に使い切ってしまった。
俺の恋人は、なぜ俺なんかが付き合えているのか分からない程度には可愛い女の子だ。
157cmと俺より4cmも低い身長に金髪のポニーテール、キーホルダーや缶バッジで装飾されたスクールバッグ。
右耳のイヤー・ロブとトラガスには、去年の彼女の誕生日にプレゼントしたピアスを付け、緩い首元からは俺とおそろいのネックレスが見える。
百人中百人がギャルと思うほどのギャルである。
制服の上には俺から無断で借りたパーカーを着ている。気に入っていたので普通に返して欲しい。夏だぞ暑くないのか。
何よりも俺と同じく遅刻をしているとは思えないほどある種の威厳を感じる立ち振る舞い。
スマホと真剣な表情で向き合い、目にも止まらぬ速度で画面をタップする。
生まれる時代が違っていれば名人として崇められていただろう。
口に流し込むフラペチーノは、宛らプロ棋士が対局の合間に食べる間食と言ったところか。
竹馬の劣化版のような靴を履いているというのに彼女は俺を苦しめる坂をものともせず登っている。
純粋な子どもにしか見えないジェットパックでも背負っていなければ説明がつかない。
俺はと言えば、スニーカーを履いているのにも関わらず心臓の鼓動が勾配と比例して早くなっているというのに。
なぜ俺だけがこんな目に。原因が分からない。
先週は毎日学校周辺のラーメン屋を巡っていたことか?
そのあとカフェでパンケーキを食べるルーティンを生み出したことか?
昨日に至っては、昼間からフードファイターよろしくラーメンの大食いに挑戦し、映画館でポップコーンを食べたあと、チケットの半券を見せるとトッピングが無料になるクレープを食べ、挙句の果てにまたラーメンを食べたことか?
それでは筋が通らない。
この全ての言い出しっぺはあいつなのだ。
あいつは我慢という概念を無限の胃袋のために捧げてしまった悲しきモンスターである。
それにもかかわらず体重の急激な増加とは無縁な人生らしい。くたばれ。
何かスポーツをしているわけでもないのにどこからその体力が来るのか、今も俺を半殺しにしている坂をいとも容易く登っている。
ぶちのめしたい気分だが生憎そこまでのスタミナはもう残っていない。竹馬ぶっ壊れて転げ落ちて死ねばいいと思う。
そうは言っていても、登下校で毎日歩く道すら本当に踏破できないほど俺は衰えていない。ギリギリで。
坂ごときに負けはしないが依然として戦いは続く。
信号機である。一度引っかかると2分は待たされてしまう魔の信号機だ。
それ自体は問題ではない。学校などいつまで経っても着かない方がいいに決まっている。
しかし、猛暑日に陽の光の当たる場所で2分も立っているというのは拷問に等しい。
釜茹での刑で死した石川五右衛門の気持ちが文字通り痛いほど理解出来る。
だが、これなら流石のあいつも音を上げるだろう。
俺が苦しんでいるのにフラペチーノを飲みながら登校した罰だ。
バナナブリュレフラペチーノのあのカリカリのやつと共に溶けて消え去るがいい。
認識が甘かった。
あいつはこの事態すらも把握していた。
飲み干したフラペチーノのカップはカフェの紙袋へと仕舞われ、代わりに左手に握られていたのは手持ちの扇風機だ。
手持ち扇風機。俺は敬意を込めて【風神】と呼んでいる。
ユグドラシルの木すらもなぎ倒さんとする怒涛の疾風は天照の怒りを無に帰す。そんな強風は、どこか優しさを感じさせるふしぎなどうぐ。まさに神の施しだ。
あいつは我々の掟を破り労働に手を染め、あの神器を手に入れた。
あいつが禁忌を犯す傍ら、俺はリュックの中に入っていた英和辞典を必死に煽っている。
自分でも何をしているのか分からない。
遅刻した分際で下敷きもファイルも忘れた俺にとって、この鈍器こそが一縷の望みなのだ。
意味は無い。多分肌に当てた方がひんやりしてて気持ちいい。
だがこれはチャンスでもある。
信号待ちのおかげであいつに接近することができた。
今ならこの英和辞典で暗殺できるかもしれない。
できるのか?
神すらも味方につけたやつに俺が勝てる保証はない。
そもそも神が俺に味方した瞬間などあるのか?
殺意を本気で抱いたわけではないが、くだらないことを考えていただけだというのに気持ちが沈む。
俺とあいつの関係性はいつもこうだ。
どうやら、俺は神々が愛した女を愛しているらしい。
神は不公平だ。
同じ人間なのにあいつは美少女、俺は中の中。
同じ人間なのにあいつは月収7万、俺は借金5000円。
同じ人間なのに170みたず人権もない。俺より身長低いならあいつもか。
もちろんあらゆる点で負けていると悲観するほど弱い男ならそもそもあいつとは付き合えない。
ゲームなら俺の方が上手いしカラオケの点数も俺の方が高い。
成績もどんぐりの背比べではあるがやや俺の方が高いと表現出来る。家庭科は俺の方が高い。家庭科高けりゃ他が負けててもいいだろ。
全てにおいて劣っているわけじゃないのに。
それでも満たされない何かが胸の中にはある。
なんだかんだあいつは相当可愛い。
そう感じるのは、悪い要素を徹底的に削ぎ落としたからではない。
もちろん外見で言えば悪く言えるところが一つもないほどに整っている。
だが俺が好きなのは顔だけではない。
ゲームで俺にボロ負けすれば3日は口をきかないし、俺が買ったお菓子を机に置いたままにすれば勝手に全部食い尽くすような、人としてダメなところも一瞬回って可愛いと思っている。
サビしか知らない曲を必死に歌ったり、前情報なしでその店で一番量の多いメニューを食べたりするような後先考えない性格も好きだ。
昼休みに弾丸旅行をしようと一緒に学校を早退したときは本気で頭のお医者さんを探そうとすら思ったほどの行動力も見方を変えればあいつの長所だ。
それは顔の良さあってこそ、というのも理由の1つだが、心の底から真っすぐな人だからこそ許せてしまうのだ。
きっと人間としての作りから違っている。
庭園の中に、手入れのされていない部分など気にならないほどの大木があれば誰もがそこに目がいくだろう。
凡人がいくら計算された枯山水を作ったところで見向きもされない。
隣の芝は青く見えるというが、青いと言うよりは眩い光を帯びているような気がする。
そう、今のように。
不思議な風が吹いた。
刹那、目の前が真っ白になった。
ホワイトアウトか?真夏の日本で?
ならば手持ちのモンスターが全滅したのか?
普通は真っ黒になるらしいが俺は俺は真っ白らしい。ポケモンやったことないけど。
それともトラックにでも撥ねられ死後の世界へと誘われたのか?
いや、天国にしては肌を焼き付ける紫外線が強すぎる。
それなら地獄か?
絵巻などに書かれているような辺りが燃え盛り岩に囲まれた風景は所詮人間の空想上のもので、本当の地獄は白く光り輝くのだろうか?
それにしてはやけに幸せな気持ちだ。
胸いっぱいに広がる暖かい気持ち。
真夏の全てを焼き払うような暑さとは違い、春風のように体に馴染む心地よい温度感。
知らないようで知っている。
少しづつ視界が戻ってきた。
いや、もう少し周りが見えるようになった。
一点へと集中されていた視線は少しづつ全体を見渡せるようになった。
俺が見ていたのは天国でも地獄でもないし、逆にその両方かもしれない。
雪国の吹雪とすら思う程に美しいその純白は、きっと東京よりやや西、潮の吹く港から届いた俺のための風だろう。
優しくも激しいその神風は、目の前に立っていた、大切な想い人のスカートという壁を壊し、その中に隠されていた下着を白日の元に晒した。
レースのあしらわれたその下着からは、今まであいつから感じたことのない、大和撫子らしい可愛らしさを感じた。愛らしいと表現すべきか。
おかしな話である。
ヨーロッパ由来の下着を着ているのを見て日本人らしい可愛らしさというのを感じるのだから。
異国情緒とわびさびを同時に体感していると、彼女が振り返ってきた。
どうやらかなり早い段階で俺が後ろにいることに気づいていたらしい。
「見えた?」
彼女は問いかけた。
どう答えるのが正解なのか戸惑い口ごもる俺を見てこいつはいたずらをしたときの子どものように笑っている。
パンツごとき見られたところで気にもとめないぞと言わんばかりに。
ならいっそ正直に見たと伝えてやる。
見たらなんだよ。減るもんでもないからいいだろ。
脇腹をぶん殴られた。
そこまで痛くはないがとりあえずその場に蹲ってみる。
「見ちゃったんだぁ〜。変態さんだねぇ〜。」
蔑むような言い方をしてはいるが、顔はこれでもかというほどにやけている。
神は俺の敵なのか味方なのか分からない。
パンツを拝めたときは神とアンバランスな人生に心の底から感謝できた。
今までの痛みも今日この喜びを得るために必要なビタミンだと受け入れられた。
だが今はどうだ。
神の悪戯により俺は自分の恋人に痛めつけられている。
こんなことがあってなるものか。
無いに等しい痛みに耐えながら顔を見上げると、あいつはさっきよりも笑っていた。もうマジであり得ないくらい。
こいつ人が苦しむの見て笑ってやがる。
フラペチーノ腹の中で爆発したらいいのに。
信号が青に変わった。
一仕事終えたヒットマンのような足取りには似合わないクソガキみたいな笑顔を浮かべながら歩き出したあいつを追って、俺も全く痛まない腹を摩りながら歩き出す。
「遅刻したくせに彼女のパンツを見るとはええご身分よのぉ。」
フラペチーノ片手にスマートフォンと睨めっこしてるくせに吾輩にそこまで言えるとは、汝はまともにスマートなことで結構結構。
「フラペチーノはあれだから。拙者にとってのガソリンだから。必要不可欠。あとスマホ見てたのは小テストの勉強だし。妾は優秀だからな!」
…は?小テスト?
「おやおやぁ?遅刻してセクハラ紛いのことしておいて、まさか小テストの存在も知らないのかなぁ?頭の中えっちなことでいっぱいなようで。」
口の利き方に気をつけろよ小娘。大人しく教えろ。
「いいけど今日ラーメン奢りね。」
等価交換って知ってる?
「まあまあ。小テストなんて結局"小"だから。人生100年時代、そんなことに囚われてたら持たないから。気楽に生きようぜ少年。」
それもそうか。所詮は小テストだもんな。そんなものに必死になるのもおかしな話だ。
「…絶対いつか大きな失敗すると思う。」
なら教えろよ。なんなんだよこいつ。
そんな思いを抱きつつ俺たちは教室に入った。
放課後、俺は彼女の家に遊びに行った。
今までの罪を償ってもらうためだ。
フラペチーノ罪に扇風機罪、パンチラ誘惑罪、シンプルに暴行罪。
一人は全てのツケを払わせるため、もう一人は罪から逃れるため。
それぞれの思惑を胸に、俺たちはコントローラーを握り熱い攻防を繰り広げている。
この前俺にコテンパンにやられて本気で練習したのだろう。
格段に動きが良くなっている。
普段適当に生きてるように見えて意外と努力家なんだよな。
だがまだ詰めの甘さが目立つプレイングだ。
即死狙いの脳死のパナシじゃせっかくのキャラパワーも台無し。
技の後隙に合わせ、後はコンボを決めれば勝てるというところで彼女は俺の名前を呼んだ。
思わず顔を向けると、あろう事かスカートをたくし上げパンツを直視させた。
そんな状況で正確なコンボができるほどの集中力を持っているゲーマーがいるなら、そいつはゲームなんかやめてスナイパーかハッカーにでもなればいい。
2秒間、俺は完全に停止した。
たった2秒。されど2秒。
ゲームにおいて勝敗を左右するのには十分すぎる時間だ。
脳死のパナシに打つ手なし。
あっという間に即死コンボ決められ俺は負けた。
こんな屈辱は生まれて初めてだ。
お前には正々堂々戦うっていう騎士道精神はないのか。フランス料理好きなんじゃないのか。遅刻したくせに朝飯フレンチトーストだったんだろ?
「ふっふっふ。余の辞書に!スポーツマンシップの文字はない!」
なんでそこまでフランス好きなのに騎士道精神だけはないんだよ。
そもそももう少し下着を見せることに抵抗感持ってくれよ。朝のやつは不可抗力にしても。スパッツ履くとか。
「パンツなんて見られても減るもんじゃないし。それにさ、あんたになら別に見られてもいいし。」
そういうの当たり前に言ってくるの本当にやめてくれよ。
「照れちゃった?男の子のくせに可愛いやっちゃなぁ~。」
可愛いと言われるのはあまり好きじゃないがこいつに言われるとどこか嬉しい気持ちになる。できればかっこいいの方がいいけど。
時々こいつと自分の人間としてのスペックのギャップに悩まされるが、それでもこいつの彼氏は俺だ。
互いに好きだから付き合ってるんだし、そこにどちらが上だとか、そういう考え方を持つこと自体ナンセンスだろう。
付き合っている以上、どこまで行っても関係性は対等であるべきだよな。
頭の片隅に常にあった問題を解決できた。
エロい体験もできたし十分エロ小説の体裁も保てている。そろそろ終わらせて筆者のあとがきを
「まあそれはそれとして…。」
ん?
「負けたんだし罰ゲームは受けてもらわないとなぁ~?」
ここ一番の笑顔である。嫌な予感がする。
あーちょっと予定を思い出し
「逃がさないぞ!」
床へと押し倒されて俺は確保された。
終わった。殺される。
「くすぐり一分耐久の刑じゃー!」
やばいってマジで死ぬえぐいあっそこダメっおい脇腹やめろ
「お前女みたいな声出すんだな?コーフンするじゃねぇか。」
ひっやめろ 脇だけはマジであ゛ぁ゛っじぬ゛っ
まずい。ここ最近で一番の危機だ。
こんな攻撃一分もされたらマジで死ぬ。どうにかしないと。
俺は必死にもがく。
いい年した高校生が腕を必死に動かす姿は死ぬほど滑稽だろうが今はそれどころではない。
奇麗な死に様を晒すより醜く足掻いて生きてやる。
「このっ…!往生せいや!」
むにゅっ。
最早語るまでもないだろう。
そうだ。俺は胸を揉んだ。
月曜日からたわわな胸を揉んでしまった。
女性の人権を激しく主張するタイプの人に見られていたら死ぬまで性犯罪者のレッテルを貼られることになっていたかもしれないが今はそれどころではない。
胸を揉んだのだ。パンツを見たどころの話ではない。
流石におふざけの域を超えている。
別れを切り出されてもおかしくない。
いや、今からボコボコに殴られて殺されても文句は言えない。
あぁ短い人生だった。童貞は卒業したかったな。
最後に愛してやまない死刑執行人の顔でも見るか。
比較的大きい俺の手に収まりきっていない胸をもう見れないのを名残惜しみつつ、俺は恐る恐る視線を上げた。
「ま、マジでさぁ…ちょっと…胸揉むのは…聞いてないって…。」
彼女は顔を真っ赤にしながら震えていた。
パーカーのフードを被り顔を隠そうとしている。
俺は罪悪感だとか、そんな姿を可愛いと思うだとかそんな気持ちにはならなかった。
ただただ驚いた。
こいつは基本的に何が起こっても恥ずかしいとは感じないやつだと思っていた。
パンツを見せるのもだし、俺への好意は全面に押し出すし、唐突にスマホの履歴を見せ合おうと言い出したりするやつだ。
そんなこいつが赤面し、しおらしくしている。
こんな乙女のような表情が見れるとは。
自分の彼女の新たな一面に、俺は言葉が出なかった。
こんな状況なのに。
恥ずかしくて悶える彼女を見て俺を何を言えばいいのか。
少なくとも俺にはこの状況に適した語彙はなかった。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
きっとほんの一瞬だったのだろうが俺には何時間にも感じられた。
「とりあえずさぁ…そろそろおっぱい鷲掴みにするのやめてもよくない…?これ以上はお金取るよ…?」
俺は慌てて手を離した。
人生で初めて触った同級生の女の子の胸部から手を離すのは勿体ないが仕方ない。
マジでごめん。触る気は本当になかったんだよ。
「ごめんで済んだら警察はいらないよね?」
全くもってその通りだけど、本当に悪いとは思ってるよ。
「本当に思ってるの?罪を償う覚悟はある?」
もちろん。こんなことして情状酌量は求めないよ。
「じゃあ…。」
ああ、終わったな…。
「あんたのアレ触らせてよ。あんたはアタシのおっぱい揉んだんだし。」
一瞬意味が分からなかった。
俺のアレ?アレというのはつまり、アレでいいのか?それはご褒美では?
「別にもう罰ゲームとかはいいし。揉まれたからこっちも触るってだけだし。ほらぁ〜。早くズボン脱いでよ〜。」
胸揉んだことで怒ってるんじゃなかったのか?
「別に胸も揉まれても減るもんじゃないし。そりゃ流石に恥ずかしかったけど、まあ男の子だし魔が差すこともあるでしょ。」
怒ってないならよかったけど…
局部を見せるのはいくらなんでも見合ってなくないか?
一瞬彼女は何かを考えてから口を開いた。
「じゃあこうしよっか。互いに服脱いだ上でアタシがあんたのを触る。これなら騎士道精神に則ってるでしょ。」
とりあえず絶対騎士道精神ではないし、俺ばっかいい思いしてないか?
「まあ…見られても減らないし彼氏特権ってことで許そう。某は寛大だからな!」
これに関しては本当に寛大だ。
奴隷扱いすら生ぬるいようなことをしたのに許してくれた。
本当に底抜けに明るいやつだ。
俺は絶対こいつには勝てないな。
そう感じつつ俺は言われるがままに服を脱いだ。
外面というのは内面の一番外側である。
思想や生活、性格というのは人間の見た目に顕著に現れる。
ピアスの数や位置にも意味はあるし、制服を着崩しているかどうかで真面目かどうかもなんとなくは分かる。
それでもその人がどのような人間性なのかは、結局のところ見ただけでは分からないし、それを内面というのだろう。
なら、俺がさっき見たこいつの下着は何なのだろうか。
内面と外面の一番の違いは可視化できるかどうかであるが、下着というのはファッションよりもどのような人間かをよく表しており、さしずめ「可視化できる内面」と言ったところか。
服装よりも下着の方が内面に近い。
ということは、肌に近い部分ほどその人のアイデンティティが良く表れるということである。
それなら裸はどうなのだろうか。
まず大前提として、裸はエロい。説明不要なくらい当たり前だ。
裸は裸故にエロく、もうとにかくエロい。
しかし、ただエロいだけの存在ではなく、裸というのは芸術作品の対象にもなる。
裸、つまりヌードというのは、ルネサンスの時代の美術においては神を描くときにのみ許された崇高な存在を表現するための方法であり、現在では人間のヌードをモデルにしたアートも存在する。
そこにあるのは決して下心ではなく、純粋な創作意欲だ。
ダビデ像の肉体の造形美は、男なら少なからず羨ましいと思うだろう。
しかし日本においてヌードは、芸術というよりは現代のテレビ番組で裸を放送できないように、同じような卑猥な存在として扱われてきた。
1901年に起きた腰巻事件などその最たる例である。
14世紀ごろからヌードを作品に取り入れていた西洋美術と比べると、日本のヌードの歴史はかなり浅く、ヌードは西洋の文化であると言えるだろう。
西洋美術の特徴はやはり写実的であるということだ。
レオナルドダヴィンチは数学や医学にも精通し、人体の構造や影がどのように伸びるかなどを理解していたからこそ、西洋美術を代表する芸術家として後世にもその名前を轟かしている。
俺は悲しいことに絵が描けない。
人生では数々の困難を乗り越えることを強いられるし、乗り越えたからこそ成長してきたが、絵を描くことからだけは逃げ続けてきた。
しかし今、そのツケを払わされるときが来た。
この情景を写せないのが本当に悔やまれる。
「あ、あんまりジロジロ見てもいい体してないし面白くないと思うんだけど…?」
裸になりベッドの上で俺と向き合っている彼女は、一言でいえば美しかった。
あれだけ毎日食べていれば当たり前だが、全体的にほどほどに肉付きが良い。
それでいて太りすぎているわけでもない。
まさにちょうどいい。女の子は細すぎず健康体であってほしいものだ。
「そのさ…まさかこんなことになるとは思ってなかったから…下の方全然奇麗じゃないし見ない方がいいよ…?」
彼女の言う通り、恥丘のあたりには髪色には似合わない真っ黒い陰毛で覆われていた。
その瞬間理解した。
朝感じたわびさびの正体はこれだ。
俺はいい女と付き合えたな。
いるかどうかも分からない神と、あるかどうかも分からない運命に感謝する。
「じゃあそろそろ触っていい…?」
俺の肉棒をまじまじと見ながら彼女は一言呟いた。
どうぞお好きに。
「では失礼して…うわぁ…実物ってこんな感じなんだ…。」
触ると言っていたのに今のところ先っぽを指で突っついているだけだ。
くすぐったいのでやめて欲しい。おい写真を撮ろうとするな。
触るなら早くしてくれよ。この状況めっちゃ恥ずかしいから。
「今日2回もパンツ見たんだからその分をまずは清算しないと。あっピクってした可愛い〜。」
1回はお前から見せたんだろうが。
「じゃあ…いよいよ本格的にいきますか…。」
彼女の小さな手が俺のモノを握りしめた。
「おぉ…思ってるよりもだいぶ熱いな…めっちゃ硬いし…うわっ玉って結構コリコリしてる…あっ、大丈夫?痛かったりしない?」
むしろソフトタッチすぎるくらい。
「そっか。じゃあもうちょい強くしても大丈夫かな。うわっ、なんか筋ある。」
いきなりの快楽に思わず体を反応させる。
「さてはここが弱いのかぁ〜?弱点発見〜。」
裏スジが感じやすいことに気付いた彼女は執拗に触り始めた。
一人でするときはほとんど触らないので俺としても未知の領域だ。
「さすがに触ってるだけじゃ全然イかないか…よし。」
そういうと彼女は俺の愚息を握りしめて上下させた。
うおっ…自分でやるのと全然違う…。
「やっぱ自分でする方が気持ちよかったりするの?」
いや、むしろ新鮮な感じで気持ちいい…。
「マジ?嬉しい!よーし、もっと頑張っちゃお。」
やる気が出たのか、肉棒を口に咥え、舌で舐め始めた。
「ん…ちゅ…ぴちゅ、ちゅ…ちゅっ…」
これもまた未知の快楽だ。手で擦るのとはまるで違う。
口内は温かくその温度感が肉棒を包み、舌が亀頭を這う感覚は自分では絶対に再現できない感覚だ。
「ちゅ…はむっ…じゅる…っぷはぁっ。どう?ちゃんと気持ちいい?したことないから分からなくて…。」
めっちゃ気持ちいい。今死んでもいいくらい。
「えっへへへ〜。ありがとっ。はむっ…じゅる…ぴちゅ…」
うっ…そこめっちゃ気持ちいい…。
「やっぱここの筋弱いんだ〜。ピクピクしてて可愛い〜。」
マジで気持ち良すぎるんだけど。本当に初めて?
「まぁ〜…。彼氏を家に呼ぶんだし、それなりに練習はね…。やっぱせっかくするんだったら互いに気持ちよくなって欲しいし…。じゃあ、そろそろ本気出しますか…んっ…。」
彼氏冥利に尽きる一言を貰ったところで、彼女は淫棒を深く咥えこみ、激しいディープスロートを始めた。
「じゅぽっ じゅぽっ じゅる…じゅるるる… ふぉう?ふぃふぉふぃぃ?(どう気持ちいい?)」
俺は快感に声を漏らしそうになりながらも頷いた。
正直夢見心地だ。言葉を発するときに出た吐息すら鈴口を刺激する。
「ぐちゅっ ぐちゅっ じゅるるる…じゅるっ…ふぃぃふぉぉ…ふぁふぃふぇ?(いいよ…出して?)」
どっっぴゅっ!ぴゅっ!ぴゅるるる…ぴゅっ…ぴゅる…
俺は体を震わしながら絶頂した。
間違いなく人生で一番の射精量だ。
「んっ…ごくっ…ごくっ…ぷはぁ!えへへ…♡ごちそうさまでした…♡」
わざわざ飲まなくてもよかったのに…大丈夫?気持ち悪くないか?
俺が尋ねると、彼女は誇らしげでありながらもとろんとした表情で親指を立てた。
「もーまんたい…♡思ってるよりも不味くなかったし…アタシの彼氏の濃厚ザーメンは最高だぜ…♡」
本当にいい子だな。つくづく実感させられた。
「ねぇ…そろそろもうアタシも限界なんだけど…♡」
そういうと彼女は、自分の性器の割れ目を開いて俺に見せつけた。
ぬらぬらと愛液で濡れている。
正直、俺も我慢の限界が近いが、普段の仕返しだ。
ここは一つ、からかってみるか。
俺のちんぽしゃぶって濡れてるの?
お前も大概変態じゃん。
彼女はさっきよりも一段と顔を赤くした。
さっきは色々起こりすぎて気付かなかったけど、こいつ照れてる顔が一番可愛いな。
「だって…好きな人のちんちんしゃぶってるんだもん…興奮しないわけないじゃん♡」
…お前可愛いな。
「はぁぁっ!?可愛いとか…言うなし…♡ほらっ!早く挿れちゃいなよ…♡」
ちゃんとお願いしてくれないとなぁ~。
「うっ…。あ、アタシのヌレヌレの…お、おまんこに…♡貴方の逞しいお、おちんちん…♡挿れてください…♡」
よく言えました。
俺は射精した直後とは思えないほど膨れ上がったモノを彼女の聖域に挿入した。
彼女の肉壁は俺の巨根をきつく締め付け、入れただけだというのに思わず二発目を出してしまいそうだった。
初めての俺には過ぎた快楽だ。
「うっ…はぁっ…♡は、入ってきたぁっ…♡」
大丈夫?痛かったりしない?
「ちょっと痛いかも…。
そうだ…ねぇ…キス…しよ…?付き合ってからまだ一回もしてないじゃん…?」
俺たちは唇を重ね合わせた。
ファーストキスは甘酸っぱいというが、本当にその通りだ。
互いに舌を絡め合わせ、表面のザラザラとした感触を楽しみ、同じタイミングで口を離した。
間に唾液の橋ができた。
ほんの数秒の間だけだったが、今までのどんな瞬間よりも幸せだったと断言できる。
「童貞卒業と…♡ファーストキスおめでとっ…♡初めてがこんなべっぴんさんでよかったね…♡」
お前こそ…こんなハンサムが初めてでよかったな…。
「ばーかっ…♡そろそろ慣れてきたし…動いて…?♡」
俺も膣内の感覚に慣れてきた。
少しずつ腰を動かす。
「うっ…♡やばっ…♡思ってたよりめっちゃ気持ちいいんだけど…♡これはもうオモチャには戻れないなぁ…♡」
オモチャという単語に、思わず興奮を覚えた。
性欲なんて微塵もなさそうな顔をしてるのに家ではオナニーに耽っている姿を想像し、俺は腰を叩きつける速度を上げた。
「あっ♡ばかっ♡ちょっ♡激しすぎるって♡アタシの♡おっ♡オナニー想像してこうふ♡ひゃあっ♡興奮すんなばかドーテー♡あぁん♡」
ぱちゅんっぱちゅんっと規則的なリズムの中に彼女の喘ぎ声が混ざる。
いつもやられっぱなしな分を報復できて嬉しいが、攻め方が同じでは絵面も変わらず、感じる側もマンネリしてしまうだろう。
今度はさっきのくすぐりの分を復讐するか。
「はぁっ♡はぁっ♡え?どうし…ひゃあっ♡あっ♡んっ♡胸ぇっ♡感じやすいのっ♡舐めないでぇ♡あっ♡噛むのやだっ♡」
制服の上からでも分かるほどの巨乳だった彼女の乳首は、コリコリとしており、非常に良い噛み心地だった。
上半身の性感帯が感じやすいのならば、ここはどうだろうか。
「ちょっ今度は何してっ…ばっばかっ♡そこは本当にダメだって♡脇は本当にむりっ ひゃあぁぁんっ♡うそっ♡なんで脇なんかで感じるのっ♡こっこらっ♡舐めるなぁっ♡本当にやだっ♡今日体育あったから臭いしっ♡」
本人は臭いというが全くもってそんなことはない。
むしろいい匂いまでするほどだ。
そして本当に感じやすい。
いくらなんでもここまで感じるものなのか?
おそらく相当一人で開発していたのだろう。
乳首を弄るたびによく締まる。
攻めている側の俺にも快楽が伝わり、そろそろ我慢の限界だ。
そろそろ出そうっ…。
「アタシもっ♡あっ♡もうイく…♡ねぇっ♡キスっ♡キスしよぉ…♡あぁぁん♡」
俺たちはまた深い口づけをした。
「あっ♡ヤバっ♡イクっ♡あぁぁぁぁぁん♡」
ドピュッ!ピュッ!ドッピュ!
俺は二回目とは思えないほどの精液を彼女の体の中に出した。
「はぁ…はぁ…やっばっ…♡気持ちよすぎて力入らない…♡」
俺も陰茎を彼女から引き抜くと、彼女の隣へと倒れこんだ。
「ねぇ…。」
俺は呼びかけられた方を振り向くと、彼女の胸元へと抱きしめられた。
「大好き…♡」
人生は一寸先は闇である。
誰もが未来を見ることはできない。
だからこそ人はその瞬間を必死に生き、上手くいくよう存在しない神にすら時には縋り付く。
自分の周りを照らすことしかできない弱い光を求めて。
ご多分に漏れず俺もその刹那を生きるのに全力を使っている。
だが俺はそれでいい。
すぐそばにこいつがいるなら、たとえ光が無いとしても生きていける。
俺は俺だけの天使を守りながら生きていく。
俺は密かに決意し、彼女と抱き合った。